3密回避のアウトドアレジャー、釣り・ゴルフ・キャンプの消費者意識を検索データで分析!グランピングも人気上昇中

3密回避のアウトドアレジャー、釣り・ゴルフ・キャンプの消費者意識を検索データで分析!グランピングも人気上昇中

コロナ禍におけるレジャーで特に気になるのが、感染リスクをいかに下げるかということ。十分なソーシャルディスタンスを保つことができるのは、アウトドアレジャーの大きな強みです。今回はヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を活用し、「釣り」「ゴルフ」「キャンプ」について、感染拡大に伴い世間の関心がどのように変化してきているかを調査します。


コロナでアウトドアがトレンドに?

2020年、新型コロナウイルスが世界的に蔓延する中で打撃を受けた業界の1つが旅行業です。外出自粛は緩和されてきたものの、ビジネス以外の海外渡航は依然自粛が勧告されており、人々の余暇の楽しみ方は限定的なものとなっています。

そんな中、政府主導でGOTOキャンペーンが推進されるなど、観光業の落ち込みを改善する動きが加速しています。中でもアウトドアレジャーは3密を回避できることから、人気が高まっていると考えられます。

そこで今回は「釣り」「ゴルフ」「キャンプ」の3つのアウトドアレジャーを対象に、ヴァリューズ社のWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を使って消費者インサイトを分析していきます。ではまず、それぞれのキーワードを検索したユーザーの数がどのように推移してきたのか見てみましょう。

分析ツール:「Dockpit」キーワード分析機能、対象期間:2018年10月~2020年9月、対象デバイス:PC&SP

釣り(上図青線)は昨年と比べて2020年の方が山が大きく、全体的にも検索数が増加傾向となっていました。またコロナの有無に関わらず、釣りのトレンドはゴールデンウィークと夏休みに集中していることが分かります。

一方、ゴルフ(上図ピンク色の線)はコロナ前後での大きな変化は見られないものの、落ち込みも無く安定して徐々にユーザーを増やしてきています。

この3つのレジャーの中で伸びが最も顕著なのがキャンプ(上図緑色の線)です。シーズナリティの関係で冬が近づくに従って減少が見られますが、2019年12月から2020年8月にかけてユーザーは約2.7倍に増えています。

3つとも感染拡大に伴う下落は見られず、特に釣りとキャンプについてはコロナ前以上の増加を記録しています。海外旅行など他のレジャーが制限されたことから、ソーシャルディスタンスを保ちながら楽しめるアウトドアが人々の新たな選択肢になりつつあると言えるのではないでしょうか。

次の章では、主な掛け合わせワードから、具体的な検索内容を調べていきます。

検索者の関心はどこにある?

まず、「釣り」「ゴルフ」「キャンプ」がそれぞれどのようなワードと掛け合わせて検索されたのか、また、2019年と2020年で検索ワードがどのように変化したのかを見てみましょう。次の表に、それぞれの検索数上位10位をまとめました。

分析ツール:「Dockpit」キーワード分析機能、対象期間:2019年4-9月および2020年4-9月、対象デバイス:PC&SP

ゴルフとキャンプで「初心者」という掛け合わせの順位が1位ずつ上昇しています。今までアウトドアが選択肢になることはなかったが、コロナ禍でも楽しめるという点から、初めて挑戦する人が増えてきているのかもしれません。

釣りの検索者は、「FF14」「マイクラ」といったゲーム内での釣り遊びについて攻略法を検索する人が多いようです。また検索者数が1回目のピークを迎える2020年5月の主な掛け合わせワードは以下のようになっています。

分析ツール:「Dockpit」キーワード分析機能、対象期間:2020年5月、デバイス:PC&SP

「あつまれ どうぶつの森」の検索が目立ちます。このように、釣りについては実際に出向いて行うアウトドアレジャーとしてだけでなく、ゲーム関係の検索が多くなっているため、検索者の増減を見る際に注意が必要でしょう。ただゲーム内での釣り体験がきっかけで実際に挑戦してみようという人や、ゲームを通して釣りにポジティブなイメージを持つ人が増える傾向もあるかもしれません。

また下図のワードネットワークで「釣り」関連検索の関心を把握すると、「ポイント」で釣りスポットを、「おすすめ」で用品の情報を検索している人が多く見られます。

分析ツール:「Dockpit」キーワード分析機能、対象期間:2020年4月~9月、デバイス:PC&SP

次にゴルフについて分析します。先ほどの表を見ると、2019年には女子プロゴルフの検索がトップになっていたのに対し、2020年になると「コロナ」が首位となり、続いて「練習」が昨年から順位を上げて2位となっています。

そこで、コロナ以降の今年の検索状況について、ワードネットワークを使って詳しく見てみましょう。

分析ツール:「Dockpit」キーワード分析機能、対象期間:2020年4月~9月、デバイス:PC&SP

コロナの感染リスクを懸念する人が多いほか、それに関連して、「練習」については「自宅」「家」など、自粛ムードの中、ゴルフ場や練習場に足を運ばなくても練習できるのかという疑問を持つ検索者が多いと言えそうです。

キャンプのワードネットワークも見てみましょう。

分析ツール:「Dockpit」キーワード分析機能、対象期間:2020年4月~9月、デバイス:PC&SP

釣りと同様に、「おすすめ」でキャンプ用品が検索されていました。特に重要な用品としては、検索上位にも上がっている「テント」と「テーブル」のようです。それぞれの掛け合わせワードを見てみると、例えばテーブルでは「木製」「折りたたみ」などが入っていたりと、商品を選ぶ際にどんな観点が重要視されているかが浮かび上がってきます。

以上、3レジャーの詳しい検索内容について見てきました。ゲームの発売やコロナの影響を受けて検索者の増大に繋がっていること、中でも初心者が挑戦してみようというムードが高まっていることが見えてきました。

次章では、このトレンドにGO TOキャンペーンが影響しているのか、調べていきます。

GoToはトレンドを後押ししたのか

GO TOトラベルが開始されたのは7月22日なので、2020年7月から9月の検索での掛け合わせワードをそれぞれのレジャーについて見てみましょう。

【釣り】

分析ツール:「Dockpit」キーワード分析機能、調査期間:2020年7月~9月、対象デバイス:PC&SP

釣りについてはポイントの地名検索が目立ち、GO TOに関するキーワードは見られませんでした。

一方、ゴルフとキャンプではGO TO関連の検索が目立ちます。

【ゴルフ】

分析ツール:「Dockpit」キーワード分析機能、調査期間:2020年7月~9月、対象デバイス:PC&SP

【キャンプ】

分析ツール:「Dockpit」キーワード分析機能、調査期間:2020年7月~9月、対象デバイス:PC&SP

釣りに関しては、例えばこちらのサイトで紹介されているようにGOTOキャンペーンを利用した国内フィッシングツアーも組まれているようですが、他2レジャーと比べるとマイカーで移動し日帰りで帰宅する釣り人が比較的多いため、キャンペーン利用が少ないと考えられます。対してゴルフは宿泊込みで遠出をするユーザーが多いと考えられます。

また、こちらのキャンプ場予約サイトではコテージ、バンガロー、ログハウスなど常設の簡易宿所営業の許可を得ているプランのみがGO TO割引の対象となり、自分たちで設置するテント泊は除かれるようです。このことから、キャンペーンを利用する場合はテントを購入し組み立てる必要がないため、初心者が挑戦しやすい状況になっていると言えます。

このように、レジャーごとにGO TOの使われ方は異なり、釣りについてはキャンペーンの影響をさほど受けずにユーザーを増やしているということがわかりました。

「グランピング」の動向は?

ここまで、アウトドアの主要な3レジャーについて見てきました。特に検索者の伸びとしてはキャンプの成長が顕著に見られましたね。そんなキャンプですが、アウトドアレジャーの要素を残しつつも、より手軽に、かつおしゃれに楽しめる方法として「グランピング」が注目を集めてきています。最後に、この新たなトレンドがどのように消費者に受け要られているか、動向をご紹介します。

それではまず、「グランピング」と検索したユーザー数がこの1年間でどのように推移してきたのか見てみましょう。

分析ツール:「Dockpit」キーワード検索機能 対象期間:2019年10月~2020年9月 対象デバイス:PC&SP

感染拡大が本格化してきた2020年4月から9月に至るまで、急激に検索者を増やしていることがわかります。その伸びは約7倍と、従来の主要な3レジャーと比べてもその急成長は目覚ましいものがあります。

人気の原因を探るため、まずはユーザーの男女比と年代構成を既出の3レジャーと比較してみましょう。

分析ツール:「Dockpit」ユーザー属性分析機能-性別 対象期間:2019年10月~2019年9月 対象デバイス:PC&SP

釣りとゴルフでは男性ユーザーが7割を超えており、キャンプは3レジャーの中では女性ユーザーが多いですが、依然男性が優勢です。一方、グランピングは女性ユーザーが半数を超え、この4つの中では唯一女性が優勢のアウトドアレジャーとなっています。

では、年代構成はどうなっているのでしょうか。

分析ツール:「Dockpit」ユーザー属性分析機能-年代 対象期間:2019年10月~2020年9月 対象デバイス:PC&SP

年代を比較すると、従来の3レジャーは30代以降がボリュームゾーンとなっているのに対し、グランピングは20代からの人気が高い結果に。この新しいトレンドは今までのアウトドアレジャーの概念を覆し、若い女性を中心に盛り上がりを見せていると言えます。これは、おしゃれなテントやコテージ、トレーラーなど「インスタ映え」の需要に応えつつ、清潔で設備が整っており、専門知識や用品の下準備、腕力などを必要としないことから、アウトドア初心者や女性に挑戦しやすいという点が魅力になっていると考えられます。

では次に、どのようなニーズをグランピングが満たしているのか、コロナ禍のワードネットワークを元に分析していきます。

分析ツール:「Dockpit」ワードネットワーク機能 対象期間:2020年4-9月 対象デバイス:PC&SP

ワードネットワークを見ると、まず上図内で赤枠で囲った「子連れ」が目立ちます。先ほどのキャンプのワードネットワークでも「ファミリー」との掛け合わせ検索がされていますが、グランピングの「子連れ」の方が目立って多く、小さな子供をもつ若いファミリー層の関心が高いことがわかります。

子供が小さいうちから自然の中で遊ばせてあげたいけれど、本格的なキャンプだとテントを組み立てる作業は時間を要し、子供と遊ぶ時間が思うように確保できないばかりか、子供から目を離すリスクもある…。そんな親の悩みに応えた新しいキャンプの形をグランピングは提供し、人気に繋がっているものと思われます。

また、グランピングにあってキャンプに見られないのが、上図青枠のペット関連のキーワードです。快適さを追及しつつもペットを連れて旅行したい、のびのびと散歩させたいというニーズをグランピングが満たしていると考えられます。キャンプ設営の煩わしさから解放され、よりペットとの時間を満喫できるというメリットもあるのではないでしょうか。

このように、グランピングは現代版のライトなキャンプとして新たな価値を提供し、アウトドアレジャーに新たなユーザー層を引き込んでいることがわかりました。

まとめ

観光・旅行業界への経済的打撃が深刻なコロナ禍において、実はユーザー数を伸ばしていたアウトドアレジャー。3密を避けつつ、都会の喧騒からも離れてリフレッシュできる新しい余暇の過ごし方として、注目を集めていました。

レジャーの種類によってはGO TOキャンペーンが相乗効果となり、今後も業界の復興を牽引していくと考えられます。初心者を魅了するだけでなく、実際に挑戦しやすい仕組み作りが今後のポイントの1つになってくるのではないでしょうか。

本調査が、皆様のお役に立ちますと幸いです。

【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2018年10月〜2020年9月の検索流入データ
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC&SP

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この記事のライター

大阪大学でポルトガル語とブラジル社会学を、カナダのビクトリア大学でビジネスを学び、2021年に新卒でヴァリューズに入社。データアナリストを経て、現在はマナミナのコンテンツマーケティングと自社の海外PRを担当しています。

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