ちば興銀がデータ活用でコンテンツマーケティングを強化。鍵は「お客様ニーズの理解」|地方銀行のDX事例

ちば興銀がデータ活用でコンテンツマーケティングを強化。鍵は「お客様ニーズの理解」|地方銀行のDX事例

県外の店舗は東京に2店舗、他の72店舗はすべて千葉県内にあり、地域に根ざした銀行として営業を続けてきた千葉興業銀行(以下、ちば興銀)。店舗チャネルを活用した丁寧な接客が強みですが、一方でオンラインチャネルでの施策を進め、データを活用したコンテンツマーケティングで成果を挙げています。ちば興銀がヴァリューズと進めた施策について、営業企画部 チャネル企画室の田中啓亮氏にヴァリューズの横井が聞きました。


ちば興銀が感じる地方銀行の課題とは

ヴァリューズ 横井涼(以下、横井):ちば興銀様とはこれまでデータを活用したユーザー理解のワークショップに始まり、その発見に基づいた記事制作などコンテンツマーケティングの取り組みを行ってきました。今日はその内容についてあらためてお聞きしていきたいのですが、まずそもそも、近年の地方銀行のマーケティングにおける課題感は何かお聞きできますか?

ちば興銀 田中啓亮氏(以下、田中):脅威にはやはりネット銀行の台頭が挙げられます。金融業は商品やサービスでの差別化が難しい業界です。地方銀行の強みは地域での店舗チャネルを持っていることが挙げられ、当行でも店舗チャネルを活用して、地域の生活者や事業者の方に丁寧な接客やコンサルティングを提供してきました。これがお客様から選ばれるひとつの理由だと捉えており、他の銀行に比べても優位性がある点だと思います。

一方で、非対面でのオンラインチャネルでは物理的な距離が差別化の要因になりません。ユーザーは検索結果の一番上に出てきた銀行や商品・サービスで比較検討します。今までは近隣の方にとっての店舗の近さやアクセスしやすさが優位性となっていましたが、ネット上ではどんな銀行の商品・サービスにも簡単にアクセスすることができます。

加えて最近は新型コロナウイルスの影響もあり、非対面チャネルのニーズはますます高まっています。今までの地方銀行の強みが活かせなくなっており、こうした部分を埋めていくのが地方銀行の課題でしょう。

(上)株式会社千葉興業銀行 営業企画部 チャネル企画室 田中啓亮氏
(左下)株式会社ヴァリューズ データマーケティング局マネージャー 横井涼
(右下)株式会社ヴァリューズ データマーケティング局 マーケティングコンサルタント 辻阪誠

田中氏が所属するチャネル企画室は顧客との接点を構築する取り組みを行っている部門。田中氏は主としてホームページやWeb広告などの非対面のチャネルや、コンテンツマーケティングのほか、SMSや電子メール、SNS(LINEとYouTube)を通じたコミュニケーション設計と施策実行もご担当。

ちば興銀の「教育ローン」コンテンツが安定して上位表示されるように

横井:ちば興銀様では以前から非対面チャネルでの顧客接点を強化するためにコンテンツマーケティングの取り組みを行ってこられましたが、感じていた課題感とは何だったのですか?

田中:もともと、コンテンツマーケティングを実施する上での悩みが2点ありました。ひとつは記事の内容に確信が持てなかったことです。ベンダーさんには当行がアピールしたい商材を伝えた上で記事制作を行っていただいていたのですが、そもそも読者に伝えるべき内容は何なのか、本当にこれでいいのか…と手探りの状態で制作していました。また、記事の効果検証ではどんな指標をどのように評価していくべきかが定まっておらず、社内に効果を説明する際に悩んでいました。

横井:そんななかヴァリューズにコンテンツ制作を依頼していただいたのはどういう意図があったのですか?

田中:もともとはWeb広告運用のご提案をいただきましたよね。そのときにコンテンツマーケティングもできるとうかがい、データを用いたユーザー分析の結果からコンテンツを制作する手法に魅力を感じました。

ヴァリューズのコンテンツマーケティングの流れ。ヴァリューズは自社で保有するWeb行動ログデータからユーザー分析を行い、潜在的なニーズを把握できる点が強み

横井:実施した「教育ローン」テーマのコンテンツでは、結果として記事公開後2〜3ヶ月で着実に検索順位が伸びていきましたよね。教育ローン関係の検索量が増える秋〜冬にかけて、CVがより増えていくのではないかと期待しています。

田中:そうですね。現在は常にGoogleで1位〜5位ほどで推移していて、安定的に流入が取れている状況です。一時期スニペットに表示されたのも驚きでしたね。御社にはその後の効果検証までサポートいただける点もありがたいです。訪問したユーザーの滞在時間や遷移先もデータとして示してもらい、ローンのシミュレーションページを見て検討行動に移っているお客様も一定いることが判明しました。コンテンツの効果を感じています。

コンテンツ公開後、自然検索流入・クリック数ともに効果改善が見られている(分析の一部を抜粋)

ワークショップのゴールは記事構成づくりでなく「ユーザー理解」

横井:コンテンツ制作に入る前段階でユーザー分析のワークショップをちば興銀様と行いましたが、その効果についてはどのような印象でしたか?

田中:御社の「Dockpit(ドックピット)」や「story bank(ストーリーバンク)」といったツールでWeb行動ログデータを分析し、ユーザーが「教育ローン」検索を行う手前でどのような検索行動を行っているのかをワークショップから明らかにしていきました。そうするとお客様のニーズがどんな悩みから始まるのかが見えてきます。コンテンツマーケティングにおけるテーマ選びに課題感を感じていましたが、データに基づいて興味を把握できたことから確信を持って記事制作に移ることができ、とても感動しました。

ワークショップでは検索行動データを見ながらディスカッションを行い、ニーズを分析。その結果をもとに記事制作上のペルソナや構成を決める。

横井:これまでユーザーのデジタル上の行動を観察したことはありましたか?

田中:いえ、ありませんでした。行動分析の結果からお客様の熱量が見えてきて驚きでしたね。あと、最初の説明でワークショップに2時間かかると言われたことも驚きでした(笑)。本気で消費者のニーズを満たす記事を作ろうとしていることが伝わってきました。

横井:ワークショップでは記事案を考えるというよりはむしろ、ユーザーを理解するのがゴールです。「教育ローン」検索にたどり着くまでにどういう検索をしているのか、定量的に見ていくのが「Dockpit」。そして定性情報を「story bank」で丁寧に見ていく。すると、これまで自分たちが思っていたユーザー像と本来の姿にはギャップがあると気づきます。定量・定性を併せて見ていくと、専門家でも知らないことが見えてきます。

田中:だからいただいた原稿もとても読みやすかったです。ワークショップですり合わせを行っていたからこそ、消費者の目線に寄り添った記事構成にできたと思いますね。赤入れの回数もこれまでと比べて少なく、工数が少なかった点もありがたかったです。

横井:最後にちば興銀様のデジタル施策における今後の展望を教えていただけますか。

田中:非対面のチャネルは今後もますます重要度が高まっていきます。忘れてはいけないのは、デジタルの領域でもお客様のニーズを深く把握することです。非対面だとしても画面の向こうにはお客様がいることを理解し、的確なコンサルティングを行っていきたいですね。今後もデジタル上で多様な施策を展開していければと思っています。

横井:行動ログデータはユーザーのWho/What/Howを整理し、仮説検証を行う際に非常に役立ちます。そこから全体戦略の再考や、LP・クリエイティブの改善に使えます。ヴァリューズには独自の計測/分析支援もありますし、様々なテクノロジーを使って今後も存在感を高めるお手伝いをさせていただければと思います。本日はありがとうございました。

取材協力:株式会社千葉興業銀行

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

マナミナ編集部でデスクを担当しています。新卒でメディア系企業に入社後、フリーランスの編集者・ライターとして独立。マナミナでは主にデータを活用した取り組み事例の取材記事を執筆しています。

関連する投稿


SEOとは何の略?初心者もスグできる対策と3つの分析ツールを紹介

SEOとは何の略?初心者もスグできる対策と3つの分析ツールを紹介

SEOとは何の略か知りたい。Webサイトの運営とアクセスを増やすのにSEOが必要らしいけど、具体的に何をすれば良いのかわからない。こんな疑問をお持ちの方に向けてSEOの意味から、初心者でもわかるSEO対策の設定と考え方を解説していきます。間違ったSEO対策やサイト設計をして、逆効果にならないようにしておきましょう。


リピートされる観光地を目指したDMP構築とデータ活用組織作り【広島県観光連盟インタビュー】

リピートされる観光地を目指したDMP構築とデータ活用組織作り【広島県観光連盟インタビュー】

コロナ禍を経て活況が戻った観光業において、データドリブンの施策を展開する広島県観光連盟(HIT)。本稿では「圧倒的な顧客志向」を掲げるHITでの、VALUESのデータ分析伴走支援サービスを通じたチャレンジに迫ります。


【March 2024 core update】Googleコアアルゴリズムアップデートをリリース!新しいスパムポリシーも導入

【March 2024 core update】Googleコアアルゴリズムアップデートをリリース!新しいスパムポリシーも導入

Googleが2024年3月のコアアルゴリズムアップデート(March 2024 core update)をリリースしました。今回はコアアップデートとあわせて、スパムに関する新しいポリシーも導入されています。


新NISA開始!NISAとiDeCoで検討者を比較調査

新NISA開始!NISAとiDeCoで検討者を比較調査

2024年1月から新NISAが開始されました。今回の調査では、新NISAは若年層や未婚者の関心が高く、積極的に資産の運用をしたいと考える人が多いと推測できそうです。一方のiDeCoは、40代以降の年代で新NISAよりも関心が高く、老後の資産形成を意識しているといえるでしょう。NISAを始め、iDeCoとも比較しながら、新NISAの検索者の属性や興味関心について分析しました。


キーワードは「価値創造」。日本のマーケティングの未来像を語る【日本マーケティング協会会長 藤重氏×ヴァリューズ代表 辻本】

キーワードは「価値創造」。日本のマーケティングの未来像を語る【日本マーケティング協会会長 藤重氏×ヴァリューズ代表 辻本】

コロナ禍を経て大きく変わりつつある企業の経済活動。日本企業のマーケティング活動の現在地と未来図、そしてマーケターが取り組んでいくべきことは何か。日本マーケティング協会会長 藤重氏とヴァリューズ代表 辻本による対談をレポートします。


最新の投稿


Passionate Genius、Webフォームと連携してAIから自動架電する機能「フォームAPI」をリリース

Passionate Genius、Webフォームと連携してAIから自動架電する機能「フォームAPI」をリリース

株式会社Passionate Geniusは、同社が提供する生成AIによる自動架電サービス「nocall.ai」の新機能として、Webサイト上のフォームと連携して自動架電を行う「フォームAPI」を発表しました。


スキルアップ研究所、「企業研修によるリスキリングの実態調査」の結果を発表

スキルアップ研究所、「企業研修によるリスキリングの実態調査」の結果を発表

株式会社 学研ホールディングスのグループ会社、株式会社ベンドは、運営する「スキルアップ研究所」にて、「企業研修によるリスキリングの実態調査」を実施し、結果を公開しました。


【2024年6月3日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

【2024年6月3日週】注目のマーケティングセミナー・勉強会・イベント情報まとめ

編集部がピックアップしたマーケティングセミナー・勉強会・イベントを一覧化してお届けします。


電話・スマホでのコミュニケーションは通話よりもテキストを利用 テキストの良さは「後から読み返せる」「時間を気にしなくていい」【クロス・マーケティング調査】

電話・スマホでのコミュニケーションは通話よりもテキストを利用 テキストの良さは「後から読み返せる」「時間を気にしなくていい」【クロス・マーケティング調査】

株式会社クロス・マーケティングは、全国20歳~69歳の男女を対象に「電話での声と文字のやり取りに関する調査(2024年)」を実施し、結果を公開しました。


カーシェアの市場規模や利用者数を調査。主要サービスの公式サイト訪問データから考察

カーシェアの市場規模や利用者数を調査。主要サービスの公式サイト訪問データから考察

カーシェアは車を共同利用するサービスで、日本にシェアリングエコノミーの考え方が広がるとともに普及しました。今回は国内の主要な13のカーシェアサービスのWebサイトを訪問した人のデータから、カーシェア業界の市場規模やどのような層が関心があるのかを調査していきます。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ