分析の概要
分析対象は、20代かつ個人年収1000万円以上のユーザー群(以下、20代高所得層)です。比較対象としたのは、同じ20代でありながら年収を問わない「20代全体」です。年収を問わない同世代と比べることで、「高所得だからこその特徴」を確認します。加えて、参考として、同じ「個人年収1000万円以上」でありながら世代の異なる60代以上のユーザー群(以下、60代以上高所得層)とも一部比較し、年代による違いも補足します。
1. 「年収1000万円以上の20代」の約4人に1人は子育て中
20代高所得層の職業をみると、最も多いのは「公務員・教職員・団体職員」(全体の23.0%)で、20代全体の約2.7倍にのぼります。「会社経営(経営者・役員)」は10.4%で、20代全体の約6.8倍です。「会社勤務(管理職)」も6.2%と、20代全体の約3.3倍となっています。一方、20代全体で最も多い「会社勤務(一般社員)」は、20代高所得層では20.6%と、20代全体の半分以下にとどまります。経営者・管理職・公務員が相対的に厚く、一般社員は薄い傾向です。
※割合:各ユーザー群全体を100%とした時の職業ごとの出現割合
もう一つ際立つのが、未既婚・子供の有無です。20代高所得層は「既婚で子供がいる」人が23.4%を占め、20代全体の約5.1倍にのぼります。一方、20代全体で圧倒的多数を占める「未婚で子供がいない」は、20代高所得層では58.4%にとどまります。20代全体では独身・子供なしが標準的な姿である一方、20代高所得層では既婚・子育て中の人が厚みを持っています。
※割合:各ユーザー群全体を100%とした時の職業ごとの出現割合
2. 日常的に使うアプリは、他の20代と変わらない
次に、20代高所得層が実際に接触率の高いアプリを見てみましょう。1位はLINE(95.0%)、以下Googleフォト(83.6%)、Instagram(75.8%)、PayPay(66.9%)、X(64.0%)、TikTok(58.3%)と続きます。
※リーチ率:各ユーザー群全体を100%とした時のアプリごとの接触割合
上位に並ぶのは、年代を問わず広く使われている定番アプリばかりです。「年収1000万円以上の20代」だからといって、日常的に使うアプリそのものが特殊というわけではないと分かります。
特徴が表れるのは、この後に見る「何にあまり接触しないか」「何に選択的にお金を使うか」という部分です。
3. 金融系への接触は、20代全体よりも少ない
証券・銀行・キャッシュレス決済など「金融」に分類されるアプリ全般で見ると、20代高所得層の平均リーチ率は1.7%です。同じ20代でも年収を問わない「20代全体」は2.5%で、20代高所得層の方が約1.4倍低くなっています(参考までに、60代以上高所得層は5.1%とさらに高くなっています)。
個別に見ても同じ傾向です。「楽天ペイ」は20代高所得層17.0%に対し20代全体25.0%、「d払い」は11.0%対20.1%など、いずれも20代全体の方が上回っています(60代以上高所得層はそれぞれ楽天ペイが57.0%、d払いが34.0%とさらに高く、参考値として記載します)。
※リーチ率:各ユーザー群全体を100%とした時のアプリごとの接触割合
年収1000万円以上という経済的な余裕があれば、同世代の中でもキャッシュレス決済やポイントをこまめに使い分ける必要性は薄れるのかもしれません。
4. エンタメ消費は定番より「趣味性の高いスポーツ関連」
一方で、エンタメ消費の中身を見ると、興味深い対比が見えてきます。Netflix(20代高所得層22.6%対20代全体24.9%)、Prime Video(25.9%対31.3%)、U-NEXT(14.5%対18.0%)、Disney+(4.2%対7.1%)といった定番の動画配信サービスは、同世代の20代全体と比べても接触率が低くなっています。
ところが、有料スポーツ配信の「DAZN」は20代高所得層5.0%に対し20代全体3.0%と、逆に高くなっています(60代以上高所得層は5.0%とほぼ同水準です)。スポーツゲームの「eFootball」(12.3%対5.0%)や「プロ野球スピリッツA」(14.1%対6.4%、60代以上高所得層は1.0%)も同様の傾向です。
※リーチ率:各ユーザー群全体を100%とした時のアプリごとの接触割合
「みんなが見ている」定番の動画配信やレジャーへの関心は、同世代の中ではむしろ控えめな一方、月額課金が必要なスポーツ観戦のようなニッチですが趣味性の高いジャンルには、選択的にお金を使っている様子がうかがえます。ポイ活のような「守り」の消費には積極的でない一方、「好きなこと」には選んでお金を使う、そのような消費の傾向が推察されます。
まとめ:年収の高さは「堅実さ」に直結しない
「高所得層=資産運用やポイント活用に積極的」というイメージは、同じ20代の中で比べても必ずしも成り立たないことが今回のデータから見えてきました。むしろ20代高所得層は、同世代の平均よりもキャッシュレス決済や金融サービスへの接触が低く、その代わりに趣味性の高いジャンルへ選択的にお金を使っている様子がうかがえます。加えて、「既婚で子供がいる」人の比率が同世代の5倍を超えるなど、属性面でも「20代全体」とは異なる顔ぶれであることも分かりました。
高所得層向けの商品・サービスを企画する際、年収という条件だけで対象者像を一括りにせず、同世代の中での違いに目を向けることで、これまで見えていなかった訴求軸が見つかるのではないでしょうか。






株式会社ヴァリューズ データアナリスト
関西出身 ENFP-AC
2023年に新卒入社後、ヴァリューズのWEBログ分析に携わっています。
好きな食べ物はハンバーグとアップルパイです。