『AI彼女・彼氏』急拡大で200万人超が利用！注目アプリ5選と将来性

まずは、AIの友達や彼女・彼氏を作ることに特化したチャットアプリ（以下「AI彼女・彼氏アプリ」）の現状を分析します。

今回は、「iN2X」「Days AI」「SynClub」「Cotomo」「Castalk」の5アプリを対象に、株式会社ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit（ドックピット）」を用いて分析します。

最初に、ユーザー数の推移を見ていきましょう。

どのアプリもこの1年でユーザー数を伸ばしており、注目度の高さがうかがえます。

また、複数のアプリがユーザー数100万人を突破し、iN2Xはサービス開始から1年足らずで200万人を突破しています。

AI彼女・彼氏アプリではどんな体験ができるのでしょうか。各アプリの機能を比較します。

iN2X（インツーエックス）は、生成したAIキャラクター（AIキャラ）とインタラクティブな交流を楽しめます。

このアプリには大きく「物語」と「対話」の2つの楽しみ方があります。

「物語」は、自分の返答によって展開が無数に変化し、没入感ある物語を作成・体験できます。「対話」は、チャットを通じてAIキャラと会話を楽しめます。

キャラ生成数や物語の返信数に制限がありますが、無料でも対話は無制限で、十分に楽しむことができます。

Days AIは、自分だけのAIキャラ「うちの子」を作成し、イラスト生成やチャットを楽しめます。

人気のテーマを選択するなど、簡単にうちの子のイラストを生成できます。イラストはSNSのように投稿し、いいねやコメントをもらうことも可能です。

さらに、うちの子や他のユーザーが作成したキャラとのチャットも楽しめます。

チャット回数、うちの子作成数、イラスト生成数などに制限はありますが、無料でも気軽に楽しむことができます。

SynClub（シンクラブ）は、作成したAIキャラとのチャットや物語、画像生成を楽しめます。

特徴的な機能として、AIキャラの隠れた心情を覗ける「心へダイブ」や、複数のAIキャラとのグループチャットがあります。

他にも、インタラクティブな物語体験、画像やテキストをもとにした画像生成、SNSのように会話内容を投稿するといった楽しみ方もあります。

無料でもチャットや物語は無制限に楽しめます。心へダイブやグループチャット、キャラ生成などは制限がありますが、有料プランでは上限が引き上げられ、音声通話も可能になります。

Cotomo（コトモ）は、AIキャラとの日常的なおしゃべりを楽しめます。

AIキャラは属性や性格、話し方などを設定でき、4種類の中から好きな声を選べます。音声通話がメインですが、チャットも楽しめます。

音声通話、チャット、全ユーザー公開のキャラ作成は無制限で、無料でもほぼ制限なく利用できます。

さらに、アプリ内課金で特別な声優ボイスや、自分だけの非公開キャラの作成枠を追加できます。

Castalk（キャストーク）は、搭載されているAIアバターとの音声通話やビデオ通話などリアルな交流を楽しめます。

現在は女性4人・男性1人のアバターが利用でき、篠崎愛さんや森咲智美さんといった芸能人のAIアバターもあります。

チャットは無料で無制限に利用できますが、音声・ビデオ通話は有料プランへの加入が必要です。

さらに、アプリ内課金で「一緒に歩く」といった共同体験を楽しむ「Together」などの追加機能を利用できます。

次に各アプリのユーザー層について分析します。まずは性別から見ていきます。

iN2X、Days AI、SynClub、Cotomoは、男女比に大きな偏りはありません。好きなキャラを自由に作成できるため、性別問わず利用されていると考えられます。

一方、Castalkは男性の割合が高くなっています。これは、搭載されているアバターの多くが女性であることが一因と考えられます。

ユーザーの年代についても見ていきましょう。

iN2X、Days AI、SynClub、Cotomoは、若年層の割合が高くなっています。2次元キャラがメインのこれらのアプリは、マンガやアニメへの関心が高い若年層に人気があるようです。一方、中高年層は2次元キャラとの交流に抵抗を感じているのかもしれません。

一方、Castalkは年代に大きな偏りなく利用されていました。リアルな人間らしさを感じられるCastalkは、年齢問わずに利用されやすいと考えられます。

次に、AI彼女・彼氏アプリの利用動機を、ユーザーの関心アプリから分析します。

ゲーム・マンガ・イラストなど2次元キャラとの関りが強いアプリが多く見られます。AIを使って自分好みのキャラやイラスト、物語を作りたいというニーズからiN2Xを利用しているのかもしれません。

また、他のAIチャットアプリへの関心も高く、ChatGPTなど他のアプリを利用した後、AIキャラとのチャットに特化したiN2Xを利用し始めた可能性も考えられます。

iN2Xユーザーの関心アプリと似ており、iN2X同様、2次元キャラ関連の趣味や、他のAIチャットアプリをきっかけに利用されていると考えられます。

ゲーム・イラスト関連アプリに比べ、AIチャット関連アプリが多く見られます。

iN2XやDays AIはキャラやイラスト生成のニーズが強いのに対し、SynClubはキャラとのコミュニケーションニーズが強いと考えられます。

画像・動画SNS、音楽アプリ、動画配信アプリなど、キャラクターではない、人間がメインのエンタメアプリへの関心が高いことがわかります。

2次元キャラとの交流を強く求めているというよりは、エンタメとしてのコミュニケーションを求めていると推測されます。

ライブ配信アプリ「Pococha」に高い関心を持っています。不特定多数に向けた配信よりも、自分だけと交流できる点に魅力を感じて利用を始めたのかもしれません。

今後、AI彼女・彼氏アプリのユーザー数はどこまで伸びるのでしょうか。

利用目的を踏まえ、同じニーズを満たす他アプリのユーザー数を参考に将来性を探っていきます。

AI彼女・彼氏アプリの将来を予測するにあたって、まずPocochaとLINEマンガのユーザー数を参考にします。

AI彼女・彼氏アプリで、3次元の推し活ニーズを満たせばライブ配信アプリ「Pococha」と同等の約650万人に達する見込みがありそうです。

マンガやアニメなど2次元キャラを好む層のニーズを満たせば、マンガアプリ「LINEマンガ」と同規模の約4,000万人まで拡大するかもしれません。

LIVE配信もマンガもこれまでは「大衆向け」に作成されたコンテンツで、みんなで同じものを共有するという触れあい方でした。AI彼女・彼氏アプリでは、「一人ひとり」に合わせたコミュニケーションという面でLIVE配信より選ばれやすい可能性があります。また、シナリオを作り、物語に参加しながら、同じ設定でも無数の展開を楽しめるという自由度の高さから、マンガよりAI彼女・彼氏アプリが選ばれるケースが出てくる可能性もあります。

「コミュニケーションのニーズ」は大きいもので、遠い未来にAI彼女・彼氏アプリがここを満たせるとすると、さらにユーザー数が拡大していく可能性があります。

恋愛的なコミュニケーションのニーズを満たせばマッチングアプリ「Pairs」と同等の約350万人、AIと会話する・悩みを相談するというニーズを満たせば「ChatGPT」と同等の約1,600万人まで拡大する余地があると考えられます。

AIの友達や彼女・彼氏を持ち、日常的に会話することが一般化すれば、「LINE」のような1億人規模の市場になる可能性も秘めているでしょう。

いずれにせよ、AI彼女・彼氏アプリは多様なニーズに支えられ、今後も需要が拡大すると見込まれます。ChatGPTの登場により、AIとの会話はすでに日常化しつつあり、AIの友人や彼女・彼氏があたりまえになる未来もそう遠くはないかもしれません。

その一方で、AIとのやり取りが日常化すると、現実の人間関係に負担や物足りなさを感じるようになる懸念があります。AIの友達や彼女・彼氏との向き合い方について、社会全体で考えることが今後の課題となりそうです。