【調査背景】
ネットユーザーが日常的に利用する検索エンジン(Google、Yahoo!等)にAIが標準搭載され、「要約」や「概要」が優先的に表示されるようになりました。これにより、ユーザーはAIの回答だけで満足してしまい、企業や個人が発信するコンテンツは直接的に読まれなくなる「ゼロクリック問題」が深刻化しています。
本調査を共同で行ったヴァリューズは、国内最大級のWeb行動ログデータに基づき、AI検索・生成AIサービスの利用実態を可視化しました。一方、noteはプラットフォーム内のデータを用いて、どのようなコンテンツがAI経由の流入(以下、AI流入)を獲得しているかを分析しました。これらのデータと知見を掛け合わせることで「AIに引用され、さらにユーザーが実際に訪問する」コンテンツの傾向と、そうしたコンテンツが集まる場の構造を明らかにします。そして、AI検索時代に事業会社やブランドはどのように対応すべきかの道筋を示すことを目的としています。
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【調査の主な結果とポイント】
- 検索行動は減っていないが、「ゼロクリック」が半数超に加速(ヴァリューズ)
- noteは、生成AI経由流入の期待値を大きく上回る「特異な存在」(ヴァリューズ)
- AIに好まれ、人に選ばれるコンテンツの「2つの特徴」(note)
- SEOとは異なるAI検索時代の読み方(note)
- AI検索時代に人がコンテンツに訪れる鍵は「トピックに関する信頼と評判を得ること」(ヴァリューズ)
ヴァリューズが保有する国内最大規模のWeb行動ログデータとnoteのプラットフォーム内データを掛け合わせた分析から、以下の点が明らかになりました。
■1. 検索行動は減っていないが、「ゼロクリック」が半数超に加速
AI検索時代のコンテンツマーケティングの在り方を問う前に、そもそも【検索】という行為自体において、「検索離れ」「Google離れ」は起きているのでしょうか。ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」にて調査したところ、2025年現在、「検索離れ」は起きていないと言える状況であることがわかりました。
【図1】Google、Yahoo! Japan、Bingいずれかの検索エンジンの検索結果画面(Serps)に接触したユーザーの人数推移(Dockpit調べ)
■集計データの概要
集計期間:2023年10月~2025年9月
調査対象: Google、Yahoo! Japan、Bingいずれかの検索エンジンの検索結果画面(Serps)に接触したユーザー
デバイス:PC&スマートフォン
調査元データ:株式会社ヴァリューズ Web行動ログデータ
しかし、ヴァリューズが推計する2025年9月におけるGoogle上の検索セッション数(約61.8億回)に対し、サイトへの流入セッション数は36.5%(22.6億回)に留まり、いわゆる「ゼロクリック」(検索をするが、サイトに訪れない)が63.5%に達しています。これは、2025年より登場したGoogleのAI Overviews(AIによる概要)やAIモードの機能により加速しています。
■2. noteは、生成AI経由流入の期待値を大きく上回る「特異な存在」
本調査では、一般的なサイトにおいて、生成AI経由の流入と検索エンジン経由の流入には「検索エンジンからの流入が多いサイトほど、生成AI経由流入も多くなる」と正の相関関係が成り立つという仮説を改めて検証しました。
実際の行動ログを用いて実証した調査結果が【図2】です。ここでいう生成AI経由流入とは、ChatGPT、Perplexity、Geminiなどの生成AIツールが、質問応答や要約の際に参照・提示するURLを起点とした訪問行動のことと定義します(当該データにはGoogleの検索結果上に表示される「AIによる概要(AI Overviews)」や「AIモード」は含みません)。
調査の結果、検索流入と生成AI経由流入の間に正の相関関係は認められましたが、【図2】の通り、noteはその相関線から明確に外れ、検索流入から想定される生成AI流入の期待値を約4倍大きく上回る結果を示しました。これは、noteが他のサイトに比べて「AIに引用されやすく、さらにユーザーが訪問しやすい」という二段階の優位性を保持していることを示唆しています。
【図2】検索エンジン経由流入 vs 生成AI経由流入の相関関係(2025年1月~9月)
■集計データの概要
集計期間:2025年1月~9月
調査対象:51のカテゴリーに含まれる2791サイト
デバイス:PC&スマートフォン
調査元データ:株式会社ヴァリューズ Web行動ログデータ
■3. AIに好まれ、人に選ばれるコンテンツの「2つの特徴」
note内のデータ分析により、AI経由で流入が増加した記事(AI流入は2025年3月~8月の5ヶ月で約3倍【図3】)には、「要約の先にある価値」を誘引する以下の特徴がありました。
(1)書き手の経験や専門性に裏打ちされた、深堀り記事であること
AI流入の多い記事の平均文字数は約6,000字で、note全体の平均を大きく上回ります。書き手の経験や専門性にもとづいた深掘り記事は、表面的な情報では得られない具体的な事例や実践的な知見が含まれており、AIの回答の情報源として引用されやすいと考えられます。
(2)構造が明確であること
AI流入が上位の記事では、目次利用率48%、見出し利用率89%と、同時期(2025年9月)に投稿された記事全体に比べても明らかに高い水準であり、AIにとって「理解しやすい文書構造」を持ちます。
これらは、AIが「情報密度の高い文章」を好む傾向とも一致しており、noteが提供する「見出し」「目次」による段落整理の仕組みが、結果として、AIにとっても「理解しやすい文書構造」を生み出していると考えられます。
また、AI流入の約4割は半年以上前の記事であり、AIは最新情報だけでなく、普遍的な情報を求めていることがわかり、「過去の資産」がAI検索時代にも活きていることが確認されました。
【図3】AI経由のnoteへの流入数トレンド_サービス別(2025年1月~8月)
■集計データの概要
集計期間:2025年1月~8月
デバイス:PC&スマートフォン
調査元データ:note株式会社 アクセス解析データ
■4. SEOとは異なるAI検索時代の読み方
noteはMAU7,359万(2025年2月時点)を超える大規模プラットフォームであり、検索エンジンからも高く評価されています。しかし、AI流入上位の記事を個別に見ると【図4】、検索流入とAI流入の相関係数は全体で0.2と高いわけではなく、AI流入と検索流入がそれぞれ独立した動きとなっていることが判明しました。
この低い相関は、SEOで上位に表示されていなくても、内容によってはAI経由で読者に届き、訪問されるという新しい可能性を示しています。
一方、旅行・グルメのカテゴリーでは、検索流入とAI流入の相関係数が0.44と、他のカテゴリーに比べてやや高い値を示しました。検索とAIの双方で流入しているジャンルと言えます。
※MAU:Monthly Active Users(月間アクティブユーザー)の略であり、非会員も含め「note」に月1回以上アクセスしたアクティブブラウザの合計数
【図4】noteへのAI流入数と検索流入数の相関_カテゴリー別(2025年8月)
■集計データの概要
集計期間:2025年8月
デバイス:PC&スマートフォン
調査元データ:note株式会社 アクセス解析データ
■5. AI検索時代に人がコンテンツに訪れる鍵は「トピックに関する信頼と評判を得ること」
本共同調査を通して、AI検索時代においても、「要約では足りない情報」が求められる領域が存在しており、ユーザーは自ら一次情報を確かめに訪れる行動を発生させていることが明らかになりました。これはnoteが訪問されやすい理由に通じるものと考察されます。
本共同調査の結果を踏まえ、企業・ブランドに求められるのは、AIが代替する「要約」型のコンテンツ制作ではなく、AIの得意を活かした新しい戦略、すなわち【シン・コンテンツマーケティング】です 。
目指すべきは「トピックについて様々な意見や事例が語られる場の構築」と言えます。
具体的には、立場の異なる発信者が同一トピックを語る「多声性の設計」、テーマとしての整合性が保たれている「一貫性の維持」、最新の情報が集まっている「更新性の担保」を通じて、消費者の信認を獲得する「トピック・ハブ」を形成することが重要です。
これらの設計こそが、AIからは「複数の独立ソースが整合的に収束している信頼領域」として認識され、人からは「要約されてもなお訪れる理由」を持つ場として選ばれるための新しい条件となることを、提言します。
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