スピーカー紹介
株式会社電通
第8マーケティング局
CXコンサルティング1部
シニア統合マーケティングディレクター
福田 博史氏
株式会社電通
スタートアップグロースパートナーズ
エクスペリエンスデザイン
プロデュース部プロデューサー
高井 俊輔氏
株式会社TimeTree
執行役員
マーケティングソリューション本部
本部長
新保 周氏
株式会社ヴァリューズ
データマーケティング局
コンサルティングG
マネジャー
松前 薫
TimeTreeの紹介
株式会社TimeTree 新保 周氏(以下、新保):TimeTreeは、家族や恋人など身近なグループでスケジュールを共有するアプリで、グローバルで6,500万人の皆様にご利用いただいています。
我々の価値は、ユーザーの「予定データ」にあると考えています。過去10年で蓄積した120億件の過去の予定データと、毎月グローバルで登録される2.5億件の未来の予定データ。TimeTreeでは、これらを活かして「未来の行動」に合わせた広告配信や、新しいインサイト発見が可能です。
図:TimeTree
予定データの価値と事例:プロポーズ
株式会社電通 福田 博史氏(以下、福田):予定データの価値をイメージしていただくため、「プロポーズ」を例にお話しします。プロポーズという人生の一大イベントを起点に、家族の未来のジャーニーを考えてみます。
皆さんに質問ですが、プロポーズの何日後に「入籍」という予定があると思いますか?
答えは、平均「79日後」です。これはTimeTreeの膨大なデータから導き出した平均値です。さらに、入籍以外にも、顔合わせ、新居への引っ越し、結婚式、新婚旅行など、様々な関連イベントが、プロポーズから平均何日後に行われているかが分かります。
このように、ユーザーが「いつ」「何をしたか」を人生レベルで具体的に導き出せるのが、TimeTreeのユニークな価値です。
図:プロポーズを起点とした様々な未来の予定の登録日
予定から行動への転換率
新保:「予定と実際の行動は違うのでは?」という疑問もあるかと思います。そこで、昨年、某国内大手テーマパークに行く予定を入れたユーザーが、実際に来場したかを調査しました。結果、予定から行動への転換率は94.5%でした。30日後の予定であっても、行動に移される確率が非常に高いことが分かります。
図:予定から行動への転換率
福田:TimeTreeは、未来に起こるであろう確度の高い行動に基づいて、広告の配信や提案が可能なので、全く新しいメディアアプローチができると言えますね。
自動車購入における予定データと検索データの活用
新保:では、具体的な分析事例として「自動車」を取り上げます。「試乗予約」と「納車」という予定を軸に深掘りしました。
まず、試乗日を起点としたカスタマージャーニーを見てみると、平均49日後に納車していることが分かります。
図:試乗予約を基点とした車購入ジャーニー
このジャーニーから3つの仮説が見えてきました。
1. 買い替えのきっかけ:オイル交換や修理などでディーラーに立ち寄った際、展示されている新車を見て気になり、試乗予約に至る。
2. ライフイベントとの連動:引っ越しや子どもの誕生といったライフイベントが、車の購入のきっかけになっている。
3. 購入決定の速さ:試乗日から平均7日で車の購入を決定している。
福田:何日後、何日前という具体的な日数が分かるのは、予定データならではで非常に面白いですね。ちなみに、試乗の平均回数は分かりますか?
新保:はい、調べたところ平均1.4回でした。思ったより少なく、ほとんどの人が1回か2回の試乗で決めているようです。
図:試乗予約の回数
福田:納車の時間帯も面白いデータが出ていました。納車予定の時刻を見ると、午前10時に納車する人が3人に1人、10時台と11時台で全体の約50%を占めていました。これは「早く新しい車に乗りたい」「明るいうちに運転に慣れたい」といったインサイトの現れかもしれません。
図:納車の時間帯
検索データとの連携で顧客理解を深める
新保:しかし、予定データだけでは、ユーザーが試乗を決める前に、どのような興味関心を持っていたかは分かりません。そこを補完するのが、ヴァリューズさんの検索データです。検索データを使えば、顧客理解の解像度を上げられると考えています。
例えば、ヴァリューズさんの「Perscope(ペルスコープ)」のストーリーという機能を使うと、試乗を検索している人がどんなペルソナか、ウェブ行動からクイックに把握できます。具体的には、ファミリーカーとして人気のフリードとシエンタを比較検討している様子や、「出産手当金」というキーワードから、出産のタイミングで車を検討している動きが見て取れます。
図:男性・子どもあり・「試乗」検索ユーザーの特徴
株式会社ヴァリューズ 松前 薫(以下、松前):非常に有効に活用していただいていますね。ヴァリューズの検索データは、属性情報をしっかり取れるのが強みです。TimeTreeさんは、性別や子どもの有無などの属性ごとに、検討する車や購入のきっかけを解像度高く分析して、ソリューションに落とし込んでいるのが素晴らしいですね。
新保:さらに、試乗を検索する前後に、どんなキーワードを検索しているかも時系列で見ることができます。面白いのは、最初は「中古」で検索している人が、次第に「新型」「燃費」と検索し、新車を検討し始める動きです。
また、あるユーザーはトヨタのシエンタを検索した後、ホンダのフリード、日産のセレナと検索しており、比較検討のプロセスが手に取るように分かります。
図:20代~40代子どもありユーザーの「試乗」検索の前後の検索行動
松前:検索期間は、前後15日、30日、60日のいずれかを設定できます。車は比較検討の期間が長いですが、検討期間が短い商材であれば、期間を短く設定してみると、関連行動がより深く見られると思います。
予定データと検索データの合わせ技から生まれた発見
新保:今回、ディスカッションする中で面白い発見がありました。「納車」というキーワードと合わせて検索されている言葉を調べると、「大安」「仏滅」といった「お日柄」に関するワードが上位に来ていたのです。
図:「納車」検索の掛け合わせワード
そこでTimeTreeの予定データを調べると、納車予定で最も多い六曜は「大安」で、最も少ない「仏滅」よりも、納車が64%多いことが分かりました。これは明らかに、納車日にお日柄を気にしている人が多いことを示しています。
図:「納車」予定と六曜の関係
福田:検索データと予定データから仮説を立てて導き出した、非常に面白いデータですね。
松前:「Dockpit(ドックピット)」の検索データは、あくまでも検索の情報なので、ユーザーが本当に大安に納車しているのかまでは分かりません。ですが、予定データと掛け合わせることで、実際に納車をしていることが検証できたので、面白いなと思いました。
まとめと今後の展望
新保:検索データで興味関心の推移や具体的な人物像を捉え、予定データで確度の高い未来の行動を捉える。この2つを掛け合わせることで、顧客理解の解像度が格段に上がります。
株式会社電通 高井 俊輔氏(以下、高井):予定と検索データを活用すると、これまで想像もつかなかったようなマーケティングの未来、例えば「風が吹けば桶屋が儲かる」といった因果関係を炙り出せるかもしれません。
結果的に、顧客が本当に求めている情報を提供できるようになると思うのですが、実現のために取り組んでいることはあるのでしょうか?
新保:今後は、検索データと予定データをデータクリーンルームなどでセキュアに連携させることで、より高精度なジャーニー分析や来場者予測、競合分析が可能になると期待しています。
図:予定データと検索データの連携する未来
高井:データから分かる可能性をもとに、新たなマーケティングプランを考えられるのは、夢がありますね。具体的な事例を教えていただけますか?
新保:高精度なジャーニー分析として、旅行が挙げられます。旅行にあたり、顧客がどんなことに興味関心を持っているのかは、予定データでは分かりません。そこで、ヴァリューズさんの検索データが活用できると考えています。
高井:旅行予定のデータと検索データを連携させれば、旅行の1ヶ月前にクレジットカードの広告を、旅行後にはヘルスケア関連の広告を配信するといった、よりパーソナライズされたコミュニケーションが実現できますね。
図:「旅行」予定データと検索データの連携例
我々電通も、お客様のグロースパートナーとして、こうした新しいマーケティングアイデアを、TimeTreeさんと共にプロデュースしていければと思います。
松前:本日はありがとうございました。





2026年4月に入社予定の大学院修士課程1年生です。大学では分子生物学系の研究に取り組んでいます。