スピーカー/会社紹介
株式会社読売新聞東京本社 メディア局データ分析担当 西嶌 徹氏
読売新聞は、東京、大阪、福岡に本社を置く全国紙。報道部門を中心に、事業運営、デジタルサービスなど多岐にわたる業務を展開。
読売新聞グループ本社の傘下には、読売巨人軍、中央公論新社、よみうりランドなど約140の会社・団体があり、総合メディア集団を形成している。
「自社の立ち位置が分からない」という危機感
株式会社読売新聞 西嶌 徹氏(以下、西嶌氏):読売新聞というと、紙の新聞のイメージが強いかと思いますが、今回はニュースサイトのデータ活用という観点でお話しします。
私は現在、読売新聞オンラインを中心に、データ分析と改善を担当しています。具体的には、記事は読まれているか、ユーザーはどこから来ているのか等を分析し、サイトを成長させることがミッションです。
Dockpit導入の背景には、2020年代初頭に抱えていた「自社の立ち位置が分からない」という課題がありました。
当時は、前月比や前年同月比、あるいは「昨年の箱根駅伝と比べてどうか」といった自社の過去データとの比較だけで一喜一憂していました。しかし、それだけでは「自社が本当に成長しているのか」それとも「市場全体のトレンドに乗っているだけなのか」が見えてきません。
競合他社も同じように伸びているのか、あるいは自社だけが落ちているのか。そこが分からなければ適切な打ち手は打てません。他社比較の重要性を痛感し、Dockpitの導入を決めました。主な目的は以下の3点です。
・競合の集客状況の把握
・PDCAサイクルの確立
・データドリブンな文化の醸成
自社データのみでの分析に限界を感じ、Dockpit導入へ
データ文化を社内に浸透させた2つの仕掛け
西嶌氏:Dockpitの活用とデータドリブンな文化を社内に浸透させるために取り組んだことは、2点あります。ポイントは使ってもらおうと働きかけるのではなく、「Dockpitを使わないと出せない数字」をあえて業務に組み込むアプローチを取ること。
なぜならこうしたツールは、使う人と使わない人が分かれがちだからです。属人的になると、担当者の異動や退職とともに数字の蓄積や分析が止まってしまう。それを避けたいと考えました。
➀ 業務フローに「比較データ」を必須化する
例えば東京都知事選挙があれば、必ず次の月には他社と比較してどうだったかという話になります。振り返りが求められるテーマについては、あらかじめDockpitを使って比較レポートを作成し、メンバーに分析をお願いしました。
さらに関連会社から研修で来た若手メンバーにも分析レポート作成を任せたところ、ビジュアル的に工夫された資料を作ってくれ、それが自然と社内で拡散されるという好循環も生まれました。
➁ステークホルダーとの共通言語にする
数字で語る文化を浸透させるため、選挙や大型スポーツイベントの際にDockpitで分析した競合他社との比較レポートを、幹部メンバーとの打ち合わせでも積極的に共有するようにしました。すると「これはいいね」とポジティブに受け止められ、徐々に「今回はどうなっている?」と聞かれるようになったのです。
「ツールを使わざるを得ない状況」を設計し、組織への浸透を図った
西嶌氏:この段階になると、Dockpitは単なるツールではなく「組織の資産」になってきたと手ごたえを感じました。もちろん一度で伝わるわけではありませんが、繰り返し取り組むことを大切にしています。
現場と幹部層を繋ぐ「データ補正」の工夫
西嶌氏:データを共有する際、社内の納得感を得るために工夫したのが、Dockpitの数値を自社の実データに近づけるための加工です。
Dockpitはパネル調査データであるため、自社の実数値とは乖離が生じます。私たちは「競合との相対比較」や「時系列のトレンド」を見る目的で使っていますが、他部署や幹部層は自社の月間PV数などの実数を肌感覚で持っています。 そのため、そのままの数値を出すと「そもそも数字がおかしくないか?」という違和感が先に立ち、本来議論すべき「比較分析」の話に進めないことがありました。
そこで、自社の実データをもとにDockpitの数値から係数(倍率)を割り出し、自社データ同様、他社データにも適用して数値を補正しました。
データの「違和感」を排除し、本質的な議論をするための工夫
西嶌氏:これにより数値の違和感に引きずられることなく、競合との比較議論に集中できるようになりました。さらに、PCとスマートフォンでは乖離率が異なることに気づき、現在はデバイスごとに補正を行うことで、より精度の高い比較分析を実現しています。
競合比較で見えた「Webプッシュ」の重要性
西嶌氏:実際に、競合比較から具体的な改善に繋がった事例をご紹介します。
ある時、競合他社の方がセッション数で当社を上回っていることがありました。その差がどこにあるのかをDockpitで深掘りしたところ、その競合サイトは「ノーリファラー(参照元なし)」からの流入が極端に多いことに気づきました。また、その多くが特定のランディングページから流入していることも分かりました。
分析ではExcelを使用し、Power Queryというデータ処理ツールを使って、URLのクエリパラメータを解析しています。キーと値を切り分けて集計し、ピボットテーブルで流入要因の傾向を可視化しました。
その結果、値の中には「mail」「article」「webpush」といった単語が複数あることが分かったのです。特にwebpushからの流入が多かったため再集計すると、かなりの割合を占めていることが明確になりました。
URLパラメータの解析から、競合の流入施策を特定
西嶌氏:この分析により、競合が高い数値を叩き出している要因の一つが「Webプッシュ通知」であると特定できました。これが根拠となり、自社でもWebプッシュからの流入施策を強化すべきだという具体的なアクションに繋がり、結果としてセッション数の増加に成功しました。
Dockpit 導入前後の変化
西嶌氏:このようにDockpitの活用を推進した結果、以下のような変化が生まれました。
・競合集客との差を構造的に把握できるようになった
・改善のPDCAが回る仕組み化ができた
・「データで語る文化」が定着した
かつてはPV数といった大きな数字を見るだけで、自社の状況を判断していました。しかし、PV数を伸ばしたいと考えたとき、その内訳や背景を理解しなければ具体的な打ち手は見えてきません。
Dockpitを活用する中で、参照元チャネルや流入構造まで確認できるようになり、競合他社がどこからユーザーを集めているのかを比較できるようになりました。その過程で、ノーリファラ―の多さや、競合サイトに比べて検索流入数が大きく劣っているという事実にも気づきました。
当時はベストパフォーマンスと考えていたことが、実際にDockpitで見たところ、競合と比較すると、検索流入において大きな差があることが分かりました。SEOの重要性は理解していたものの、改めて本腰を入れる必要性を認識し改善を重ねた結果、現在では競合と肩を並べる水準に近づくことができています。
Dockpit活用で客観的なデータに基づく改善が可能に
西嶌氏:現在は様々な観点から分析するようになり、単にPV数を増やすのではなく、「自然検索をどれぐらい伸ばすのか」「外部配信記事からどの程度自社サイトへ送客できているか」など、より具体的な目標設定と施策検討が可能になりました。
今後は、新規流入を増やすだけでなく、訪れたユーザーにリピートしてもらうという次の課題にも、本気で向き合っていく必要があると考えています。またこうした取り組みを通じて、数字を共通言語にした議論が社内でできるようになりました。その土台をつくるうえで、Dockpitは大きな役割を果たしています。
まとめ
PV数の他社比較ができず、自社の相対的な評価ができないという課題感からDockpitを導入し、競合との比較分析をもとに改善施策を推進されていった活用事例をご紹介しました。
Dockpitは直感的なUIと、視覚化されたデータにより、自社だけでなく競合や市場全体の動きを素早く把握し、次なるマーケティング戦略の立案をサポートします。






大学卒業後、損害保険会社を経て、通販雑誌・ECサイトのMD、編集、事業企画に従事。その後独立して、国家資格キャリアコンサルタントを取得。自身のキャリアを通じて、一人一人のポテンシャルを引き出すことが組織の可能性に繋がることを実感したことから、現在はマーケティングとキャリア・人材を軸に、人と組織の可能性を最大化できるよう支援をしています。