なぜ「本部の戦略」が「営業現場」に響かないのか。日清食品がAIインタビューで見つけた、多様性の未来

なぜ「本部の戦略」が「営業現場」に響かないのか。日清食品がAIインタビューで見つけた、多様性の未来

「チキンラーメン」や「カップヌードル」など、数々の国民的ブランドを持つ日清食品株式会社。その事業統括本部 戦略企画部では、全社売上の目標達成に向けた戦略立案を担っています。しかし、本部で描く戦略と、最前線で動く営業現場の間には、どうしても埋められない「感覚のズレ」が存在していました。今回は、同社の最上氏に、プロジェクトの背景から、AIを活用したリサーチプラットフォーム「NautsHub(ノーツハブ)」によって可視化された組織の課題、そして今後の展望についてお話を伺いました。


数字だけでは見えない、現場の「温度感」

株式会社ヴァリューズ 若林(以下、若林):本日はお時間をいただきありがとうございます。日清食品様には「NautsHub」をご活用いただいておりますが、最初に、最上様の部署が担っている役割や、普段どのような業務に取り組まれているかをお聞かせください。

日清食品株式会社 最上氏(以下、最上): 私たちが所属する事業統括本部 戦略企画部は、市場や消費者の動向を捉え、セールス戦略や具体的な施策を立案する部署です。単に数字を管理するだけでなく、「どうすれば売れるか」という“売り方”を考え、それを営業現場と連携して実行に移す役割を担っています。
最終的なKGIは、日清食品全体の事業計画の達成です。そのために、得意先である小売店様や卸店様の課題解決を通じて、売上目標を達成することをKPIとしています。

日清食品株式会社 事業部統括本部 戦略企画部 課長 最上佳奈

日清食品株式会社 事業部統括本部 戦略企画部 課長 最上佳奈(Mogami Kana)
神奈川県出身。2009年日清食品ホールディングス株式会社入社。
宣伝部、マーケティング部、営業部を歴任し、自社ECサイトの立ち上げやPB商品の開発・販売に従事。現部署では、営業組織における戦略立案やセールスイネーブルメント支援を担当。また、生成AIを活用した営業組織の効率化・強化を推進している。

若林:今回のプロジェクトを実施する前、事業や業務においてどのような課題を感じていらっしゃいましたか?具体的なエピソードを交えて教えてください。

株式会社ヴァリューズ ソリューション局 DX推進支援グループ 若林  広樹新卒でソフトウェアベンダーに入社しBIツールを使ったシステム構築やデータ分析の他、顧客向けのトレーニングやセミナー講師を担当。その後、WEB系事業会社のWEBマーケティングの担当として新規顧客獲得や広告運用の業務を担当した後ヴァリューズに入社。現在はお客様が持っているデータを活用してマーケティングの支援を行う他、WEBマーケティングデータとBIツール「Tableau」を組み合わせた新たなサービスの開発にも従事。本プロジェクトの統括として携わる。

株式会社ヴァリューズ ソリューション局
DX推進支援グループ 若林 広樹

新卒でソフトウェアベンダーに入社し、その後、WEB系事業会社のWEBマーケティングの担当として新規顧客獲得や広告運用の業務を担当した後ヴァリューズに入社。現在はお客様が持っているデータを活用してマーケティングの支援を行う他、WEBマーケティングデータとBIツール「Tableau」を組み合わせた新たなサービスの開発にも従事。本プロジェクトのヴァリューズ側の統括として携わる。

最上:戦略企画部では、市場データを用いてトレンドを分析し、販売戦略を立てています。しかし、実際に商品を売る現場の営業担当者や、その先にいるお客様が抱えている「定性的な課題」や「温度感」までは、現状のデータだけでは十分に掴みきれていませんでした。

結果として、本部が立案した戦略と、現場の実行フェーズにおいて乖離(ギャップ)が生まれてしまい、施策の実行力や効果が薄くなっていることが大きな課題となっていました。

営業担当の「負担過多」とアンケートの「浅さ」をNautsHubで解決

若林:弊社のサービスをご検討いただく前に、何か別の方法を試されたり、検討されたりしたことはあったのでしょうか?

最上: はい、いくつか試しました。例えば、Outlookの日報や営業メモを活用して現場の声を拾おうとしましたが、入力する営業担当者の負担が大きく、徹底するのが難しい状況でした。
また、従来の選択式アンケートでは「はい/いいえ」などの表面的な回答しか得られず、深掘りができません。かといって、一人ひとりにヒアリング(インタビュー)を行うには、時間と工数がかかりすぎて現実的ではありませんでした。

若林:そうしたなかで、最終的に「NautsHub」を選んでいただいた理由をお聞かせください。

最上:ヴァリューズさんとは元々通常のアンケート調査でお取引がありましたが、今回ご提案いただいた「NautsHub」が、私たちの抱えるジレンマを解消してくれると感じたためです。弊社の営業担当の「リアルで具体的な声」を「効率的に」集める手段になるとの期待がありました。

生活者の声を効率的に集め、企画案に変換するためのリサーチプラットフォーム「Nautshub(ノーツハブ)」。生成AIが聞き手になり、多数の生活者に自動でインタビューを実行してくれる。

若林:ありがとうございます。私自身も企画の段階からご一緒させていただきましたが、改めて今回のプロジェクトが最終的にどのような形にまとまったのか、概要を伺えますでしょうか?

最上:NautsHubを活用した、営業担当者へのヒアリングとそれを基にしたレポーティングを行いました。また、営業担当者が日常業務のなかで使える、ハイパフォーマーの取り組みや考え方を学習させた「AIbot」も作成しています。

若林:このプロジェクト、最初は貴社の社内人材育成のお話しがきっかけでしたよね。

最上:そうですね。当初は部内のメンバーの研修課題としてスタートしましたが、より全社的な課題解決につなげるべく、部門長への提案を行いました。

ヴァリューズさんには、単なるツールの提供だけでなく、企画段階から入っていただき、社内決裁のための提案サポートまで伴走していただきました。

若林:伴走サポートについても触れていただき光栄です。実際にプロジェクトを進めていく中で、弊社のサポート体制について特に印象に残っていることがあれば教えていただけますか?

最上:非常に丁寧に対応していただきました。特にスケジュール管理がしっかりしており、定例ミーティングには専門的な知見を持つスペシャリストの方にも参加いただけたので、安心してプロジェクトを進めることができました。

可視化されたハイパフォーマーの習慣と組織の多様性

若林:施策を通じて得られたアウトプットについて、率直なご感想をお聞かせいただけますか?

最上:これまで感覚的に捉えていた現場の課題が、明確な言語データとして裏付けられたことに満足しています。また、想定していなかった新たな気づきも発見できました。

若林:感覚的なものが言語化されたというのは、大きな一歩でしたね。具体的に、今回の調査でどういったことが見えてきたのか、お話しいただける範囲でお聞かせください。

最上:営業担当者をセグメント分けして分析したことで、行動パターンの違いが明確になりました。特に、「ハイパフォーマー(成果を出している営業担当者)」がどのような習慣を持っているのか、逆に「業務負荷が高いと感じている営業担当者」がどのような行動習慣をしているのかが可視化されました。

また今回、この知見を学習したAIbotも作成しているので、現場が時間を取られている業務や、見落としがちなタスクをAIで効率化するなどの施策につなげていきたいと考えています。

若林:当初想定されていた情報以外に、今回の施策がきっかけで生まれた良い変化や、副次的な効果はありましたか?

最上:当たり前のことですが、大きな気付きだったのは、「営業担当者の課題やキャリアビジョンは多様である」ということです。これまでの日清食品は新卒採用者が大半でしたが、直近5年程度で中途採用者が半数を超える状況にまでなり、大きく変化しています。これまで日清食品が良しとしていたロールモデルだけが正解ではなく、タイプ別にサポートや育成していく体制が必要だということがわかりました。

若林:多様な人材がいれば個別のケアも必要ですよね。そうした体制を実際に構築していくには、どのような取り組みをお考えですか?

最上:AIを使えば、個人のデータを蓄積し、パーソナライズされたフィードバックや支援が可能になります。そのため、今回のような調査は単発で終わらせるのではなく、継続していくことが非常に重要です。そして、蓄積された結果をどのように組織課題の解決に活用していくのかを考える必要があると感じています。

「現場を知る仕組み」が組織を変える

若林:自分と似た業務を行う方もしくは、似た課題を持つ方に、今回のプロジェクトを踏まえて、何かアドバイスはありますか。

最上:人手不足や人材育成、戦略の実行などは、どの企業も抱える、深いテーマだと思います。しかし、戦略部門や人事部門、そして現場が縦割りになっていると、なかなか解決しません。

いきなり「研修」などの手段に飛びつくのではなく、まずはしっかりと「現場を知る仕組み」を作ることが重要ではないでしょうか。本部と現場、人事が連携を深め、本当に現場が困っている課題感やボトルネックの解消に率先して取り組むことが大切であると考えています。

若林:おっしゃる通り、まず現場を知ることが出発点ですね。今回の案件を踏まえ、今後どのような未来や展望を描いていらっしゃいますか?

最上:かつての日清食品の営業は、一人で何でもこなす「スーパーセールス」が主流でしたが、今は業務範囲も広がり、求められるスキルも変化しています。これまでのやり方は通用しません。

AIは強力な武器ですが、AIを活かすには「良質なインプットデータ」が不可欠です。今後はIT部門とも連携しながら、現場・戦略・人事・ITが一体となってAIを活用できる体制を整えていきたいと考えています。ヴァリューズさんには、そのためのアドバイザリーとしても引き続き期待しています。

若林:ご期待いただき、ありがとうございます。弊社としても最大限の支援をさせていただきますので、引き続きよろしくお願いします。

取材協力:日清食品株式会社(https://www.nissin.com/jp/company/about/nissinfoods/

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マナミナ編集部員。コンテンツマーケ、SEO、SNS周りに携わっています。小説と音楽が好きです。

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