提案ラッシュで、なぜ人は消耗するのか
■見えない工数は作り直しから生まれる
現場を見ると、消耗の多くは新しい企画をゼロから生み出す時間ではありません。すでに一度作った資料を、探せずにもう一度作り直している時間が大きな割合を占めます。
たとえば、半年前に別の広告主に刺さった構成がフォルダのどこかに眠っている、隣のチームのエースが勝ったコンペ資料に今回使えるパーツがある。それでも、探すより作り直すほうが早い状態が続いている。こうしたケースは珍しくありません。
■勝ち筋が個人に眠る属人化のリスク
勝ち筋が個人のPCや記憶のなかにある限り、担当者の異動や離職のたびに、組織のナレッジは静かに目減りします。担当交代が日常の広告業界では、この目減りが組織の提案力をじわじわと削っていきます。
生成AIを入れても、提案資料が楽にならない理由
いまの時代、「それなら生成AIで速くしよう」と考える組織は少なくありません。ところが半年後には、「作る時間は減ったのに、総工数は変わらない」という声が出てきます。これは能力の問題ではなく、生成AIの得意・不得意の構造によるものです。
■AIが得意なのは「初速・発散・整形」
生成AIが強いのは、思考の土台作りと、書いた後の磨きです。たたき台の作成、切り口の洗い出し、文章のトーン調整では、人より速く動けます。
■AIが苦手なのは「決断・文脈・自社らしさ」
一方で、次の3点は生成AIが苦手とする領域です。何を一番伝えるかというキーメッセージの決断、その広告主や案件だけに響く固有の言い回し、そして過去に刺さった勝ち筋のそのままの活用です。そのため、AIが出した無難なたたき台を、最後は人が自社らしく、刺さるように直すことになります。
■AIが速くするのは工程の一部だけ
提案づくりは「探す・作る・直す」で成り立ちます。生成AIが速くするのは、このうち「作る」の一部だけです。探す時間と直す時間は残るため、総工数は思ったほど減りません。
なぜ、生成AIだけでは提案に差がつかないのか
生成AIが学習しているのは、誰でも手に入る公開情報です。そのため、AIに任せただけの提案は、どこかで見た無難な正解に近づいていきます。競合も同じAIを使えば、企画書は自然と似通うでしょう。
差がつく材料は、最初からAIの外側にあります。自社が過去に勝った企画書、広告主ごとの文脈、刺さった構成といった、社内にしか残っていない非公開の情報だけが独自性の源泉になります。言い換えると、これからの提案づくりでは「AIに何をさせるか」以上に、「AIにどの情報を渡すか」で差がつくのです。
提案資料を効率化する「3つの段取り」
繁忙期を乗り切る鍵は、手段をどれか一つに絞ることではありません。3つの役割を重ねる段取りにあります。
■STEP1:過去の勝ち資料を土台にする
最初の一歩は、過去に勝った企画書を、スライド1枚単位ですぐ引ける状態にしておくことです。ここでいう勝ち資料とは、受注に直結した、実績のある提案資料を指します。これが質と再現性の土台になります。
■STEP2:AIでたたき台・整形を加速する
土台のパーツをもとに、たたき台づくりや整形を生成AIで速めます。ゼロから作る時間を消すイメージです。
■STEP3:人が広告主の文脈で仕上げる
最後は、広告主の文脈や勝ち筋に合わせて人が磨きます。差別化と最終品質は、ここで決まります。
一から作るより、勝ったものを使い倒す。過去の勝ち資料を軸に、AIで加速し、人で仕上げる。この重ね方が、効率と品質を両立させる近道になります。
今日から始める、過去資料の再活用術
土台をつくるといっても、特別なツールは必要ありません。まずはコストをかけず、手元の工夫から始められます。
■フォルダを探せる形に整える
命名ルールと階層を決め、過去の提案を棚卸しします。「案件名_業種_テーマ_年月」のように、誰が見ても同じ場所にたどり着ける状態が理想です。
■勝ちスライドを抜き出して共有する
受注した提案から、よく効いたページを定期的に抜き出します。共有フォルダやテンプレート集にまとめておくと、チームで使い回せます。
■勝ちパターンを型として残す
刺さった構成や語り口、数字の見せ方を言葉にして残します。「この業種はこの順番」といった勝ち筋が、チームの共通知になります。
ただし、手動運用は続きにくい
一方で、手作業の仕組みだけでは長続きしないことも少なくありません。理由は主に3つです。
■更新の停滞
繁忙期に入ると棚卸しや抜き出しは後回しになり、フォルダはすぐに最新ではなくなります。
■担当者への依存
整理する人が変わると基準もぶれ、ルールは形骸化してやがて崩れます。
■探すコストの残存
そして資料が増えるほど「どこにあるか」の問題が再燃し、ファイル単位の管理では目当てのスライドにたどり着きにくくなります。
こうした手作業を仕組みで支える選択肢として、提案ナレッジを自動で整理・共有するツールもあります。提案資料のナレッジ共有に特化したクラウドサービス「Pitchcraft(ピッチクラフト)」も、そのひとつです。
【まとめ】提案の効率化は、過去の“勝ち資料”から
提案ラッシュの消耗は、手が足りないからではなく、勝ったものを使い回せないことから生まれます。生成AIは「作る」を速くしますが、「探す・直す」は残ります。だからこそ、過去の“勝ち資料”を土台に、AIで作成を加速し、人で仕上げる段取りが、提案資料を効率化する近道になります。
まずは今日から、フォルダの整理や勝ちスライドの共有を試してみてください。さらに一歩進めたい場合は、ナレッジ共有を仕組み化するアプローチもあります。
ヴァリューズの提供するPitchcraft(ピッチクラフト)では、提案書・企画書の蓄積や整理のみならず、発見・活用・分析・管理といった、資料の活用に関する一連のプロセスを仕組化し、組織の提案力と生産性を最大化することが可能です。
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新卒でヴァリューズに入社し、データマーケティング局に所属。広告代理店やコンサルティングファーム、メディアを中心に独自データを活用したマーケティング戦略立案を支援。
現在は、営業AX推進チームに所属し、提案ナレッジシェアクラウドPitchcraftを主軸とした、営業力・提案力強化に向けたAI活用支援を、事業会社・パートナー企業問わず担当。