転職活動は年収によってどう変わる?検索ワード・利用サービス・価値観を分析

転職活動は年収によってどう変わる?検索ワード・利用サービス・価値観を分析

年収300〜800万円(中間層)と800万円以上(高年収層)の2つの層における転職の検索行動の違いを分析。基本属性、検索キーワード、価値観、興味関心、訪問サイトの傾向を比較し、同じ「転職検討」という状態でも、年収帯によって目的意識やアプローチが大きく異なる実態を明らかにします。


【年収帯別】転職検討者の基礎情報|性別や年代など

今回は、Web行動ログ分析ツール「Perscope」のデータをもとに、年収300〜800万円層(以下「中間層」)と年収800万円以上層(以下「高年収層」)のそれぞれが、転職を考えるときに何を調べ、何を求めているのかについて比較してみました。

分析対象は、20代以上の「転職」で検索したユーザーを年収帯で分けたセグメントです。まず基本属性を並べてみると、2つの層が異なるライフステージに立っていることが見えてきます。

図:年収300〜800万円層・年収800万円以上層の「転職」検索者の属性比較(性別・年齢)(20代以上)

図:年収300〜800万円層・年収800万円以上層の「転職」検索者の属性比較(性別・年齢)(20代以上)
期間:2025年4月〜2026年3月
デバイス:パソコン・スマートフォン

年収300〜800万円層・年収800万円以上層の「転職」検索者の属性比較(既婚率・子供保有率・世帯年収) (20代以上)

図:年収300〜800万円層・年収800万円以上層の「転職」検索者の属性比較(既婚率・子供保有率・世帯年収)(20代以上)
期間:2025年4月〜2026年3月
デバイス:パソコン・スマートフォン

特に目を引くのが、高年収層の既婚率67.3%・子供保有率55.3%という数字です。中間層と比べると既婚率で約30ポイント、子供保有率で約25ポイントも高くなっています。ただし、高年収層は平均年齢も約4歳高い(42.2歳)ため、この結果には年収だけでなく「年齢差」も大きく影響しています。

項目 300〜800万円層 800万円以上層
推計ユーザー数 約112万人 約51.5万人
性別(男性比率) 62.1% 79.3%
平均年齢 38.1歳 42.2歳
既婚率 38.0% 67.3%
子供保有率 30.8% 55.3%
世帯年収(平均) 520万円 1,150万円

図:年収300〜800万円層・年収800万円以上層における「転職」検索者の属性比較(性別・年齢・既婚率・子供保有率・世帯年収)(20代以上)
期間:2025年4月〜2026年3月
デバイス:パソコン・スマートフォン

ここで重要なのは、既婚率・子ども保有率の高さから、高年収層は生命保険や教育費などの固定支出を抱えた状態で、転職活動に臨んでいる割合が高いという点です。ただ「もっと稼ぎたい」と漠然と思っているわけではありません。家族のこれからを見据えた選択だからこそ、その真剣さがその後の検索行動にもはっきりと表れてきます。

【年収帯別】転職検討者の検索ワード

転職を検討するときの検索キーワードから、「転職の目的意識」がうかがえます。

以降では「特徴値」から年収帯による違いを見ていきます。特徴値は単純なユーザー数の多さを示すものではなく、「その層には多く見られる一方で、ネットユーザー全体にはあまり見られない」という傾向の強さを示しています。

中間層の検索は「転職プロセスの不安」に向かう

中間層で特徴値が高く、かつ高年収層には見られないキーワードを抜粋すると、次のようになります。

キーワード 特徴値
未経験 221.7pt
正社員 234.5pt
職務経歴書 192.3pt
面接 186.9pt
志望動機 177.1pt
フルリモート 149.6pt

図:20代以上の「転職(300〜800万円層)」検索者の特徴値の高いキーワード(抜粋)
期間:2025年4月〜2026年3月
デバイス:パソコン・スマートフォン

これらのキーワードからまず見えてくるのは、「転職のやり方がわからない」という率直な不安です。

「職務経歴書」「面接」「志望動機」など、転職に関する基礎情報、具体的なハウツーを検索しています。転職が初めて、あるいは久しぶりに転職活動をする層が多いことがうかがえます。また「未経験」や「フルリモート」が高年収層と比較しても特徴値が高くなっています。特に中間層が「未経験分野への転職」「フルリモートでの就業」を求めていることがわかります。

高年収層の検索は「判断材料の収集」に向かう

一方、高年収層で特徴値が高いキーワードを見ると、中間層と大きな違いが見えてきます。こちらも中間層には見られないワードを抜粋しています。

キーワード 特徴値
退職金 259.2pt
住宅ローン 213.3pt
決算 185.6pt
銘柄 182.8pt
売上 165.7pt
時価総額 154.9pt

図:20代以上の「転職(800万円以上層)」検索者のキーワードランキング(特徴値上位抜粋)
期間:2025年4月〜2026年3月
デバイス:パソコン・スマートフォン

高年収層の検索データからは、転職を単なるキャリアの話ではなく、「家計の資産形成戦略の一環」としてシビアに捉える姿勢が見えてきます。

例えば、「銘柄」や「時価総額」、「決算」「売上」といった検索キーワードです。高年収層はマネー・投資への興味関心が高いため(後述)、これらは転職文脈ではなく、日常的な投資文脈で検索されている可能性もあります。ただ、そうした日常的な投資家目線を自然と転職先選びにも持ち込み、企業の事業性や成長性を数字で冷静に見極めようとしているとも解釈できます。

また、「退職金」や「住宅ローン」といった、今後の生活設計に直結するワードが上位に並ぶのも大きな特徴です。勤続年数のリセットによる退職金の変動など、目先の給与差だけでは測れないトータルな損得勘定を実務的に考慮している様子がうかがえます。

くわえて、転職による収入変動が住宅ローンの審査にどう影響するかといった点まで調べており、単なる仕事選びの枠を超え、自身のライフプラン全体を見据えて慎重に検討を進めていると言えるでしょう。

【年収帯別】転職検討者の価値観・興味関心

2つの年収層は「感じていたい気持ち」や「価値観」も異なっています。

価値観の共通点・異なる点

「感じていたい気持ち」の指標を見ると、両層に共通して「地位・ステータス」「自己実現」への意識が強いです。転職を検討している人が社会的評価や成長を求めているのは、年収を問わず共通した心理のようです。

ただ、「奉仕心」には明確な差が出ました。高年収層では奉仕心が基準値よりプラスに出ており、中間層ではほぼ基準値どおりでした。「ありたい自分像」でも、高年収層は「社会や環境への貢献」軸で特徴が出ています。

20代以上の「転職」検索者の価値観比較(感じていたい気持ち)

図:20代以上の「転職」検索者の価値観比較(感じていたい気持ち)
期間:2025年4月〜2026年3月
デバイス:パソコン・スマートフォン

20代以上の「転職」検索者の価値観比較(ありたい自分像)

図:20代以上の「転職」検索者の価値観比較(ありたい自分像)
期間:2025年4月〜2026年3月
デバイス:パソコン・スマートフォン

この価値観の差から見えてくるのは、高年収層はすでに一定の待遇を得ているからこそ、「条件の良さ」だけでは動かないという仮説です。データに表れた奉仕心への意識の高さから、「自分の仕事が社会にどう役立つか」という社会への貢献度が、転職においても重要な決め手になっている可能性が考えられます。

興味・関心も2つの層で異なる

興味・関心のデータを見ると、仕事の外側でも両層の違いが浮かび上がります。

興味・関心 中間層 高年収層
就職、求人 10.5pt 3.7pt
マネー、投資 9.7pt 18.9pt
ビジネス関連 5.4pt 13.5pt
国内旅行 4.8pt 15.5pt

図:20代以上の「転職」検索者の興味関心比較(特徴値)
期間:2025年4月〜2026年3月
デバイス:パソコン・スマートフォン

中間層は「就職・求人」への特徴値が10.5ptと際立って高いです。転職そのものへの関心が強く、意識の中心に転職活動が置かれている状態です。これには2つの可能性が考えられます。「仕事探しそのものを楽しんでいる層」と、「今すぐ転職しなければならない状況にある層」の両方が、この高い数値に反映されていると推測されます。

一方、高年収層は「転職」検索者であっても「就職、求人」の興味関心の特徴値があまり高くない結果となっています。後述しますが、高年収層は「エージェント型」の転職サイトの利用が特徴的であり、「能動的に求人を探している」わけではなく、スカウトなどで「受動的な転職スタンス」であることが起因しているかもしれません。

そのほか「マネー、投資」や「ビジネス関連」、「国内旅行」への特徴値が目立ちます。

【年収帯別】転職検討者の利用サービス

検索行動に続いて、実際に訪れているサイトにも目を向けてみましょう。

中間層は「幅広く・口コミを頼りに」

中間層の訪問サイト上位には、dodaなどの総合型のサービスに加え、企業の口コミ・評判サイトである転職会議や、転職相談メディアが並びます。求人情報の収集と、「実際に入社した人の声」という2つの情報を並行して集めている姿が想像できます。

20代以上の「転職(300〜800万円層)」検索者のサイトランキング(特徴値上位)

図:20代以上の「転職(300〜800万円層)」検索者のサイトランキング(特徴値上位)
期間:2025年5月〜2026年4月
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ITエンジニア特化のサービスもランクインしており、IT・エンジニア領域へのキャリアチェンジ志向がうかがえます。

高年収層は「エージェント・お金の情報も並走」

高年収層の訪問サイトは、エージェント型のサービスや、ハイクラス・コンサルタント特化型のサービスが上位を占めています。

20代以上の「転職(800万円以上層)」検索者のサイトランキング(特徴値上位)

図:20代以上の「転職(800万円以上層)」検索者のサイトランキング(特徴値上位)
期間:2025年5月〜2026年4月
デバイス:パソコン・スマートフォン

注目すべきは3位にランクインしているOpenMoney(特徴値194.5)です。これは転職サービスではなく、各企業の給与データが口コミで分かるお金の情報サイトで、中間層の上位TOP10には上がってきておりません。年収帯によって、利用される口コミサイトも異なることがわかります。

まとめ

中間層は、選考プロセスを一つひとつ調べながら、新しい分野や働き方への挑戦を検討しています。「就職・求人」への興味・関心を高く持ち、口コミサイトを熟読する傾向がある層です。

高年収層は、企業の財務情報まで含めて精査し、退職金や資産形成への影響まで考慮しながら、慎重に次の一手を選んでいます。受け身のスタンスで市場と接し、お金に関する情報サイトも並行して見ています。

同じ「転職を検討している」という状態でも、見ているもの、調べていること、使っているサービスは、年収帯によって大きく異なります。この違いを踏まえてターゲットを捉えることが、コミュニケーション設計の精度を高める一歩になるのではないでしょうか。

▼今回の分析には生活者理解のためのリサーチエンジン『Perscope』を使用しています。『Perscope』では国内最大規模のWeb行動×アンケートデータを活用し、誰でも いつでも 簡単に"生活者起点のマーケティング活動"を実現することができます。無料デモもありますので、興味のある方は下記よりぜひお申し込みください。

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この記事のライター

2027年4月に入社予定の大学4年生です。
経済学部で、税制の実証分析およびその効果検証について学んでいます。

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