ESOMARとは?マーケティング・市場調査の活動内容と主催イベント

ESOMARとは?マーケティング・市場調査の活動内容と主催イベント

ESOMAR(エソマ)とは、欧州で誕生し75年の歴史を有す世界最大級のマーケティングリサーチ団体です。ESOMARが発行する国際綱領に基づき、世界中の企業がマーケティング・社会調査を行っています。ESOMAの活動は国際綱領を世界的に広め、遵守させるだけでなく、関係者を結ぶグローバルコミュニティとしても機能しています。


本記事では、ESOMARの概要や国際綱領の重要性、ESOMAR会員になるメリットについて解説します。

またESOMARは2022年9月に「ESOMAR Congress 2022」をカナダ・トロントで開催予定です。各国を代表するマーケティング・社会調査の専門家(企業)が登壇し、プログラムを発表します。日本からも2社が登壇するため、気になる方はチェックしてみてください。

ESOMARとは

ESOMAR(エソマ)とは、「European Society for Opinion and Marketing Research」の頭文字を取ったもので、世界最大級のマーケティングリサーチ団体です。「European」と冠しているように欧州を生誕の地としていますが、欧州だけでなく全世界130ヵ国以上に活動の幅を広げています。

活動の目的は、マーケティング・社会調査を実施する関係者(調査会社やクライアントなど)が、遵守すべき国際綱領などを制定・普及することです。調査会社などが「あるべき姿」を示し、それを全世界に広めてきました。

現在では、調査データを集める提供者(プロバイダー)と、調査データを閲覧したい利用者(ユーザー)とを結ぶグローバルコミュニティとしても機能しています。

ESOMAR設立の経緯|ICCとの関係性

ESOMARは2022年で設立から75年周年を迎えます。ESOMARが1948年に初めて国際綱領を発行した一方で、ICC(国内規制当局および国際商業会議所)もいくつかの国際綱領を発行していました。

しかし、2つの組織が異なる国際綱領を掲げていると、かえって市場や社会を混乱させかねません。そこで国際綱領の統一を図ります。1977年にICCとESOMARは、共同の国際綱領を発行しました。この国際綱領は現在でも見直し・改訂が続けられています。

ESOMARの国際網領とは

ESOMARとICCが共同で策定している最新の国際綱領は「ICC/ESOMAR International Code on Market, Opinion and Social Research and Data Analytics」です。すべてのESOMAR会員は、ICC/ESOMARの発行している国際綱領を支持・賛同しています。

直近では2016年12月に内容を全面的に改訂しました。背景には、リサーチの対象となるデータソースの多様化や、個人情報取り扱い方法の変化などが挙げられます。さまざまなSNSやIoTなどのデジタルシフトにより、調査・分析のもととなるデータをさまざまな経路から集めてこなければなりません。また、「EUデータ保護規則」に基づいてプライバシーデータを扱うようになりました。

今後も、ESOMARの国際綱領は時代の変化とともに改訂されていくでしょう。

マーケティング・社会調査における国際網領の重要性

そもそも綱領とは、「専門組織としての倫理的責任を明らかにし、社会に示すもの」です。もし調査会社がウソの調査データを公表した場合、それを参考にしたユーザーが間違った意思決定をして損する可能性があります。
2022年には国土交通省が過去17年間にわたって統計不正を行い、最大で年間5兆円の受注高を過大に計上していたことが明らかになりました。

このような事件は民間のマーケティング・調査会社でも起こり得ます。特にインターネット上には、さまざまな母体が発信するデータが混在しています。中には倫理的責任を欠いたリサーチャーが存在するかもしれません。ESOMARのような国際綱領を遵守している組織であれば、そのデータの信ぴょう性を高められるでしょう。

その他のESOMARの活動内容

ESOMARは国際綱領の普及だけでなく、さまざまな活動を行っています。ここでは活動の一部を紹介します。

特に30歳以下のビジネスパーソンにチャンスを与える活動が豊富に行われているため、気になる方はチェックしてはいかがでしょうか。

Young ESOMAR Society

30歳以下の会員に対して、年間を通じてプログラムを提供しています。組織の目標達成や社会貢献、キャリアアップのために役立ちます。学校を卒業したばかりの新社会人に、業界をリードする人材になれるような刺激を与えてくれるでしょう。

YES Awards

「YES Awards」は同じく30歳以下の会員に対し、自分のアイデアを世界中の視聴者に披露する機会を与えるイベントです。60秒間のピッチを、世界中の専門家やビジネスパーソンに届ける絶好の機会といえます。

ファイナリストに選出されれば、選択したイベントへの無料参加、会員費1年間無料、ESOMARのSNSやデジタルチャネルでのパフォーマンス公開などの特典を得られます。

Research Got Talent

「Research Got Talent」は世界各国から優秀な研究者が集まり、社会課題を解決するためのデータや研究を発表するコンテストです。毎年開催され、各地域のNGOや慈善団体を支援するスキル・能力に焦点を当てます。

2021年の受賞者はペルー出身の女性2名でした。弱い立場に置かれた子どもたちを支援するNGO「Kantaya」への支援を評価されました。

ESOMAR会員になるには

ESOMARのネットワークが全世界に広がっていると解説した通り、日本国内にいながらESOMARの会員になることが可能です。ESOMARの会員となることで、さまざまなメリットを享受できます。

会員の種類

ESOMARの会員には、「個人会員」と「コーポレート会員」の2種類があります。

個人会員

個人会員では、主に3点のメリットを享受できます。

・グローバルコミュニティに所属する
全世界130ヵ国以上のメンバーとつながれます。ESOMAERの公式ページでは、登録しているメンバーを検索したり、コミュニティ・ハブから各国の代表者や60以上の協会パートナーとつながることが可能です。

・マーケティング・社会調査での知識を深める
膨大な研究論文や卒業論文、レポート、ガイダンスなど、75年に渡ってESOMARが研究・集積してきた知識を活用できます。また、ANAが監修しているAI主導のリソースライブラリーは、数えきれないコンテンツから必要な情報を見つけるサポートをしてくれます。

・ヘルプデスクの提供
コンプライアンスに関する問題へ対処するために、メンバー専用のヘルプデスクが用意されます。ヘルプデスクでは、第一線で活躍する専門家の知識を利用可能です。

このように業界を牽引する論文やレポートを無料で閲覧できたり、グローバルコミュニティを活かして普通なら出会わないメンバーとつながれたりと、ESOMARに所属するメリットは大きいでしょう。

コーポレート会員

コーポレート会員では、主に3点のメリットを享受できます。

・ビジネスチャンスを拡大させる
同業者とのネットワークを構築し、新たなビジネスチャンスを獲得できます。個人会員と同じく、メンバー検索やコミュニティ・ハブを通じて、さまざまなメンバーや組織とつながることで、ビジネス上の課題も解決できるでしょう。
各国の代表者が開催する対面式イベントや、組織・プロジェクトが直面する問題を話し合える「コミュニティサークル」と呼ばれるオンラインイベントでも、コミュニティとつながれます。

・知識でライバルに差をつける
業界で最先端を走り続けるために、ESOMARの有す膨大な研究論文や卒業論文、レポート、ガイダンスなどを活用できます。企業で取り組むプロジェクトの推進や目標達成のために必要な情報を、AI主導のリソースライブラリーを使って集めましょう。

・コンプライアンス・法務の対策をする
企業活動を管理するコンプライアンス・法務などの規制は、各国で頻繁に変更されます。国によって免除されるケース、制限されるケースもあります。例えば海外に事業展開するときには、その国の法務専門家とつながっておきたいものです。「ESOMAR Plus」ではコンプライアンスに関する以下の専門的なサポートを受けられます。


・業務に影響を与える新しい規制の定期的なチェック・更新
・上記に基づいた業務文書のレビュー用ツールキット
・プロジェクトや組織で直面する実務的な質問をできる専用ヘルプデスク
・従業員向けトレーニングの提供

ESOMARのリソースをフル活用することで、企業活動を加速させることが可能です。

登録の要件

各会員の登録要件について解説します。

個人会員

個人会員は基本的に年会費を支払えば、会員になることができます。年間会費は200〜390ユーロ(日本円でおよそ27,000円〜53,000円)です。なお、30歳以下であれば割引価格を適用されます。

コーポレート会員

コーポレート会員の要件については、年会費が公式ページに記載されていないため、申し込みページから直接問い合わせてみてください。

ESOMAR Congress 2022を開催

ESOMAR Congress(エソマ コングレス) 2022は、ESOMAR設立から75周年を記念し、2022年9月18日〜21日にカナダで開催される大規模なカンファレンスです。過去にはベルリンやアムステルダムなどで開催されました。今回はカナダ・トロントに世界中から登壇者・参加者が集います。

参加者の傾向

世界90ヵ国以上から1,000名を超えるシニアプロフェッショナルが集まります。

参加企業の内訳を見ると調査会社が60%を占めます。そのほか、クライアントやブランドが20%、ソフトウェア会社が15%の割合です。また細かく業種を見ると、テクノロジーや銀行、自動車、エネルギーなどから幅広く参加します。

役職別では参加者の60%以上が企業のマネジメント層です。
・CEO以上:10%
・ディレクター:31%
・パートナー:5%
・プレジデント:9%
・ヘッド:5%
海外の役職名は日本と異なりますが、いずれにせよ企業の重役たちが集う場となるでしょう。

開催プログラム

Congress Program委員会は世界中から提出された論文・プレゼンテーションを精査し、開催プログラムの登壇者を決定します。この委員会はAmazonやInSites Consulting、Kantar、New Balanceなどの企業メンバーで構成されています。

全日程で100を超えるプログラムが開催され、ニューヨーク・タイムズ社やコカ・コーラ社、フィリップス社などの錚々たる企業からスピーカーが登壇します。プログラムのテーマはデータサイエンスやインサイト、金融セキュリティ、人種差別など多岐に渡ります。

世界40ヵ国330社の応募を突破したヴァリューズ

先ほども触れた通り、開催プログラムで講演するためにはCongress Program 委員会の審査を受け、それを突破しなければなりません。今回、日本からは2社のみが選出され、その内の一社を、当メディア「マナミナ」も運営している株式会社ヴァリューズが担います。

ESOMAR登壇

講演テーマ

ヴァリューズは「Customer Journey Realities(真のカスタマージャーニー)」という講演テーマで9月20日に発表することが決まりました。

ヴァリューズでは、許諾を得た250万人規模のインターネット上の行動ログデータや、アンケート調査をもとに、ユーザーインサイトを購買プロセスごとに分類したカスタマージャーニーを発表します。クッキーレス時代でもユーザーの購買行動を理解できる最新マーケティング手法について解説する予定です。

※ユーザーインサイト:ユーザーの内側にある本音のこと。
※カスタマージャーニー:顧客が製品・サービスと出会ってから購入・契約するまでの流れのこと。
※クッキーレス:Webサイトの閲覧履歴を保存するクッキー(Cookie)の情報取得を規制・廃止すること。

登壇者

ヴァリューズから以下の2名が登壇します。

株式会社ヴァリューズ 執行役員 子安 亜紀子

システムエンジニア・Webコンサルタントを経て、(株)マクロミルに入社。マクロミルのベンチャー時代から、商品開発、事業企画、営業企画などを手掛ける。2011年からヴァリューズに参画。執行役員として、事業企画やマーケティング部門の統括、海外事業などを担当している。

株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 田中理佳子

2019年新卒でヴァリューズに入社。マーケティングコンサルタント・カスタマーサクセス・グローバルリサーチ推進を兼任。不動産、自動車、自治体や広告代理店など、幅広い業界・業種のデジタルデータの調査提言・分析サポートを手掛ける。

まとめ

ESOMARは世界最大級のマーケティングリサーチ団体であり、グローバルコミュニティとしても機能しています。ESOMARの展開しているような国際綱領がなければ、一般に提供される調査データが虚偽のものとなりかねません。マーケティング・調査会社には国際綱領を遵守する責務があるでしょう。

またESOMARに所属すれば、さまざまなメリットを享受できます。30歳以下であれば、割安なプランで加入できます。コーポレート会員の場合は、詳しい要件を問い合わせてみてください。

数年ぶりの開催となる「ESOMAR Congress 2022」では、ヴァリューズを含む世界中の専門家(企業)が登壇します。最先端の研究、情報をキャッチするために、ESOMAR Congress 2022に注目してはいかがでしょうか。

この記事のライター

販促ライター。ITベンチャーを経て2015年からライターとして独立し、2023年に株式会社SHIKIを創業。ライター兼編集者として大手企業が発信するコンテンツの企画や制作管理を担う。多岐にわたる業界の制作経験から、見込み客のステージに応じた文脈の使い分けを得意とする。会社員や主婦など92名のライターを育成。ライター採用やレギュレーション制作の実績もあり。ご依頼はokada@shikcorp.comまで。

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