コンテンツ支出は最近10年で最高に
生活者のコンテンツへの支出金額は79,103円(前年比+10,576円)と、2011年の調査開始以来2番目に高い水準で、直近10年の調査結果では最高になりました。
前年調査ではコロナ禍の落ち込みからの本格的な復調が見られましたが、今回の調査ではコロナ禍前の水準も超える高い伸びとなり、エンタメ市場の盛り上がりを示しています。
図1:1年間のコンテンツへの平均支出金額
デジタルで育んだコンテンツの楽しさがリアルの世界へ
市場カテゴリごとに見ると、リアルイベント市場の伸びが著しく、推定市場規模は1兆円を超え(1兆288億円、前年比+14%)、関連グッズ市場も大きく伸びています(7,245億円、前年比+36%)。
また、デジタル配信での動画や音楽への支出が含まれるスマホ・タブレット市場が前年比で24%増(+917億円)と大幅に伸びています。コロナ禍の間、デジタルを中心にコンテンツと出会い、デジタルに支出することに馴染んだ生活者が、リアルでの体験にも積極的に支出するようになり、コンテンツホルダーにとってチャンスが広がったと言えそうです。
図2:市場カテゴリごとの推定市場規模
リアルイベント市場の内訳をコンテンツジャンルごとにみると、「ライブ・コンサート」や「音楽フェスティバル」など音楽ジャンルの市場規模が大きく伸びた(2,648億円、前年比+32%)のはもちろん、いわゆる「聖地巡礼」と呼ばれるロケ地訪問などの支出が牽引した「バラエティ・ドラマ」や「アニメ・特撮」といったジャンルでも伸びが目立ちました(「バラエティ・ドラマ」:前年比+93%、「アニメ・特撮」:前年比+53%)。
また関連グッズ市場も幅広いコンテンツジャンルで伸びています。グッズの購入はイベント開催に伴って生まれやすく、コンテンツを最大限楽しもうと、「出かけて、買う」傾向が強まっているようです。
「リーチ力」ランキングを席巻したアニメ
どれだけ多くの生活者に接触できるかを示す「リーチ力」ランキングでは、『鬼滅の刃』と『SPY✕FAMILY』が前年調査に続き1位と2位になりました。
図3:2024年リーチ力・支出喚起力ランキングTOP20
今年は、「リーチ力」TOP20のうち13個をアニメが占めました。直近5年間の「アニメ・特撮」と「音楽」ジャンルのランクイン数を比較すると、アニメの伸びが目立ちます。
食品や洗剤、スマホゲームなどジャンルを問わないタイアップ展開を通じ、さまざまな場所で接点が持てるようになっていることで、アニメは今やコアなファンだけでなく、幅広い層の生活者に訴求できるコンテンツジャンルになったといえそうです。
図4:リーチ力TOP20ランクイン数(「アニメ・特撮」「音楽」ジャンル別比較)
また、今回初めてランクインした『【推しの子】』、『薬屋のひとりごと』、『葬送のフリーレン』は、いずれも生活者のコンテンツ体験を捉えたうえで、各メディアの特性を活かしながらファンを楽しませるプランニングが特徴的でした。
テレビの視聴されやすい放送枠を使って生活者と最初の接点をつくり、話題化したところで、デジタルのプラットフォームで幅広く配信して視聴手段を追加。加えて、ファン向けリアルイベントなどの開催を通じて支出の機会もつくりました。
支出の鍵は、推し活のツボを押さえた体験設計
「支出喚起力」ランキング(図3)では『SEVENTEEN』が1位、『Stray Kids』が3位とK-POPアーティストが躍進しました。K-POPが1位になったのは調査開始以降初めてで、ランクインしている他のアーティストに比べて、ファンの平均支出金額が高かったことがランキングを押し上げました。
「ファンダム」とも呼ばれるK-POPファンに向けては、CD、ライブ、グッズはもちろん、新曲発表にあわせた投票イベントのためのオンライン課金、オンラインミーティング、誕生日の応援広告出稿、ファン主催のイベント参加など、リアルとデジタルをまたいだコンテンツの体験がさまざまに設計されています。
いわゆる「推し活」が身近になる中で、そのあり方は多様化していますが、K-POPでは多様化した「推し活」のツボを押さえた体験がいち早く設計されており、支出喚起力での上位ランクインに寄与したと考えられます。
調査概要
調査方法:インターネット調査
調査地区/対象者:全国15~69歳の男女 (全国7エリアを性年代別人口構成比で割付)
有効回収サンプル数:10,000サンプル
調査時期:2024年2月27日(火)~3月8日(金)
調査機関:QO株式会社
出典元:博報堂DYホールディングス
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