「ふるさと納税」は、地方創生の一つの手段として注目されていますが、近年、返礼品競争が過熱し、本来の目的である「自分の生まれ故郷や応援したい地域に貢献する」という点が問題視されています。豪華な返礼品を目当てに、人気のある自治体に寄付が集中する傾向が見られ、本来の目的である地域への貢献が後回しになっている現状があります。
今回のアンケートでは、このような状況下で、皆さんがふるさと納税をどのように捉え、どのような基準で寄付先を選んでいるのかを調査します。特に、返礼品と地域への貢献、どちらを重視しているのか、また、寄付金の使い道への関心の度合いなどを明らかにすることで、ふるさと納税の制度が抱える問題点や、改善すべき点を浮き彫りにしたいと考えています。
ふるさと納税をする目的は?
「何のためにふるさと納税をするのか?」という質問に対して、最も多い回答が「返礼品」で全体の約7割、次が「節約」で約2割、最後に「地域貢献」で約1割という結果になりました。
本来、ふるさと納税の本来の目的とは「返礼品」ではなく、自分の生まれ故郷や応援したい地域に貢献する「地域貢献」ですが、そういった意識よりかは「返礼品」や「節約」のためにふるさと納税をしている方が多いようです。
ふるさと納税の寄付先を選ぶ基準で以下のうち、最も重視するのは?
圧倒的に多くの人が、返礼品で選ぶ (87.7%)と答え、ふるさと納税を行う際に返礼品の内容を最も重視していることがわかります。寄付先を選ぶ際に、地域貢献よりも個人の利益が優先されている現状が浮き彫りになっています。
応援したい自治体で選ぶ (11.5%)は、少数ではありますが、地域貢献や応援したい自治体の選択を重視する層も一定数存在するものの全体の約1割という結果となりました。
寄付金の使い道で選ぶ (0.8%)はさらに少数の回答となっていて、応援したい自治体で選ぶ (11.5%)と寄付金の使い道で選ぶ (0.8%)を合わせても全体の約2割という結果になりました。
ふるさと納税をして最もよかったと思うことは?
返礼品が嬉しかった (77.7%): 多くの回答者が、ふるさと納税の返礼品を最も喜んでいることがわかります。つまり、寄付を行った結果得られる物質的な見返りが大きな満足要因となっています。
節約になったことが嬉しい (13.8%): ふるさと納税を通じて税金の一部が控除される仕組みが、節約に繋がっている点を評価している人々が一定数存在します。
寄付金が地方自治体に役立った (8.5%): 少数ではありますが、寄付金が地方自治体に役立ったと感じている人もいます。
この結果からも、ふるさと納税に対する期待の多くが「返礼品」と「節約」に集中していることが明らかです。
本来の趣旨である「地方自治体への貢献」を実感している人は少数派であり、寄付を通じて地域貢献を行ったという意識はまだ広がっていないことが示されています。
魅力的な返礼品のある自治体・地域に寄付しがち?
「自分の応援したい自治体・地域は思い浮かぶけど、魅力的な返礼品のある自治体・地域に寄付しがちですか?」という質問に対する回答としては、はい (86.9%)という回答が全体の約8割となり、 圧倒的多数の人が、応援したい自治体や地域があるものの、最終的には魅力的な返礼品がある自治体に寄付をすることが多いと回答しています。
いいえ (13.1%)と答えた少数の人々は、返礼品ではなく応援したい自治体や地域に寄付することがあると答えていますが、こういった意識のある方はごく一部だと考えることができます。
この結果から、ふるさと納税において、返礼品が寄付先を選ぶ際に非常に重要な要素であることが再確認されます。
多くの人々が、地域貢献という意識を持ちながらも、最終的には自分にとって有利な返礼品を提供する自治体を選びがちであることが示されています。
ふるさと納税の本来の目的は地方への支援や貢献であるにもかかわらず、制度の現実として返礼品が大きな動機付けとなっていることが浮き彫りになっています。
ふるさと納税の寄付金の集まり具合は、魅力的な返礼品によって左右されがち?
ふるさと納税の寄付金の集まり具合は、魅力的な返礼品によって左右されがちだと思うか、という質問に対しては全体の97%が「はい」と回答。この回答結果からも、魅力的な返礼品を持つ地方自治体に寄付が集中してしまうという想像はたやすいでしょう。
■他の地方自治体と比較すると返礼品で勝てない…という自治体は、どのようにふるさと納税をアピールをするのがいい?
「魅力のないものをアピールしても限界があるので、魅力的な返礼品を作り出す努力が必要だと思います。例えばその自治体までの旅費の一部をチケットとして返礼品にすれば僅かですが訪れる人が増えますし、訪問中の写真をSNSに投稿したら更に割り引く等にすれば、それ以上の効果が出るかもしれません。返礼品と地域の有名な場所の命名権をセットにするとか、考えればいくらでも案はあると思います。」(50代/男性/自営業/北海道在住)
「納税されることによって、どれだけその地方自治体が経済的に助かるのか具体的に説明して、興味を引き付けられるように工夫するとよいと思います。寄付金の使い道の説明や報告をしっかり行なって信用を得られるように努力すると良いと思います。」(40代/男性/会社員/大阪在住)
「ふるさと納税で得た税収の使途の公開・報告を積極的に行うと良いと思います。納税時に選択することができますが、実際にどのようなことに役立てられたのかがわかると、翌年も同じ地方自治体にふるさと納税するきっかけになると思います。」(20代/男性/学生/茨城在住)
「自治体を紹介する文で、抱えている課題や問題解決に対してどのように取り組んでいるかなど丁寧に書かれているとすごく気になります。わかりやすい言葉を意識して、しっかりと伝えることで共感できます。そうすれば、魅力的な返礼品が少なくても応援したいと思えます。」(40代/女性/会社員/北海道在住)
「寄付金が何に使われているかを可視化する。寄付金を使った事業の成果を定期的に寄付した人に報告する。」(40代/男性/会社員/大分在住)
「地元の歴史、文化、伝統、特産品の背景などを紹介すれば、寄付者が地域に対する理解と愛着を感じられるようになると思います。例えば、地元の人々のインタビューやエピソードを共有したりすることでアピールにつながると思います。」(40代/男性/自営業/東京在住)
「ふるさと納税を具体的にどのように活用したかを説明した詳細なレポートを公開するといいと思います。」(50代/女性/主婦/山梨在住)
「返礼品が少ないならば、新たなコンテンツを作るのが良いと思う。例えばひこにゃんなどのゆるキャラ、ずんだもんの様なポップな美少女キャラなどを作成し、そのグッズ販売をする。」(30代/女性/自営業/愛知在住)
「自然災害などで被災し地域の復旧にお金がかかるなど、ぜひ手助けをしたいと思うようなエピソードを発信すれば寄付金が集まると思います。」(40代/女性/主婦/埼玉在住)
「その地方自治体のアピール、ふるさと納税をしてもらうことで、今までどんなことに役立ったのか、どんなことに役立てようと思っているのかについての記載、住民からの声の記載。」(40代/男性/会社員/兵庫在住)
「その地域でしか生産できない産業や商品について、自治体の担当者が実際に生産している人にインタビューを行い、公式のSNSや動画サイトで発信をすると良いと思います。」(30代/男性/会社員/神奈川在住)
「自治体の具体的課題を挙げ、そのための寄付を募れば地域貢献のイメージが沸いて寄付が集まりやすいと思う。」(50代/男性/自営業/東京在住)
「①魅力的でない返礼品であっても、質より量で、びっくりするぐらいの量を返礼品として送れば、話題になると思う。②1日農業体験とか、1日漁師体験とか、アイデア勝負。そこにあるもので勝負する。」(50代/男性/会社員/宮崎在住)
「返礼品としては魅力が少ない場合には、その土地ならではのイベント行事の無料で参加できる権利を付与するといったアピールが良いと思います。」(40代/男性/会社員/千葉在住)
「どのようなことに集まったお金をつかうとか、これだけの成果が過去にあったということを役所のホームページで大きく取り扱うと良いと思います。特にその町の出身者がホームページを見たときに心に刺さるように宣伝すると良いと思います。そしてもし観光地があるのならそこでふるさと納税を宣伝するとか、道の駅などでも宣伝すると良いと思います。」(40代/男性/会社員/兵庫在住)
「自治体を運用管理していく上での大変さ、その理由、今後どうしていきたいかの『わかりやすい生の声』を、現地担当者がホームページ等で発信して欲しい。見せ方、伝え方が肝心だと思う。」(60代/男性/公務員/愛知在住)
「ふるさと納税で納められたお金がどのようにその地域で役立てられるのか、どれだけその地域は困っていて助けを必要としているのかをアピールするといいと思います。」(30代/女性/自営業/宮城在住)
「その地域の良さや伝統などを動画等にして分かりやすく伝えたり、応援したくなるようなストーリーがあれば良いと思います。」(20代/男性/自営業/宮城在住)
「その地域の歴史や文化など良いところ、あるいは地域の抱える窮状を包み隠さず発信する。」(30代/男性/会社員/大阪在住)
「返礼品はその地域の特産品などが多い印象ですが、例えば有名な施設や観光地で普段では見学できない様な施設巡りだったり出来ると現地に行きますし、美味しい物も食べられますし個人的には魅力に感じます。」(40代/男性/会社員/栃木在住)
「必要最低限のデジタルマーケティングでのプロモーション(自治体HP・ネット広告・専門サイト・自治体のPR動画作成と各動画サイトへの投稿)。パンフレットやポスター・新聞等、紙媒体でのPR。SNSでの発信(LINE広告等)。」(40代/男性/会社員/埼玉在住)
「自治体の税収が少なく運営が厳しい事を素直に伝え、善意ある納税を広くお願いする。地産の商品に魅力が少なければ、それらに対し更に加工や工夫を加え、付加価値を高める努力も忘れてはならないと思う。」(40代/男性/会社員/神奈川在住)
「品物や特産品がないのであれば、体験を作りだすことがアピールになると思います。そこでしか出来ない体験は貴重です。あるいは、寄付金の使い道をより明確にわかりやすく説明してもらえると、該当層には響くと思います。」(30代/女性/主婦/京都在住)
「ふるさと納税がその地域にどのように役に立っているかをわかりやすく(漫画など)アピールしてくれると気持ちが動くと思います。」(60代/女性/主婦/愛知在住)
「少ない返礼品を他の地域と組み合わせたりしたら良いですよという提案。何処何処の醤油と合わせたら美味しいですよという卵料理みたいな感じです。」(40代/男性/会社員/大阪在住)
「地域を訪れることで割引を受けることが可能など、地域の特定エリア、商業エリアなんかで機能する商品券や割引チケットなどをアピールすると良いのではないかと思います。」(40代/男性/会社員/大阪在住)
「税金をどのように使用するのかを、詳細にわかりやすく公表することがいいと思います。自分が納めた税金がどのような人や設備に役立つのかが可視化されると、人の気持ちは動くと考えます。」(30代/女性/主婦/神奈川在住)
「ふるさとの祭りなどのイベントに参加できる招待券や農産物の収穫・栽培体験の参加券、温泉地などの宿泊券といった食べ物以外の体験・宿泊サービスを返礼品に含めてもいいと思います。」(70代以上/男性/無職/神奈川在住)
「他の自治体とコラボして一緒にアピールする。農産品などなら食べ比べとか。品物がないなら旅行の際のクーポン、もしくは景勝地の季節の移ろいを定期的に配信してくれるとか写真を送ってくれるとかでしょうか。」(50代/女性/自営業/大分在住)
「YouTubeやX、Instagramを通して、まずその地域(自治体)の魅力を定期的に、そして熱心にアピールすると良いのではないでしょうか。有名な観光地や名物はもとより、まだ地元の人しか知らないような隠れた絶景スポットや自然、神社仏閣やお祭り、伝統料理、伝統行事、力を入れている産業や農業、地域活性化の取り組みなどをひとつひとつ取り上げて、まずは地元に関心を持ってもらうことが必要だと思います。そのような関心から派生して、ふるさと納税にも興味を持ってもらえるような気がします。」(60代/女性/自営業/東京在住)
ふるさと納税の寄付金の使い道として、最も優先して選びたいのはどれ?
「ふるさと納税の寄付金の使い道として最も優先して選びたいのはどれ?」という質問に対する回答結果は以下のようになりました。
地域活性化 (33.8%): 最も多くの人が地域活性化を寄付金の使い道として優先しています。これは、地域の発展や魅力を高めることが重要と考える人が多いことを反映しています。
復興支援 (20.8%): 自然災害などからの復興支援に寄付金を使ってほしいという意見も多く、特に被災地支援が大きな関心を集めています。近年、地震や豪雨などの自然災害が相次ぎ支援が必要な自治体も多いため、復興支援に関心が高まっているのも納得ですね。
教育・子育て支援 (16.9%): 少子化や子育て支援に関連する寄付の重要性を感じている層も多く、教育と子育てが大きな社会的関心事であることが伺えます。
医療・福祉・介護 (6.9%): 医療や福祉、介護といった社会的弱者や高齢者へのサポートを重要視している意見ですが、先ほどの教育・子育て支援と比較すると10%少なく、この回答以降は上位回答と大きく差が開いています。
環境整備・自然保護 (6.2%): 環境保護や自然の維持に寄付金を使ってほしいという関心も一定の割合で見られます。
産業の活性化 (6.2%): 地域の産業振興や経済活動の活性化に使ってほしいという意見も、環境整備・自然保護 (6.2%)と同率となりました。
重要な文化・文化財の保全 (4.6%): 地域の文化や歴史を守ることに寄付金を使いたいという意見は比較的少数派ですが、文化財保護への関心も存在しています。
観光 (1.5%): 観光産業を活性化させるために寄付金を使うことを望む層は非常に少数でした。
この結果は、ふるさと納税制度がどのような地域課題に寄付者が関心を持っているかを示しています。
最も多くの人が選んだ「地域活性化」は、地域社会の持続的な発展や、人口減少や過疎化に対する強い関心を反映していると言えます。
また、「復興支援」が次に多いことから、自然災害などの大規模な危機からの復興支援が、寄付者にとって感情的にも重要な要素であることがわかります。
一方で、「医療・福祉・介護」「教育・子育て支援」など、社会的弱者や次世代の育成を支える取り組みへの関心も高く、これらの分野での資金の重要性が理解されていることが伺えます。
「観光」や「産業の活性化」といった直接的な経済活動に関する使い道への関心は相対的に低く、地域の社会基盤や福祉、自然環境といった持続可能性に対する寄付者の価値観が強く反映されている結果と言えるでしょう。
調査概要
調査実施日:2024年10月
アンケート内容:「ふるさと納税・寄付先を選ぶ基準」についてのアンケート
対象:ふるさと納税をしたことがある方
有効回答数:約130件
アンケート方法:インターネットアンケート
出典元:株式会社ONE FOR ONE
※詳細については出典元の企業にお問い合わせください。
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