モバイルバッテリーをレンタルする派・購入する派で、人となりや暮らし、ニーズにどのような違いがあるのでしょうか。ヴァリューズの分析ツール「Perscope(ペルスコープ)」を用いて、対象者を比較分析していきます。
▼対象者の定義
■ レンタル:
モバイルバッテリーシェアリングサービス「ChargeSPOT」のアプリ起動者
■ 購入:
「モバイルバッテリー おすすめ」「モバイルバッテリー ランキング」「モバイルバッテリー 評判」「モバイルバッテリー 比較」いずれかを検索した人のうち、「モバイルバッテリー レンタル」検索者を除外
モバイルバッテリー、レンタル派・購入派|人となりの違い
■レンタル派は男女半々、20代に集中
まず対象者の性別を見ると、レンタル派は男女がおよそ半々であるのに対し、購入派は約64%が男性となっています。

「レンタル」「購入」対象者の性別
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:PC&スマートフォン
ガジェットにこだわりがある男性は、スペックやメーカーなども考慮して、購入に至るケースが多いのかもしれません。
年代を比較すると、レンタル派の20代割合が約37%と突出しており、新しいサービスへの抵抗感が少ない若い世代に受け入れられている様子がうかがえます。一方購入派は、20~60代の間で幅広く対象者が見られます。

「レンタル」「購入」対象者の年代
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:PC&スマートフォン
■購入派は世帯年収高めも、家庭ありで節約志向?
世帯年収を見ると、購入派が50万円ほど高くなっていました。

「レンタル」「購入」対象者の世帯年収
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:PC&スマートフォン
世帯年収の分布を見ても、購入派は400万円未満の割合が低くなっています。

「レンタル」「購入」対象者の世帯年収分布
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:PC&スマートフォン
その背景として考えられるのが、レンタル派と購入派で既婚率に違いがあることです。既婚率はレンタル派で約27%、購入派で約45%と大きな開きがあります。レンタル派は20代割合が高いことが、独身率の高さに影響していると考えられます。

「レンタル」「購入」対象者の既婚率
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:PC&スマートフォン
既婚率に伴って、子供保有率もレンタル派約26%、購入派約44%と、同様の開きがありました。

「レンタル」「購入」対象者の子供保有率
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:PC&スマートフォン
ChargeSPOTは、30分未満の利用で165円、定額プランで1回(48時間未満)390円からのプランとなっています(2025年5月20日時点)。モバイルバッテリーは安いもので2,000円前後で販売されているため、容量や充電の速さなどをそこまで気にしなければ、買った方が割安な印象を受けます。
購入派はレンタル派よりも世帯年収が高いものの、家庭を持っている人が多く、「出先で都度借りる」よりはマイボトルを持ち歩くような感覚で、より節約に意識が向いている人が多いのかもしれません。
■レンタル派は賃貸、購入派は持ち家
続いて居住形態です。
レンタル派の方がマンション・アパートの賃貸系の割合が高く、購入派の方が一戸建て・マンションの持ち家割合が高くなっています。

「レンタル」「購入」対象者の居住形態
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:PC&スマートフォン
レンタル派はモバイルバッテリーに限らず「所有する」意欲が相対的に低い、また購入派はライフステージ的に持ち家の選択に至りやすい、などが背景として考えられます。
レンタル派に賃貸が多い理由の1つとして、関東地方の居住割合が高いことも影響していると考えられます。

「レンタル」「購入」対象者の居住地域
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:PC&スマートフォン
モバイルバッテリー、レンタル派・購入派|行動の違い
■レンタル派は新しいもの好き
続いて、対象者の普段の行動に注目していきます。
購入時の行動については、レンタル派は「新商品」が最も高く、購入派およびネット人口全体と比べても顕著に高くなっています。

「レンタル」「購入」対象者の購入時の行動
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:PC&スマートフォン
レンタル派は、新しい商品やサービスを積極的に取り入れていく層であることがうかがえます。
■レンタル派はSNS、購入派はWebサイトで情報収集
年代の違いからか、普段の情報収集媒体にも大きな違いが見られました。レンタル派は「SNS」が11ポイントと高く、「交通広告」「屋外広告」も比較的高く出ています。一方で購入派は、大きく突出するものはないものの「インターネット」が最も高くなっており、オンライン上ではSNSよりもWebサイトでの情報収集が活発に行われているようです。

「レンタル」「購入」対象者の情報収集媒体
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:PC&スマートフォン
レンタル派の方が活発にスマホを使う
SNS・アプリの1日あたりの利用時間を見ると、レンタル派は購入派に比べ全体的に各アプリの利用時間が長くなっており、スマホを長時間使っていることが分かります。

「レンタル」「購入」対象者の1日あたりSNS・アプリ利用時間
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:PC&スマートフォン
購入派は自身の持ってるバッテリーによってスマホの利用時間が制限されるのに対し、レンタル派はレンタル代を加味しなければ、ほぼ無制限にスマホが利用できることになります。
それぞれの制約による意識的な違いから、スマホの利用時間の長さにも違いが出ていると考えられます。
■レンタル派はシェア系のサービス利用が目立つ
最後に、各対象者が一般ユーザーに比べて特徴的に利用しているアプリをランキング化しました。
レンタル派はシェアサイクル、傘レンタル、バイクシェアといったシェア・レンタル系のアプリが数多くランクインしました。住まいが賃貸である対象者の割合が高かったことを踏まえても、「所有する」より「借りる」モチベーションが高いことがうかがえます。

「レンタル」対象者の利用アプリ
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:スマートフォン
一方で購入派はポイントが貯まる「ヨドバシゴールドポイントカード」や、家計管理ができる「家計簿 マネーフォワード ME」などが上位入りしていることから、節約意欲が高い対象者が多いと考えられます。

「購入」対象者の利用アプリ
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:PC&スマートフォン
レンタル派は「今この時間」を大事にする
レンタル派と購入派を比較すると、価値観でもやや違いが見られます。特に「将来のことを考えるよりも、今この時間を楽しく生きたい」を見ると、13ptほど違いがありました。

「レンタル」「購入」対象者の感じていたい気持ち
期間:2024年5月~2025年4月
デバイス:PC&スマートフォン
レンタル派は今が大事であるので、「モバイルバッテリーや傘は必要になったら考える(レンタルする)」、購入派は節約意識から「事前に準備をし、出費を減らす」といった行動になっているのかもしれません。
まとめ
今回は、モバイルバッテリーのレンタル派・購入派を比較し、両者の人となりやニーズ、行動パターンなどを調査してきました。以下に調査結果をまとめます。
項目 | レンタル派 | 購入派 |
性別 | およそ半々 | 約64%が男性 |
年代 | 20代が約37%で多数 | 20~60代まで幅広く |
世帯平均年収 | 約444万円 | 約491万円 |
子ども保有率 | 約26% | 約47% |
利用アプリ | シェア・レンタル系のアプリが特徴的 | ポイント・家計簿系アプリが特徴的 |
その他 | 購入派より、SNS・アプリの利用時間が長い | レンタル派より、持ち家率が高い |
レンタル派は、新しいサービスを積極的に取り入れる若い世代が多く、「所有」よりも「借りる」モチベーションが高いことがうかがえました。「今を楽しく生きたい」気持ちが強く、モバイルバッテリーなどは「必要になったら、その時考える」といった消費意識が考えられそうです。
購入派は、レンタル派に比べ年齢層が高く、既婚率も高いため、世帯年収や持ち家率が高くなっている印象です。全体的に節約傾向が伺え、「出費を抑えるために、事前に準備をする」といった消費意識が考えらえそうです
「モバイルバッテリー」という同じ商材を取っても、買う・借りるで利用者・検討者に大きな違いが出ることがわかりました。シェアリングエコノミーが話題となる中、別の商材ではどのような違いが出るのか。マナミナでは引き続き、マーケティングの「気になる」を調査していきます。
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1997年生まれ、大阪大学卒。データアナリストを経て、Webマーケティング・リサーチを軸に、コンテンツディレクション、SNS運用、デジタル広告運用などを担当。現在はフリーで活動しています。