【大阪・関西万博】地域・熱狂度別のデータで振り返る、ガチ勢注目のパビリオンは?

【大阪・関西万博】地域・熱狂度別のデータで振り返る、ガチ勢注目のパビリオンは?

2025年10月13日、184日間の会期を終えた大阪・関西万博は、一般来場者2,500万人を超える大きな賑わいを見せました。本記事ではWeb行動ログデータを用い、「地域」と「熱狂度」の2軸から来場者を分析します。「万博」と「USJ」の選択に地域差はあったのか。「コア層」と「ライト層」では、注目するパビリオンに違いが出たのか。データを紐解くと、属性によって異なる「万博の楽しみ方」が浮かび上がってきました。


【関西・関西以外】万博関心の地域差

本記事では、大阪・関西万博の開催期間中(2025年4月~2025年10月)にデジタルチケットサイト(https://ticket.expo2025.or.jp/)を訪問した人を万博来場者と仮定して分析していきます。

なお分析には、株式会社ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)
を用います。

まず、来場者の居住地域による違いを分析します。チケットサイト訪問者を関西・近畿地方(大阪府、京都府、滋賀県、奈良県、兵庫県、三重県、和歌山県)在住者と、そうでない人にグループ分けして、その特徴を比較します。

万博来場者の属性の違い

最初に、関西と関西以外で来場者層にどのような違いがあるのか見ていきましょう。

関西は40~60代、関西以外は40代以下が中心

以下の図は、来場者の年齢分布を居住地別に比較したものです。

万博チケットサイト訪問者の年代(関西・関西以外)

万博チケットサイト訪問者の年代(関西・関西以外)
集計期間:2025年4月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

関西以外の来場者に注目すると、40代以下の割合が高くなっている一方、60代以下の高齢層の割合は低くなっています。長時間の移動や滞在が負担になりやすいため、高齢層の割合が低くなったと推測できます。

一方、関西の来場者は、40~60代が多くなっていました。来場にかかる体力的負担の少なさから、60代以上の高齢層も比較的来場しやすかったと考えられます。

万博への関心度の違い

関西人は関心層の人数・一人当たりの関心度ともに高い

次に、サイト訪問者数や1人当たりのセッション数といった指標から、万博への関心度を比較します。

万博チケットサイトの基本指標(関西・関西以外)

万博チケットサイトの基本指標(関西・関西以外)
集計期間:2025年4月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

サイト訪問者数を比較すると、全体約900万人のうち400万人が関西と高い割合を占めていました。

さらに、1人当たりのセッション数やページビュー数を比較しても、関西は関西以外の約2倍となっていました。関西在住者は関心を持つ人の数だけでなく、一人ひとりの関心度も高いことがわかります。

この背景には、リピーターが多かった点が影響していると考えられ、新規ユーザー率が関西の方が低いことからも、その傾向が確認できます。

万博来場時期の違い

より「駆け込み万博」をしたのは関西人

次にチケットサイト訪問者数の推移から来場時期を比較します。

万博チケットサイト訪問者数の推移(関西・関西以外)

万博チケットサイト訪問者数の推移(関西・関西以外)
集計期間:2025年4月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

居住地に関わらず終盤にかけてサイト訪問者が増加しており、いわゆる「駆け込み万博」が多かったことがわかります。しかし、「駆け込み万博」のピーク時期には違いが見られました。

関西以外は8月にピークを迎えており、夏休みなどまとまった時間を活用し、来場した人が多かったと推測できます。

一方、関西は9月にピークを迎えています。遠方からの来場者が増える8月を避け、混雑が落ち着くタイミングで「駆け込み万博」をした様子がうかがえます。

また、ピークの高さを比較すると、関西の方が高くなっています。近隣地域での開催のため「行かないと後悔しそう」という心理が働きやすいことや、金銭面・時間面でのハードルの低さが要因として考えられます。

関心商品から見る万博来場準備の違い

次に、チケットサイト訪問者の関心商品から、万博来場の準備における行動を比較しました。なおこの分析には、Web行動データとアンケートデータを用いた分析を行える、株式会社ヴァリューズの分析ツール「Perscope(ペルスコープ)」を用います。

まず、関西在住者の関心商品TOP10を確認します。

関西在住の万博チケットサイト訪問者の関心商品

関西在住の万博チケットサイト訪問者の関心商品
集計期間:2025年4月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

万博ガイドブックが4つランクインしており、事前に情報を収集し、計画的に楽しもうとする姿勢が見て取れます。

また、折りたたみ椅子も上位に4つ入りました。会場内では長い待ち時間に備えて折りたたみ椅子を持参する来場者が多く、その需要の高まりは検索者数の推移からも確認できます。実際に、2025年4月の万博開幕以降、「折りたたみ椅子」の検索数が大幅に増加しています。

「折りたたみ椅子」の検索者数の推移

「折りたたみ椅子」の検索者数の推移
集計期間:2024年11月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

こうした関心商品からも、関西在住者は入念に準備し、可能な限り万博を楽しもうとする姿勢が読み取れます。

では、関西以外に住む人はどうでしょうか。関西在住者と同様、関西以外の人の関心商品にも万博ガイドブックが多く含まれています。

関西以外在住の万博チケットサイト訪問者の関心商品

関西以外在住の万博チケットサイト訪問者の関心商品
集計期間:2025年4月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

一方で、任天堂商品やUSJガイドブックなどユニバーサルスタジオジャパン(USJ)の関連商品が複数含まれており、万博だけでなくUSJに対する関心も見られました。

大阪を頻繁に訪れることが難しいため、一度の来訪で複数の目的地を組み合わせる行動が反映されていると考えられます。

【都道府県別】万博とUSJ、行き先選びの地域差

関心商品の分析から、関西在住者は万博の来場準備に力を入れる一方、関西以外の人はUSJの来場準備も同時に行う様子が見られました。

そこで、大阪滞在時の「行き先選び」に地域差がどのように表れるのか、都道府県単位で詳しく見ていきます。

以下の図は、万博チケットサイト(ticket.expo2025.or.jp)の訪問者数を、USJチケットページ(https://store.usj.co.jp/ja/jp/c/ticket)の訪問者数で割った値を都道府県別に出しています。

都道府県ごとの万博チケットサイト/USJチケットページの訪問者数比

都道府県ごとの万博チケットサイト/USJチケットページの訪問者数比(Dockpitデータより筆者作成)
集計期間:2025年4月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

※全体の訪問者数比(万博:USJ = 5.2:1)に近い地域は灰色で示され、USJ比が高い地域は青、万博比が高い地域はオレンジで示されています。

どの都道府県でも万博チケットサイトの訪問者数の方が多くなっていましたが、USJチケットページとの相対的な比率を計算すると、地域により大きな違いが見られました。

関西地方、特に大阪や奈良は、濃いオレンジとなっており、万博への関心の強さが際立っています。一方、大阪から遠い地域は全体的に青く、USJへの関心度が相対的に高い傾向が見られます。

まとめると、近隣地域の人ほど期間限定のイベントを優先し、遠方の人は定番スポットを選ぶ、もしくは期間限定と定番を組み合わせるという傾向が示唆されました。

【コア層・ライト層】熱狂度で見る万博来場者の違い

ここまでは「居住地」を軸に分析しましたが、万博の熱狂を支えた層をより深く理解するために、ここからは「行動量」を軸に分析を行います。

会期中にチケットサイトへ15日以上訪問した人を「コア層」、それ未満を「ライト層」と定義し、それぞれの特徴を分析していきます。

万博来場者の属性の違い

まずは来場者層の違いを確認しましょう。

関西中心のコア層、関東も多いライト層

以下は、コア層・ライト層の居住地域を示しています。

万博チケットサイト訪問者の居住地(コア層・ライト層)

万博チケットサイト訪問者の居住地(コア層・ライト層)
集計期間:2025年4月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

居住地別の分析でも示唆された通り、コア層の多くは関西在住でした。ライト層も関西の割合が高いものの、その分布はよりネット人口全体に近くなっています。

関西以外に限ると以下のようになります。

関西地方以外の万博チケットサイト訪問者の居住地

万博チケットサイト訪問者の居住地(近畿地方除く、コア層・ライト層)
集計期間:2025年4月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

コア層は、中部地方や四国地方といった大阪に近い地域の割合が特徴的に高くなっています。一方ライト層では、中部地方に加え関東地方の割合も高くなっています。やや距離はあるものの、新幹線によるアクセスの良さが影響していると考えられます。

コア層は女性・40~60代が中心

次に、性別・年代についても確認します。

万博チケットサイト訪問者の性別・年代

万博チケットサイト訪問者の性別・年代(コア層・ライト層)
集計期間:2025年4月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

コア層は女性の割合が若干高く、年代では40~60代が中心となっていました。中年層が多い背景として、子育てが落ち着くなど、金銭的・時間的余裕が生まれやすい点が考えられます。

また、女性比率が高い背景には、公式キャラクター「ミャクミャク」の影響があるかもしれません。2025年の新語・流行語大賞トップ10にも選出された「ミャクミャク」ですが、その関心層は女性が中心となっています。

「ミャクミャク」検索者の性別

「ミャクミャク」検索者の性別
集計期間:2024年11月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

ミャクミャクの「推し活」が女性を中心に広がったことが、女性比率の高さに影響した可能性が考えられます。

万博来場時期の違い

続いて、チケットサイト訪問者数の推移から来場時期の違いについて考察します。

コア層はリピート型で継続的に来場

以下の図は、コア層のチケットサイト訪問者数の推移を示しています。

万博チケットサイト訪問者数の推移(コア層)

万博チケットサイト訪問者数の推移(コア層)
集計期間:2025年4月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

4月から8月にかけて徐々に人数を増やしていることがわかります。10月は開催期間が半月だった点を踏まえると、8月以降はほぼ一定といえるでしょう。

8月までは、初回訪問者の一部がリピーター化し、コア層が拡大した期間といえます。そして8月以降は、コア層が定着し、安定して再訪を続けた期間と考えられるでしょう。

ライト層は初期型と終盤型に分かれる

続いて、ライト層の推移です。

万博チケットサイト訪問者数の推移(ライト層)

万博チケットサイト訪問者数の推移(ライト層)
集計期間:2025年4月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

ライト層は4月から7月にかけて緩やかに減少した後、8月ごろから訪問者が急増しています。

このことから、「新しいものに関心を持ちやすく、開催初期に反応した層」と、「開催終了が迫るなかで、一度は行きたいと考えた”駆け込み万博”層」の大きく2つのグループが存在したと考えられます。

人気パビリオンランキング!注目パビリオンの違い

では最後に、パビリオンページの訪問者数をランキング化し、上位20パビリオンを比較します。コア層とライト層では人気のパビリオンには違いがあったのでしょうか。

パビリオンページの訪問者数ランキング

パビリオンページの訪問者数ランキング(Dockpitデータより筆者作成)
集計期間:2025年4月~2025年10月
デバイス:PC、スマートフォン

※対象:大阪・関西万博公式Webサイト(www.expo2025.or.jp)の各パビリオンページ、各シグネチャーパビリオンサイトのTOPページ

TOP20の顔ぶれに大きな差はないものの、一部パビリオンでは関心の差が見られました。

コア層人気が高いシグネチャーパビリオン

特に違いが出たのがシグネチャーパビリオンです。null2などSNSなどで話題になったパビリオンもありますが、コア層では複数ランクインしている一方(5、8、12、19位)、ライト層では1つもランクインしていません。

シグネチャーパビリオンは公式サイト内に個別ページがなく、外部サイトへ遷移して情報を確認する必要があります。コア層はそうした手間をいとわず積極的に調べていたのに対し、ライト層はSNSなどでの情報収集にとどまったのかもしれません。

実際、コア層は下位への訪問者数の減少が緩やかで、人気パビリオンに限らず、幅広いパビリオンをチェックしていた様子がうかがえます。

ライト層人気が高いガンダム館

ガンダム館の外観

さらにガンダム館(GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION)にも差が見られました(コア層:16位、ライト層:5位)。視覚的インパクトが強い実物大ガンダム像はメディアなどでも取り上げられやすく、ライト層の関心を惹きやすかったと考えられます。

まとめ

本記事では、万博来場者を「地域」と「熱狂度」の2軸で分析し、来場者の特徴や行動の違いを明らかにしました。

万博という多くの人が関心を示す大型イベントですが、地域によって関心を持つ層やその度合いには大きな差が見られました。

2027年には横浜で国際園芸博覧会(GREEN EXPO)が開催されます。テーマや規模は異なるものの、どのような層が関心を示し行動するのか、注視していく価値がありそうです。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

2026年4月に入社予定の大学院修士課程1年生です。大学では分子生物学系の研究に取り組んでいます。

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