スピーカー紹介
岩谷産業株式会社
マーケティング部 部長 新商品開発担当
阿部 周作氏
株式会社ヴァリューズ
データマーケティング局 コンサルティングG ゼネラルマネージャー
岩村 大輝
導入背景と課題感:岩谷産業が抱えていた課題
岩谷産業株式会社 阿部 周作氏(以下、阿部):弊社は、総合エネルギー事業や産業ガス事業などを展開している専門商社です。私が所属しているマーケティング部の前身は、新規事業を開発する組織でした。しかし、領域が非常に広かったため、具体的な成果がなかなか上がらない状況でした。
その後、BtoC商品専門の新商品開発部ができ、昨年からマーケティング部という形で開発を進めています。
株式会社ヴァリューズ 岩村 大輝(以下、岩村):当時抱えられていた課題感についてお聞かせください。
阿部:新商品開発における一番の課題は、良いアイデアが出ても、本当に市場に受け入れられるのか、ターゲットとなるお客様がいるのかがわかりづらく、社内を納得させるのに非常に時間がかかってしまう点でした。
新規事業でよく言われる「死の谷」を越えるための根拠、特にデータを見つけるのが非常に難しかったのです。
新商品開発における課題感
岩村:ありがとうございます。今回開発した「MY ROAST」は、「死の谷」を越えたわけですね。
阿部:はい、一番大きく越えたと思います。
「死の谷」を越えたプロセス
岩村:では、「MY ROAST」が死の谷を越えたプロセスについて具体的にお話しします。私からスライドを説明しつつ、阿部さんにもコメントをいただきたいと思います。
私たちヴァリューズは、岩谷産業さんの新商品開発会議に毎月2時間参加させていただき、ブレストや分析結果のディスカッションを続けています。ポイントは、約2週間前に岩谷産業さんから議題を共有していただき、それぞれでデータ分析やディスカッションをしてから当日を迎えることです。このサイクルを続ける中で、岩谷産業さんも「Dockpit」を使いこなしてくださり、おかげさまで、非常に良い関係が築けていると感じています。
新商品開発における伴走支援体制
阿部:その通りですね。ヴァリューズさんとのミーティングは非常に面白いです。我々が物事を進めるために必要なヒントが得られるので、チームみんなが楽しみにしています。
岩村:そう言っていただけると大変ありがたいです。過去の資料を洗い出したところ、2024年1月から1年半で、約40テーマについて議論してきたことがわかりました。
阿部:色々なテーマをディスカッションする中で、過去のテーマが別の検討で活きることがあるんですよね。例えば、防災に関する話は、様々な議論を経て深掘りできたことが良い気づきになりました。
MY ROASTの誕生から、市場に受け入れられるまで
岩村:では、今回ご紹介する「MY ROAST」についてです。「MY ROAST」は、今年の3月にMakuakeで販売開始し、目標金額の4,000%を超える4,654万円の応援購入を集めた大好評の商品ですね。どのような商品なのでしょうか。
阿部:ありがとうございます。これは、カセットこんろで使える小型のコーヒー焙煎機です。ありそうでなかった商品でして、開発には丸3年かかりました。
ポイントは2つあります。1つは、焙煎機の日本最大手であるフジローヤル様に設計と監修を依頼し、コーヒー愛好家の方にも満足いただける品質を実現したことです。もう1つは、カセットこんろのプロである岩谷産業として、安心・安全で使いやすく作った点です。
まさに、焙煎機のプロとカセットこんろのプロがタッグを組んだ、奇跡的な商品だと思っています。
岩村:「MY ROAST」も、かつては「死の谷」の手前にいて、思い通りに開発が進まなかったわけですね。
当時、阿部さんは「自信のある商品だ」とおっしゃいつつも、どれくらい売れるのか、どうやって社内を説得すれば良いか、という点でお悩みでしたね。
阿部:はい。私自身がコーヒー好きで、コーヒー焙煎という趣味を、カセットこんろで事業化できないかと考えたのが発端です。しかし、アイデアはあってもビジネスとしての確度は全くわからず、不安な状態でした。
岩村:そこでまず、潜在ターゲットの発掘から始めました。「焙煎機」や「生豆」を検索する人々のデモグラフィックや興味関心を分析し、ターゲット像を具体化していきました。
潜在ターゲットの発掘
また、具体的に焙煎機を調べている方が、どのような検討プロセスをたどっているのかも調べました。例えば、高級な焙煎機のリサーチや、焙煎機のDIYに興味があるなどのファクトから、手頃な価格で本格的な焙煎を楽しみたいというインサイトがありましたね。一連の取り組みはいかがでしたか?
ターゲットユーザーの検討プロセス例
阿部:検索データを見た時、「やはり、焙煎機を求めている人はいるんだ」と確信しました。ただ、ターゲットがどういう形で存在するのかわからない中、展示会に出展したんです。すると、本当にたくさんの方がブースにお越しくださいました。
岩村:まさに、データで見ていたような人たちがリアルに現れたわけですね。
阿部:その通りです。コーヒーが好きで焙煎に興味がある方、これから始めたい方、すでに焙煎しているがもっと良い方法を探している方など、データで想定していたターゲット像とリアルで出会えたことで、自信が確信に変わりました。
展示会には社内の人も来ていて、客観的な事実を目の当たりにし、「この商品はいけるね」という空気が生まれたんです。オンラインとオフラインが繋がり、確証に変わった瞬間でした。
岩村:素晴らしいですね。Makuakeでの「まさに欲しかった」というコメントの数々も、「MY ROAST」に需要がある証拠ですね。
阿部:はい、大変ありがたいコメントばかりで、毎日コメントが増えるのが嬉しかったです。我々が想定していたターゲットの方々が応援購入してくださり、本当に嬉しく思いました。
岩村:そして、潜在ターゲットの発掘は「MY ROAST」だけではありません。「ホームシェフプレート」や「MYDANRO」といった商品でも、同様のプロセスで成功を収めていますね。
阿部:はい、どちらもデータを活用し、どのような方がターゲットになり得るのかを徹底的に調べたことが、成功につながったと考えています。
まとめと今後の展望
岩村:最後に、一連の取り組みを通じて得られた成果を阿部さんからお願いします。
阿部:「Dockpit」を使って市場の全体像を素早く掴み、毎月の定例ミーティングでさらに深掘りすることで、解像度高くターゲット像を描くことができました。これにより、スピード感を持って社内の説得や商品開発を進めることができたのが大きな成果です。
何よりありがたかったのは、ヴァリューズのお二方が我々のマーケティング部の一員のように、寄り添ってくださったことです。それが一番やりやすかったですね。
ヴァリューズとの取組を通して得られた成果
岩村:ありがとうございます。私も岩谷さんとの取り組みは、高速でPDCAを回す新商品開発の素晴らしい事例になったと感じています。
今後の展望もお聞かせください。
阿部:我々の強みを活かした商品で、皆様の日常が少しでも豊かになるような、幸せな気持ちを味わっていただけるような商品開発を続けていきたいです。
岩村:次回作も準備されているとか。
阿部:はい、第4弾として、カセットガスを使った炊飯器を考えています。「極上のごはんを味わう」をコンセプトに、ご家庭で、最高に美味しいガス炊きのご飯が食べられる商品に作り替えていきますので、ぜひご期待ください。
岩村:本日は貴重なお話をありがとうございました。





2026年4月に入社予定の大学4年生です。法学部法律学科で、主に環境法について学んでいます。
趣味は旅行と日本舞踊です。