忙しい現代人にとって、集中力を高めたいときの定番となりつつあるエナジードリンク。本記事では、そんなエナジードリンクのオフライン購買データ※をもとに、20代と30代でエナジードリンクの頼り方にどのような違いがあるのかを分析していきます。
※オフライン購買データ:大手流通50社スーパー・ドラッグストアの店舗での購買データ
分析には、株式会社ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。
分析の対象商品は、1缶単位で販売されている3種類のエナジードリンク(モンスター、レッドブル、ZONE)です。
エナジードリンクに頼る20代・30代
まずは、エナジードリンクを購入している年代を見ていきます。

エナジードリンク購入者の年代
集計期間:2024年5月~2025年4月
清涼飲料カテゴリ全体と比較して、エナジードリンク購入者は20代・30代が多く、60代以上は少ない傾向にありました。
エナジードリンクはやはり若年層に支持されているようです。年齢を重ねるにつれ健康志向が高まり、摂取を控える人が増えることが理由のひとつと考えられます。
エナジードリンクの購入時間帯
エナジードリンクの購入が多い20代・30代ですが、その活用法は同じなのでしょうか。ここからは20代と30代に絞って、エナジードリンクの頼り方の違いを分析していきます。
まずは、購入時間帯を比較してみましょう。

20代・30代のエナジードリンクの購入時間帯
集計期間:2024年5月~2025年4月
■集中力がきれやすい夕方以降に購入する20代
20代は夕方以降購入が増え、19時にピークを迎えています。19時以降は30代より購入が多く、集中力が切れやすい夕方以降にエナジードリンクを活用する人が多いようです。
学生も多い20代は、試験勉強や課題提出、友達との集まりや趣味などで深夜まで活動する人が多いと考えられます。社会人であっても体力のある20代は、締め切り前の追い込みや副業、資格勉強など、業務時間外でも作業に取り組む人が多いのかもしれません。
こうした遅い時間に短時間で集中力を高め、目の前のタスクを乗り越える「短期決戦」に備えてエナジードリンクを購入していると推測できます。
■日中の集中力維持のためお昼に購入する30代
30代はお昼12時がピークで、10時~15時の日中は20代より購入が多くなっています。20代と異なり、日中の作業中にエナジードリンクを活用する人が多いようです。
責任の大きい仕事を任され、家事や育児などの負担も増える30代は、1日を通して高い集中力が求められます。そのため、仕事中の集中力維持など、長時間高いパフォーマンスを維持する「長期戦」のために、エナジードリンクを活用していると推測できます。
また、18時にも2つ目のピークがあり、20代同様、深夜の作業に備えてエナジードリンクを購入する層も一定数存在するようです。
エナジードリンクと同時購入されやすい商品
エナジードリンクがどのような目的で購入されているのか、同時併買データからさらに詳しく探っていきます。
■軽食を一緒に購入する20代
以下の表は、20代のエナジードリンク購入者が同時に購入することの多い商品を示しています。

20代のエナジードリンク購入者の同時併買商品
集計期間:2024年5月~2025年4月
順位:リフト値※降順
※リフト値:全購入における購入率と比較し、エナジードリンク購入時の購入率がどれだけ高いかを示す。画像は、エナジードリンクと同時に購入されやすい商品の降順。
カップ麺や栄養食品など、手軽に栄養補給できる軽食が多くランクインしています。深夜の短期決戦に備えてエナジードリンクを購入する20代が、軽食を一緒に買う理由として以下の2つが考えられます。
夕食の時間短縮
深夜までの作業を要する状況では、食事準備や食事そのものに時間を割きたくない人も多いはずです。
そのため、手軽に準備でき、すぐ食べられるカップ麺などを夕食代わりにしている可能性が考えられます。
また、食べ過ぎると眠くなる可能性があるため、夕食を軽めにしようと考える人もいるかもしれません。
手軽にエネルギーチャージ
夕食後、深夜まで作業が続くと、小腹が空くことも多いはずです。
エネルギー不足で作業効率が落ちてしまわないよう、手軽に必要な栄養を摂取できる栄養食品などが一緒に購入されているのかもしれません。
■ペットボトル飲料・栄養ドリンクを一緒に購入する30代
同様に30代についても、エナジードリンクと同時に購入されやすい商品を見ていきましょう。

30代のエナジードリンク購入者の同時併買商品
集計期間:2024年5月~2025年4月
順位:リフト値降順
20代と異なり、軽食ではなく、500mL以上のペットボトル飲料や栄養ドリンクが多くランクインしています。
お昼にエナジードリンクを購入する30代は、昼以降の「長期戦」に備えて容量のある飲料も一緒に購入していると考えられます。
さらに、栄養ドリンクを同時に購入する傾向からは、飲み物でエネルギーを補おうとする意識もうかがえます
また、ビタミン含有の栄養ドリンクが多いことから、栄養ドリンク特有の味が好まれているかもしれません。あるいは、健康意識の高まりに伴い、エナジードリンクから他の栄養ドリンクにシフトしようとしている可能性も考えられます。
近い年代でも消費行動は異なる
今回は、20代と30代のエナジードリンクの活用法の違いを分析しました。
20代は、夕方以降の遅い時間に、軽食と一緒にエナジードリンクを購入し、深夜の「短期決戦」に備えているようです。
一方30代は、昼の時間帯にペットボトル飲料や他の栄養ドリンクと一緒に購入し、日中の集中力維持のためにエナジードリンクを活用しているようです。
「若年層」とひとくくりにされることも多い20代と30代ですが、エナジードリンクの頼り方には明確な違いがありました。
この違いは、変化の多い環境の中で「今を最大限楽しもう」「目の前のタスクを乗り越えよう」とする20代と、仕事・プライベート両面で責任が増し、高い集中力が常に求められる30代という、ライフスタイルや社会的役割の違いが表れているとも解釈できます。
生活環境の変化が大きい若年層は、少しの年代の違いが消費行動に大きく影響すると考えられます。若者向けのマーケティングを考える際は、「若年層」とひとまとまりにせず、より細かな視点で分析することが重要になるかもしれません。
2026年4月に入社予定の大学院修士課程1年生です。大学では分子生物学系の研究に取り組んでいます。