Rocket Now(ロケットナウ)とは
米国に本社を持つEC企業Coupang(クーパン)※の子会社が運営するフードデリバリーサービス「Rocket Now(ロケットナウ)」。国内では2025年1月から東京の一部地域でサービスを開始し、現在は東京・埼玉・千葉・神奈川と対応エリアを広げています。9月30日からは大阪進出も果たし、今後段階的に全国展開していく事が予定されています。
参考:Rocket Now_RGA_Fukuoka | Rocket Now
では、ロケットナウが今どのくらい使われているのか、実際の数値を見ていきましょう。なお分析には、毎月更新されるデータを用いて、検索キーワードやWebサイトのユーザー分析ができる、株式会社ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。
※記事の一部修正とお詫び(2025年10月31日追記)
Coupangの説明に関し、「韓国最大級のEC企業」の記載をしておりましたが、正しくは「米国に本社を持つEC企業」であり、内容を修正しております。謹んでお詫び申し上げます。
ロケットナウのヒット状況|約8ヶ月でユーザー数100万人突破
ロケットナウのアプリユーザー数は2025年8月時点で100万人を突破しました。直近2ヶ月で特に増加していて、2025年6月(約20万人)と比較すると2025年8月のユーザー数は5倍以上になっています。
「Rocket Now」アプリユーザー数
調査期間:2025年1月~2025年8月
調査デバイス:スマートフォン
■Uberや出前館にも迫る勢いのロケットナウ
次に、人気デリバリーアプリ「Uber Eats」「出前館」「menu」「Wolt」のアプリユーザー数をロケットナウと比較します。なお調査エリアは、ロケットナウの対応エリア1都3県に限定しています。
「Rocket Now」「Uber Eats」「出前館」「menu」「Wolt」アプリユーザー数
調査エリア:東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県
調査期間:2025年1月~2025年8月
調査デバイス:スマートフォン
2025年1月から見ると、ロケットナウ以外のアプリユーザー数は全体的に減少しており、フードデリバリー業界全体が停滞・縮小傾向にあることがわかります。ロケットナウは2025年7月から急激にユーザー数が増加していますが、他のアプリのユーザー数には大きく影響していないと言えそうです。
2025年8月時点の各アプリユーザー数を見ると、Uber Eats 163万人、出前館 147万人、ロケットナウ 95万人、menu 45万人、Wolt 13万人という結果になりました。ロケットナウはサービス開始から間もないにも関わらず、すでに大きな支持を得ており、好調な走り出しとなっています。今後、対応エリアの拡充やブランド認知の向上が進めば、ロケットナウはがUber Eatsや出前館と肩を並べる有力なサービスへと成長する可能性も十分に考えられます。
ロケットナウの2つのヒット要因
次に、ロケットナウのヒット要因をサービス内容から見ていきます。
■①送料・サービス料ゼロ
ロケットナウの大きな特徴は、送料とサービス料が0円の「ゼロ配」であることです。一般的にフードデリバリーサービスは配送料とサービス料がかかります。サービスによって価格は異なりますが、500円ほどかかるケースもあるようです。送料・サービス料がゼロのロケットナウはお得感があり、安くデリバリーが出来るというイメージに繋がっていると考えられます。
■②特別キャンペーン
ロケットナウは現在初回登録キャンペーンとして4,000円分の割引クーポンを配布しています。さらにお友達紹介キャンペーンで自身にも1,000円分貰えるキャンペーンを行っており、紹介をすればするほどクーポンが貰える仕組みになっています。
ロケットナウのプロモーション戦略を分析
次はヒットの要因をプロモーションの観点から見ていきましょう。
「rocketnow.co.jp(公式サイト)」「Rocket Now(アプリ)」のユーザー数
調査期間:2025年1月~2025年8月
調査デバイス:PC&スマートフォン
上図は青線がロケットナウ公式サイト、オレンジ線が公式アプリのユーザー数推移を示しています。アプリでは7月頃からユーザー数が急増したのに対し、公式サイトでは5月頃にユーザー数が増え、注目度が高まっています。
同時期の公式サイトの集客構造を見てみましょう。
「rocketnow.co.jp」の集客構造(ノーリファラーを除く)
調査期間:2025年1月~2025年8月
調査デバイス:PC&スマートフォン
2025年4月と5月を見ると、紫色で示されたディスプレイ広告の割合が高くなっています。また黄色で示されたソーシャル(SNS)からの流入も継続的に見られます。アプリのユーザー数が急増した7月からは自然検索が増えているのも特徴で、認知度が徐々に高まったことが分かります。
次にディスプレイ広告の構成を見ていきましょう。ディスプレイ広告の内訳はTiktokが86%を占めていました。
「rocketnow.co.jp」のディスプレイ広告構成
調査期間:2025年1月~2025年8月
調査デバイス:PC&スマートフォン
また、ソーシャルの構成も見ていきましょう。ソーシャル構成を見ると、YouTubeが96%を占めており、Xが2%という結果になりました。
「rocketnow.co.jp」のソーシャル構成
調査期間:2025年1月~2025年8月
調査デバイス:PC&スマートフォン
YouTube(ソーシャル)から安定した流入数を確保しつつ、短期的にTikTok(ディスプレイ広告)を利用することで一気に流入数が増加したことがわかります。
■オフライン広告の効果も絶大
SNSでの反応を見ると、ロケットナウは以前からチラシの配布をしており、オフライン広告も実施していることが分かります。
また、ロケットナウは2025年8月にマーケティングキャンペーンを行っており、都内全域で新TVCMの放映、屋外広告、タクシー広告を展開していました。
ロケットナウのアプリユーザー数は、2025年7月は41万人でしたが、8月は117万人と大きく伸びています(前述の図の通り)。この時期は自然検索からの流入も増えていることから、オフライン広告が集客に与える影響はまだまだ大きいと考えられます。
参考:Rocket Now、新マーケティングキャンペーンを開始 | CP One Japan合同会社のプレスリリース
ロケットナウのユーザーを分析
次にロケットナウのアプリユーザー属性を、Uber Eats、出前館と比較していきます。
■アプリユーザーの年代
まずは年代です。
「Rocket Now」「Uber Eats」「出前館」アプリユーザーの年代
調査エリア:東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県
調査期間:2025年1月~2025年8月
調査デバイス:スマートフォン
ロケットナウ(青線)を見ると、20代と30代をボリューム層としつつ、40代以降のユーザーの割合も高くなっています。とくに60代の割合は、Uber Eats・出前館と比較して最も高くなっています。
これに対し、Uber Eats(オレンジ線)は20代と30代がボリューム層となっており、50代以降のユーザーの割合は低くなっています。また、出前館(緑線)は20代の割合が低く、30代と40代がボリューム層になっています。
Uber Eatsは若者人気、出前館はファミリー人気といった傾向がある中で、ロケットナウは幅広い年代から利用されていることがわかります。
■他サービスとの併用率
次にロケットナウ、Uber Eats、出前館の併用状況を見ていきましょう。
「Rocket Now」「Uber Eats」「出前館」アプリ併用図
調査エリア:東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県
調査期間:2025年1月~2025年8月
調査デバイス:スマートフォン
併用図を見ると、各サービスとも併用率が高いことが分かります。フードデリバリーサービスのユーザーは、複数サービスを使い分けている人が多いようです。
併用率の内訳を詳しく見ていきましょう。図はUber Eatsから見た各アプリの併用状況(左)と、出前館から見た併用状況(右)です。
「Rocket Now」「Uber Eats」「出前館」アプリ併用図
調査エリア:東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県
調査期間:2025年1月~2025年8月
調査デバイス:スマートフォン
Uber Eatsは併用なしが55%を占めていますが、出前館では併用なしは48%となっています。Uber Eatsはお得に注文できるサブスクリプションサービス「Uber One」もある影響か、他サービスとの併用率がやや低いのかもしれません。
フードデリバリー業界の「これまで」と「これから」
コロナ禍で急成長したフードデリバリー業界ですが、市場規模自体は2023年から停滞・下降傾向にあります。まずピーク時のユーザー数データですが、Uber Eatsと出前館では500~600万人程度のユーザー数がいたことが分かります。
「Uber Eats」「出前館」「menu」「Wolt」アプリのユーザー数推移
(引用:人気デリバリーアプリ「Uber Eats」「出前館」「menu」「Wolt」のポジション分析 | コロナ初期からの変化は?【2024年最新版】 | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン)
調査期間:2020年1月~2020年12月、2023年1月~2024年5月
デバイス:スマートフォン
一方で2025年のデータを見ると、Uber Eatsと出前館が300~400万人程度のユーザー数となっており、フードデリバリー業界はやや縮小気味であることが読み取れます。
「Rocket Now」「Uber Eats」「出前館」「menu」「Wolt」アプリユーザー数
調査エリア:全国
調査期間:2025年1月~2025年8月
調査デバイス:スマートフォン
業界における各サービスのポジションが固まりつつある中、ロケットナウが新たに参入することで、需要の争奪はさらに激化すると予想されます。
■「格安デリバリー」の位置を確立できるかが鍵
ロケットナウは送料・サービス料0円という、既存のサービスにはない強みを持っています。これにより新たな需要を増やすことが出来れば、更なる成長が期待できます。
ここで、「グルメ デリバリー」業界内(※)のシェアを見てみましょう。
※株式会社ヴァリューズが独自に定義するサイトカテゴリに準ずる
「グルメ デリバリー」業界シェア
調査期間:2024年9月~2025年8月
調査対象:各社の公式サイト(ネット注文サイト)
調査デバイス:PC&スマートフォン
業界シェアを見ると、Uber Eatsや出前館の他に、ピザチェーン、すらいらーく、モスバーガー、銀のさらなど、自社でデリバリーを展開する店舗も大きなシェアを占めていることがわかります。特にピザハットは業界シェアの4分の1を占め、業界での影響力が見て取れます。
ここで、ピザハットのアプリと、Uber Eats、出前館アプリの併用状況を見てみましょう。
「Pizza Hut Japan」から見た他アプリ併用状況
調査期間:2024年9月~2025年8月
調査デバイス:スマートフォン
ピザハットアプリとUber Eats、出前館アプリを併用しているユーザーは少なく、ピザハットアプリのみを利用している人(併用なし)が約6割を占めています。
これは、他のデリバリーサービスに対して「価格が高い」というイメージが根強く、ピザ以外のデリバリーを利用しない層が一定数存在する可能性を示しています。こうした中で、送料・サービス料が無料のロケットナウは、既存の価格イメージを覆し、これまでデリバリーを敬遠していた層にも浸透する可能性があります。
まとめ
飽和状態にあると見られていたフードデリバリー業界に、新たに参入したロケットナウ。送料・サービス料を0円とする革新的な取り組みによって、価格に敏感なユーザー層だけでなく、デリバリー未経験層の開拓にもつながる可能性がある事がわかりました。新たな需要を獲得できるかがロケットナウの成長を左右する重要な要素となるでしょう。
▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。









26卒内定者アルバイトの大学院生。大学では害虫防除の研究をしています。