カテゴリーエントリーポイント(アイデア探索のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

カテゴリーエントリーポイント(アイデア探索のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回はカテゴリーエントリーポイント(アイデア探索のアウトプット)について寄稿いただきました。※本記事は菅原さんの書籍『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)と連動した内容を掲載しています。


1.カテゴリーエントリーポイントとは

●全体像イメージ

カテゴリーエントリーポイントとは

●概要

カテゴリーエントリーポイント(CEP)とは、消費者の間に自然に存在している「購買につながる生活シーン」を参照して、カテゴリー(領域強化や新規参入を目指す市場)の中でブランド(自社プロダクト)が選ばれる機会を定義する概念です。ブランド戦略における近年の重要概念で、書籍『ブランディングの科学』シリーズで広く知られるようになりました。

自社で特定・選択したCEPの提供価値を高めたり、CEPの数(振り幅)を増やすことで、「○○という商品カテゴリーと言えば、○○という商品ブランド」というように、ユーザーの想起(選択肢)の中に入りやすくして市場浸透を狙う効果があります。CEPの成功例では提供価値の中でも特に「新奇性が高いもの」を特定して独自性を引き上げる方法論が取られています。

●構成要素

カテゴリーエントリーポイントの構成要素は以下のようになります。

CEPの概念が広く知られるきっかけになった書籍『ブランディングの科学』シリーズでは、CEPを特定するためのフレームワークとして、次のような手順が紹介されています。

<CEP特定のためのフレームワーク>

●1.Why?/目的は?
●2.When?/いつ使う?
●3.Where?/どこで使う?
●4.With whom?/誰と一緒に使う?
●5.With that?/何と一緒に使う?

出典:『ブランディングの科学|新市場開拓篇』(バイロン・シャープ ジェニー・ロマニウク 共著 朝日新聞出版 刊)※シリーズ2冊目に刊行された青い表紙の本です。

ただ、上記のフレームをそのまま使おうとすると実生活のシーン要素が強すぎて、ウェブ空間でのユーザーコミュニケーションを主とするプロダクトリサーチには当てはまらない項目も出てきます。そのため、私はCEPのフレームワークを形成するためのリサーチクエスチョンを少しアレンジして次のように使用しています。

<プロダクトリサーチに適したCEP調査用のリサーチクエスチョン>

●1.CEP:商品
○○[調査テーマ]をどのような生活シーンで必要としている?(誰が、何を、どのような目的で)
●2.CEP:機能
○○[プロダクト名称]での○○[購入・利用]で便利だと感じた機能(表示情報・仕様)は?
●3.CEP:特典
○○[プロダクト名称]での○○[購入・利用]でお得だと感じた特典(割引・クーポン・ポイントなど)は?

●よくある課題

カテゴリーエントリーポイント  よくある課題

「商品や機能をひと通り揃えたはずなのに、なぜ使われないのか?」
⇒この質問に一枚で答えるためのアウトプット

①ビジネス主導のグロースに陰りがあるケース

ビジネス主導の戦略、つまり、大型セールや会員優待特典などの獲得マーケティングはプロダクトのグロースに欠かせない取り組みですが、目標設定のあり方が自分たち(自社)ベースのため、やがてグロースの勢いに陰りが差してきます。

また、このような時の打開策として「ブランド戦略」を打ち立てるケースも多いのですが、概念的で具体性に欠けるため実効性が無く事態の打開には至らない展開もセットで発生しがちです。ユーザー観点が薄いとすべて絵に描いた餅です。

②組織内で定性調査への期待役割が低いケース

日系企業は問題解決の手段において伝統的に数字を重視しています。根拠となる数字を導くリサーチ手法はデータ分析とアンケートが主となり、定期観測で集めたデータを材料にして、すべて数値の増減から事象を捉える傾向があります。

この文化が強いがために、定性調査(インタビュー)が行われる機会が少なく、実施を検討したとしても、「実施方法がよくわからない、数人に聞いたとて判断材料にならない、時間をかけるだけ無駄」という位置づけになってしまいます。

2.作り方

<STEP1:CEP調査の実施>(調査票の図表を参照)

カテゴリーエントリーポイントの作り方(作成手順 1/3)

カテゴリーエントリーポイント (調査票)

①リサーチカテゴリーを定義する
・リサーチカテゴリー=事業展開するビジネスカテゴリーを定義する
・実査上はスコープの設定が成否を分けるためカテゴリー理解が重要
・分析で苦慮する場合に備えてデスクリサーチで解像度を高めておく

②CEP調査を行う
・自由回答形式のアンケート調査をCEPテーマに特化して実施する
※回答負荷が高い調査形式のため、単独実施での本調査が望ましい。

<STEP2:CEP調査の分析>(プロダクト運営のアイデアの図表を参照)

カテゴリーエントリーポイントの作り方(作成手順 2/3)

カテゴリーエントリーポイント (プロダクト運営)

①商品・機能・特典の回答傾向を列挙する
・回答件数が多いものを分類して箇条書きでまとめる
・数値が関連する項目では目安の数値を記載する(割引額や割引率など)

②事実情報や特記事項をコメント入れする
・回答傾向の考察を上部のコメントスペースに記載する

③質問文や補足を記載する
・元質問を含む調査概要情報を記載する

<STEP3:CEPアイデアの選択>(探求マップ+Pros/Consの図表を参照)

カテゴリーエントリーポイントの作り方(作成手順 3/3)

カテゴリーエントリーポイント (探求マップ+Pros/Cons)

①調査結果をもとにアイデアを洗い出す
・プロダクトを利用するアイデアを3〜4案くらい書き出す
・各メリットに紐づくユーザーゲインを3〜4点ほど書き出す
※訴求ファクトが明快なものを選ぶ(実態が無い概念情報は不向き)

②各アイデアにPros/Consの評価を行う
・それぞれのアイデアにPros/プロス(賛成意見・メリット)Cons/コンス(反対意見・デメリット)を書き込む

<記入例>
・Pros(賛成):○○のアセットを活かせる、○○の強化方針と合致
・Cons(反対):○○の開発負荷が発生する、○○との一貫性を検討

③探求マップを参考にCEPを選択する
・自社に望ましい(好ましい)連想をCEPとして選択する
・探求マップを参照しながらチャレンジ度合い(新奇性/新規性)を論じる

3.使い方

カテゴリーエントリーポイントの使い方

①ユーザー目線の新奇性から独自性を設定する

CEP調査を行うと、商品が使用される生活シーンや利用を促進するプロダクトの機能・特典が何かの情報を得られます。消費者の生活感・景況感・人生観を踏まえて、ユーザー目線で導き出したカテゴリー戦略を立てることが可能です。

実務では新規事業や領域強化のアイデア探索シーンで真価を発揮します。こうしたシーンでは独自性の追求が第一の与件に上がりますが、CEP調査ではユーザー目線の新奇性を確保してそれを基調に独自のポジショニングを設定できます。

組織の既存活動やアセットをベースにしていると思考の制約がついて回りますが、CEPは既にユーザーにフィットしているアイデアを吸収するアプローチを取るので、プロジェクト展開時にストーリーも組み立てやすいのが利点です。

②数字中心の組織で質的な分析の価値を広める

CEP調査は、調査手法の分類は量的なアプローチを取る定量調査でありながら、実態としてはインサイトの探索を目的とする質的なアプローチを取る定性調査に近く、数字文化の組織が定性調査の価値に触れる格好の入口になります。

得られた調査結果は戦略構築や体験設計のアウトプット(リーンキャンバス、SWOT分析、カスタマージャーニーマップ、ユーザーストーリーマップなど)へ接続がしやすく、提供価値を定義する決定的なインプットになります。

組織でのCEPの理解がうまく進むと、定性文化の会社で定量調査を行うきっかけになったり、定量調査オンリーの会社で定性的なアプローチを取り入れるきっかけになります。デザインリサーチ中心の組織とも相性が良い調査手法です。

この記事のライター

株式会社アイスリーデザイン
chapter UI/UXデザイングループ スペシャリスト
菅原大介

リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、日系最大手のマーケティングリサーチ会社で月次500問以上を運用する定量調査のディレクター業務を経験。総合ECサイト・アプリを運営する大手事業会社でデジタルプロダクトの戦略企画を担当したのち、現在は株式会社アイスリーデザインでUI/UXデザインの支援・研究に携わる。

デザインリサーチとマーケティングリサーチのトレンドをウォッチするニュースレター「リサーチハック101」を個人で発行するほか、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして活動や記事の監修も行っている。著書『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)、『リサーチからはじめる仮説ドリブン・マーケティング』(WAVE出版)

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