1.従業員アンケートとは
■●全体像イメージ
■●概要
本項で解説する従業員アンケートとは、新規事業開発・中期計画策定などのシーンで、経営ボードや執行部が領域強化・ピボット・テコ入れを検討するにあたり、従業員各位のイメージやアイデアを参照するための社内アンケートです。
調査結果から、総体的にどのようなプロダクトになって欲しいか、具体的にどういう展開アイデアがあるかを把握し、経営方針との整合性・蓋然性を調整しつつ、前出のような改革プロジェクトで意見やアイデアを採り入れていきます。
※本項では「アイデア探索」目的の社内アンケートの実施方法を解説します。いわゆる満足度調査のようなアセスメント型のアンケートとは目的や手法が異なるのでご了承ください(その違いや応用可能なポイントについても補足します)
■●構成要素
従業員アンケートの構成要素(質問項目)は以下のようになります。
1.ユーザー視点でプロダクトに期待するブランドイメージ(複数回答)
・従業員がプロダクトの今後に期待するイメージ
2.ユーザー視点でプロダクトに期待するカテゴリー優先度(複数回答)
・従業員がプロダクトで強化して欲しいカテゴリー
3.改革を実現するためのアイデア(自由回答)
・従業員が考える強化領域・提携先・PR施策・実行体制など
4.業務での成功体験(自由回答)
・従業員が「成功した」と感じる瞬間(仕事への関わり方、自身の成果基準など)
■●よくある課題
「中長期方針の決定に良い判断材料が全く出てこない…」
⇒この悩みに一枚で答えるためのアウトプット
①経営者や執行部に対する不信感が募っているケース
経営者や執行部への不信感はどのような組織にも一定存在するものです。この中には、「会社のこの先の方向性がわからない」「○○事業がどう役立っているかわからない」など、中長期の方針や展望に関する声が少なくありません。
組織が一定規模になると従業員満足度調査などのアセスメントでこうした状況をスコアリングしていきますが、実際には意見を発することを従業員が我慢していることも多く、経営と現場の距離感が空いてしまう状況が発生します。
②改革時に討議のアイデアが行き詰まっているケース
新規事業や中期計画では、失敗がなく旨みのある市場を狙おうとするものです。そのため、徹底的に市場データ・顧客データを洗い出すのですがー皮肉にもこの方法は討議のアイデアに行き詰まってしまうことが少なくありません。
既存の自社データやトレンドデータからは一般的な方向性しか出てこなかったり、本来の自社のアセットやイメージとは無縁なものが出てきたります。これはこれで一つの成果ですが、進展を得られる決定材料とはなり得ません。
2.作り方
①イメージの選択肢は自社と業界の両面から構成する
・選択肢の半分は、自社のブランドアイデンティティ・運営方針・デザイン原則などに関する項目で構成する
・選択肢のもう半分は、事業ドメイン一般で求められる項目(サービス・ビジネスに関するもの)で構成する
・このほか、「その他」「特にない」の2項目を合わせて、計20項目以内に収まるよう調節する
※もちろんアンケート実施時は選択肢の順序をランダムに提示する
②カテゴリー優先度の選択肢は選択個数上限を定める
・カテゴリー優先度の選択肢は選択個数の上限を3つ程度までに定める
(アンケートツールで選択個数上限を制御するか、質問文で指定する)
※従業員の立場では全カテゴリーが重要という心理が働きやすいため、念のための措置
<カテゴリーに相当する概念(例)>
・商品分類(またはサービスメニュー)
・顧客分類(BtoBでは顧客の業種など)
・エリア分類
③改革のアイデアをイシューベースでヒアリングする
・アイデアはイシュー(課題・大義)ベースで募る
※事業別や商品別に意見を求めると既に検討の俎上にある回答が集まりやすいのと、担当部門による解決責任に意見が集中しやすいため、全体で討議することで効率が上がる観点が揃うよう尋ね方を工夫する。
<イシューに相当する概念(例)>
・強化カテゴリー・サービス
・企業グループ内の連携・外部サービス提携
・プロモーション・コミュニケーション施策
・組織編成
④成功体験から従業員の価値観・志向性を理解する
・入社して以来の成功体験を尋ねる
※よく似たヒアリングの方法である目標管理制度や従業員満足度調査(人事制度施策としてのもの)は、チームの達成目標やメンタルコンディションにフォーカスしていることが多いため、個人の中にある想いを理解するには本項の質問粒度が適している(またはN1インタビューを行う)
3.使い方
①経営者と従業員の間のイメージギャップを分析する
「ブランドイメージ」の質問の選択回答結果からは、抽象度が高いブランドアイデンティの項目と具体性が高いカテゴリー一般に関する項目の結果を比較して、どういう表現を取れば方針が理解されやすいかを考える手がかりにします。
「カテゴリー優先度」の質問の選択回答結果からは、従業員の大勢が期待する看板カテゴリー(サービス・ブランド)を確認し、また個別項目の比率の大小だけでなく、総じて同じテーマ性を持つ項目が選択されているかを注視します。
②良いアイデアをワーキンググループの討議に活かす
「改革のアイデア」の質問の自由回答結果からは、「そもそもそうべきなのにできていない」という良い意味で現実感に根ざした声が多く上がります。そうした声を参考に、上流からのアプローチで全社をリードする体制を検討します。
「成功体験」の質問の自由回答結果からは、幸福度が高いプロジェクトや仕事要件(サービスのスケール体験、企画提案が実現する体験、専門技能の習得など)がわかります。これを改革の中に採り入れることができないか検討します。





株式会社アイスリーデザイン
chapter UI/UXデザイングループ スペシャリスト
菅原大介
リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、日系最大手のマーケティングリサーチ会社で月次500問以上を運用する定量調査のディレクター業務を経験。総合ECサイト・アプリを運営する大手事業会社でデジタルプロダクトの戦略企画を担当したのち、現在は株式会社アイスリーデザインでUI/UXデザインの支援・研究に携わる。
デザインリサーチとマーケティングリサーチのトレンドをウォッチするニュースレター「リサーチハック101」を個人で発行するほか、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして活動や記事の監修も行っている。著書『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)、『リサーチからはじめる仮説ドリブン・マーケティング』(WAVE出版)
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