情報収集の習慣が定着する!AIデスクリサーチ活用術【基礎編:AIデスクリサーチのプロンプト】|現場のユーザーリサーチ全集

情報収集の習慣が定着する!AIデスクリサーチ活用術【基礎編:AIデスクリサーチのプロンプト】|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。7月公開の本稿からは「情報収集の習慣が定着する!AIデスクリサーチ活用術」と題してAI活用ポイントについて連載します。初回は「基礎編:AIデスクリサーチのプロンプト」の解説です。※本記事は菅原さんの書籍『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)と連動した内容を掲載しています。


基礎編:AIデスクリサーチのプロンプト

基礎編ではAIツールを活用してニュース・トレンドを情報収集する方法を紹介します。私自身がリサーチ業務で使用しているプロンプトもそのまま掲載するほか、技術環境に左右されず簡単に始められて、また情報収集が長続きするポイントを交えて説明します。

1.あなたの現在の情報収集スタイルはどれ?

はじめに、あなたの現在の情報収集スタイルを振り返ってみましょう。手段をベースにして整理すると、デスクリサーチの方法は主に次のように分類することができます。

デスクリサーチの手法

①自分で都度探索する

・定期的に、あるいは不定期に、情報メディアやキーワード単位で検索して回遊する
・ブックマーク・メルマガ登録(ニュースメディア、企業や個人アカウント)など

自分で都度検索する方法は最もベーシックな情報収集スタイルで、旬のトレンドやバズ情報への理解を都度深めることができます。AIがある今となってはかなりプリミティブな手段ですが、能動的な姿勢により情報感度を高いレベルでキープすることができます。

他方、膨大な検索結果の中から自分が欲しい情報がどれなのかを情報を選別する手間がかかることや、情報の検索を思い立った時に行うため忙しくなってくるとやり忘れてしまうなど、習慣化にあたっての問題は大きく、総じてかなり自己管理が求められます。

②Googleアラート+Slack自動通知

・Googleアラートでキーワード設定→アラートメール(いわゆるエゴサーチ)
・SlackのRSS連携機能で最新情報を共有するためのチャンネルに自動通知する

自分で都度探索する方法の弱点を解消するのが、GoogleアラートとSlack自動通知で自動的に情報を収集する方法です。これなら情報の見落としを減らせます。手段となるツールには他にもRSSフィードなど更新通知を自動で配信してくれる機能があります。

他方、登録した分野のニュース・トレンド情報が何でもメールやチャンネルに入ってくるので、情報量の多さから次第にこの機能がうっとうしくなり、定期的に見なくなったり、組織内でのリアクションも薄いとやがてクローズする対象にもなりかねません。

③AIチャット

・AIチャットで都度、関心のある話題について尋ねる
・定期的に行うには情報収集タスクをルーティンとしてスケジュール設定する

上記のほか、今はAIチャットで聞く手段が加わりました。本稿でもこの方法をおすすめする立場を取りますが、設定や運用が雑だと上記の①や②の欠点は残り続けるので注意が必要です。それくらい情報収集を習慣化するというのは難しい作業でもあります。

2.AIを活用する情報収集でよくある課題

ビジネスパーソンとしてAIを活用した情報収集を行う際、次のような課題によく直面します。

よくある課題

①AIツールを使いこなしていきたいが組織で許可されていない

経営や本部からはAIツールの使用を推奨されるものの、費用的にアカウントは厳密に管理されており気軽に試せる空気感はない(使うか使わないかを迫られている)。またそもそも社内の申請基準が厳しく、話題になっているツールを気軽に試すことはできない。

②AIにかかわらず日常の業務が忙しくて触れている余裕がない

業務のルーティンにAIツールが組み込まれていない。あったとしてもテキストのサマリーやリライトなど限定的かつ散発的。仮にAI使用しても手戻りがあるとかえって非効率になるので踏み込めない。元々の「業務KPIにコミットする」ためにAIを使わなくなる。

このように、費用や業務の管理的な側面では非常に合理的(ガバナンスが利いている状態)ですが、遊びがほとんどないので逆説的にも「AIを使わない」従業員を生み出す構造にもなっています。職場によっては自身がこの状態に該当することも起き得ます。

3.AIデスクリサーチはどのように行うのか

AIデスクリサーチを効果的・効率的に進めるにはAIツールのスケジュールタスク機能を使用します。Google GeminiではScheduled actions(スケジュールアクション)、ChatGPTではScheduled Tasks(スケジュールドタスク)、ClaudeではRoutines(ルーティン)という名称で提供されています。
※基本的に有料プランにおける機能になります(ビジネス向け)。

プロンプトで内容と周期を指示すると定期的な作業を実行する機能なので情報収集用途とは相性が良く、チャットの通知やメール配信で新着を受け取ることも可能です。最大登録数は10件程となるため、あらかじめ関心分野・強化領域を整理しておきましょう。
※最新の状況はサービスの提供元の情報をご確認ください。

スケジュールタスク機能とは

主なAIツールのスケジュールタスク機能

AIツールと機能名称

・Google Gemini:Scheduled actions(スケジュールアクション)、有料プラン向け(Workspace等のビジネスアカウントでも使用可能)、最大登録数10件
・ChatGPT:Scheduled Tasks(スケジュールドタスク)有料プラン向け、最大登録数10件
・Claude:Routines(ルーティン)有料プラン向け(Claude Codeユーザーは使用可能)、最大登録数はプランと使用法により異なる、※チャットタイプのClaude.aiはバックグラウンド処理ができないため非対応(代替措置:手動で定期的に入力)

主な機能

・内容と周期を指示することで定期的な作業を実行する
・チャットの通知やメール配信で新着の受け取りが可能

4.AIでデスクリサーチを行うメリット

AIでデスクリサーチを行うメリット

デスクリサーチをAIで行うメリットには、①速報性:仕事を中断しない程度に情報の更新に素早く気づける、②詳報性:サマリ付きなので詳しく見るかどうか判断がしやすい、③網羅性:定常的に行う情報収集に抜け漏れがないか点検できる、などがあります。

また個人的には、どのような立場・環境であっても自然とAIに触る機会が生まれる「日常性」のメリットが意外と大きいと感じます。これは散発的ではなく習慣化するうえで大事な点です。実際に使用してみるとメルマガのような画面で見られることも利点です。

5.初めにAIにタスクを設定するステップ

AIにスケジュールタスクの指示を設定するまでのステップは次の通りです。

AIにスケジュールタスクの指示を設定するまでのステップ

①キーワードリスト作成

まず、キーワードリストを作成します。この時、過去の経験から「このキーワードの時にたくさん学びを得られる」と実感するワードを設定できると精度が上がります。領域・分野を代表するビッグキーワードも重要ですが、「学びの取れ高」ベースで選定します。

例えば、BtoBマーケティング領域に従事していて、特にSaaSのプロダクトに関わっている場合、「Go-to-Market」を設定していると、対象物(ソフトウェア)や方法論(モーション)についての観点が揃いやすく、また比較的近年のナレッジに触れられます。

②メディアリスト作成

次に、メディアリストを作成します。キーワードのみを指定してAIに任せていてもよいのですが、AIに巡回してもらうメディアをリストアップしておくと(またはテーマや書き手の単位で調査対象となるアカウントを指定する)、さらに情報の精度が上がります。

メディア選定時には、SNSのタイムライン、Slackでの情報共有、noteの履歴を振り返るなどして、過去に自身が高評価やシェアを複数回しているメディアを選びます。実際に情報が有益だと判断した経験が複数回あるということは波長が合っていると言えます。

③プロンプト作成・タスク設定

最後に、AIに指示を出すためのプロンプトを作成・設定していきます(プロンプトの例文はこの後に紹介します)。この時、設定するAIツールは利用頻度が高いものを設定します。同じ仕事用でも複数個使い分けている場合はメインのものにする必要があります。

また操作端末(利用環境)は、できるだけ情報発信(記事作成)を行うものと同じであることが望ましいです。ログイン自体はどこからでも可能かもしれませんが、物理的なインプット環境とアウトプット環境を近づけておくことが習慣化の隠れたコツです。

6.AIデスクリサーチの基本プロンプト

スケジュールタスクの基本プロンプト

スケジュールタスクのプロンプト構成(基本形)は、「事業や業務のドメイン+キーワードリスト+メディアリスト+定期の時間指定」の構文を満たす形で作文します。プロンプトの例文は以下を参照してください。

例文

プロダクト開発を行う事業会社・支援会社において、AI環境の構築・検証を表す以下のキーワードリストに基づいて、下記のメディアリストで関連する記事や情報が公開された場合に、平日毎朝8時にリスト形式で送ってください。

構成

1.事業や業務のドメイン(ここでは、プロダクト開発を行う事業会社・支援会社)
2.キーワードリスト(ここでは、AI環境の構築・検証を表す指定キーワード)
3.メディアリスト(ここでは、AIカンパニーの指定オウンドメディア)
4.定期の時間指定(ここでは、平日毎朝8時)

7.運用のガードレール設定:ハルシネーション対策

実際にスケジュールタスクの運用を始めるといくつかの問題に遭遇します。代表的なものが無いものをあると言うハルシネーションで、AI活用における根本的なリスクが情報収集シーンでは「誤情報」の閲覧・学習としてそのまま致命的なリスクとして表れます。

ハルシネーション対策

問題

スケジュールタスクで記事や情報の更新が無い場合、実際には存在しない記事を憶測ででっちあげてきます。リンク先を辿ってもエラーが表示され、検索で別途探しても該当する更新が出てきません。何も対策を取っていないと高確率で発生します(※モデルにもよる)。

対策

AIが勝手に記事を作成しないよう、記事タイトルにリンクを貼付し、さらにピックアップする記事はブラウジングで実際のURLの存在を確認するよう指示します。ハルシネーションは更新情報が無かった時に出やすいので情報収集用途では必須の対策となります。

8.運用のガードレール設定:毎日読み込む負荷対策

そのほかの問題に、毎日読み込む負荷があります。情報収集はできるだけ毎日行いたいものの、その負荷が高いと長続きしない要因になります。特に記事や情報の更新が無かった際に入る「情報」は便利なようでいて意外と気力を奪っていくので注意が必要です。

毎日読み込む負荷対策

問題

記事や情報の更新が無い場合、代わりにAIは関連するナレッジを紹介してくれます。内容的には役立つものの、毎回この記載が加わると必要以上にインプット負荷が上がってしんどくなってしまいます。実際、代替的に紹介されるナレッジも似たり寄ったりです。

対策

更新がない場合には「更新なし」で良い旨を指示しておきます。スケジュールタスク機能ははあくまで計画したものを見に行く運用にします。毎朝だと頻度が高すぎる場合、記事の更新・公開が多い特定の曜日や自身の都合が良い曜日など週単位に変更します。

この記事のライター

株式会社アイスリーデザイン
chapter UI/UXデザイングループ スペシャリスト
菅原大介

リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、日系最大手のマーケティングリサーチ会社で月次500問以上を運用する定量調査のディレクター業務を経験。総合ECサイト・アプリを運営する大手事業会社でデジタルプロダクトの戦略企画を担当したのち、現在は株式会社アイスリーデザインでUI/UXデザインの支援・研究に携わる。

デザインリサーチとマーケティングリサーチのトレンドをウォッチするニュースレター「リサーチハック101」を個人で発行するほか、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして活動や記事の監修も行っている。著書『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)、『リサーチからはじめる仮説ドリブン・マーケティング』(WAVE出版)

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