タイのペットフード市場概観
タイのペットフード市場は、右肩上がりで成長しています。
モルドール・インテリジェンスによると、市場規模は2025年の22億5,000万米ドルから2026年には24億6,000万米ドルへ拡大し、2031年には38億9,000万米ドルに達する見込みです。2026年から2031年の年平均成長率(CAGR)は9.53%と予測されています。
タイは世界第2位の犬猫用ペットフード輸出国であり、輸出が成長を牽引しています。
カシコン銀行およびThai Pet Food Trade Associationの調査によれば、輸出は購買力が高くペット飼育数も多い米国およびEU市場を中心に拡大しています。(図1参照)
こうした輸出成長の背景には、ペットを家族の一員とみなす「ペット・ヒューマニゼーション」の浸透や、高齢化・少子化といった人口構造の変化があります。
一方、国内市場の拡大は、都市部での飼育率上昇や、プレミアム志向の高まりが主因です。
タイ国内で進むペット飼育率の上昇
2025年の犬向けペットフードは市場全体の64.85%を占め、2031年まで年平均成長率(CAGR)10.62%で拡大すると見込まれています。背景にはペット飼育数の増加があります。
カシコン銀行の資料によると、純粋な『犬・猫』の登録/飼育頭数としては2025年見通しで約538万匹 (犬345万匹、猫194万匹)に達する見込みです。
もっとも、構造面では変化も見られます。2021年から2024年にかけて、猫の数は年平均28%増加しているのに対し、犬は年平均19%増にとどまっています。今後は猫の人気上昇を背景に、キャットフードの販売比率が拡大すると予想されています。
犬・猫市場の特徴と消費者分析
■犬市場と猫市場の違い
犬向け市場について、都市部のコンドミニアムで飼育しやすい中小型のコンパニオンブリードの増加が市場拡大を後押ししています。また、犬種や年齢、成長段階ごとに細分化された商品(SKU)への需要も強まっています。
一方、農村部では作業犬として飼育される犬種が多く、高エネルギー型のドライフード(キブル)への需要が根強い状況です。 こうした需要の高まりが中価格帯の栄養フード市場の拡大につながっています。
猫向けペットフード市場は、集合住宅での飼育のしやすさや手間の少なさから、着実にシェアを伸ばしています。
■所得断層別にみる犬・猫人気 (自社調査)
構造変化や市場の特徴の背景を探るため、自社でアンケート調査を実施しました。
まず「今後飼ってみたいペット」について尋ねたところ、図2のような調査結果となりました。
図2
回答者数:1,712人
調査方法:ネットリサーチ
期間:2026/2/13~2/27
対象者:タイに在住の20-50代の方
調査全体として、今後買ってみたいペットには「犬・猫」の割合が多い結果となりました。
しかし、世帯月収別に分析すると、低所得層と中間層では「今後猫を飼いたい」と回答する割合が犬に比べて多いのに対し、高所得層では犬を希望する割合が高い傾向が見られました。
さらに、「現在飼っているペットの種類」についてアンケート調査をしたところ、やはり、月収が高くなるほど犬を飼っている人の割合が高くなる傾向が確認されました。(図3参照)
図3
回答者数:1,712人
調査方法:ネットリサーチ
期間:2026/2/13~2/27
対象者:タイに在住の20-50代の方
これらの結果から、犬は高所得層に、猫は比較的低所得層に人気がある傾向が共通して存在すると考えられます。
地域別分析(都市部と地方部との違い)
生鮮食品や医薬品などを生産・輸送・消費の過程で途切れることなく低温に保つ物流方式であるコールドチェーンはバンコクおよび主要都市に集中しています。
チェンマイ、プーケット、パタヤなどの地方中核都市では、観光業や外国人居住者の増加、都市化を背景に市場が二桁成長を示しています。
一方、生鮮・冷凍・冷蔵ペットフード製品の地方市場への流通は制限されているため、農村部では、作業犬として飼育される犬種が多く、高エネルギー型ドライフード(キブル)を必要とすることから、中価格帯の栄養フード市場の拡大につながっています。
タイ政府の東部経済回廊(EEC)にはコールドチェーン投資も含まれますが、効果は中長期的と見られ、短期的な市場拡大は限定的です。このため各社は、保存料を使わず賞味期限を延ばすフリーズドライ技術への投資を進めています。
プレミアム化の背景
「ペット・ヒューマニゼーション」の進展を背景に、人間が食べられる品質の原料や機能性添加物を配合したプレミアムペットフードがタイ国内市場を変革しています。
タイの大手水産加工メーカーであるタイユニオンの「戦略2030」では、ペットケア収益を3倍に拡大し全社売上高の20%に押し上げる柱としてプレミアムペットフードを位置付けています。
2025年におけるタイのペットフード市場規模では、フード製品が全体価値の72.10%を占めています。なかでも、獣医療向け療法食は依然として規模は小さいものの、ペット保険の普及拡大や獣医師からの信頼を背景に、年平均成長率(CAGR)11.55%での成長が見込まれています。特に都市部の動物病院では慢性疾患に対する認知が高まっており、療法食需要は今後一層拡大すると考えられます。
タイの動物病院数と獣医師数の現状と今後の展望
タイのペット市場は、今後の高い成長性を秘めています。タイ畜産振興局(DLD)の2026年3月の最新データによると、タイ全土の動物病院・クリニック数は3,868院(入院施設なし、10ケージ以下の小規模病院、10ケージ超の大型病院含む)にとどまります。これは、日本の農林水産省が発表した令和7年(2025年)末時点の国内診療施設数(17,200院)と比較すると4分の1以下であり、まだインフラの拡大余地が大きいことが分かります。
また、医療の担い手である獣医師数にも同様の傾向が見られます。タイの獣医師登録者数(2018年時点)は、正規獣医師(第1種)が9,315名、準獣医師等(第2種)が486名ですが、日本の令和6年(2024年)末時点の獣医師届出数(39,664人)と比べると大幅に少ない状況です。今後の更なる発展と市場成長が強く期待されます。
タイの新しいペットサービス
タイのペット病院の中でも、タイ国内およびベトナムに計21店舗を展開しており、売上高13億1,300万バーツ(約53億円以上)と不動のナンバーワンを誇っているのが、トンロー・ペット病院(Thonglor Pet Hospital)です。
トンロー・ペット病院では、24時間対応の治療は勿論、ペット保険、自社ブランド「Dr.Choice」等のグッズ販売、ペットの海外輸送サービスなどなど、様々なペットサービスを網羅したビジネスモデルを強みとしています。
最近では、様々な業界とパートナーシップを組み、新たなサービスを展開しています。具体的には、以下のような事例があります。
■不動産
プルクサ・リアルエステート (Pruksa Real Estate PCL) と提携したペットフレンドリーな住空間のデザインや、そこで暮らす居住者向けの出張健康診断の実施を行っています。
■金融・保険
クルンタイ・カード(Krungthai Card PCL、KTC)と提携することで、割引やキャッシュバックなど、顧客の特典を強化しています。
また、保険会社のディパヤ・インシュアランス(Dhipaya Insurance PCL)と提携することでよりスムーズなペット保険・請求サービスを提供しています。
加えて、ディパヤ・インシュアランス(Dhipaya Insurance PCL)の保険費用をクルンタイ・カード(Krungthai Card PCL、KTC)で支払うと特別割引が効くなど、各企業で協力しながらより良いサービスの提供に勤めています。
Special promotion animal hospital Equipment and food for animals Redeem to receive cash back, discounts, and special gifts only for KTC credit cards.
ペットサービスの展示会
タイではペットに関するあらゆる製品やサービス、最新トレンドを愛犬と共に体験できる場として、数々の展示会が定期的に開催されています。
2026年4月30日(木)~5月3日(日) にかけてPet Expo Thailand 2026が、2026年6月25日(木)~ 6月28日(日)にかけてはThailand International Dog Show 2026がタイ・バンコクで開催されました。
Pet Expo Thailand 2026は、30年近くの歴史のある展示会です。2025年実績では国内外の企業を含めた333社がBtoBからBtoCまで、ペット業界のあらゆる業種が一堂に集まり、来場者数は約23万人に達しました。
Thailand International Dog Show 2026 は、今回で第24回を迎え、こちらも愛犬家向けのオールインワン・プラットフォームとなっています。
タイエキスパートからの考察
タイでは若者の晩婚化や少子高齢化を背景に、ペットを家族として溺愛する「ペット・ヒューマニゼーション」が加速しています。都市部でコンドミニアムへの居住シフトが進んだことで室内で飼いやすい猫の飼育数が急増。こうした需要を受け、バンコクでは大規模なペット展示会が毎年多数開催されています。今後はプレミアムな商品に加え、ペットホテルやペット保険などの付加価値サービスも急速に拡充していく見込みであり、市場はさらなる高度化へ向かっていくことが予想されます。
【無料レポート】タイの最新ペット市場〜猫シフトとプレミアム化
https://manamina.valuesccg.com/articles/4840タイのペット市場では今、都市部を中心に犬を上回る勢いで「猫シフト」が進行しています。マンション暮らしに適しているからという実利的な理由が想像されますが、実際には「日々の癒やし」や「家族としてのつながり」といった感情面が主な飼育動機であることがデータから見えてきました。こうした背景から、インフレ下でもペット関連の支出は削られにくい傾向がうかがえます。 本レポートでは、ペットへの愛情を起点とした「お金の使い方」の実態を、独自のアンケートデータと共にお届けします。TikTok等のSNSをきっかけとした「共感が最後の一押しとなる」購買プロセスについても掘り下げています。
【参考文献】
https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/thailand-pet-food-market
https://thaipetfood.org/home/Download/2025/Stat/Update%20TH%20Export%20_PetFood%20_%20Other%20_Jan-Mar%202025.pdf?_t=1745551266
https://www.kasikornresearch.com/th/analysis/k-social-media/Pages/Pet-Food-IAO123-Info-FB-17-03-25.aspx
https://www.nationthailand.com/news/general/40049540
https://www.tpso.go.th/news/2509-0000000007
https://vetservice.dld.go.th/index.php/th/sthan-phyabal-satw/khx-cad-tang-danein-kar-sthan-phyabal-satw
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/animal/
https://aavs.jpn.org/wp/wp-content/uploads/2018/12/181121_AAVS_Vet-elig-ed_Thai_Chenphop-S.pdf
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/zyui/index.html
https://petexpothailand.net/petx/index.php
https://thailand-dogshow.com/
https://thonglorpet.com/en/
https://thonglorpet.com/en/news/thonglor31thsmart-hospital
https://expat.pruksa.com/pet-friendly
https://www.ktc.co.th/en/promotion/pet








東京外国語大学でタイ語を学ぶ大学生。高校生の頃に初めてタイを訪れ、タイ独特の文化や言語、国民性を体感したことでタイに関する理解を深めたいと考えるようになる。最近までタイのタマサート大学に半年間、交換留学をしていた。