自動運転は「憧れ」から「必需品」へ?普及プロセスをデータから考察

自動運転は「憧れ」から「必需品」へ?普及プロセスをデータから考察

従来の運転の概念を大きく変える自動運転技術。物流分野における深刻な人手不足や、渋滞・交通事故といった社会課題の解決にもつながるとして、いま大きな注目を集めています。日常のすぐそばまで来ている自動運転について、どのような普及の仕方をしていくか、自動運転で検索している人、運転で検索している人の気になりごとや価値観から推察していきます。


いま「自動運転」に関心がある人って?自動運転検索者から分析

まず、自動運転に対して既に高い関心を持つ「自動運転」検索者について見ていきます。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツールDockpitを用います。

「自動運転」検索者数は多くない

「自動運転」と「運転」の年間検索者数

「自動運転」「運転」の年間検索者数
※エアコンに関するワード(エアコン、ダイキン、冷房)を除外
調査期間:2024年7月〜2025年6月
デバイス:PC&スマートフォン

直近一年間の「自動運転」検索者数は約300,000人でした。運転自体に関心を寄せている「運転」検索者数と比較すると3分の1程度となっており、そこまで高くない数値であることがわかります。

「自動運転」検索者は男性が約8割

次に、「自動運転」検索者の属性を見てみましょう。

「自動運転」検索者の性別

「自動運転」検索者の性別
※エアコンに関するワード(エアコン、ダイキン、冷房)を除外
調査期間:2024年7月〜2025年6月
デバイス:PC&スマートフォン

「自動運転」検索者の性別を見ると、男性が約8割で女性の3.5倍以上となっており、男性の自動運転に対する高い関心が伺えます。

「自動運転」検索者の年代

「自動運転」検索者の年代
※エアコンに関するワード(エアコン、ダイキン、冷房)を除外
調査期間:2024年7月〜2025年6月
デバイス:PC&スマートフォン

「自動運転」検索者の年代を見ると、20~40代で関心が高く、60代以降は関心が低くなっていることがわかります。しかしながら、ネット利用者全体と比較すると大きな開きはなく、幅広い年代から注目されていると言えそうです。

自動運転好きは高級車好きが多い?

「自動運転」キーワード属性別マップ

「自動運転」キーワード属性別マップ
※エアコンに関するワード(エアコン、ダイキン、冷房)を除外
調査期間:2024年7月〜2025年6月
デバイス:PC&スマートフォン

マップを見ると、BMWやクラウンといった高級車/メーカー(赤枠)が出てきています。

一方、黄枠内に出ているシエンタやノアといった利便性の高いファミリーカーや、扱いやすい軽自動車についても一部関心が寄せられています。具体的な車種や「おすすめ」というキーワード検索から、実際に購入段階まで来ている人も多そうです。

オレンジ枠内のキーワードは投資関連のものです。インデックスファンドシリーズの「eMAXIS NEO」には自動運転関連企業の株式等に絞った「eMAXIS NEO 自動運転」もあり、投資対象としての関心も高いことが伺えます。

「運転」で検索している人って?属性や悩み事を分析

これまで見てきた「自動運転」検索者は自動運転の顕在的な顧客層でした。では同じ運転でも、自動ではない「運転」の検索者はどうでしょうか。

「運転」検索者は「自動運転」検索者の約3倍

再掲:「自動運転」「運転」の年間検索者数

「自動運転」「運転」の年間検索者数
※エアコンに関するワード(エアコン、ダイキン、冷房)を除外
調査期間:2024年7月〜2025年6月
デバイス:PC&スマートフォン

上述したように、「運転」検索者は「自動運転」検索者と比較して3倍近く多くなっています。さらに、「自動運転」検索者と「運転」検索者の併用状況を見てみましょう。

「自動運転」「運転」併用図

「自動運転」「運転」併用図 
※エアコンに関するワード(エアコン、ダイキン、冷房)を除外
調査期間:2024年7月〜2025年6月
デバイス:PC&スマートフォン

併用図を見ると、「自動運転」と「運転」のどちらも検索している人は1.8%と非常に少なくなっています。現状では「運転に関する気になりごと」を調べていくなかで「自動運転」に行きつくことは非常に少なく、2つには大きな乖離があると考えられます。

「運転」検索者は20~40代が中心

では、「運転」検索者についてもその属性を見てみましょう。

「自動運転」「運転」検索者の性別

「自動運転」「運転」検索者の性別
※エアコンに関するワード(エアコン、ダイキン、冷房)を除外
調査期間:2024年7月〜2025年6月
デバイス:PC&スマートフォン

「運転」検索者の性別を見ると男女比にほとんど偏りがありません。「自動運転」は男性からの関心が高かったのに対し、「運転」は男女問わず関心を集めていることがわかります。

「自動運転」「運転」検索者の年代

「自動運転」「運転」検索者の年代
※エアコンに関するワード(エアコン、ダイキン、冷房)を除外
調査期間:2024年7月〜2025年6月
デバイス:PC&スマートフォン

「運転」検索者の年代を見ると、ネット利用者全体と比較して20〜40代がかなり高い関心を寄せていることがわかります。反対に50代以降は関心が著しく低下しています。

車の運転に不満や不安を抱く人は多い

次に、「運転」と掛け合わせて検索されているキーワードを属性別マップで見ていきます。

「運転」キーワード属性別マップ

「運転」キーワード属性別マップ
※エアコンに関するワード(エアコン、ダイキン、冷房)とバイクを除外
調査期間:2024年7月〜2025年6月
デバイス:PC&スマートフォン

赤枠で囲んだ部分からは「怖い」「難しい」などのキーワードが見られ、運転に対する技術的・心理的な不安が伺えます。

黄枠で囲んだ部分はアルコールに関するキーワードになっています。アルコールと運転に関するルールについての興味関心は高いと考えられます。

また、女性側では「妊婦」や「てんかん」(緑枠内)など、身体の状態に不安を抱えているキーワードが多く見られました。「怖い」というキーワードからも伺えますが、運転に対して不安要素を抱えていても、運転せざるを得ない状況にある方が多いのかもしれません。

一方男性側では、「煽り」「荒い」といったキーワード(紫枠内)が見られ、運転マナーに対する不満を抱えやすい傾向がありそうです。

自動運転の普及の第1ステップは「ステータス層」か

現在の自動運転に対する一般的なイメージは「便利なもの」というよりも「革新的技術」という感覚に近いかもしれません。実際に、「自動運転」検索者の価値観をPerscope※で分析したところ、基準値と比較して地位・ステータス、自己実現が高く出ています。革新的技術をいちはやく自分のモノにしたいという気持ちが、自動運転との相性を高めていると思われます。

※Perscope(ペルスコープ)はWeb行動データとアンケートデータを用いた分析を行える、株式会社ヴァリューズの分析ツールです。

「自動運転」検索者の価値観

「自動運転」検索者の価値観
調査期間:2024年7月〜2025年6月
デバイス:PC&スマートフォン

次には「運転不安層」、最終的に標準搭載も

一方で「運転不安層」が抱える不満や不安も、自動運転との相性が良いといえるでしょう。先ほどの「運転」の掛け合わせワードを見ていきます。

再掲:「運転」キーワード属性別マップ

「運転」キーワード属性別マップ
※エアコンに関するワード(エアコン、ダイキン、冷房)を除外
調査期間:2024年7月〜2025年6月
デバイス:PC&スマートフォン

危険な運転、事故のリスク、飲酒の可否、体調不良時の運転など、これらの課題は自動運転による解決が期待できます。その潜在的ニーズは現時点で自動運転に興味を持っている人のおよそ3倍にも及ぶことがわかりました。

また、より長期的に考えていくと、「自動運転」機能はすべての自動車に標準搭載されることも考えられるでしょう。現状の自動運転機能がついている自動車も、どのレベルにするかは運転者が設定できる仕組みが採られており、自動運転機能が搭載されること自体に批判は少ないかもしれません。マニュアル車からオートマ車へとシフトしていったように、ほとんどの車に自動運転機能が搭載される未来もあることでしょう。

以上のことから、自動運転の普及の第1陣として、ステータス層に広がり、次にその3倍程度の「運転に関する悩みを顕在的に抱えている層」に広がる、そしていずれ標準機能として「当たり前」になっていく、といった普及ステップが考えられます。

まとめ

自動運転技術には、今回の分析では見えなかった高齢者の運転問題や更なる課題を解決するポテンシャルが秘められています。また、令和7年に警察庁交通局が発表した「令和6年中における交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」によると、交通事故数は年々減少傾向にあるものの、交通事故による負傷者は毎年30万人以上出ています。

「必需品」としての自動運転技術の普及により、運転に対する不安や事故のない安全な交通社会が実現する日が来るかもしれません。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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▼今回の分析には生活者理解のためのリサーチエンジン『Perscope』を使用しています。『Perscope』では国内最大規模のWeb行動×アンケートデータを活用し、誰でも いつでも 簡単に"生活者起点のマーケティング活動"を実現することができます。無料デモもありますので、興味のある方は下記よりぜひお申し込みください。

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この記事のライター

26卒内定者アルバイトの大学院生。大学では害虫防除の研究をしています。

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