コンセプトテスト〜定性調査編(アイデア探索のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

コンセプトテスト〜定性調査編(アイデア探索のアウトプット)|現場のユーザーリサーチ全集

リサーチャーの菅原大介さんが、ユーザーリサーチの運営で成果を上げるアウトプットについて解説する「現場のユーザーリサーチ全集」。今回はコンセプトテスト〜定性調査編(アイデア探索のアウトプット)について寄稿いただきました。※本記事は菅原さんの書籍『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)と連動した内容を掲載しています。


1.コンセプトテストとは

●全体像イメージ

コンセプトテスト|定性調査(調査票)

コンセプトテスト|定性調査(レポート)

●概要

コンセプトテストとは

コンセプトテストとは、商品・広告をリリースしたり施策・機能をプロダクトに実装する前に、コンセプト(=提供価値の概念要件を言語化・可視化したもの)の段階でユーザーの受容性を確認するリサーチ方法です。

インタビュー調査におけるコンセプトテストでは、コピーテキスト、サービスLP、広告バナー、カード型UIなどのプロトタイプを調査対象者に提示して、複数ある試案の利用意向を尋ねる形で一般的に行われています。

テストを行うことによって制作や実装前に各案の理解度・改善点・支持するユーザー層などを見極めることができます。ただ、テスト対象物が3案を超えると回答者側で相対評価の難易度が上がるので留意しましょう。

●構成要素

コンセプトテスト(レポート)の作り方(構成要素)

コンセプトテスト(レポート:定性調査)の構成要素は以下のようになります。

①提示物

・コンセプト文(メッセージやスローガンの一文)
・テスト用画像(P案・Q案・R案など、3案までを上限の目安にする)

②評価理由

・ポジティブな意見(抜粋)
・ネガティブな意見(抜粋)

③スコア(話者別)

・話者別のスコア
・5段階評価の数値または評価の印(○×など)を記載

④スコア(各案別)

・各案別のスコア
・相対評価で選ばれる順番を記載
※複数案を比較する場合(見本の図では対応していない)

2.作り方

コンセプトテスト(レポート)の作り方(作成手順)

①コンセプトの提示内容を記載する

・提示物として使用した文章や画像を記載する

②対象者のグループごとの意見を記載する

・対象者のグループごとの主だった意見を記載する
(グループ:性別・会員などによるくくり)

③各案ごとの講評(態度変容)を記載する

・対象者ごとに絶対評価で得た案の印象を記載する

④相対評価の順番を記載する

・対象者ごとに相対評価で得た案の順番を記載する
※複数案を比較する場合(見本の図では対応していない)

3.使い方(※定量調査と共通)

コンセプトテストの使い方

①アイデアを数値と意見の両面から俯瞰して検証できる

コンセプトテストを行うことで、各案ごとの評価(受容性)を数値と意見の両面から可視化できます。事業者・運営者の立場だと慣れすぎて気づかない箇所も含め、ユーザーの意見を踏まえて客観的にリスクを評価することができます。

また、対象者属性ごとに結果をブレークダウンして見ると、施策や機能に反応してくれている人の層とその傾向を分析することができます。こうすることで、業界で流行している物事や手法が自分たちにも当てはまるか検証ができます。

②アイデアに備わるポテンシャルを多面的に評価できる

構成要素ごとの評価をテストする方法では、サービス企画やメインの機能について構成要素単位でそのニーズを確認することができます。調査結果は、全体としての傾向、著しく低い項目、特定層に高い項目に注目して分析しましょう。

評価観点ごとの評価をテストする方法では、新奇性、独自性、購入意向や利用意向など、評価の観点を変えて聴取できます。このバリエーションは施策や機能のKPIやアウトカムにつながる、プロダクトの出来を占う指標を設定しましょう。

この記事のライター

株式会社アイスリーデザイン
chapter UI/UXデザイングループ スペシャリスト
菅原大介

リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、日系最大手のマーケティングリサーチ会社で月次500問以上を運用する定量調査のディレクター業務を経験。総合ECサイト・アプリを運営する大手事業会社でデジタルプロダクトの戦略企画を担当したのち、現在は株式会社アイスリーデザインでUI/UXデザインの支援・研究に携わる。

デザインリサーチとマーケティングリサーチのトレンドをウォッチするニュースレター「リサーチハック101」を個人で発行するほか、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして活動や記事の監修も行っている。著書『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)、『リサーチからはじめる仮説ドリブン・マーケティング』(WAVE出版)

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