「リセッション・ビューティー」不況の中で変容する美容ニーズとは | 海外トレンドに見るビジネスの種(2025年9月)

「リセッション・ビューティー」不況の中で変容する美容ニーズとは | 海外トレンドに見るビジネスの種(2025年9月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、アメリカを中心に人々が移行している美容の消費トレンド「リセッション・ビューティー」について取り上げます。物価高で美容院やエステへ行く回数を減らす傾向がある中、どのようなスタイルが人気を伸ばしているのか見ていきます。


賢く節約して美容を楽しむ「リセッション・ビューティー」

物価高騰などによる経済的な不安が高まる中、アメリカを中心とした美容の消費トレンドに新たな動きが生まれています。

節約志向にともない、美容にかける予算を減らそうとする人が出てきており、それによって引き起こされている消費行動は「リセッション・ビューティー」と呼ばれます。

リセッション(recession)とは、経済活動の縮小・低迷によって景気が悪化する「景気後退局面」のことを意味します。さらに悪化すると「不況」に至ります。

リセッション・ビューティーの具体的な行動として、より長持ちしやすいようなスタイルを取り入れることや、自宅でのセルフケアを活用することが挙げられます。そうすることで、高価な美容院やエステに通う回数を減らして節約に繋げるものとなっています。

リセッション・ビューティーでは、これまで行っていた美容を単にやめるのではなく、今までとは違うスタイルを取り入れたり、方法を変える工夫が見られます。コスパや持続性を重視することで費用を抑えながらも、引き続き美容を楽しみたいという消費者の心理が反映されていると言えそうです。

長持ちするスタイルやおうち美容が人気

では具体的に、どのようなところで美容に対する消費行動の変化が起きているのでしょうか。

■リセッション・ブロンド

ハイライトカラーを入れた女性のヘアスタイル

まず、代表的なトレンドとして、「リセッション・ブロンド」(または「リセッション・ブルネット」)があります。

リセッション・ブロンドとは、メンテナンスが楽なブロンドヘアスタイルのことを指します。例えば、根元部分に暗い色を残して毛先に向かって明るくなるグラデーションにしたり、髪全体を染めず部分的に明るいハイライトカラーを入れたりするようなスタイルがあります。

髪全体をブロンドに染めた場合、生え際の地毛の色とのギャップが目立ち、リタッチで頻繁に美容院に通わなければならないため、リセッション・ブロンドは美容院に通う頻度を減らせるとして、注目されています。

■リセッション・ネイル

次に、「リセッション・ネイル」が挙げられます。
リセッション・ネイルとは、ミニマルな色やデザインのショートネイルや、自宅でできるセルフネイルキットの人気拡大の現象を指しています。

薄ピンク色のマニキュアをした人の手

2025年に流行中のデザインとして、「ソープネイル」や「プリンセスネイル」と呼ばれるものがあります。どちらも、薄ピンクや白っぽい控えめな色味を使い、爪の長さが短めのスタイルとなっています。ネイルサロンでよりシンプルなネイルを注文すると価格を抑えられることや、伸びてきても不自然になりにくい色で長持ちすること、またセルフネイルでも真似しやすいデザインであることが人気の背景にあると考えられます。

セルフネイルの需要が高まる中、ネイルチップの人気も上昇しています。ネイルチップは、ネイルサロンに行かなくてもすでに出来上がったネイルを自宅で簡単に付けて楽しめるということで、価値を見出されています。TikTok上で、#pressonnails(プレスオンネイル)といったネイルチップに関する投稿が260万にのぼっていることからもその人気がうかがえます(2025年9月時点)。

飾らないリセッション・ネイルは、控えめでシンプルな「クリーン・ガール(clean girl)」や「クワイエット・ラグジュアリー(quiet luxury)」といったファッショントレンドとも重なることから、流行が後押しされています。

■家庭用LEDライトマスク

他にも、セルフ美容アイテムとして、家庭用LEDライトマスクが注目されています。美顔効果が期待されており、エステに行かずに自宅で本格的なスキンケアをしたいというニーズの現れと言えます。

不況の時こそプチ贅沢が売れる傾向に

コスメ売り場でリップスティックを手に取っている

不況の中ではむしろプチ贅沢の需要が上がると言われており、この現象は「リップスティック・エフェクト(口紅効果)」と呼ばれています。

大きな買い物を控える代わりに、手に届く範囲の小さな贅沢品を購入する傾向は、美容院やエステに通う頻度を減らし、おうち美容の需要が上がるリセッション・ビューティーにも共通していると言えそうです。

完全に生活から美容をなくしてしまうのではなく、別の形で楽しもうとする消費行動は、経済的な不安を少しでも忘れて日々を明るく過ごすための工夫なのかもしれません。

【参考】
https://www.nbcnews.com/politics/economics/longer-hair-nails-home-fewer-facials-economic-warning-signs-are-flashi-rcna201807
https://www.lofficielusa.com/beauty/recession-beauty-trends-brunette-hair-nails
https://nypost.com/2025/06/03/lifestyle/recession-nails-hack-saves-money-on-manicures-without-giving-them-up-entirely/
https://nypost.com/2024/05/02/lifestyle/why-gen-z-is-done-with-nail-salons-2024-is-the-year-of-press-on/
https://www.youtube.com/watch?v=bmXMLEHJ5XA

この記事のライター

大学ではポルトガル語と言語学を学び、常に様々な外国文化や言語に興味がありました。
海外情報に関する記事を通じて、何かヒントに繋がる新たな視点や面白い発見をお届けできればと思います。

関連するキーワード


海外トレンド

関連する投稿


【無料レポート】2026年最新!海外インナーケア2か国調査~専門家を信じるアメリカの「エビデンス志向」、TikTokで買うタイの「ソーシャル共感志向」の実態とは?

【無料レポート】2026年最新!海外インナーケア2か国調査~専門家を信じるアメリカの「エビデンス志向」、TikTokで買うタイの「ソーシャル共感志向」の実態とは?

アメリカおよびタイの生活者におけるインナーケアの位置づけを深掘り調査。2か国の生活者のインナーケア活用実態や商品購入時の重視ポイントなどにもとづいて、健康・美容意識の傾向を読み解き、それぞれの市場におけるインナーケア商品の差別化要因を考察しました。対象2か国への市場展開・参入をするにあたり、有効な商品価値やアプローチ方法を検討・判断するための意思決定材料となるレポートとなっています。※本レポートは記事のフォームから無料でダウンロードできます。


【無料レポート】タイ機能性食品市場2026〜健康に何を選び、どう買うのか

【無料レポート】タイ機能性食品市場2026〜健康に何を選び、どう買うのか

タイの機能性食品市場について、日本から見えるのは市場規模や売り場の概況までです。生活者が健康のために何を摂り、どう買っているのかまでは、なかなか見えてきません。本レポートでは、機能性のある食品・飲料の8カテゴリを対象に、タイの消費者2,475名に独自のアンケートで聞きました。健康のために何を選び、いくら払っているのかを、データで確かめています。※本レポートは記事のフォームから無料でダウンロードできます。


「防老」から「享老」の時代へ ~ 中国シニア市場の新動向と日本企業の参入機会

「防老」から「享老」の時代へ ~ 中国シニア市場の新動向と日本企業の参入機会

変わりゆく中国の高齢化の現状やシニア層の価値観・ライフスタイル。その変化を体系的に紹介するとともに、従来の医療・保障を中心とした「防老」(老後の備え)から、自我実現や社会参加を目的とした「享老」(老後の享受)へとシフトする消費心理および市場動向について解説。中国市場参入を計画する日本企業にとって、参考となる中国シニア市場の今をまとめました。


中国の若者に人気なのはドッグフードならぬ「ヒューマンフード」?「人糧」の魅力とは

中国の若者に人気なのはドッグフードならぬ「ヒューマンフード」?「人糧」の魅力とは

中国の社会人の若者の間で、「人糧」と呼ばれる食事が今、人気を集めています。「ドッグフードの人間版」のような自虐的なニュアンスの名前を持ちながら、忙しい彼らにとって生活の助けになっています。本稿では、この人糧の特徴や魅力について紹介します。


中国自動車市場は新時代へ~中古車取引量急増で新車販売数に肩を並べる

中国自動車市場は新時代へ~中古車取引量急増で新車販売数に肩を並べる

2026年、中国の自動車市場は歴史的なターニングポイントを迎えました。2026年7月のデータによると、新車と中古車の取引比率が初めて1:1に達しました。この構造的変化の背景にはどのような要因が隠されているのでしょうか。そして、この変化は業界エコシステムの再構築にどのような可能性をもたらすのでしょうか。さらに、中国の中古車市場が直面する新たな機会、課題、そして取り組むべきテーマとは何なのか、この全く新しい領域についてレポートをします。


最新の投稿


大企業の公開PDF、タイトル情報の未設定が半数超【パワーメディア調査】

大企業の公開PDF、タイトル情報の未設定が半数超【パワーメディア調査】

株式会社パワーメディアは、TOPIX Core30構成企業30社が公式サイトで公開しているPDF資料を対象に、タイトルや作成者などの文書情報(メタデータ)とセキュリティ設定の状況を調査し、結果を公開しました。


電通プロモーション、共感と対話を重視したSNS投稿設計をAIで支援

電通プロモーション、共感と対話を重視したSNS投稿設計をAIで支援

株式会社電通プロモーションは、株式会社電通PRコンサルティングと共同で、エンゲージメントとLTV(顧客生涯価値)につながる関係づくりにつながる関係づくりを支援する新たなメソッド「PR driven SNS」を開発したことを発表しました。


生成AIのおすすめ、約8割が信頼も約6割はWeb検索で再確認【NEXER Group調査】

生成AIのおすすめ、約8割が信頼も約6割はWeb検索で再確認【NEXER Group調査】

株式会社NEXER Groupは、「消費者のAI検索と企業情報への信頼度・選定行動調査」を実施し、結果を公開しました。


オウンドメディアのAI検索対策、8割超が実施も「十分」は23%【PRIZMA調査】

オウンドメディアのAI検索対策、8割超が実施も「十分」は23%【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、オウンドメディアの運用に携わる担当者1,000人を対象に、「オウンドメディアにおける一次情報の活用とAI検索対応」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


記憶に残った電車内広告、見た後の行動率は60%【オリコム調査】

記憶に残った電車内広告、見た後の行動率は60%【オリコム調査】

株式会社オリコムは、首都圏・関西の15~69歳を対象とした「広告の純粋想起」に関する調査の分析結果を発表しました。自由回答で挙がった電車内広告907件を対象に、広告を見た後に関連行動を取ったと回答した割合を算出しています。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

ページトップへ