年間輸出額は63億円超え 海外で成長し続ける味噌市場
日本では料理に欠かせない調味料の味噌。その需要は国内だけにとどまらず、現在海外での関心が高まっています。
全国味噌工業協同組合連合会がまとめたみそ輸出実績(※)によると、味噌の輸出量・輸出額は年々増加傾向にあります。2024年には2万3,497トン(63億1,265万円)を記録しており、2010年の1万240トン(20億9806万円)、2020年の1万5,994トン(38億4390万円)と比較すると特に直近5年弱で著しく成長していることがうかがえます。
味噌の海外進出が進んでいる要因として、単なる和食の人気拡大だけではなく、健康食品やうま味食材という別の文脈で味噌に新たな価値が見出されていることが背景にあります。また、海外で味噌が受容されていく中で、日本にはない独自のレシピも生まれ、味噌の魅力がさらに拡大しています。
(※)
全国味噌工業協同組合連合会 みそ輸出実績
https://zenmi.jp/miso_toukei.html
「腸活」と「プラントベース」が味噌ブームを牽引
味噌の人気上昇の背景には、世界的に健康な食生活への関心が高まっていることがあります。特に「腸活(Gut Health)」をキーワードとして、胃腸の働きを良くする食材に注目が集まっており、SNS上でライフスタイルやレシピを共有する動きが活発になってきています。
そのような流れの中で、味噌、コンブチャ(発酵紅茶)、ヨーグルト、キムチなどの発酵食品が健康意識の高い層から注目されています。味噌はプロバイオティクス(乳酸菌、酵母など)、タンパク質、ミネラルなどが豊富と言われており、腸内環境を整え、免疫力を高めてくれる効果が期待されています。
最近では、2025年後半頃から味噌汁を朝食にすることが健康に良いとTikTok上で話題になり、その習慣を取り入れた人が自身の体験をシェアする投稿が続出しました。SNSの影響により、これまで家で味噌汁を作る習慣がなかった人々にも健康的なライフスタイルとして味噌の存在が広まるきっかけが生まれています。
また、味噌は大豆、米、麦などからできており、ヴィーガン対応の食材であることも、世界において人気を後押しする要因となっています。動物性食材を使わずして深みを加えられる味の豊かさと、タンパク質も豊富に摂れる栄養価の高さが魅力となっています。
うま味をプラスする食材としての魅力
また昨今、特に英語圏において「うま味(Umami)」に価値が見出されています。甘味・酸味・塩味・苦味と並んで、5つの基本味の1つである「うま味」は、英語圏でもそのままUmamiとして広く認知されています。
代表的なうま味の成分は、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸の3つと言われており、味噌にはグルタミン酸が多く含まれています。
うま味には、料理全体の味に奥行きを持たせるような効果が期待されており、そこで味噌は主役の味付けだけではなく、隠し味の要素としてもレストランやカフェで活用され始めています。
味噌ラテ、カクテル、スイーツ…独創的なアレンジの数々
海外では、日本人の発想を飛び越えた自由な味噌レシピが次々と誕生しています 。
イギリスの味噌ブランドMiso Tastyのウェブサイトでは、様々な味噌の活用レシピが紹介されています。野菜や肉を味噌で味付けするような日本でもお馴染みのスタイルの料理レシピから、ドリンクメニューやスイーツのような一風変わったレシピに至るまで、非常にバリエーション豊かなものとなっています。
日本国内とはまた違った形で、味噌を使ったレシピの幅に広がりが生まれていることから、和食向けの調味料という枠の中に収まることなく、味噌単体の魅力として受容されていることが伝わってきます。
イギリスの味噌ブランドMiso Tastyのウェブサイトで紹介されている味噌レシピ
■味噌入りのラテやココア
味噌を使ったラテやココアなどのカフェドリンクが店舗でも展開されています。味噌を加えることによって、うま味を意識したより味わい深いテイストを生み出しています。
アメリカのスターバックスの一部店舗では、2025年11月からホリデーメニューとしてキャラメル味噌ホットココアを販売しました。ココアの材料であるミルクとチョコレートに加え、ダークキャラメル味噌のソースとフォームが含まれています。味噌のうま味成分がプラスされ、金箔が散りばめられているリッチな印象のドリンクに仕上がっています。
アメリカのスターバックス キャラメル味噌ホットココア(左)とペパーミントホットココア(右)
■味噌入りカクテル
味噌を使ったカクテルも一部のバーで提供されています。
従来の甘いカクテルとは違い、塩やスパイス、うま味を感じさせるようなカクテルのジャンルは、「セイボリー・カクテル(Savory Cocktail)」と呼ばれています。
うま味成分を加える材料例としては、味噌、海藻、キノコなどがあります。味噌はカクテルの味により深みを持たせるための要素として活用されています。
■味噌スイーツ
ケーキ、ブラウニー、クッキーなどのスイーツがカフェで取り扱われており、オンラインでもレシピが公開されています。味噌キャラメルや味噌バターを用いた甘じょっぱい味付けが魅力となっています。
パリやドバイなど世界各地に店舗展開しているロンドン発のクッキー店Crèmeでは、4種類のクッキーを販売。そのうちの1つとしてホワイトチョコレート味噌味のクッキーを取り扱っています。
イギリスのクッキー店Crèmeで取り扱っているクッキーのラインナップ
他にもアメリカのクッキーチェーン店インソムニア・クッキーズ(Insomnia Cookies)では、2024年夏に期間限定でピーナッツミソラーメンクッキーを販売していました。チョコチップの甘さに味噌のしょっぱさを合わせ、カリカリ麺も加えるという、日本を意識した商品となっています。
まとめ
現在、味噌の海外進出において、栄養価の高さ、プラントベース食品としての取り入れやすさ、うま味成分の豊かさといった部分に価値が見出されています。
昨今の世界的な健康志向の高まりから、日々のウェルネスの観点で味噌を習慣的に取り入れようとする動きも見られました。この流行はSNSによりさらなる拡大が期待できそうです。
ココアやカクテルなどのドリンクにうま味要素をプラスしたり、ブラウニーやクッキーなどのスイーツで甘じょっぱいテイストを楽しんだりと、日本では珍しいような味噌のアレンジも登場しています。
日本とはまた違った形で価値が見出され、海外で独自の進化を遂げていく味噌の可能性に今後も期待していきたいです。
【編集部考察】味噌市場をアップデートする「海外の発想」
海外における味噌の進化は、日本のビジネスシーンにとっても大きなヒントに溢れています。今後、国内市場では以下のような動きが加速すると予測されます。
■「逆輸入」による若年層への再アプローチ
アメリカのスターバックスで見られた「味噌×スイーツ・ドリンク」のような意外性のある組み合わせは、SNS映えや新しい味覚を求める日本の若年層にも「新感覚の食体験」として受け入れられる可能性が高いでしょう。伝統的な「味噌汁」の枠を超え、カフェメニューや高付加価値なスイーツとしての「Miso」が国内で逆輸入的に流行する兆しがあります。
■「調味料」から「機能性ウェルネス食材」へのリブランディング
海外で先行している「腸活(Gut Health)」の文脈をより強調することで、セルフケアのための積極的な選択肢としてのリブランディングが進むでしょう。特に、忙しい朝に手軽に摂取できる、一口サイズに濃縮した健康ドリンク「味噌ショット」や「プロテイン味噌スープ」など、タイパ(タイムパフォーマンス)を意識した新商品の開発が期待されます。
日本の伝統食材が、海外の視点を通ることで「日常の定番」から「洗練されたヘルシーな食材」へと再定義されつつあります。こうした世界的な関心の高まりを追い風に、国内市場もまた、自由な発想による新しいステージへと進んでいくでしょう。
【参考】
https://www.theguardian.com/food/article/2024/jul/16/the-miso-miracle-how-to-use-the-ingredient-that-makes-every-dish-delicious
https://www.vogue.com/article/miso-health-benefits
https://industrytoday.co.uk/market-research-industry-today/miso-paste-market-size-to-reach-usd-175-billion-by-2035-at-41-cagr-due-to-rising-demand-for-fermented-and-plant-based-foods
https://punchdrink.com/articles/miso-syrup-savory-cocktails-technique/
https://www.trendhunter.com/amp/trends/peanut-miso-ramen-cookie
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002153.html








大学ではポルトガル語と言語学を学び、常に様々な外国文化や言語に興味がありました。
海外情報に関する記事を通じて、何かヒントに繋がる新たな視点や面白い発見をお届けできればと思います。