いま、スポーツマーケティングが熱い!| 第2回 序章 スポーツビジネスのデジタル・トランスフォーメーション(2)

いま、スポーツマーケティングが熱い!| 第2回 序章 スポーツビジネスのデジタル・トランスフォーメーション(2)

第1回では、マーケティング4PのProductとPriceの観点からスポーツビジネスのデジタル・トランスフォーメーション(DX)を概観してみました。第2回は、4Pの残る2つ、PlaceとPromotionにフォーカスします。


D2C: Direct to Customerチャネルへ

スポーツマネジメント主体やプレイヤーが、直接ファンとつながるD2C(Direct to Customer)デジタルチャネルを入手するPlace=Customer Convenienceは、チャネルミックスの再設計と終わりなきチューニングを迫られます。

公式サイトやアプリ、eスポーツといったチームや競技のオウンドメディアというチャネルは、これまでスタジアムやファンイベント、視聴率でしかその感触を知ることのできなかったファン行動が、データで把握可能な世界。

他方、「誰もが観るメディア」の終焉は、ユーザーが自分の嗜好に合ったコンテンツだけにロックされやすい世界でもあります。

そして多様なコンテンツがあふれる分、生中継全てをじっと観戦するユーザー以上に、ゲームのハイライトだけをタイムリーに手っ取り早く知りたいユーザーの増加が予想されます。SNSで競技や選手のアカウントをフォローするユーザー行動は、ミレニアル世代で顕著といわれます。SNSでのハイライトコンテンツやリアルタイム投稿が、放送局のメディアよりも、導線として強く機能するようになるかもしれません。

リアルな視聴データやログに基づいたOne to Oneコミュニケーションはもちろん、eMark+のようなウェブ行動ログやユーザー属性データを併用すれば、ゲーム観戦以外の競合分析、ファン層と親和性の高いスポンサー検討も可能になるでしょう。

オウンドメディアでの視聴や参加、チケットやグッズ購入といったコンバージョンと、SNS、外部のスポーツ番組やアプリ、スポンサーチャネル等におけるユーザー行動を有機的に俯瞰し、ユーザーが多様なチャネルをスムーズに行き来できる工夫がキーになります。

新たなファン層の獲得が課題に?

Promotion=Customer CommunicationでもD2Cが進みます。

テレビとスタジアム、そしておそらくは小規模な専門誌だけがチャネルだった時代にはなかなかファンにリーチしづらかったマイナースポーツも、OTT(Over the Top)や動画配信、ハイライトコンテンツ、SNS、リモートVRといった新チャネルを通じたファンエンゲージメントが可能になります。ファンコミュニケーションはマネジメント主体やプレイヤーにとって工数を伴う「新たな仕事」である反面、ファンエンゲージメントが強まれば、士気向上も期待できそうです。

課題として重要度が増しそうなのが、新規ファンの獲得です。

巨大メディアの資本力に頼らないデジタルマーケティングは、あらゆるスポーツ、そしてスポーツ以外のコンテンツビジネスにも等しく可能になり、ユーザーの時間とお財布を巡る闘いは激化します。チャネルが何であれ、ファン予備群とまずは「最初の1回」のタッチポイントをいかに創造するか。ここでは、テレビや新聞などの既存メディアだけを意識すればよかった時代よりも、マネジメントの難易度が上がりそうです。

ファン予備群、ハイライトしか観ないファン、ゲーム観戦をオンライン/オフラインで、リアルタイムあるいはアーカイブを楽しむファン、eスポーツなどを含めて自ら楽しむファン、将来競技を盛りあげるであろうプレイヤー予備群とその家族や育成層、競技を受け入れる地域、スポンサー候補等々のターゲットごとに、しかしブレずに、競技の魅力を伝えること。

視聴の小口化に対応したSNSでのハイライトやリアルタイム実況、それらを活用したファンコミュニケーションと投票など簡単に参加できるしくみ、関連情報ゃSNS、OTT等への簡易なナビゲーションなど、考えることは沢山ありそうです。

いずれにせよ「マーケティング」である以上、正解、王道はありません。
でも、3万年以上前から存在したといわれるエンターテインメントだからこそ、いま令和の時代に、DXによる変革の余地が大きいことは間違いなさそうです。

指標の一例: 高校生の競技別部活人口はいま

ちなみに、2018年度における高校生の部活参加状況は下記図表の通り。

2017年度の高校生全体数は約320万人で、だいたい4割強が体育系部活に参加しています。

そもそも高体連と高野連がどういう権益でどう別れてきたのかという経緯もわかりづらいながら、日本のスポーツ市場をあらわす数値として重要な指標のひとつといえます。

男女計ではサッカー、硬式野球、バスケットボールの順に人気です。

統計がないのですが、実際は9割以上が男子といわれる硬式野球を15万人程度と仮定すると、男子はトップ2のサッカー16.5万人と硬式野球15万人への集中傾向が強い一方、女子はバレーボール、バスケットボール、バドミントンがいずれもほぼ6万人弱と、分散しています。

図表 2018年度の高校生運動部参加状況
全国高等学校体育連盟統計資料「加盟登録状況」及び全国高等学校野球連盟より作成。
網掛けは男女各トップ3。
硬式野球はほとんど男子と考えられるが、野球は男女別の統計が公表されていない。

トランポリンやチアなど、高体連、高野連のいずれにも属さず統計に含まれない種目があります。

筆者の出身私立女子高は、日曜日すなわちキリスト教上の安息日の試合出場が認められなかったため、同じ環境にあるミッション校のみのリーグを形成していました(多少変わったはずですが..)。

英才教育が求められる競技はじめ、学校以外のチームに所属する高校生も少なくないでしょうし、プレーと観戦では好きな種目がもちろん同じではありませんが、どんな体育部経験者がどんな行動をとるか(バレー部出身者はママさんバレーにいくのか、子どもにバレーを勧めるのか?..)は、デジタルでなくても面白いテーマです。

次回以降は、競技ごとにスポーツマーケティングの熱い事例を追っていきます。
ときどきこんな数字も思い出しながら、お付き合いいただければ幸いです。

この記事のライター

法政大学院イノベーション・マネジメント専攻MBA、WACA上級ウェブ解析士。
CRMソフトのマーケティングや公共機関向けコンサルタント等を経て、現在は「データ流通市場の歩き方」やオープンデータ関連の活動を通じデータ流通の基盤整備、活性化を目指している。

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