カカオ不使用のチョコが続々と登場 価格高騰と環境負荷で「カカオフリー」への期待高まる | 海外トレンドに見るビジネスの種(2026年4月)

カカオ不使用のチョコが続々と登場 価格高騰と環境負荷で「カカオフリー」への期待高まる | 海外トレンドに見るビジネスの種(2026年4月)

海外からやってくるトレンドが多い中、現地メディアの記事に日々目を通すのはなかなか難しいもの。そこでマナミナでは、海外メディアの情報をもとに世界のトレンドをピックアップしてご紹介します。今回は、カカオ不使用の「カカオフリーチョコレート」について取り上げます。気候変動による価格高騰や生産過程の社会課題を解決する手段として、様々な企業がカカオに代わる原料の開発を進めています。なぜ今、カカオ不使用がサステナブルな選択肢として熱視線を浴びているのか。具体的にどのような代替原料があるのか、また大手メーカーとの協業によるカカオフリーチョコレートの商品化について詳しく見ていきます。


カカオ生産の社会課題を乗り越えるための「カカオフリー」

近年、カカオを原料に使用しない「カカオフリーチョコレート」が注目を集めています。ネスレ、リンツといったグローバルブランドでも商品展開が進んでおり、国内では2025年6月にイオンから「チョコか?」という商品が登場しました。

イオントップバリュの商品「チョコか?」

カカオ不使用のチョコレートが開発される背景には、従来の生産体制が抱える構造的な問題が深く関わっています。

気候変動によるカカオの価格高騰

カカオは主にコートジボワールやガーナといった西アフリカの国々で生産されています。2023年から2024年にかけて西アフリカの地域で気候変動による異常気象や気温上昇が起こったことが原因で、カカオの病害や不作が発生しました。その影響で生産量が激減し、カカオの価格高騰に繋がりました。

国際ココア機関 (ICCO)によると、2023年1月時点で1トンあたり約2,500ドルだったカカオの価格は、2024年から2025年にかけて急激に高騰し、2025年1月には約4倍の1万ドルにも達しています(※1)。

2026年現在は、以前の水準近くまで価格が下がってきましたが、今回の価格高騰で環境による影響を受けやすいカカオ生産の問題点が浮き彫りとなり、安定供給できる代替原料の必要性が改めて認識されています。

2022年2月〜2026年3月におけるカカオの価格変動(ユーロ/トン、USドル/トン)

(※1)
The International Cocoa Organization (ICCO) - Statistics (Monthly Average)
https://www.icco.org/statistics/

森林破壊、水資源の大量消費による環境負荷

世界のカカオ生産量の大半を占める西アフリカでは、森林破壊が深刻な問題となっています。カカオ生産も森林破壊の要因の一つと言われており、カカオの木を植えるために元々あった熱帯林を切り倒す事例が多発しています。それによってその土地の生物多様性が脅かされる事態に至っています。

また、カカオは他の作物と比べて栽培時に水を大量に消費するという側面があり、限られた水資源の有効活用のためにも環境負荷の低い代替品の開発が急務となっています。

カカオ生産地における不当な労働環境

手作業で収穫されているカカオは、特に西アフリカの生産地の人々の生活を支える主要な産業となっています。英ガーディアン紙によると、西アフリカでは、200万人の農家がカカオ栽培に従事していますが、1日1ドル以下の低賃金であることが多いといいます(※2)。

低賃金の理由として、カカオ栽培は歴史上奴隷労働と結び付けられていたことが背景にあります。また、子供たちが労働力を担っていることも多いため、児童労働が問題にもなっています。

(※2)
The Guardian - Cocoa planting is destroying protected forests in west Africa, study finds
https://www.theguardian.com/environment/2023/may/22/cocoa-planting-is-destroying-protected-forests-in-west-africa-study-finds

以上の問題点を踏まえ、「価格・供給の安定」「環境負荷の低減」「労働環境の是正」という3つの要素がカカオフリーチョコレートの開発においては重視されています。

多様化する代替原料とカカオフリーチョコレートの商品化

現在、世界各国のスタートアップが独自の技術でカカオフリーチョコレートを市場に投入しています。

Planet A Foods(ドイツ)

ドイツのスタートアップ企業Planet A Foodsは、ひまわりの種から作った代替チョコレート原料「ChoViva」を開発しています。ヨーロッパで収穫されるひまわりの種を使用することで輸送が短縮され、さらに森林破壊の必要がなくなるため、従来のカカオと比較して74%のCO2排出量の削減に繋がると言われています。

数々の食品メーカーとパートナーシップを組み、2026年時点で10カ国120の商品でChoVivaが使用されており(※3)、板チョコ、クッキー、アイスクリーム、シリアルなど幅広い商品に展開されています。

ドイツのネスレでは、2026年4月よりChoVivaを使用したカカオフリーチョコレートNESTLÉ CHOCO CROSSIES "Snack Vibes"の販売を開始しました。日本のイオンが販売した「チョコか?」も、Planet A FoodsのChoVivaを使用しています。

ネスレの商品「NESTLÉ CHOCO CROSSIES "Snack Vibes"」

(※3)
Nestlé Partnership
Global Brands drive innovation together with ChoViva
https://planet-a-foods.com/press/articles/b926a6a0l400sotqwww7h1n9/nestle-partnership

WNWN Food Labs(イギリス)

イギリスのスタートアップ企業WNWN Food Labsでは、穀物やマメ科植物由来のカカオフリーチョコレートをBtoB向けに販売し、ロンドンを中心としたベーカリーやレストランで採用されています。従来のカカオ使用のチョコレートと比較して、商品が出来上がるまでに水の消費と温室効果ガスの排出を80%減らすことができています。

WNWN Food Labsの代替チョコレート

Voyage Foods(アメリカ)

アメリカのスタートアップ企業Voyage Foodsが開発したカカオフリーチョコレートは、ぶどうの種をアップサイクルして使用しています。BtoB向けに販売されており、大手食品会社Cargillと提携してカカオフリーチョコレートを展開しています。

アレルギーフリー食品にも力を入れていることが特徴で、ナッツ不使用のスプレッドや、コーヒー豆不使用のコーヒーも取り扱っています。

Nukoko(イギリス)

イギリスのスタートアップ企業Nukokoは、ヨーロッパ内で生産されたそら豆を使用したカカオフリーチョコレートをBtoB向けに販売しています。そら豆由来であることから、従来のカカオチョコレートに比べてより多くのたんぱく質を含み、砂糖の使用を40%削減することができています。機能性食品としての魅力も付加価値となっていることが特徴です。

まとめ

カカオフリーチョコレートの開発には、単なる「代用品」の域を超え、「価格・供給の安定」「環境負荷の低減」「労働環境の是正」という社会課題の解決が期待されています。

カカオに代わる原料は、開発企業によって使用しているものが異なり、ひまわりの種、ぶどうの種、そら豆などが代表的な原料として挙げられます。カカオ不使用のチョコレートを作り出すという共通の目的に向けて、それぞれの企業が異なるアプローチをとっていることが特徴です。

また大手食品ブランドにおいても、代替原料の開発企業とタッグを組むことで、カカオフリーチョコレートの商品化が進んでいます。特にPlanet A Foodsの開発したひまわりの種由来の原料「ChoViva」が有名な例で、ネスレ、リンツ、国内ではイオンにて「ChoViva」を使用した商品が販売されました。

エシカル消費を重視する消費者層のニーズに応えるだけでなく、企業のサステナビリティに対する取り組みにも繋がるカカオフリーチョコレート。健康志向やアレルギー対応を求める層も取り込みながら、今後ますます商品開発の活発化と市場拡大が期待されます。

【編集部考察】気候変動 × フードテックが描くチョコレートの未来

海外で加速するカカオフリーへの潮流は、日本のマーケターや事業開発担当者にとって、単なる「環境への配慮」以上の大きなヒントを含んでいます。今後、国内市場でこのトレンドを読み解く鍵となる3つの視点をご紹介します。

1. 気候変動を「守りのリスク」から「攻めのチャンス」へ

もはや気候変動は、社会貢献活動(CSR)の一環として考える段階を過ぎ、企業の経営に直結する課題となっています。

カカオの供給が不安定になることは、これまでの主力商品の利益を圧迫しかねません。 ここで大切なのは、カカオフリーを単なる「代わりの品」と捉えないことです。むしろ、天候に左右されず安定して届けられる、これからの時代のスタンダードとして位置づけ、供給網を強くしながら、同時に「地球に優しく、かつ満足度も高い」という新しい贅沢の形を提案するような、先を見越した戦略が求められます。

2. フードテックと日本独自の強み

ドイツのPlanet A Foodsなどの事例を見ればわかる通り、今のカカオ不使用チョコは「我慢して食べるもの」ではありません。最新の成分分析や発酵技術によって、カカオを使わずに本物のチョコの美味しさを科学的に再現するレベルに達しています。

日本には、古くから培ってきた発酵技術や、米、大豆、お茶といった豊かな素材があります。これらに最新のテクノロジーを掛け合わせれば、日本発の「驚きのある新しいチョコレート」を生み出せるはずです。それは単なる新商品作りではなく、その企業にしかできない独自の技術やレシピを強みに、世界へ勝負を仕掛けるチャンスでもあります。

3. 「エシカル」の先にある、消費者の本音に寄り添う戦略

これからのブランド戦略では、「環境に良いから選んでください」という呼びかけだけでは、多くの消費者の心は動きません。感度の高い若い世代は、環境や労働環境への配慮は「当たり前の前提」としてチェックした上で、最終的には「自分にとってどれだけ魅力的か」をシビアに判断します。

例えば、「チョコよりも健康的で栄養がある」といった、食べる人自身にとってのメリットをどう打ち出すかが重要です。「社会に貢献できる」という満足感と、「自分の体や気分にとってプラスになる」という納得感。この両方をどう組み合わせるかという設計こそが、新しい文化を日本に定着させるための大きな鍵となるでしょう。

「カカオのないチョコレート」が当たり前になる未来。それは、供給不安という困りごとを「新しい商品づくりの出発点」として捉え直した企業にとって、競合他社に先駆けて、独自の市場を切り拓く大きな機会となる可能性を秘めています。

【参考】
https://www.innovamarketinsights.com/trends/cocoa-free-chocolate-trends-global-market-overview/
https://unctad.org/news/chocolate-price-hikes-bittersweet-reason-care-about-climate-change
https://www.undp.org/africa/waca/blog/crumbling-empire-chocolate
https://international.nwf.org/cocoa-and-deforestation/
https://choviva.com/details
https://www.eatwinwin.com/
https://voyagefoods.com/
https://www.fooddive.com/news/future-chocolate-cacao-free-voyage-foods-thinks-so/708143/
https://nukoko.co.uk/

この記事のライター

大学ではポルトガル語と言語学を学び、常に様々な外国文化や言語に興味がありました。
海外情報に関する記事を通じて、何かヒントに繋がる新たな視点や面白い発見をお届けできればと思います。

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