「あしたのシニア」を読み解く。年齢ではなく“個人”を見る時代へ【宝島社登壇 セミナーレポート】

「あしたのシニア」を読み解く。年齢ではなく“個人”を見る時代へ【宝島社登壇 セミナーレポート】

いまや50歳以上が過半数となった日本。少子高齢化はますます進み、あらゆる市場においてシニア層の存在感は高まり、それは巨大市場とも言われ続けています。しかし、その一方で多くの企業が「重要市場とわかっているけれど、どう捉えればよいのか」との戸惑いも抱えているようです。本記事では、従来のシニア像とは異なる「令和型シニア像」の読み解き方について、実際の取り組み事例を交えて紹介・解説したセミナーの内容を振り返ります。


セミナー話者

本レポートはツノダが執筆しています。

セミナーの前半では、私ツノダからシニア市場の捉え方やシニアマーケティングの考え方について紹介しています。後半は宝島社「素敵なあの人」の神下編集長より、60代女性との幾度となる座談会やイベントから得たリアルな「60代(素敵世代)像」を、お話しいただいています。

シニア市場は「椅子が増え続けるボーナスステージ」

多くのマーケターがZ世代やアルファ世代に注視していますが、人口動態を見れば、本当に注視すべき層は明白でしょう。総務省統計局「人口推計2025年5月1日(概算値)」によれば、50歳以上が総人口の50.4%とのこと。史上初の50%越えです。

若年層が「限られた椅子の取り合い」であるのに対し、50歳以上の市場は「椅子が増え続けるボーナスステージ」。特に、消費者として現役で、自分のお金と時間の使い道を自ら決める「あしたのシニア」たちの市場は、企業にとって最大の成長領域です。

参考:人口推計「2025年(令和7年) 5月報」|総務省統計局

2025年人口の半分が50歳以上

なぜ、シニアマーケティングは「鬼門」なのか

しかし、魅力的な市場でありながら、成功事例は決して多いとは言えません。それもそのはず。多くの企業における企画開発担当者である20-40代の方々に限らず、誰にとっても(当事者のシニアにとっても!)、「シニア」は「未踏の地」なのです。

シニアマーケティングという鬼門

自分の経験として振り返ることができない世代を分析しようとすると、どうしても「ステレオタイプ(記号化されたシニア像)」で判断しがちです。

結果として、機能価値は満たせても、購買に関わる気持ちの揺らぎを捉える「感情デザイン」で躓くようです。

シニアと響き合うための「5つの原則」より抜粋

こうした課題へのヒントとしてまとめた「5つの原則」から、ここでは特に重要な3つについてご紹介いたします。

〈1.エイジフリーの原則〉年を重ねるほど拡大する個人差

シニア層に限らず、いまや世代や年代で括ることの意味は希薄化しています。しかし、その中でも年齢を重ねるほどそれまでの人生において選択してきた事柄の積み重ねにより、「個人差」は拡大していきます。

シニア・ダイバシティ

年齢ではなく、その人たちの価値観やライフスタイル、あるいは「その時々の役割」とどう向き合っていくか。そこからとらえ直していくことがスタートラインです。

〈2.成長実感の原則〉いくつになっても「できた!」は嬉しい

「年を重ねる=衰え」という思い込みは捨てましょう。タイミーで新しい仕事に挑戦したり、毎日Duolingoで語学を学んだりするシニアが求めているのは、数値化されたスコアや他者からの感謝を通じた「成長実感」です。諦めではなく、「新しい自分になれた」という実感をどのような「瞬間」で提供できているか。その瞬間がベネフィットになります。

DUOLINGO検索者、50,60代の成長志向

【関連記事】「加齢=老い」の固定観念を超えて。成長に期待するシニアの新しい価値観|あしたのシニア

https://manamina.valuesccg.com/articles/4502

「年をとったな」と感じる瞬間、それは衰えの始まりでしょうか?人生100年時代を迎え、シニアの働き方や学びは大きく変化しています。加齢を「衰退」と捉えるか「成長」と捉えるか。その視点の違いが、これからのシニアの生き方を大きく変えていきます。本記事では、シニアの「成長」という新たな可能性について探ります。

〈3.リスペクトの原則〉一人ひとりのヒストリーに土足で踏み込まない

「親切」と「お年寄り扱い」は異なります。えげつない不安訴求や、自尊心を傷つける過度な配慮は、ブランドの品位を貶めます。年齢を語らずとも、その人の歩みを肯定し、得られる価値を正当に伝える。リスペクトのあるブランドこそが、次世代(今の若者)からも認められる存在となります。

【関連記事】"品位に欠けるシニア広告"をなくすには。寄り添いマーケ4つの成功例|あしたのシニア

https://manamina.valuesccg.com/articles/4626

Webサイトや購入した商品の使い方がわかりにくくて、使う前に挫折した経験はありませんか?それは単なる使い勝手の悪さではなく、「感情の壁」のせいかもしれません 。シニア層は「年寄り扱いされたくない」という気持ちと身体の変化のギャップに悩んでおり、あからさまな「シニア向け」はかえって敬遠されがちです 。本記事では、この「感情の壁」を取り除き、自尊心に寄り添う「エイジフリー」なマーケティングの成功事例を4つ紹介し、「品位に欠ける広告」をなくすヒントを探ります 。

シニア像の刷新で支持を獲得した成功事例 宝島社「素敵なあの人」

続いて「60代女性」を年齢でとらえるのではなく、「素敵世代」として丁寧に向き合っている宝島社の雑誌「素敵なあの人」の神下敬子編集長から、彼女たちのリアルについて語られました。

「変わらない感性」と「変わる身体機能」

「お茶会」という読者との対面調査を頻繁に重ね、読者よりも若い編集者の思い込みを払拭する地道な取り組みに基づいた誌面作りが支持を得ています。企業からも注目され、編集部とのコラボ開発も増えてきているとのこと。

『素敵なあの人』は、60代女性に向けたシャンプー&トリートメント「bifuwa(びふわ)」を株式会社モンシュシュと開発し、販売。

神下氏は、「彼女たちは決して『守り』に入っているわけではなく、新しいデジタルツールを使いこなし、SNSやリアルにおけるコミュニティの中で自身の役割を更新し続けている」と紹介、思い込みに釘を刺しました。

【媒体情報はこちら】素敵なあの人 - 宝島社広告局

これからのシニアマーケティングは「年齢理解」ではなく、「その人の暮らし理解」へ

本セミナーを通じて、決して「シニア」というラベルで一括りにすべきではないことが浮き彫りになりました。個人差に影響を与えている背景に目を向け、「何を大切にしている人なのか」「何に満足を感じる人なのか」を多角的に理解していくことが重要です。

シニアマーケティングに「魔法の杖」はありません。しかし、「エイジフリー」「成長実感」「リスペクト」などのレンズを通して自社の施策を見直していくことで、これまで見落としていた「行間に潜むインサイト」が見えてきます。

シニア市場は、単なる「高齢者向け市場」ではありません。
それは、多様な人生経験を重ねた生活者からなる豊かな市場です。
豊かさの中には不安も恐れもありますし、その折り合いのつけ方もそれぞれです。
その複雑でおもしろい市場をどう読み解くか。
そのヒントを、連載「あしたのシニア」で今後も継続的に発信していきます。

今回ご参加いただけなかった方も、ぜひ次回セミナー・連載記事にご期待ください。

この記事のライター

戦略コンサルタント。株式会社ウエーブプラネット代表取締役。
慶應義塾大学卒業後 、商業施設の企画開発会社にてターゲット戦略やコンセプト開発 、未来のくらし研究を担当。
1993年に株式会社ウエーブプラネットを設立。生活者研究、各種インサイト探索調査、コンセプト・ナビゲーション、コンサルティングなどを通して、トイレタリー ・飲料・食品・化粧品・住宅・家電・住設など、 さまざまな大手企業のマーケティング支援に携わっている 。時代と生活者の価値観やインサイト、企業理念等を言語化していくプロセスに定評がある。

近著『いちばんわかりやすい問題発見の授業

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