「併用率」と「特徴値」とは?
Web広告でターゲット層へのアプローチを効率化するにはメディアの選定が非常に重要ですが、その際にどのような指標を用いればよいのでしょうか。ユーザーボリュームの多い有名サイトは広告予算も多く必要だったりしますし、自社サイトの流入元でセッションの多いメディアは有力候補ではありますが、自社アクセス解析ツールだけだと他に親和性の高いメディアを見落としている可能性もあります。
そこで今回は、メディア選定の指標として使える「併用率」「特徴値」の2つについて、概要や算出方法、具体例を交えてご紹介します。
最初に2つの指標について、算出方法と定義を解説します。
下記のように、分析対象をサイトA、併用率・特徴値を調べたいサイトをサイトBとします。
まずは算出方法について。
併用率とは、「対象者のうち他サイトも訪問している割合」を表す指標となり、自社サイトユーザーのうち他の指定サイトを訪問している人はどれぐらいか、がわかります。以下の方法で算出できます。
併用率 = サイトA・Bの訪問ユーザー数(③) ÷ サイトAの訪問ユーザー数(①)
この指標が高いほど、サイトBはサイトAを訪問するユーザーのカバー効率が良く、ユーザー数を取れるサイトであることが分かります。
もう一方の特徴値は、「当該サイトを訪問するユーザーのうちターゲット層となる割合」を表す指標となり、以下の方法で算出できます。
特徴値 = サイトA・Bの訪問ユーザー数(③) ÷ サイトBの訪問ユーザー数(②)
この指標が高いほどサイトBにおけるサイトAがターゲットとする層の割合が高く、質の高いサイトであることが分かります。
では次に、実データを用いた具体例について見てみましょう。
トヨタ「ヤリス」を例に併用率と特徴値の使い方を解説
今回はトヨタが生産・販売するコンパクトカーである「ヤリス」の商品ページを例に、他サイトの併用率と特徴値に注目してみます。
ヤリスの商品ページ
まずは併用率について上位10サイトをまとめたものが以下になります。なお分析には、Webサイトにおけるユーザー数や属性、集客チャネルや検索キーワードなどを分析できる市場調査ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用しています。
【併用率の上位10サイト】
利用ツール:Dockpit、2021年6月 デバイス:PC&スマートフォン
Dockpitでは、競合分析機能のなかの「関心サイト」から「併用率優先」表示を行うことで併用率を確認できます。
ヤリスの商品ページの併用率に関しては、Yahoo!ニュースが最も高く、次にAmazonやWikipediaが続いています。いずれもユーザー数が非常に大きな大手メディア・プラットフォームのサイトであることが分かります。
これらのサイトはユーザー数が多い分、自動車に関心のない人も一定数含まれてしまうものの、数の面ではターゲット層に一度にアプローチが可能なサイトだと言えます。
続いて、同様にヤリスの商品ページにおいて特徴値の上位10サイトをまとめたものが以下になります。
【特徴値の上位10サイト】
利用ツール:Dockpit、2021年6月 デバイス:PC&スマートフォン
Dockpitでは、競合分析機能のなかの「関心サイト」から「特徴値優先」表示を行うことで特徴値を確認できます。
特徴値についてはモータースポーツ活動・商品ブランドの情報を提供するトヨタ自動車公式サイトである「TOYOTA GAZOO Racing」が最も高く、それ以降にも車に関連するメディアが上位を独占しています。
サイトのユーザー数は併用率のランキングより2〜3桁劣りますが、こちらはサイトユーザーに占める自動車関心層の比率が非常に高いため、効率よくターゲット層にアプローチすることができます。
併用率と特徴値を使い分け、Web広告の出稿先を最適化すべき
ここまで、Dockpitが独自に算出する併用率・特徴値の2つの指標について算出方法と具体例について書きました。
併用率は「対象者のうち他サイトも訪問している割合」のことで、併用率が高いサイトはターゲット層以外の層も多く含まれてしまうものの、閲覧者が多いため数の面でターゲット層に一度にアプローチできます。
一方、特徴値は「当該サイトを訪問するユーザーのうちターゲット層となる割合」のことで、特徴値が高いサイトほど関心層の比率が高く、高いアプローチ効率でターゲット層への訴求が可能なサイトです。
これらを元に、一定数のユーザーへのアプローチを目標とした際には、
1.併用率の高いメディアをおさえる
2.特徴値の高いメディアを複数束ねる
という2つのアプローチが考えられます。
基本的に、ターゲット層に一度にアプローチできる併用率の高いメディアは利用しやすいでしょう。
しかし、特にプロモーションにかける予算が限られている場合、効率よくターゲット層にアプローチの行える特徴値の高いサイトとの相性がいいと言えます。また、競合との競争が激しい市場の場合も、併用率の高いメディアでは競合との差がつきにくいため、特徴値をもとにした効率のいいメディア戦略が鍵となります。
このように今回ご紹介した「併用率」「特徴値」はメディア戦略を整理できる重要な指標です。この2つの指標を活かして、メディア戦略を見つめなおしてみてはいかがでしょうか。
2022年の春から、新卒としてヴァリューズに入社。