百貨店各社のECサイトユーザー数を調査〜検索に強い高島屋が頭ひとつ抜ける

百貨店各社のECサイトユーザー数を調査〜検索に強い高島屋が頭ひとつ抜ける

実店舗の商業がイメージとして大きい百貨店について、オンラインショップへの集客状況を調査しました。5つの百貨店ECサイトの集客規模、訪問者のインサイト、集客経路などを分析しています。


コロナ禍で大きな打撃を受ける百貨店業界。東京商工リサーチによる2021年8月のニュースでは、全国の主要百貨店70社の2020年度の売上高は、前期よりも1.5兆円の減少となったとも報じられました。多くの業界がデジタルシフトを進めている中、百貨店業界でもDXの必要性が高まっています。

今回は、そんな百貨店業界のECサイトのWeb集客状況や、それぞれのサイトにおけるユーザー特徴を調査します。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツールDockpit(ドックピット)を用いました。

百貨店ECサイトのユーザー数は?

今回は、「三越伊勢丹」「高島屋」「阪急阪神百貨店」「大丸松坂屋」「マルイ」の5サイトを取り上げ、調査と分析をしていきます。各サイトのURLは以下の通りです。

• 三越伊勢丹 … https://www.mistore.jp/shopping
• 高島屋 … https://www.takashimaya.co.jp/shopping/
• 阪急阪神百貨店 … https://web.hh-online.jp/
• 大丸松坂屋 … https://www.daimaru-matsuzakaya.jp/
• マルイ … https://voi.0101.co.jp/voi/index.jsp

全体を通じたサイトの特徴としては、百貨店の主力商材であるギフトやファッション、コスメといった商品群の掲載が目立つことです。

また、セールや季節ごとのフェアなどの特集コンテンツも露出が多い印象です。

それでは、Dockpitを用いて各ECサイトの流入分析をしていきましょう。

5つのサイトのユーザー数から比較していきます。

百貨店ECサイトの「ユーザー数推移」データ

「Dockpit」で抽出した百貨店ECサイトの「ユーザー数推移」データ
期間:2021年1月〜2021年12月

上記は5サイトの過去1年のユーザー数の推移を現したグラフです。1年を通して最もユーザー数が多いのは高島屋で、概ね月間300万~400万人ほどのユーザーが訪問しています。

次にユーザーが多いのは三越伊勢丹とマルイでした。どちらも平均して月間200万人程度のユーザーがいます。ただし、月によっては大松松坂屋が上記2サイトを超えるユーザー数となる場合もあり、各サイトともに季節性による訪問者数の大小が見て取れます。

百貨店サイトの訪問ユーザの季節性

各ECサイトには季節ごとのユーザー数の大小がありましたが、全体的に見ればそれぞれのグラフは、同じようなタイミングで上下していることがわかります。百貨店のECサイト特有の、季節によるユーザー数のトレンドがあることに起因していると考えられます。

任意の国内サイトを登録し、業界としてまとめて分析できる、Dockpitの「カスタム業界」機能を用いて、上記の5サイト全体のユーザー数を推計した1年間のユーザー数の推移も見てみましょう。

百貨店ECサイト全体の「ユーザー数推移」データ

「Dockpit」で抽出した百貨店ECサイト全体の「ユーザー数推移」データ
期間:2021年1月〜2021年12月
デバイス: PC・スマートフォン

上記グラフを見ると、ユーザー数が最も多いのは11月~1月にかけての年末年始にかけてで、次は2月や7月です。年末年始に訪問者が多いのは、クリスマスやお歳暮、初売りといった百貨店の商戦が集中する時期であるからと考えられます。

同様に、2月はバレンタイン、7月は暑中見舞いがあり、1年を通してギフト・贈答品の購入が増える時期は、百貨店のECサイトを利用するユーザーが増えると見ることができます。こうした季節性については百貨店各社もしっかりと捉え、訴求ポイントとして打ち出していることが各ECサイトからうかがえます。

百貨店ECサイトの訪問ユーザー像 | 男性ユーザー割合が最も大きい高島屋

次は、各ECサイト訪問者の属性を掘り下げてみましょう。Dockpitで5サイトのユーザーの性別比率をデータ抽出したものが以下です。

百貨店ECサイトの「性別」データ

「Dockpit」で抽出した百貨店ECサイトの「性別」データ
期間:2021年1月〜2021年12月
デバイス: PC・スマートフォン

全体を通して女性ユーザーの割合が高く、個別で見てもすべてのサイトのユーザーの過半数が女性です。その中でも唯一、高島屋だけが男性ユーザーの比率が40%を超えており、特徴的です。

百貨店と聞くと実店舗でも女性客が多い印象を持ちますので、Webで男性ユーザーを上手く集客できている点は、高島屋のユーザー数が最も多いことの一因であるかもしれません。

つづいては年代別の割合です。

「Dockpit」で抽出した百貨店ECサイトの「年代」データ
期間:2021年1月〜2021年12月
デバイス: PC・スマートフォン

全体傾向としては30代~40代のユーザーがボリュームゾーンとなりそうですが、阪急阪神百貨店のECサイトでは20代ユーザーの比率が比較的大きくなっています。他サイトよりも若年層の集客ができている点は、阪急阪神百貨店の強みであると言えるのではないでしょうか。

各サイトにアクセスしているユーザーの居住地のデータも見てみましょう。

「Dockpit」で抽出した百貨店ECサイトの「居住地域」データ
期間:2021年1月〜2021年12月
デバイス: PC・スマートフォン

上記を見ると、やはり各百貨店は発祥地や本店所在地の地域で知名度があるため、地元のユーザーからのアクセスが多くなる傾向にあるようです。例えば、大丸松坂屋は経営統合前の「松坂屋」が中部地方を本拠点としていたため、同地域からの訪問者が多い様子が見て取れます。

一方、近畿を本拠点とする阪急阪神百貨店は同地域で圧倒的なアクセスを集めていますが、関東では最も訪問者の割合が低いです。同じように、三越伊勢丹・マルイ・高島屋の3サイトは関東のユーザーが多い反面、関西では一気に訪問者が少なくなります。

こういった地域ごとの訪問者数の特色はかなり色濃く、百貨店ECサイトの集客へ大きな影響を及ぼしていることが推測されます。特に、首都圏と関西圏の二大商圏を比較すると、集客状況の逆転が顕著に見られると言えるでしょう。デジタル上でも地域性が反映されている点には、消費者の第一想起ブランドの地域間の差異が可視化されており、興味深いです。

百貨店ECサイトの集客構造 | 検索に強い高島屋、Twitterに強い伊勢丹

次は、各ECサイトがどういった経路でWeb集客を行っているのかを分析していきます。
Dockpitを用いて、5つのサイトの集客構造のデータを抽出してみます。

「Dockpit」で抽出した百貨店ECサイトの「集客構造」データ(自然検索)
期間:2021年1月〜2021年12月
デバイス: PC・スマートフォン

まず、検索エンジンからの訪問である自然検索の流入数を比較してみると、最も多いのは高島屋の3,000万セッションです。続く三越伊勢丹と比較しても1.6倍ほど多く、自然検索からの集客に成功している状況にあります。

なお、高島屋・三越伊勢丹は冒頭で紹介したユーザー数のグラフでも、訪問者が多いサイトのトップ1・2に位置づけていたため、自然検索からの流入がWeb集客全体へ大きく影響していると考えられます。

続いて、ソーシャル(SNS)経由のセッション数も比較してみます。

「Dockpit」で抽出した百貨店ECサイトの「集客構造」データ(ソーシャル)
期間:2021年1月〜2021年12月
デバイス: PC・スマートフォン

ソーシャルでの集客トップはマルイとなっていました。これはマルイの強みと言えるでしょう。自然検索の場合は、「特定の商品が欲しい」「特定の商品を物色したい」といった、消費者の顕在化されたニーズがなければ流入が発生しません。しかし、ソーシャルの場合はおすすめ・新着商品の宣伝やフェアやセールの告知などで、顧客の潜在層なニーズへ訴求できる側面を持っています。

各社のソーシャル活用が、今後のWeb上での集客へも大きく影響していきそうな所感を持ちました。

まとめ

今回の調査を通じて、集客数に季節性が色濃く反映される点や、ECで購入が多い商品群など、百貨店ECサイト全体に共通する特徴がわかりました。それだけではなく、拠点を置く地域からのアクセスが多いことや、サイトごとに集客構造が異なる点など、マーケティング観点で参考になりそうな情報も紐解けたのではないかと思います。

市場全体でECの販路が拡大し続ける中、よりWebへシフトした集客戦略が求められていきそうです。そんな中でも、百貨店だからこそできる価値の提供や集客の手段が検討できれば、さらに大きな収益の創出が見込めるのではないかと感じました。

本調査が、皆さんのマーケティング業務や市場調査などに役立ちますと光栄です。

【調査概要】
・全国のモニター会員の協力により、ネット行動ログとユーザー属性情報にもとづき分析
・行動ログ分析対象期間:2021年1月〜2021年12月
※ボリュームはヴァリューズ保有モニターでの出現率を基に、国内ネット人口に則して推測
※対象デバイス:PC・スマートフォンの両デバイス

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。Dockpitでは毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

国内大手の採用メディア制作部を経てフリーライターとして独立。現在はWebマーケティング、就職・転職、エンタメ(ゲーム・アニメ・書籍)等の各種メディアにて記事制作を担当。「マナミナ」では一人でも多くの読者に楽しく読んでもらえるマーケティングコンテンツを提供していきます。

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