電気自動車(EV)の普及が進まない日本。充電環境の認知がキーポイントとなるか?

電気自動車(EV)の普及が進まない日本。充電環境の認知がキーポイントとなるか?

ニワトリが先かタマゴが先か? 電気自動車(EV)の普及には充電環境の充実が不可欠で、充電環境の充実には電気自動車(EV)の普及が不可欠。電気自動車(EV)についてはある程度の知識は広まっていますが、その充電環境についてはどうでしょうか。 電気自動車(EV)と充電について、ネット上の検索状況を調査し、消費者ニーズの実態を検証します。


電気自動車(EV)の普及率、日本と欧米の差

欧米や中国と比べて、日本では電気自動車(EV)の普及がなかなか進まないといわれています。一般社団法人日本自動車販売協会連合会が発表している「燃料別販売台数(乗用車)」によると、2021年の日本国内の新車販売台数は約240万台でした。そのうち電気自動車(EV)は2万台強。全体の0.9%にとどまっています。

ちなみに電気自動車先進国であるイギリスの場合、自動車製造取引業者協会(SMMT)によれば、2021年の新車販売台数の11.6%が電気自動車(EV)。人口が日本の約半分のイギリスにおいて、電気自動車(EV、PHV)の新車販売第数は約75万台にものぼります。

これほどまでに電気自動車(EV)の普及が遅れている日本。その原因はどこにあるのでしょう。

高額な新車の販売価格や政府の電気自動車購入に対する補助制度の遅れなど、要因はいくつか考えられます。そのなかでも大きな要因となっているのが、充電環境の整備だといわれています。一方で充電環境の整備は従来と比べて進んできていることも事実です。

では消費者は電気自動車(EV)の充電について、どの程度意識していて、何を気にしているのでしょうか。検索データから分析してみます。

充電環境に関する検索はまだまだ少ない現状

実際にどのくらいの人が電気自動車(EV)とその充電環境について興味を持っているのでしょう。

ヴァリューズが提供するWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用いて、検索キーワード「電気自動車」「充電」がどのくらい検索されているか調べてみました。

月間の検索ユーザー数は1〜2万人程度。まだまだ興味を持って能動的に調べている人は多いとはいえないようです。

「電気自動車」かつ「充電」検索ユーザー数推移
期間:2021年11月〜2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン

電気自動車(EV)や充電環境に興味を持っているのは年齢層が高めの男性

それでは電気自動車(EV)とその充電環境について、どのような人が興味を持っているのか、検索ユーザーの属性を見ていきましょう。

まずは性別から。男性が65.7%で女性が34.3%。6割以上を男性が占めました。

運転免許の保有者や自動車の所有者は女性よりも男性が多いことを考えると妥当な結果といえるでしょう。特に男性が電気自動車に対して強く興味を持っているというわけではないようです。

「電気自動車」かつ「充電」検索ユーザー属性:性別
期間:2021年11月〜2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン

続いて年代別で見てみましょう。

40代と50代がほぼ同じ割合で約2割、次いで30代が続きます。20代はネット利用者全体の比率と比べると低く、電気自動車(EV)とその充電環境についてはあまり興味を持っていないというような結果となりました。

「電気自動車」かつ「充電」検索ユーザー属性:年代
期間:2021年11月〜2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン

充電に関する基本的な情報が調べられている

縦軸を年齢、横軸を性別に設定した属性別マップを使って、検索している人がどういったトピックを特に調べているか考察してみましょう。

まず多いのが「料金」について。やはり電気自動車(EV)のランニングコストの要となる充電にかかる費用が特に男性は気になるようです。女性は「電気代」というキーワードがあがっています。

次に多い「自宅」というワードは自宅で充電できるかどうかを調べているのでしょう。
「料金」に対応してか多いのが「無料」というワード。
そして「なぜ」。「なぜ無料で充電できるのか」を調べる人も多いようです。

多くの人がまだまだ電気自動車(EV)の充電について基本的な情報を調べている段階だということでしょう。

またショッピングモールや自動車メーカー(ディーラー)など身近な場所や馴染みの場所で充電のサービスを受けることができるのかを調べるケースも多いようです。

「電気自動車」かつ「充電」検索属性別マップ
期間:2021年11月〜2022年10月
デバイス:PCおよびスマートフォン

「電気自動車」「充電」で検索した後の閲覧サイトランキング

「電気自動車」「充電」で検索したあとの流入サイトは以下のようなランキングになりました。

【1位】EV DAYS | EVのある暮らしを始めよう
「EV(電気自動車)を中心とした暮らしの電化」に関する情報をお届けする、東京電力エナジーパートナー株式会社のウェブマガジン『EV DAYS』」

【第2位】ガリバー 中古車情報
「全国に約460店舗展開する中古車売買店『ガリバー』の公式サイト」

【第3位】EVsmart 電気自動車の充電器検索、充電スタンド・スポット口コミサイト
「電気自動車(EV)」またはプラグインハイブリッド自動車(PHEV)ユーザー向けの、普通・急速充電機器検索サイト」

【第4位】日産 電気自動車(EV)総合情報サイト
「日産自動車の電気自動車に関する情報をお届けするサイト」

【第5位】くらしのマーケット
「登録されている300以上のサービスを人や料金で選ぶことができるサイト」

まとめ

今回の調査から、電気自動車(EV)の充電環境について検索して調べる人はまだまだ少ないのが現状ということがわかりました。

また、調べられている内容も「自宅で充電ができるか」「料金」「充電できる施設」「なぜ無料で充電できるのか」など初歩的な内容が多く、電気自動車(EV)の充電環境について理解が進んでない様子がうかがえます。

今後、電気自動車(EV)の普及を進めるには充電環境についての理解の促進が重要といえるでしょう。多くの人が思っている以上に充電環境の整備が進みつつあることが理解されれば、日本国内でも電気自動車(EV)の需要がさらに高まってくることでが考えられます。

▼今回の調査にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

エディター兼ライター兼フォトグラファー。
紙媒体からウェブまでメディアを問わず活躍中。
広告に関するセミナー講師も務める。

関連するキーワード


「自動車」市場調査 Dockpit

関連する投稿


食べ放題ファンの生態。ケンタ・ミスド・かっぱ寿司の食べ放題って知ってる?

食べ放題ファンの生態。ケンタ・ミスド・かっぱ寿司の食べ放題って知ってる?

好きなものを好きなだけ選べる「食べ放題」は、友人や家族との食事で人気の選択肢です。焼肉やしゃぶしゃぶといった定番に加え、近年はさまざまなジャンルで食べ放題を展開するお店が増えています。本記事では、「食べ放題」を検索するユーザーを分析し、今注目の食べ放題を紹介します。


おじさん構文、おぢポ、無課金おじさん...なんで“おじさん”ってバズるの?

おじさん構文、おぢポ、無課金おじさん...なんで“おじさん”ってバズるの?

おじさん特有のLINEの文面「おじさん構文」、軽装備のオリンピック選手「無課金おじさん」など、聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。ポイ活アプリ「おぢポ」は250万ダウンロード、「おじさん構文」をテーマとした楽曲は3,000万回再生というようにバズっています。なぜ数々の「おじさん」は流行するのでしょうか?この記事では、おじさんがヒットの要因となる理由を探ります。


Threadsユーザー数1,000万人突破。ヒットの要因と未来予測

Threadsユーザー数1,000万人突破。ヒットの要因と未来予測

「Threads(スレッズ)」は、「Instagram」や「Facebook」で知られるMeta社が提供するテキストベースのSNSプラットフォームです。2023年7月にサービス開始したThreadsですが、ここ2年でユーザー数を大きく伸ばしていることをご存じでしょうか。本記事ではThreadsユーザー増加の背景と、今後の推移について分析します。


ゼロクリック時代の新GEO・AI SEO AI経由の流入分析で解き明かす、要約後も人が訪れるコンテンツの条件とは?【ヴァリューズ×note共同調査】

ゼロクリック時代の新GEO・AI SEO AI経由の流入分析で解き明かす、要約後も人が訪れるコンテンツの条件とは?【ヴァリューズ×note共同調査】

インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:辻本 秀幸、以下「ヴァリューズ」)とメディアプラットフォームnoteを運営するnote株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役CEO:加藤貞顕、以下 note)は、AI検索時代におけるネットユーザーの行動変容とコンテンツの新しい「発見・信頼・訪問」の構造に関する共同調査を実施し、レポートを公開しましたのでお知らせします。


ゼロ配で急成長!「ロケットナウ」ヒットの裏側と今後の展望を分析

ゼロ配で急成長!「ロケットナウ」ヒットの裏側と今後の展望を分析

家にいながら外食気分を味わえるフードデリバリーサービス。Uber Eatsや出前館が市場をけん引する中、韓国発の新サービス「Rocket Now(ロケットナウ)」が日本に上陸し、大きな注目を集めています。本記事では、ロケットナウが急成長を遂げた背景や、フードデリバリー業界の今後の展望について分析します。


ページトップへ