【解説者紹介】
被リンクと検索順位の関係を、量・質の両面から調査
安部:12月のコンテンツマーケティング最新動向レポートでは、被リンク指標と検索順位の関係について解説しています。
被リンクとは、外部のページに貼られている自社サイトへのリンクを指します。例えば、コンテンツマーケティングを行っている会社が、ある調査結果に関する記事を作成したとしましょう。その調査結果を他メディアが引用したい場合に、出典元として記事リンクを貼ってもらうことが当てはまります。
安部:SEOにおいて被リンクは重要というのが定説です。今回は、実際それがどれほど重要なのかを探るために、検索順位と被リンクの量・質を照らし合わせて傾向があるか調査しました。全体の被リンクと、実際にユーザーが動いた被リンクとを分けたことは、本調査独自の切り口だと思います。
岩間:なるほど。ユーザーがクリックして遷移した被リンクかどうか、ということも検証していったということですね。でも、どうして実際にユーザーが動いている被リンクが判別できるのですか?
安部:ヴァリューズが持っているデータは、消費者のWeb行動ログデータ、すなわち実際にユーザーが動いているデータです。そのため、その被リンクからユーザーが実際にサイトを訪れたのか、という観点を調査の指標とすることができました。
順位が高いページ群は、被リンク数が多い傾向
岩間:調査の結果、どんなことがわかったのですか?
安部:まず被リンク数について解説します。通説では、被リンクの質は重視されつつ、被リンク数が多いサイトのほうが検索結果の上位に表示される傾向があると言われていますね。
調査した結果は通説通りで、表示順位が高いページ群は、平均の被リンク数も多い傾向があると判明。2022年6月から11月で、多少の変動はありつつも、やはり被リンク数と検索順位には相関関係があることがわかりました。
ここで注意したいのが、鶏が先か卵が先かの話で、上位にあるサイトだから被リンクが集まっているといった見方もできること。上位に表示されているからこそ、参考情報として使われやすい可能性もあるということです。被リンクの数が多いから上位に表示されるといった見方だけでなく、上位に表示されているから被リンクも集まってくることも意識する必要があるでしょう。
安部:続いてはドメイン数について。被リンクのドメイン数とは、自社サイトへのリンクが張られているサイト数のことです。こちらも順位が高いページ群は、平均の被リンクのドメイン数も多い傾向にあり、相関関係にあることがわかりました。2022年6月と11月を比較すると、11月のほうがより顕著に表れていますね。
実際にユーザーにクリックされる被リンクが高評価
岩間:ユーザーの動きの観点ではどうですか?
安部:こちらは被リンクの数ではなくドメインの数という形で出しています。どれくらい多くの外部サイトから自社サイトへの訪問が獲得できているか、ということですね。
結果としては、検索順位が高いページ群は、実際にユーザーが動いている被リンクの平均ドメイン数が多いことがわかりました。細かく見ると、6月から11月に1-10位のドメイン数は増加し、11-20位、21位-30位は減少しています。より上位化が顕著になったと見ることができるでしょう。
安部:最後は、実際にユーザーが動いている被リンク経由のセッション数についてです。先ほどは流入があった外部サイトの数を見ましたが、ここでは外部サイトからの訪問数を見ています。
結果を見ると、順位が高いページ群は、被リンク経由のセッション数も多く、6月より11月のほうがその傾向が顕著になっていることがわかりました。
岩間:被リンク数が多いほうが、検索順位も上位である傾向は通説通りでしたね。一方で、実際にユーザーが動いている被リンクとなると、上位化の傾向がより強くなっているという印象を受けました。
安部:そうですね。6月→11月の期間での推移から見ても、今後もその傾向が強まっていく可能性は十分あるのではないでしょうか。
2022年、Googleはユーザーの行動をより重視するように
岩間:今回解説してもらった被リンクはもちろんですが、Googleはユーザーの実際の行動を重視していると改めて感じました。
安部:この流れは最近始まったわけではなく、ずっと前からであると考えています。以下の資料は2010年のものなのですが、Googleは、ユーザーが行動しているリンクをもとにしたランキングアルゴリズムの特許を取得しています。
安部:このようにユーザーの実際の行動を重視した仕組みがすでにある・準備していることを考えても、今回の調査結果は違和感なく受け入れられるでしょう。ユーザーファーストなGoogleの方向性は変わらないように思います。
岩間:それにしても、どうして2022年というタイミングなのでしょうね。今回解説してもらったユーザーにクリックされている被リンクを評価する動きや、表示速度などを評価するコアウェブバイタルをPC版に組み込む今年3月の動きなど、2022年になってUXを重視したGoogleの仕組みづくりが目立っているような…。
安部:仮説にはなりますが、Googleとしても、最近になっていろいろな体制が整ってきたのではないでしょうか。これまでも本当に価値のある被リンクを評価したかったのでしょうが、様々な方法でアルゴリズムの穴を抜けようとする人が少なくありませんでした。被リンクの「数」だけを評価しているなら、ダミーサイトを作って被リンクをたくさん集めるなどが過去の例ですね。このようなことはユーザー重視の観点から見ても、決してよいことではありません。
そういったことへの対策の一環として、ユーザーの行動を重視した被リンクの評価、というのが行われている可能性があるかもしれません。
「ユーザーが動く被リンク」の獲得方法とは
岩間:今回の解説を踏まえて、マーケターはどう行動すればよいでしょうか。
安部:まず実際にユーザーが動く被リンクとはどんなものか、考えてみましょう。自社でコントロールできる範囲は広くないですが、次のような、大枠3つの観点があると考えています。
①どのようなページに 掲載されるか |
流入があるページに掲載されることが大前提。 元のユーザー数の母数が大きいほうが動くユーザーが多い可能性が高いため、たくさんの流入がある外部ページに被リンクが掲載される。 |
➁目を引く形で 掲載されているか |
わかりやすい掲載のされ方になっていること。 ページの上部にリンクがある、目立つデザインであるなど。 |
③テーマと遷移先の関連性がどのくらいあるか | 良い例:スマホの比較サイトからスマホのメーカーのサイトに飛ぶ場合。 良くない例:今日の出来事を書いているブログから、いきなりカードローン申し込みのサイトに飛ぶ場合。 |
岩間:ありがとうございます。被リンクの獲得の仕方というと、例えば、ある協会の会員になって、協会のサイトに自社サイトのリンクを貼ってもらう方法や、官公庁のサイトに掲載をお願いしたりする方法がありますね。もちろんそのようなことも大事ですが、一覧の中にただ入っているだけでは、なかなかクリックしてもらえない可能性があります。
安部:そうですね。今後は、関連サイトや自治体サイトにリンク設置をお願いする獲得施策より、リバースアウトリーチのような実際にユーザーが動くことが見込める被リンク数を求める動きのほうが、施策としてもよりよいといえそうです。
安部:また、外部サイトから、自社サイトに来てもらえる仕掛けも必要だと思います。例えば、自社サイトに調査記事を投稿、それを簡単に要約した記事や調査内容に関するインタビュー記事を他のサイトに寄稿し、「調査内容の詳しい情報はこちらのサイトへ」とリンクを貼ってもらえば、ユーザーとしても動く意味はあるでしょう。
以上、12月のコンテンツマーケティング動向「SEO編」でした。来年も引き続き最新情報を更新していきますので、楽しみにお待ちください。
(本調査はあくまでも傾向に注目し、今後の施策における仮説立てや優先順位の検討に有効活用するためのものであり、因果関係を示すものではない旨、ご留意ください)
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IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。