EV販売台数で世界2位の中国メーカーBYD、日本上陸。国内消費者の反応は?

EV販売台数で世界2位の中国メーカーBYD、日本上陸。国内消費者の反応は?

テスラを筆頭に電気自動車(EV)市場が急速に拡大する中、中国のEV大手、BYDが日本市場への進出を果たしました。日本の自動車メーカー各社がEVを開発していく中で、BYDの参入はどのような影響を与えるのでしょうか。今回はBYDについて、どのようなユーザーが関心を持っているのか、比較されているのはどんなメーカーなのかを分析していきます。


BYDとは?

BYD(比亜迪)は、中国の主要なEVメーカーで、乗用車やバスなど幅広いEVを製造しています。携帯電話用バッテリーの会社として創業した同社は独自の電池技術を持ち、エネルギー効率や環境性能に優れた製品を開発しています。

2022年の世界EV販売数では首位のテスラに続く2位に位置し、同年7月にはEV3車種を日本で2023年から順次発売すると発表しました。

乗用車以外の市場では2019年から日本に参入しており、同年9月に沖縄県で観光仕様の大型電気バスが導入されています。

日本市場参入をきっかけに関心を持つ人が増える

「BYD」公式HPの訪問ユーザー数

「BYD」公式HPの訪問者数
調査期間:2022年3月〜2023年2月
デバイス:PC、スマートフォン

では、BYDの公式サイトに訪れる人は増加傾向にあるのでしょうか。

2022年7月にBYDが3車種を日本で2023年から順次発売すると報道され、ユーザーが認知しはじめました。同年9月末にはユーザーがBYDの自動車に1ヶ月無料で試乗できる「eモビリティ パートナープログラム」のパートナーの募集を開始して急激に認知を伸ばし、11月には約20万人がサイトを訪問しています。

それ以降、BYDは12月に「ATTO 3」の価格を発表、2023年1月に東京オートサロンで初めてブースを構え、同月末には「ATTO 3」の販売を開始。その影響からか、高い水準で世間の関心を維持し続けています。

BYDに関心を持っているのはどんな人?

ではBYDはどのような人が関心を持っているのでしょうか?

サイト訪問者の約90%以上が男性

「BYD」公式HPの訪問ユーザーの男女比率

「BYD」公式HPの訪問者の男女比率
調査期間:2023年2月
デバイス:PC、スマートフォン

公式サイト訪問者の92%が男性。自動車全般やEV、新しいトピックに対する男性の関心の高さが伺えます。

第1弾として発売した「ATTO 3」がSUV(Sport Utility Vehicle = スポーツ用多目的車)と、男性の興味を惹きつける車種であることも関係しているのかもしれません。

ミドル世代が高い関心を持つ

「BYD」公式HP訪問ユーザーの年代

「BYD」公式HP訪問者の年代
調査期間:2023年2月
デバイス:PC、スマートフォン

サイト訪問ユーザーの年代をみると40代、50代、60代とミドル世代で山が高くなっており、若い年代からの関心は比較的低いようです。

そもそも若い世代が上の世代に比べて車の所有に対して関心が低めであること、BYDが第1弾で販売した「ATTO 3」が440万円からと高価格帯寄りであることから、若い世代は手が出しにくい可能性があります。

また、BYDは日本各地にディーラーを展開し販売からメンテナンスまでサポートしてくれます。大手EVメーカーのテスラはネット上で購入が完結し、メンテナンスなどのサービスの予約もネット上で行うようになっています。テスラと比較するとアナログな方法になりますが、その部分の安心感がミドル世代の関心を惹きつけているのかもしれません。

世帯収入高めの層からの関心が高い

「BYD」公式HPの訪問ユーザーの世帯年収

「BYD」公式HPの訪問者の世帯年収
調査期間:2023年2月
デバイス:PC、スマートフォン

ネット人口全体と比べると、BYD公式サイトの訪問者は世帯年収が600万円以上の割合が高くなっており、特に1000-1500万円の層の厚さが目立ちます。

テスラの「モデル3」が537万9,000 円と、BYDの「ATTO 3」の440万円と比べると約100万円ほど開きがあり、BYDはテスラと比べると比較的手に取りやすい価格帯のラインナップであるものの、やはり関心層は高年収層に集中する傾向があるようです。

ディーラーが多い地域の関心も

「BYD」公式HPの訪問ユーザーの居住地域

「BYD」公式HPの訪問者の居住地域
調査期間:2023年2月
デバイス:PC、スマートフォン

訪問者の居住地域を見てみると、関東・中部・近畿が順にボリュームゾーンとなっています。現時点でこのエリアにディーラーが集中していることも影響しているのかもしれません。

2025年までに、BYDはディーラーを100店舗出店する構想を打ち出していることから、全国的に関心が広がっていくことが予想できます。

EV関連のニュースが多い主要メーカーと比較検討されている?

「BYD」から見た「トヨタ」「ホンダ」「日産」公式サイトの併用状況

「BYD」から見た「トヨタ」「ホンダ」「日産」公式サイトの併用状況
調査期間:2023年2月
デバイス:PC、スマートフォン

BYDは国内主要自動車メーカーと比較されているのでしょうか?トヨタ、ホンダ、日産の各公式サイトとの閲覧者の併用率を集計したところ、約35%のユーザーがトヨタまたは日産のサイトと併用していることがわかりました。

日産は日本のEV車販売で2022年1位を記録し、軽自動車のEV車を販売するなど日本のEV市場のトップを走るメーカーです。

トヨタは販売しているEV車が現在1種類と数こそ少ないものの、2021年に公開したEVシリーズのbZシリーズが注目を集めていたり、ガソリン車とのハイブリッドであるPHEV車を販売していることから、比較の対象になっているのかもしれません。

日本のEV市場調査

ここからは「EV」のワードで検索した人のデータから、EV需要を調査していきます。

軽EVの発表・BYDの販売開始で検索者数が増える

「EV」の検索者数

「EV」の検索者数
集計期間:2022年3月~2023年2月
デバイス:PC・スマートフォン

検索者数をみると、2022年5・6月、2023年1月に大きな山があることがわかりました。
2022年5月は日産、三菱がEV新車を発表した月になります。今まで市場になかった軽自動車のEV車を発表したことで関心を集めたのでしょう。2023年1月は、今回調査したBYDの「ATTO 3」が販売開始した月です。

やはりEV関連の大きなニュースがあると検索の需要が高まるようです。

掛け合わせワードでニーズが浮き彫りに

「EV」検索者の掛け合わせワード

「EV」検索者の掛け合わせワード
集計期間:2022年3月~2023年2月
デバイス:PC・スマートフォン

掛け合わせワードをみてユーザーの気になることを調査していきます。掛け合わせワードとは検索時に「EV 〇〇」で検索した「〇〇」の部分です。

<価格系>
補助金、価格
→お得に購入できないか調べている

<メーカー系>
トヨタ、日産、三菱、ホンダ
→どのメーカーにしようか、そのメーカーにEV車があるか調べている。トヨタが第一想起される検索者が多い様子

その中でも、「軽自動車」「軽」のワードがあることから、コンパクトカーの需要も高まっているように感じます。

また、EVを利用する上で必ず必要になる「充電」のワードも検索されていました。購入前に充電のもちを調べたり、近所の充電場所を探す際に検索されている様子がうかがえます。

まとめ

今回はEV自動車メーカーもBYDを分析しました。

分析の結果、関心のあるユーザーは「ミドル世代」「世帯年収が高め」で「男性」が大半を占めていることがわかりました。現在は経済的にある程度余裕があり、流行に敏感なアーリーアダプター層の関心を惹きつけているようです。

ただ、BYDは今後のモデル展開によっては、価格が大幅に下がる可能性もメディア等で指摘されています。国内メーカーも引き続き注目する必要があるでしょう。

新エネルギー車(NEV)市場を牽引する中国。その最新実態を調査|ホワイトペーパー | [マナミナ]まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン

https://manamina.valuesccg.com/articles/2216

2021年、世界の新エネルギー車の年間販売台数合計は前年比2.2倍の660万台であり、その半数を占めたのが中国でした。中国では、2021年の新エネルギー車の年間販売台数が前年の1.6倍となっており、世界的なシェアを占めつつ、成長を続けている領域となっています。本レポートでは、中国における新エネルギー車業界の最新状況や市場動向、主要プレイヤーの動き、国の政策を調査しました。(ページ数|45ページ)

参考資料

・世界EV販売、日産・三菱勢が7位 ホンダ26位、トヨタ27位―昨年
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023021600830&g=eco
・沖縄県にて日本初の観光仕様大型電気バスの導入を決定
https://byd.co.jp/news/2019_0902_70.html
・「eモビリティ パートナープログラム」9月30日(金)より募集開始
https://byd.co.jp/news/2022_0930_97.html
・e-SUV「ATTO 3」の日本販売価格を発表、2023年1月31日(火)より440万円(消費税込み)で発売
https://byd.co.jp/news/2022_1205_98.html
一般社団法人日本自動車販売協会連合会(JADA)|燃料別販売台数(乗用車)
http://www.jada.or.jp/data/month/m-fuel-hanbai/

この記事のライター

アメリカ留学中にWebの仕事に出会い、帰国後に起業。自社で物販を行う側、ライターとして活動。アウトドアが趣味

関連する投稿


デビットカードは日本でも覇権を握るのか? 検索者の実態をクレジットカードと比較調査

デビットカードは日本でも覇権を握るのか? 検索者の実態をクレジットカードと比較調査

即時払いで決済を行うデビットカード。キャッシュレス決済全体に占める割合はまだまだ低いものの、利用者や利用場面は着実に増加しており、成長の兆しを見せています。本稿では、そんなデビットカードの検討状況について、キャッシュレス決済カテゴリのマーケットリーダーであるクレジットカードと比較し、今後の市場動向を占います。


2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

2024年人気アニメを振り返る!ヒットを生む「勝ちパターン」とは?

コンテンツには事欠かない現代ですが、話題を呼ぶ人気作には、どのような「勝ちパターン」が存在するのでしょうか。2024年に放送された新規アニメ「薬屋のひとりごと」「逃げ上手の若君」「怪獣8号」「ダンジョン飯」に、11月に劇場版が公開された「進撃の巨人」を加えて、消費者の関心を調査しました。


キャンプブームはコロナ禍を経て落ち着いたのか? 検索行動データやアンケート調査から市場を考察

キャンプブームはコロナ禍を経て落ち着いたのか? 検索行動データやアンケート調査から市場を考察

新型コロナウイルスの拡大の時期に、キャンプが注目を集め、一大トレンドになりました。日常を取り戻した現在、キャンプブームは下火になっているようにみえます。一方で、キャンプブームが収まったのではなく、人々の生活にキャンプが文化として根付いたという意見もあります。今回は、キャンプブームをデータで分析し、その変遷と現状について考察します。


2024年のトレンドワードまとめ!新語・流行語大賞の「ふてほど」ほか、50-50、新NISAなど

2024年のトレンドワードまとめ!新語・流行語大賞の「ふてほど」ほか、50-50、新NISAなど

パリ2024オリンピックや衆議院選挙が行われた2024年は、どのような1年だったのでしょうか?2024年新語・流行語大賞の分析とヴァリューズで分析した今年1年間の週間検索キーワードランキングから2024年のトレンドを分析しました。


Will Isuzu's "Truck for Everyone," ELFmio, Be a Game Changer? Analyzing Initial Response with Website Visitor Data

Will Isuzu's "Truck for Everyone," ELFmio, Be a Game Changer? Analyzing Initial Response with Website Visitor Data

In July 2024, Isuzu Motors announced its new ELFmio truck. This truck can be driven with a regular driver's license and is marketed as a "Truck for Everyone." The aim is to address the shortage of truck drivers in the logistics sector. We analyzed the impact of ELFmio through website visitor data.


最新の投稿


タイのコーヒーの特徴とは?タイのコーヒー市場の現状やショップを紹介

タイのコーヒーの特徴とは?タイのコーヒー市場の現状やショップを紹介

近年タイではコーヒーブームが起こっています。バンコクには次々と新しいカフェができており、SNS映えする店内だけではなくコーヒーの味にもこだわりを持つカフェが増えています。実際に、起業してカフェオーナー兼バリスタになるのはタイでは一つのトレンドです。 近年、タイのコーヒー市場は右肩上がりに伸びており、タイのコーヒー市場は日本円で1440億円を超えると言われています。 そこで本記事では、タイのコーヒー市場の現状を読み解くとともに、タイでなぜコーヒーの人気が高まっているのかを、タイのコーヒーブームの歴史と共に解説します。


2025年上半期Z世代トレンド予想!Trepo、「ファッション」「グルメ」「コト・モノ」の3部門のランキングを発表

2025年上半期Z世代トレンド予想!Trepo、「ファッション」「グルメ」「コト・モノ」の3部門のランキングを発表

株式会社Creative Groupは、同社が運営するメディア『トレンドメディアTrepo(トレポ)』にて、10代~20代の女性を対象に、2025年上半期のZ世代トレンド予想調査を実施し、結果を公開しました。


ADK MS、「ゲーム総合調査レポート2024」を発表!最新のゲーム市況の把握から、ゲームプレイヤーの行動・心理の分析まで網羅

ADK MS、「ゲーム総合調査レポート2024」を発表!最新のゲーム市況の把握から、ゲームプレイヤーの行動・心理の分析まで網羅

株式会社ADKマーケティング・ソリューションズは、ゲームプレイヤーの心理・行動を分析し、分かりやすく彼らの実態を可視化した「ゲーム総合調査レポート2024」を作成し、公開しました。


スリープテック ~ 睡眠の質とテクノロジー

スリープテック ~ 睡眠の質とテクノロジー

疲労回復、毎日のコンディション管理に必要不可欠な「睡眠」。その睡眠、あなたは足りていますか?最近ではニュースでも多く取り上げられた通り、日本は世界規模での「不眠大国」。実に日本人の平均睡眠時間は経済協力開発機構(OECD)の加盟国33ヵ国の中で最下位とも言われています。そして睡眠はただ眠るだけではなく、経済とも大いに関わりがあるのです。本稿では広告・マーケティング業界に40年近く従事し、現在は株式会社創造開発研究所所長、一般社団法人マーケティング共創協会理事・研究フェローを務めている渡部数俊氏が、良質な睡眠の鍵を解説します。


BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

BtoBマーケティングの成功は"ファクトファインディング"が重要!本質的・潜在的な課題・ニーズを引き出すことが成功のカギ【PRIZMA調査】

株式会社PRIZMAは、全国のマーケティングコンサルタントを対象に、「BtoBマーケターが始めた方が良いこと」に関する調査を実施し、結果を公開しました。


競合も、業界も、トレンドもわかる、マーケターのためのリサーチエンジン Dockpit 無料登録はこちら

アクセスランキング


>>総合人気ランキング

ページトップへ