組織内のデータ活用の自走化を目指す。カーフロンティアのDX推進事例

組織内のデータ活用の自走化を目指す。カーフロンティアのDX推進事例

お客さまの豊かなカーライフの実現を目的に、カーメンテ・整備・点検の総合予約サイト「timy」や、WEB予約台帳システム「PITLOCK」を展開している株式会社カーフロンティア。リアルだけでなくデジタルでの事業展開にも力を注ぐ同社ですが、ほんの数年前まではデータ活用に関する知見がほとんどなかったといいます。どのようにして社内のDXを推し進めていったのか、同社の上野谷氏と中島氏、浅野氏に伺いました。


【話者紹介】

(写真左上)株式会社カーフロンティア 上野谷 正明氏
カーフロンティアの事業全般についての技術責任者としてIT部門を統括。
現在はフリートピットロック事業の技術責任者として出向中。

(写真右上)株式会社カーフロンティア 中島 麻矢氏
「timy」を主に担当。プロダクトの分析や開発改善提案、社内の営業チームへの情報提供などを行う。分析レポートの運用にも携わっている。

(写真左下)株式会社カーフロンティア 浅野 浩平氏
「PITLOCK」を主に担当。プロダクトの分析や開発改善提案などに携わっている。

(写真右下)株式会社ヴァリューズ 中里 亮介
データアナリスト。DX推進支援事業にて、クライアント企業におけるデータ活用支援や分析基盤構築を主に担当。

PDDD状態で、施策の振り返りが根付いていなかった

株式会社ヴァリューズ 中里 亮介(以下、中里):カーフロンティア様は、ヴァリューズとともに、社内のデータ活用の推進に取り組まれています。本日は改めてお取り組みについてお伺いできればと思います。

まずはヴァリューズとのお取り組み以前のデータ活用の状況や課題感はどのようなものだったか、お聞かせいただけますでしょうか。

株式会社カーフロンティア 上野谷氏(以下、上野谷):私が5年ほど前に入社した頃は、ネットを介したサービスを提供しているわりに、データ活用が進んでいないという印象を抱きました。

今も途上ですが、本来PDCAであるべきものがPDDDという状態になっていて、振り返るという文化が根付いておらず、行ったことに対して、それが良かったか悪かったかを定点的に見ていない状況でした。

会社のフェーズとしてそういうこともあるかと思ってはいたのですが、プロダクトがある程度出来上がって世に出したあかつきには、施策を評価しなければ、ビジネスの成長にはつながらないと考えていました。

株式会社カーフロンティアが提供するサービスの一部。「いつでも」「どこでも」24時間365日思い立ったときに、自分にピッタリのカーメンテナンス場所を探せる「timy」や、カーメンテナンスの全ての予約を一元管理し効率的な店舗運営を実現する「PITLOCK」など、ネットワークをつなげた強みを活かした事業を展開している。

中里:客観的な指標をもって計測できていなかったり、実施した施策の評価などができていなかったりといった課題があったのですね。

上野谷:仮説も何かにもとづいているわけではなく、思いつきベースであることが多かったです。それだけだと意味のある活動にはならないので、状況を変えていきたいと思っていました。

一応Google Analyticsなどのデータも取ってダッシュボードのようなものを作っていましたが、活用できているとは言えない状態でした。また、システムからダウンロードできるレベルの範囲でデータを見ていたものの、中身をしっかり見れていない状態で進めていたと思います。暗闇を歩いているという感じでしょうか。

中里:取り組みの初期のタイミングでご状況を伺ったときにも、ビジネスサイドの方はデータへの理解不足で数値の確認などにしか活用しきれず、データを管理しているエンジニアサイドからすると、他業務もある中でデータ活用まで考える余裕が無いという状況なのだなと感じました。こういった課題は他の企業でもよく伺います。

「データ分析の目的は、ダイヤモンドの発見でなく健康診断」と経営陣を説得

中里:データ活用を進めようとしたとき、社内の協力はスムーズに得られたのでしょうか。

上野谷:投資をしてもらうには、結果を出すことが求められます。ただ、データ分析は地道な活動であり、「施策によっていきなり売り上げが2倍に!」というようなことはほぼ起こらないものです。

データ分析はダイヤモンドを見つけるのではなく、健康診断のようなものとイメージしています。健康診断によって、PDCAを回すことができるからです。それに対して、カーフロンティア内ではPDDDになってしまっている、という課題を経営陣含めて最終的に理解してもらい、投資をしてもらったことは大きいと思います。

ただ、実際に取り組みを進められる知見を持った人材がいなかったため、分析基盤を構築していこうと、パートナーとしてヴァリューズさんにお力添えいただくことにしました。

GA4への移行時に感じた、Web上で得られる知見の限界

中里:ヴァリューズは、クライアント様の業務を理解した上で、課題に対して同じ方向を向いて解決に向けた取り組みを行うようにしています。最初はカーフロンティア様のサービスサイトへのユーザー流入状況や、どのような使われ方をされているのか、契約店舗の特徴などを分析し、全体感を把握しました。
ここからは具体的なお取り組みについてお伺いしていきたいと思います。

株式会社カーフロンティア 中島氏(以下、中島):私は主に自社サービスを利用しているユーザーの行動計測およびtimy加盟店向けのレポート開発(後述)のところから、社内のデータ活用をしようという流れに入っていきました。ちょうどその時にtimyのサイトリニューアルもあり、並行してサイトの計測方法をUniversal Analytics(UA)からGA4に変更することも私が担当していました。ほぼナレッジのないなかで、GA4でどうやって計測するのかも含め、実際に対応しながら学んでいきました。

しかし、Web上で得られる知見にはやはり限界があるもの。「一般的にはそうかもしれないけれど、当社のサービスではどうなのか」「こういう数値を見たい場合はどうすればいいのか」までたどり着くことは難しい状況でした。ハウツー的なことはWeb上で得ることはできても、正しい答えを導き出すことは知見がなければ難しいと思います。

そこでデータのスペシャリストであるヴァリューズさんにお力添えいただき、timyのサイト計測の仕組みを紐解きながら、新サイトに必要なところを移植、かつプラスアルファ的な部分を埋め込んでいきました。旧サイトでは使っていなかった実装方法が新サイトでは使われていたので、そのような部分もヴァリューズさんに調査していただくなど、一緒に組み立てていきました。

私の場合、この流れの中で、数字にもとづいてサービスを見ていくことの大切さを認識していったと思います。

株式会社カーフロンティア 浅野氏(以下、浅野):私はヴァリューズさんとの取り組みにより、PITLOCKの利用状況を把握するための基盤ができたと思っています。

元々PITLOCKにもGoogle Analyticsを導入して計測は行っていたのですが、利用状況を正しく計測することができていませんでした。PITLOCKの場合は単純に訪問したユーザーの数を計測するだけだと不十分で、「ログインしたユーザーは何人いるのか?」「ログインする際にどういった権限でログインしたのか?」など、通常のGoogle Analyticsの設定では計測できない指標を取得したいと考えていました。ちょうどGA4に移行するタイミングだったこともあり、ヴァリューズさんに協力いただきながら、計測環境の整備を進めていきました。

例えばタグの入れ方について、PITLOCKに合わせた細かいところまで相談にのっていただいたり、BigQueryに溜まったデータ周りの部分を勉強させていただいたり。Tableauでのビジュアライズの仕方や検証方法など、一通りの流れを教えていただきながら実現させていきました。

点在していたデータを統合し、業務効率化に貢献

中里:本取り組みの中で、timyの有料プランを契約している加盟店向けのレポートサービスの開発も、伴走支援させていただきました。

中島:timyでは有料プランの加盟店にレポートを提供しており、以前はデータポータルを用いて、できる範囲でGoogle Analyticsのデータを加工して提供していました。ただ、レポートの提供は社内のCSとも連携しながらなんとか運用していたものの、工数も多くかかり、加盟店が増えるほど社内の負担が大きくなっていました。

当初はベーシックレポートは、店舗から依頼があるたびにCS担当からWEBマーケティング担当に依頼し、手作業でレポート作成を行っていた。

中島:加えてGoogle Analyticsのデータだけではなく、社内のAmazon Web Services(AWS)環境にしか存在していない予約の実績データもレポートに追加して欲しいと現場から依頼もあり、きちんと整備したいが手が回らないという状況でした。

実現のため、ヴァリューズさんに「このような形で出せるようにしたい」など私たちの希望を伝え、相談しながら組み立てていきました。結果、Tableauで出したいものが一括で出せるようになったほか、ビジュアライズも含めてより深い分析ができ、レポートの価値が高まったと思います。

中里:以前は加盟店ごとに手作業で作成していたレポートをTableauで型化したことで、業務効率化にもつながったと思います。timyが持つ豊富なデータを活用できるようになったことで加盟店側にも、貢献できたと思います。

GCP上にデータ統合基盤を構築し、Google AnalyticsとAWSのデータを格納。ベーシックレポートはTableauで作成し、ビジュアライズ機能も向上した。

DXを推進し、根拠に基づいた施策を誰でもスピーディーに実行可能な体制へ

中里:ここまでお話を伺い、社内でのデータ活用が広がりつつあると感じます。

浅野:分析は道半ばであるものの、データ活用の基盤ができたと思います。ビジネスサイドの立場でも、店舗の状況把握や、問題を解決するための事前調査がより効率的にできるようになったのではないでしょうか。

中島:より多くのメンバーがTableauアカウントを使えるようになり、データへのアクセシビリティが向上したことで、効率的にスピード感を持って業務を回せるようになったと思います。これまでは何か調査をしたいとき、わざわざ開発担当に依頼してデータを出してもらっていました。すると、「このデータじゃなかった」ということもあり、どうしても施策のスピードが落ちてしまいます。自分たちで直接確認できるようになったことで、スピーディーに、かつ自分の中できちんと根拠を見つけながら案件を進められるようになりましたね。

浅野:そうですね。今後の展望としては、意図通りのデータが各自の手元にある状態になったことで、メンバーがそれぞれの課題感を持ってデータ分析をするようになり、社内におけるデータ分析の総回転数が上がっていくと良いなと思います。

中里:Google Analytics、AWS内の社内データの統合に始まり、最近では皆様からSalesforceデータも連携したいというご要望も頂きました。そういった要望が現場から発生しているというのは、組織内にデータ活用が定着し、期待が高まっているということだと思います。

上野谷:着実に知見はたまりつつあるので、基礎体力はついていっていると感じます。これをバネに、施策の精度を高めていきたいです。

今後も引き続きデータを活用し、ファクトベースで施策を検討することを推し進めていきたいと思います。


取材協力:株式会社カーフロンティア

この記事のライター

IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。

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