スピーカー紹介
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株式会社MERY 執行役員CCO / 統括編集長 / Z世代研究所※所長 平山 彩子氏
株式会社ヴァリューズ コンサルタント 川西 里穂子
株式会社ヴァリューズ アナリスト / Gen-Z調査隊※※ 笠井 星良
※MERY Z世代研究所:メディア「MERY」事業における記事や各SNSをはじめとしたZ世代との接点からインサイトを抽出し、企業マーケティングの課題解決をおこなう
※※Gen-Z調査隊:消費者の行動データをもとに現役Z世代の視点から“Z世代のリアル”を分析し、研究内容の発信をおこなう
Z世代が“カメレオン”と言われる理由
株式会社ヴァリューズ 川西 里穂子(以下、川西):今回、Z世代の価値観、熱狂の作り方を把握するため、ヴァリューズにてアンケートとWeb行動ログを用いて調査を行いました。まずは調査設計からご紹介します。アンケート調査では、ヴァリューズのスマートフォンモニターを対象にし、Z世代、Y世代、X世代で年代比較を行っています。また、Web行動ログデータもスマートフォンモニターで分析しています。
分析では誰がデータを読み込むかが重要なのですが、私自身がY世代なので、複数人のZ世代を中心に分析し、Z世代が解釈した内容をお届けします。さらに、MERYのコミュニティメンバーのうち、18~27歳の方を対象に、複数回の座談会を実施した内容も共有させていただきます。
株式会社MERY 平山 彩子(以下、平山):株式会社MERYでは、メディアだけでなく、若年層にフォーカスしたブランドコミュニケーションとプロモーションサポートを実施しています。今日はMERY、Z世代研究所としてのお話ができればと考えております。
■コミュニティによってキャラクターを変える
川西:第1部では、SNSやリアルな場でのZ世代のあり方と、その背景にある価値観についてです。Z世代の特徴として、カメレオンのように環境に合わせて色を変える行動が調査結果から見えてきました。
まずはZ世代の特徴を、仮説を持たずに発見する調査アプローチとして、Web行動ログデータを分析したところ、Z世代の利用アプリに面白い2つのファクトが現れていました。
1つ目は、オンラインでのコミュニティ作りです。
Z世代が特徴的に利用しているアプリは?①
川西:各年齢のアプリ利用率を元にランキング表を作成したところ、Z世代ではアイビスペイントやpixiv(ピクシブ)など、一人で趣味を楽しむというよりも、発信やコミュニティ作りを特徴とするアプリが上位に入りました。また、ライブ配信アプリがいくつか上位にあがっていますが、ただ見るだけでなく、コメントを発信し合ったりなど、相互にコミュニケーションを取りながら楽しむことができるインタラクティブなアプリでした。こういったことから、オンラインでのコミュニティづくりが特徴として見えてきます。
もう一つの特徴は、高度な空気の読み合いです。最近提供は終了してしまったのですが、例えばzenly(ゼンリー)というアプリは、自分や相手がいる場所を共有し合うことができます。Discordも同じように、コミュニティメンバー内でオンラインやオフラインの状況を共有しながら、ボイスチャットを利用できるアプリです。Z世代にとって、相手の状況を知るためのツールで、これらを利用することで、変に気を遣わず状況を推し量りながらコミュニケーションを取ることができると聞いています。
平山:座談会でもzenlyについて聞いてみたら、皆さん知っていました。入れている方は、大学の空き時間に誰を誘うか相手の状況を確認するため、とのことでした。能動的ではなく、受動的な情報設定に慣れているので、連絡をする方がハードルが高い、その方が楽だと思うようです。
川西:Z世代ならではの感性ですよね。ここまでは仮説の段階なので、続いてアンケート調査も共有します。
SNS上にも見られた、Z世代のカメレオン気質
川西:Z世代は他の世代に比べて、複数のコミュニティに所属している割合が高く、またそれぞれのコミュニティで自分のキャラクターや人格を使い分ける傾向が顕著に表れていました。使い分けること自体、普通だという回答もありました。
またSNS上でも、同様の使い分けが見られました。デジタルネイティブだからこそとも思うのですが、Z世代は複数アカウントの所持率が高く、特にInstagramとTwitterでは平均で2つ以上のアカウントを持つ割合が高くなっています。
SNS上にも見られた、Z世代のカメレオン気質
川西:さらに、それぞれのアカウントの使い分けにも特徴がありました。Y世代やX世代ではキャンペーンや作品発表などの活動が目的である一方、Z世代は表アカウントと裏アカウントという使い分けだったんですね。
こうした空気を読んだり、キャラクターを使い分けるカメレオン的な特徴は、zenlyに代表されるように、相手のためだけではなく、自分のコミュニケーションのしやすさのためという背景があるのではと考察しています。
Z世代のカメレオン性
平山:座談会でも、SNSアカウントの使い方についてリアルな話があったので共有しますね。12人にお聞きして、Instagramのアカウントが2つ以下の方は、0人というのが実態でした。いわゆるアーリーアダプター的な方が多かったんですが、5つという方もいらっしゃいました。
それぞれのアカウントの使い分けを聞くと、「メイン垢(=アカウント)」は、写真のきれいさやコメントなど、自分をどう見せるか時間をかけて考えた上で投稿する公式垢だそうです。「知り合い垢」は、大学で会ったら声をかける程度の関係の垢、「仲良し垢」は、もっと仲が良くて、リアルでも遊びに行ったりする関係なので、何も考えずに日記的に食べたもの等を投稿している垢とのことでした。また「美容垢」や「見る専垢」などもあって、特に見る専垢は、反応していることをフォロワーに見られたくない、例えばアイドル情報など、好きなものを好きなだけ見れる垢だそう。Z世代は、反応を知られることへの配慮が大きくて、美容垢ではこれ、メイン垢ではこれ等、無意識で計算しながら切り替えているところが面白いなと思います。
■目的ごとにSNSも使い分け
川西:次にZ世代のSNS利用の調査結果です。Web行動ログデータを用いて実際のアプリ起動情報から利用割合を集計したところ、TwitterとInstagramの利用割合は年齢による差があまりありませんでした。ただし、TikTokの利用割合は、24歳以下で他の年齢層に比べて高くなっています。
平山:座談会でも、Instagramは知り合いとの繋がりや、自分の好きな世界を表現するために使っている、アカウントごとに興味のあるコンテンツをチェックし、自分の好きなもので埋め尽くしているという傾向がありました。
インタビューから見えた、Z世代の実態とは?
平山:Twitterに関しては、アカウントは持っているけれど、見ているだけの人が多かったです。ニュースやキャンペーン情報などの最新情報を入手するツールとしては、1つの商品を買う時に、Instagramでも調べるもののTwitterでも調べて、Instagramのきれいな世界では見えない本音の部分を見るというような、投稿内容の質も意識しながら使い分けられていると思いました。
TikTokは、10代を中心に20代までの若い世代が見ていることが顕著で、エンタメ性が強く求められているようです。テレビ的な存在で、チャンネルを変えなくても、そこに行けば次々と面白いことがある、といった感じですね。
川西:第1部をまとめると、マーケティングへ落とし込む際は、Z世代を多面的に捉えることで理解を深めることが重要ですよね。複数の人格を持っている可能性があるので、調査から得られた表層的な結果を素直に受け止めていいんだろうか、つまりアンケートの回答は複数ある人格のうち、どの人格から出た回答なのかということを考えていく。そのために、インサイトと調査の結果に差分がある可能性を踏まえて、調査や考察の仕方に慎重に工夫していく必要があると思います。
またアプローチをする際には、SNSのプラットフォームごとにコミュニケーションを出し分けることも重要です。Z世代はアカウントやSNSごとに使い分けが特徴として見えてきたので、安易なコンテンツの使い回しに頼らず、Z世代に適したコミュニケーションの出し分けを検討することが重要といえそうです。
Z世代のカメレオン性を踏まえたマーケティングとは
推し活の背景から紐解く「熱狂の作り方」
■推し活の目的は、好きを共有できる仲間づくり
川西:続いて、Z世代の熱狂を作り出すべく、その背景に迫っていきます。
まず「熱狂したいZ世代」ということで、推し活をしている割合を確認した調査結果がこちらです。
Z世代は”推し活”率が高い
川西:上が世代別、下が性世代別です。まず世代別では、Z世代の45%が既に推し活をしていると答えており、この割合は他の世代に比べて高くなっています。さらにZ世代の女性だけで見てみると、6割近くの方、つまり半数以上が推し活をしていることが調査結果から見えてきたんです。
となると、この推し活とはどういう存在なのか、世代ごとに聴取した内容がこちらの結果です。
推し活=日常から解放される時間?
川西:癒しやエネルギーという回答は、どの世代も共通で高かったんですが、Z世代では、「推し活仲間を増やしたい」「推し活をしている時の自分の人格は別物である」という点が特徴的でした。
先程のお話でも、他者が興味のないことは共有を避けるとありましたが、その話につながってくるのかなと。だからこそ好きを共有できる仲間を、推し活の中で見つけたいと考察をしています。
■深さ、厚み、偶発性のある情報が熱狂を生み出す
川西:では、どうやって熱狂を作り出していくのか。
Z世代は幼少期から周りに情報が溢れた生活を送ってきています。情報収集や情報との出会い方について世代間で比較して調査した結果では、「自分に合う商品を自分以外の誰かに提案してほしい」「情報収集の中で他人に説明できない運命を感じて購入した商品がある」、この2つの項目がZ世代は高く出ていました。「あなたにはこれがいいよ」ってレコメンドしてほしいという気持ちと、誰かに勧められたわけではなく、自分の感性でこれは運命だと感じられる偶発的な出会いの両方に惹かれるところが、特徴的なポイントでした。
平山:Z世代は、常に何かの情報が自分に発信されているのが普通の状態ですよね。その中でどのように取捨選択しているのか。「新しい情報」と「深い情報」のどちらが価値が高いかを質問してみました。皆さんすごく悩まれましたが、結果的には「深い情報」の方が圧倒的に多かったです。Instagramやヒット曲など、新しい情報はどんどん移り変わることを知っているので、変わらないもの、凌駕されない深い情報に出会える機会は希少価値が高いと思っていることが印象的でした。
また「パーソナルな状態」については、基本的に便利という意見が多かったです。情報が多すぎると何ともできないし、自分向けにセレクトされた中からセレクトしたい、好きな世界に囲まれたいと考えているのが一般的でした。ただ2〜3名は、少し怖いという話もあって。自分のスマホの中で流行っていることを、リアルで話す友人が全く知らないということが起きているとのことなんですよね。世界は広いようにも見えるけれど、実はかなり偏った中で気づかずにいるんじゃないかという話がありました。
そこで重要になってくるのは、オンラインでのレコメンドとオフラインでの出会いだと思います。オンラインの情報接点が基軸なので、すごく重要だけれども、リアルな場での出会いやきっかけの価値が高くなっているという実態もありました。
Z世代が感じる価値の高い情報とは?
平山:第2部をまとめると、どんな情報を届けるかという点では、多角的ということがポイントだと思います。どんどんニュース性のある情報を、プロモーションも含めて出していく。さらに、玄人向けの情報や、伝えておくとある人にとっては面白いと思われそうな情報、この情報は自社しか知らないというものも出しておくことで厚みになる、という考え方は重要かと思います。
無意識下でレコメンドされて最新トレンドに興味を持つようになり、能動的な検索プロセスに入った時に、どれだけ引き込めるかなんですよね。ユーザー投稿も含めて、この人の視点からいくとこうだと、厚みのある情報を出すことで、熱量を高めることができる。それが熱狂の筋道と考えています。
では、どうやってという点では、オンライン設定での面数カバーすることは基本だと思うんですが、そこだけでは特別感や運命感を出しづらいんですよね。全部がパーソナライズされている状態ということはみんな理解しているので、特別感や偶発性はあまり感じられません。そこでオフラインを上手く活用しながら特別感を演出する、またそこがやりやすいとも思うので、オフラインとの掛け合わせやタイミングが重要なのかなと考えています。
Z世代の視点で考えるインフルエンサー選びのヒント
川西:ここからは平山さんと、Gen-Z調査隊であり自身もZ世代である笠井さんに、インフルエンサー選びについてお話を聞いてみたいと思います。
平山:笠井さん、インフルエンサーの選定ポイントについて、フォロワー数やリーチ数など何に注目すべきか悩ましいと考える方は多いと思います。マーケターもしくは生活者としてどのように考えていらっしゃいますか?
株式会社ヴァリューズ 笠井 星良:いろいろな意見があると思いますが、大きく2点あると考えています。まず、1点目は商品とインフルエンサーの親和性です。普段からそのインフルエンサーさんをよく見ているからこそ、背景情報を良く知っているんですよね。だからこそ、使っていることに違和感がないかが重要だと思います。
2点目は、そのインフルエンサーが抱えるファンの質や熱狂的なファンの割合です。普段の自分の消費行動も振り返って購買に至るケースを考えると、可能性が高いのは推し消費です。熱狂的なファンであれば、比較検討もそこそこに買ってしまうということがあります。推し消費が狙えるという点で、熱狂的ファンの割合を見ていくということですね。
また推し消費ではない場合でも、商品自体が分かりやすくて、自分とパーソナルカラーや好きなものが似ていると思うインフルエンサーであれば買うというパターンもあります。ネットでの情報統制がされていて比較検討しにくい場合は特に、ですね。ただこのパターンでは、そのインフルエンサーを私がなぜ好きかという点が重要なので、ファンの質をあげています。
川西:リアルなZ世代像が見えてきますね。本日はありがとうございました。
ホワイトペーパーダウンロード【無料】|“カメレオン”なZ世代特有の行動にマーケターはどう向き合う?Z世代のリアルな声・データから考える
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大学卒業後、損害保険の営業事務を経て、通販雑誌・ECサイトのMD、編集、事業企画に従事した後、独立。自身のキャリアを通じて、一人一人のポテンシャルを引き出すことが組織の可能性に繋がることを実感したことから、現在はマーケティングとキャリア・人材を軸に、人と組織の可能性を最大化できるよう支援をしています。