コーズ リレーティッド マーケティングとは?効果や注目される背景、企業の事例を徹底解説

コーズ リレーティッド マーケティングとは?効果や注目される背景、企業の事例を徹底解説

商品・サービスの売上による利益の一部を寄付し、環境保護や社会貢献につなげる「コーズ リレーティッド マーケティング」。販売促進や企業のイメージアップだけでなく、消費者にとっても購入を通して社会貢献ができるというメリットがあり、社会的意義の高いマーケティング手法として注目されています。この記事では、コーズ リレーティッド マーケティングの概要や効果、企業の成功事例について解説します。


コーズ リレーティッド マーケティングとは?

まずは、コーズ リレーティッド マーケティングの定義や歴史について解説します。

環境保護や社会貢献につなげるマーケティング

コーズリレーテッドマーケティング(Cause related marketing)とは、商品・サービスの売上による利益の一部を環境活動や社会奉仕活動を行う機関・団体に寄付し、売上の増加や企業イメージの向上を目指すマーケティング手法のことです。

Cause Related Marketingの直訳は以下のようになり、頭文字をとって「CRM」と略されたり、「コーズ マーケティング」と呼ばれたりすることもあります。

Cause→社会的な大義
Related→関連した
Marketing→マーケティング

自社で重視している社会的課題を示し、その解決に向けて効果的なキャンペーンを実施するという点では、CSR活動の一種とも言えるでしょう。CSR活動は企業利益に直結しない場合も多いのに対し、コーズ リレーティッド マーケティングは利益を確保しながら社会貢献につなげているという点が大きな特徴です。

コーズ リレーティッド マーケティングの歴史

コーズ リレーティッド マーケティングにおける最初の成功事例は、1976年のアメリカで誕生しました。

大手ホテル「Marriott Corporation」と早産・乳児死亡を減らすことを目的に母子の健康改善を目指す慈善団体「March of Dimes」がキャンペーンを実施。エンターテイメント施設の宣伝をしたいMarriott Corporationと多くの寄付を集めたいMarch of Dimes、両者の目的が合致して行われたコーズ リレーティッド マーケティングにより、総額約240万ドルもの寄付金を集めることに成功したと言われています。

さらにコーズ リレーティッド マーケティングの概念を全世界に広めることとなったのが、1983年にAmerican Expressが行った「自由の女神修復プロジェクト」です。

自由の女神修復プロジェクトは、カードの利用1回つにつき自由の女神像修復基金1セントが寄付されるというもので、世界中で多くの話題を集めました。その結果、自由の女神修復基金として170万ドルの寄付に成功し、American Expressカードの利用は約30%増加したと言われています。

コーズ リレーティッド マーケティングが注目されている背景

環境保護や社会貢献とつながりの深いコーズ リレーティッド マーケティングは、SDGsの取り組みが推進されるに連れて注目度が高まっているマーケティング手法です。

社会課題に関心の強いY世代・Z世代の登場

コーズ リレーティッド マーケティングが注目されている背景には、消費行動の中心となるターゲット層の価値観も大きく関係しています。

Y世代・Z世代(1975年生まれ以降の世代)は、リーマンショックによる不況や地球温暖化による異常気象、東日本大震災やコロナ禍などを目の当たりにしてきた世代。環境や社会的な責任に強く関心を持ち、持続可能な社会を求めるといった一面があると言われています。

そのため、社会課題に関心の高い世代にとってより効果的なコーズ リレーティッド マーケティングが、多くの企業で取り入れられるようになったのです。

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団塊ジュニアやゆとり世代のほかに聞くX世代・Y世代。各世代はどのような定義と特徴を持つのか?よく聞くZ世代との違いとあわせ改めて解説します。Z世代は物心ついたときにはSNSやスマホがあるデジタルネイティブ世代であり、X世代・Y世代はその前の世代になります。

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SNSと相性が良いマーケティング手法

Y世代・Z世代の消費者は、テレビなどのマスメディアよりSNSを中心に情報収集をします。

SNSでの発信にも長けており、社会問題への見解など自分の価値観を発信することにも積極的です。すぐれた情報拡散力をもつSNSでは、社会貢献性の高いトピックがシェアされやすい傾向にあり、コーズ リレーティッド マーケティングはSNSと相性の良い手法だと考えられます。

SNSの急成長もコーズ リレーティッド マーケティングが注目されている要因の一つであり、今後もコーズ リレーティッド マーケティングの成功には欠かせないツールだと言えるでしょう。

コーズ リレーティッド マーケティングの効果

コーズ リレーティッド マーケティングは、社会に貢献しながらも企業の利益を上げ、さらに顧客にも価値を提供できるという「三方良し」の手法です。ここでは、コーズ リレーティッド マーケティングの具体的な効果について解説します。

顧客満足度・企業利益の向上

消費者は、商品を購入することで購買意欲を満たすだけでなく、その商品を選択し購入するという行動を通して「社会貢献に参加している」という実感を得ることができます。

消費者が社会的意義を感じながら購入できるため満足度が上がり、「どうせ買うなら社会貢献できるものを」とその商品が選ばれることが増えるために売上が増加し、企業利益の向上へとつながります。

企業のイメージアップ

コーズ リレーティッド マーケティングでは、環境保全や貧困支援、震災復興など社会貢献性の高い活動を行うため、キャンペーンが広く認知されれば、消費者に社会貢献と企業名と結びつけて捉えてもらうことができます。

「社会貢献に取り組む企業だ」と浸透すれば、企業のイメージアップにつながるという効果があります。

従業員のモチベーションアップ

企業イメージが向上すると、働く従業員にも自社に対する誇りが生まれ、モチベーションアップにつながります。

従業員がモチベーション高く働けるようになれば、生産性やエンゲージメントも向上し、企業にとってはインナーブランディングも同時に行えるという相乗効果が期待できるでしょう。

コーズ リレーティッド マーケティングの注意点

このように多くのメリットをもたらすコーズ リレーティッド マーケティングですが、逆効果になってしまわないように注意が必要な点もあります。

たとえ本意でなかったとしても、消費者に誤解を抱かせるようなキャンペーンを行ってしまうと、「社会貢献を利用している」というイメージを持たれてしまい、逆に企業イメージが悪くなってしまいます。

たとえば、事業内容とまったく関連のないキャンペーンを突然打ち出したり、商品自体が環境に配慮されていないものだったことが発覚したりした場合には逆効果となってしまうケースもあるでしょう。

利益目的で考えるのではなく社会貢献への目的を明確にし、一貫した施策を実施することが大切です。

コーズ リレーティッド マーケティングの事例5選

コーズ リレーティッド マーケティングの代表的な事例を5つ紹介します。

サッポロビール「熊本城復興応援缶」

サッポロビールは、「平成28年(2016年)熊本地震」により甚大な被害を受けた熊本城の復旧・復元を支援するため、2017年より毎年「熊本城復興応援缶」を販売しています。

2022年からは「熊本城復興応援缶」の売上1本につき1円が熊本城災害復旧のために寄付されることとなりました。

また、缶体には二次元コードが設けられ、熊本城復興のための費用を募る「復興城主」制度の募集ページへ誘致しています。

参考:サッポロビール|熊本城復興応援缶

森永製菓「1チョコ for スマイル」

森永製菓は、ガーナなどのカカオ生産国に対し、教育環境の改善や児童労働問題への取り組みを支援する活動を2008年から続けています。

NGO団体と協働し、年間を通して寄付のほか、特別期間では森永チョコレートなどの対象商品1個につき1円を寄付するキャンペーンを実施しています。

「チョコレートを⾷べる⼈も、カカオの国で学ぶ⼦どもたちも、みんなの笑顔を未来につなぎたい。」という考えのもと、これまで3億円近くの支援をしてきました。

参考:森永製菓|1チョコ for 1スマイル−あなたが食べると、もう一人がうれしい。

イオン「幸せの黄色いレシートキャンペーン」

イオンでは、毎月11日を「イオン・デー」と称し、環境と地域還元をテーマに貢献活動を行う日としています。

イオン・デーに実施している「幸せの黄色いレシートキャンペーン」は、顧客がレジ精算時に受け取った黄色いレシートを地域のボランティア団体名が書かれた店内備え付けのBOXに投函すると、レシート合計の1%分の品物をイオンが各団体に寄贈する取り組み。各団体の活動内容としては、福祉や街づくりの推進、環境保全、文化や芸術の振興、子どもの健康と安全のための取り組みなどが挙げられます。

2001年に開始したこのキャンペーンでは、2023年2月までの累計で約49億相当の品物を寄贈しています。

参考:イオン|幸せの黄色いレシートキャンペーン

王子ネピア「ネピア 千のトイレプロジェクト」

王子ネピアは、2008年からユニセフへの寄付を通して東ティモールへの支援活動を行ってきました。

東ティモールはインフラが整っておらず、屋外排泄が原因で下痢などの病気にかかり、命を失う子どもたちも多かったのです。こうした問題を解決するために立ち上がった「千のトイレプロジェクト」では、トイレ普及と衛生環境改善の支援を目的に、ネピア対象商品の売上の一部が寄付されてきました。

2021年に終了した同プロジェクトの結果は以下のとおり。

・寄付額:約2億1,000万円
・トイレをつかえるようになった人:約13万4,000人
・トイレづくり:約2万2,000件
・屋外排泄根絶宣言:68の村・425集落
・5歳未満の子どもの死亡率:約36%改善

13年間の活動が大きな成果につながりました。

参考:nepia|千のトイレプロジェクト

キリンビバレッジ「volvic ユニセフ『1Lfor 10L』プログラム」

「1Lfor 10L」プログラムは、世界の水に関わる重要課題に取り組んでいくため、ボルヴィックとユニセフが共同で取り組んでいるプログラム。2005年のドイツから始まり、日本では2007年から2016年までの9年間実施されました。

ボルヴィック出荷量1リットルにつき10リットルの清潔で安全な水が、支援対象国に供給される仕組みです。

9年にわたる支援の結果、マリ共和国の状況は以下のように改善しています。

総計約50億リットルを支援
約277基の井戸(水場)を新設・修復
水場が改善されたため、不衛生な環境が原因となる病気への罹患率が減少
工具の供給と作業員の育成により、自力での井戸のメンテナンスが可能に

寄付だけではなく、アフリカの現状や活動の様子などを発信することで消費者の信頼を獲得し、大きな成果につながった事例です。

参考:キリンホールディングス|volvic ユニセフ「1Lfor 10L」プログラム

まとめ

社会課題解決型のコーズ リレーティッド マーケティングは、社会課題に関心の高い世代に響きやすく、近年注目されているマーケティング手法です。

コーズ リレーティッド マーケティングを行うと、消費者が社会的意義を感じながら購入できるため顧客満足度が上がり、企業のイメージアップや従業員のモチベーションアップにつながるなど、多くのメリットがあります。

コーズ リレーティッド マーケティングを活用し、企業と消費者が一体となって活動することで、これまでにも数々の大きな支援が実現しています。顧客と共に社会課題の解決につながる活動がしたいと考えている場合は、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

この記事のライター

フリーライター。JRグループ会社にて経理・総務として勤務。
子育てとの両立のためWebライターに転身。3児の母。
バックオフィス業務関連の記事を中心にBtoBライティングを手がける。

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