【解説者紹介】
検索順位の変動幅は?The August 2023 core update
安部:「2023年10月 コンテンツマーケティング最新動向レポート」では、The August 2023 core updateについて解説しています。
コアアルゴリズムアップデートとは、Googleの検索結果のアルゴリズムが見直され、大幅に検索順位の変動が起こるアップデートのことです。The August 2023 core updateは日本時間8月23日(米国時間8月22日)に始まり、日本時間9月7日(米国時間9月6日)に終了しました。
岩間:The August 2023 core updateでも大幅な検索順位の変動が起こったのでしょうか?
安部:今回は変動幅はそれほど大きくありませんでした。例えば2023年3月に行われたコアアルゴリズムアップデートの順位の変動幅と比較すると、各ジャンルで違いはあるものの、半分程度の変動幅になっています。
岩間:このような変動はコアアルゴリズムアップデート期間中に見られたものなのですか?
安部:今回の場合は、アップデート開始直後の8月24日、25日あたりと、終了後の9月8日、9日あたりで大きな変動が見られました。これらのことから、SEO担当者の方が自社サイトを分析する際は、アップデート期間のみではなく、その前後も見ていくことが大切だと思います。
The August 2023 core updateの3つの傾向
岩間:The August 2023 core updateは、検索順位の変動幅は大きくなかったとわかりましたが、ほかにSEO担当者が押さえておくべきポイントがあれば教えてください。
安部:全体感としては3つのポイントがあります。「1.人間の体験によるコンテンツが重要視された」「2.コンテンツの品質基準が厳しくなってきている」「3.UX(ユーザエクスペリエンス)の重要性が増大している」という点です。
一つずつ説明していきますね。
■1.人間の体験によるコンテンツが重要視された
安部:まず人間の体験によるコンテンツが重要視されたことですが、この背景には生成系AIが多く使われるようになったことが挙げられます。WEB上に同じような内容のコンテンツがあふれるようになった中、Googleはやはり人間による体験に基づいているコンテンツを重要視していると考えられます。Googleのコンテンツの評価指針であるEATにE(Experience:経験)が加わったことからもわかるでしょう。
人間の体験によるコンテンツを重視するため、コアアルゴリズムアップデート以外でも、Googleは様々な施策を打っています。例えば検索結果に体験に基づいたコンテンツのみを表示させる「パースペクティブフィルター」をアメリカで導入したり、ヘルプフルコンテンツシステムの一環で「隠れた宝石」(=掲示板での投稿や、ドメインパワーは少ないブログだが、ユーザーにとって価値のあるコンテンツ)を上昇させることをアナウンスしたりしています。
岩間:なるほど。ちなみにGoogleはどのようにして人間の体験によるコンテンツだと判断するのでしょうか?
安部:個人的には体験談のコンテンツ、UGCが多いコンテンツなど、サイトごとに評価されることが多いと感じています。他にもQ&Aサイトや掲示板サイト、ブログ系サイトなどの順位が上昇する傾向があるといった結果もあります。
岩間:中にはとにかく「体験談」というキーワードを含めれば良いと考えたり、生成系AIにあたかも人間が書いたような体験談を作らせたりする人も出てきそうですね…。
安部:そのような人も出てくるかもしれませんね。ただし、いずれはGoogleも対策すると思うので、体験談をどこから集めたかを、記事内かサイト内に記載するといったことが必要になってくるかもしれません。
岩間:カテゴリ別で傾向はありますか?体験談コンテンツが重視されるカテゴリがあればお聞きしたいです。
安部:直近はYMYL(※)より、それ以外の特に旅行や求人などの領域で需要の増大が見られます。
※Your Money or Your Life:人の健康や安全、経済的安定、社会の福利厚生に大きく影響する可能性のあるトピック
一方YMYLに関しては、順位の変動幅は小さかったことがわかっています。個人の体験談が必要な度合いはカテゴリやキーワードによって異なるのかもしれません。医療やお金にまつわるコンテンツは、個人の体験談だけを重視するものではないと考えられるからです。
■2.コンテンツの品質基準が厳しくなってきている
安部:次のポイントは、コンテンツの品質基準の厳格化です。先ほどと同様、ここでも生成系AIが影響しています。
生成系AIで簡単にコンテンツを作れるということは、WEB上に記事があふれるということ。そのためGoogleはすべてをインデックスすることが難しくなります。一定の品質基準をクリアしたページのみをインデックスしていく動きが見られるようになるでしょう。
加えて、ヘルプフルコンテンツシステムで、品質が低いコンテンツが一定以上あると、サイト全体の順位を下落させることもアナウンスされています。
岩間:低品質なコンテンツを公開することのリスクがより高まりそうですね。
安部:品質の担保という意味では、専門性の高い記事には専門家による監修を入れ、かつ監修者名も記事内に明記する必要があるでしょう。
岩間:確かに医師や弁護士、税理士などの専門家が運営するWEBサイトであったとしても、監修者や執筆者が明記されていないコンテンツは下落傾向にあると聞きました。
安部:そうですね。ただし、そのようなサイトでも、専門家の専門分野に直結しないようなテーマや、専門分野を含んでいるがテーマが広すぎるようなものであると下落しているといった結果も出ています。
岩間:専門性のマッチ度が見られているということですね。
安部:おっしゃる通りで、専門性のマッチ度は今後さらに見られていくと思います。例えば一口に「ローン」と言っても、カードローンなのか、住宅ローンなのかで専門家の選定は変わってくるでしょう。
■3.UX(ユーザエクスペリエンス)の重要性が増大
安部:最後のポイントはUXの重要性が増大していることです。
簡単に説明すると「サイトに訪れたユーザーが求める情報にすぐアクセスできるのか」や「使いやすく、イライラすることが少ないサイトなのか」が見られています。
今回のアップデートにおいて一定見られた傾向が、直帰率や滞在時間、1セッション当たりのPV数などのエンゲージメント指標が良好なサイトほど上位化していること。コンテンツの中身も重要でありつつ使いやすいサイトであるかも、今後より重要になってくるだろうと考えています。
岩間:ヴァリューズが調査したところ、UXの指標としてSEOのアルゴリズムに導入されたCore Web Vitalsのうち、LCP(Largest Contentful Paint:ページの表示速度を測る指標)やFID(First Input Delay:ページの応答性を測る指標)、CLS(Cumulative Layout Shift:ページの「安定性」を測る指標)の数値が良いほど上位表示される傾向が見られ始めており、UXの指標も重要視されつつあることがわかっています。また、2024年3月にアルゴリズムに入る予定の、ページとユーザーとのインタラクションの遅延を評価するINP(Interaction to Next Paint)も若干同じような傾向が見られます。
以前からGoogleがアナウンスしていた通り、コンテンツの質が同一であれば、UXが勝っているほうが上位表示される傾向が見られるなと。
SEO対策の一環として行っていたCore Web Vitals対策が、結果的にUXの改善にもつながっていたとも考えられますね。
安部:UXと順位の関係性は鶏が先か、卵が先かの話になる部分もあるかと思っています。普段自分でネットサーフィンしていても、上位のサイトほど長く見る、みたいなことは心理的にもあるなと。ただ、優先度はありながらもコンテンツのブラッシュアップとUXの改善は両方行うほうがよいと思います。
他にも、検索意図にできる限り早く、端的に答えているコンテンツの上昇傾向も見られます。これまでSEOでは、ユーザーの検索意図に網羅的に答えていくことが重視されていたため、結果的に長尺コンテンツが評価される傾向がありました。今回はそうではなく、端的に答えているかが評価されるようになったことも注目しておきたいポイントです。
とはいえ、長尺コンテンツが全くなくなったというわけではありません。例えばアフィリエイターが狙うような競合性の高いキーワードでは、未だに長尺コンテンツがたくさんあります。ただ短くすればいいというわけではなく、端的にユーザーが求めていることに答え、かつ必要以上に加筆しない文字数でコンテンツを作っていく必要があると思います。さらに、目次をつけるなどユーザーが知りたい情報にたどり着きやすいよう動線を整えることも対策として挙げられます。
SEO担当者はどうすべきか
岩間:The August 2023 core updateの全体感がよくわかりました。最後に、今回のコアアルゴリズムアップデートを受け、SEO担当者は今後どのようなことを意識すればよいか、アドバイスをお願いします。
安部:前提としてお伝えしたいのは、今回のコアアルゴリズムアップデートだけを見て最適化することは危険だということです。例えば、今回人間による体験談コンテンツが重視されたとお伝えしましたが、だからといって全ページにとにかく体験談を盛り込もうとすることは控えたほうがよいでしょう。次のコアアルゴリズムアップデートで体験談コンテンツの優先度が下がる可能性もあるからです。
そのうえで、自社サイトで順位変動があったキーワードやページを分析しましょう。悪い影響を受けてしまったキーワードやページが見つかり、今回お伝えしたような傾向に当てはまるようであれば、少しずつ対応しましょう。
具体的な対応として、今回は3つ紹介します。
1つ目は、流入クエリとSEOLPページがずれていないかを確認しましょう。Google Search Consoleから各ページへの流入キーワードを調べ、対策ページとして適切か確認したうえで、リライトや新規のページ作成の整理をしていきます。
2つ目は、ユーザーが知りたい情報やコンテンツになっているかを確認します。また、検索意図に答えているかやユーザーが知りたい表現になっているかはもちろん、独自性のあるコンテンツになっているかもチェックしましょう。今後は独自性のないコンテンツは上位表示が難しくなっていくと考えられます。自社だからこそ伝えられる、かつユーザーのためになる情報があれば盛り込むようにしましょう。
3つ目は、先ほどお伝えした通り、ユーザーにとって使いやすいサイトになっているか、動線が整っているか、表示されるまでに時間がかからないかといったUI/UXの改善ですね。直帰率やCore Web Vitalsの数値等も見ながら改善していくことが大切だと思います。
岩間:ありがとうございます。具体的にとるべきアクションもわかり、早速実行に移すことができそうです!
安部:今回お伝えしたことはThe August 2023 core updateの傾向と対策のほんの一部です。より詳しい情報は、ページ下部から無料ダウンロードできる「コンテンツマーケティング最新動向レポート(2023年10月版)」にてご覧いただけますので、ぜひ参考にしてみてください。
以上、10月のコンテンツマーケティング動向「SEO編」でした。次月のネタも楽しみにお待ちください。
(本調査はあくまでも傾向に注目し、今後の施策における仮説立てや優先順位の検討に有効活用するためのものであり、因果関係を示すものではないこと、また、各トピックの内容やVALUESの見解は、資料作成時のものであり、今後の情勢やアルゴリズムの変化によって変わることがある旨、ご留意ください)
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IT企業でコンテンツマーケティングに従事した後、独立。現在はフリーランスのライターとして、ビジネスパーソンに向けた情報を発信しています。読んでよかったと思っていただける記事を届けたいです。