BYDのコンパクトEV「ドルフィン」とは?
ドルフィンは、BYDの日本市場向けのEVとしては「ATTO3」に続く第2弾の車で、ミドルSUVのATTO3とは違いコンパクトなサイズのEVです。
サイズは全長4,290mm×全幅1,770mm×全高1,550mmと、コンパクトカーの人気車種トヨタヤリスクロスと同じくらいの大きさです。本体価格は363万円ですが、環境負荷の低い車を購入する際に支給されるCEV補助金が65万円支給されるため、実質価格は300万円を切ります(2023年11月現在)。
スタンダードモデルの航続距離はフル充電で400kmとEVの中では長い部類。安全性能も高く、「衝突被害軽減ブレーキ」や前車との距離を保つ「アダプティブクルーズコントロール」、車線から外れないようにアシストする「レーンキープアシスト」など、多数の機能が搭載されています。スペックも含めてコンパクトEVでは破格の価格で購入が可能です。
BYD「ドルフィン」に関心があるのはどんな層?
では、実際にBYDドルフィンはどのような層に関心があるのかを、2023年9月〜10月の期間に、BYDドルフィンのWebサイトを訪問した人のデータを参考に考察します。
今回の調査は、毎月更新されるWeb行動ログデータを用いて、競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用いて行っています。
まずは、BYDドルフィンのWebページ訪問者数を見ていきます。
発売月の2023年9月は5万人の訪問者でしたが、10月で20万人がページ訪問しています。1ヶ月で4倍も訪問者が増えており、注目度合いがわかります。
BYDドルフィンWebページの訪問者
調査期間:2023年9月〜2023年10月
デバイス:PC、スマートフォン
■男性の訪問者数が多く、50代以降の注目度が高い
続いて、訪問者の男女比を見ていきます。
BYDドルフィンWebページの訪問者の男女比
調査期間:2023年9月〜2023年10月
デバイス:PC、スマートフォン
車というジャンルもあり、男性の割合が76.4%と高くなっています。訪問者の約4分の3が男性です。
BYDドルフィンWebページの訪問者の年代
調査期間:2023年9月〜2023年10月
デバイス:PC、スマートフォン
訪問者の年代を見てみると、50代〜70代の割合が高く、ネット利用者全体を上回っています。
EVの特徴でもある長い航続距離以外にも、前述した安全に関わる機能が多く搭載されていることが、ミドル層以上の年代に注目されているのかもしれません。
訪問者の未既婚も見てみると、既婚者の訪問者が多く、子どもありの訪問者が多くなっています。
BYDドルフィンWebページの訪問者の未既婚
調査期間:2023年9月〜2023年10月
デバイス:PC、スマートフォン
BYDドルフィンWebページの訪問者の子どもの有無
調査期間:2023年9月〜2023年10月
デバイス:PC、スマートフォン
既婚者や子どもありというペルソナ像を考えると、コンパクトカーよりもファミリーカーを好みそうな人物像が浮かびますが、50代〜70代の訪問者が多いことを加味すると少し違う人物像になります。
子どもと一緒に乗るというよりも、子どもに手がかからなくなった人や子どもが親元を離れた人が、コンパクトで街乗りできるようなEVを探していると推測できます。
■世帯年収400万円未満の層の訪問者も見受けられる
男女比、年代や、未既婚がわかったところで、どのくらいの世帯年収の層が関心を持ってるのかを見ていきます。
BYDドルフィンWebページの訪問者の世帯年収
調査期間:2023年9月〜2023年10月
デバイス:PC、スマートフォン
EVとしては低価格なことが特徴のBYDドルフィンですが、600万円〜1500万円までの世帯年収の訪問者が多く、販売価格が抑えられることを考えると意外です。
BYD ATTO3 Webページの訪問者の未既婚
調査期間:2023年9月〜2023年10月
デバイス:PC、スマートフォン
ただ、BYDが2023/1/31に第一弾で発売したATTO3と比べると世帯年収400万円未満が5%ほど高くなっています。
ATTO3の販売価格は440万円〜でドルフィンが363万円〜と約80万円の差があり、BYDの車の中では世帯年収が低い層が関心を持っていることがわかります。
カーメディアの閲覧が多く車好きな層が関心を持っている
では、サイト訪問者は普段どのようなサイトに関心があるのでしょうか。ここでは、BYDドルフィンが発売した2023年9月のデータを見ていきます。
BYDドルフィンWebページの訪問者の関心サイト(リーチ差優先)
調査期間:2023年9月
デバイス:PC、スマートフォン
上位10サイトをみると、カーセンサーや車総合情報 carview!などのカーメディアの閲覧が多く、車好きな層が関心を持っていることがわかります。
また、8位に国産EV販売台数1位の日産がランクインしていることから、国産車も比較対象にあるようです。
世界EV販売台数1位のテスラがランクインしていないところを考えると、BYDドルフィンとテスラでは、関心を持つ層が違うのかもしれません。
BYDドルフィンのデジタル集客構造を探る
ここからはBYDドルフィンWebサイトの集客構造を見ていきます。
BYDドルフィンWebページの集客構造
調査期間:2023年9月〜2023年10月
デバイス:PC、スマートフォン
※ノーリファラは除く
外部サイトが40.7%、ディスプレイ広告が36.8%となっていて、この2つで全体の70%以上を占めていることがわかります。Web広告をメインに認知を増やす戦略のようです。
BYDドルフィンWebページの集客構造推移
調査期間:2023年9月〜2023年10月
デバイス:PC、スマートフォン
※ノーリファラは除く
2023年9月と10月の集客構造の推移をみると、10月に外部サイト、ディスプレイどちらも大幅に増えています。販売を開始し、注目度から外部サイトでの露出が増え、加えてWeb広告も打ち出しているのでしょう。
今は販売開始からまもなく、認知度が上昇している段階です。そのため、今後は自然検索の増加も予想されます。
同価格帯の日産サクラや三菱ekクロスEVと比較される傾向
最後に、BYDドルフィンは2023年10月に、どのようなEVと比較されたのかを見ていきます。
対象は同程度の価格帯の「日産サクラ」「三菱ekクロスEV」、サイズ感や機能性が同じくらいの「ヒョンデIONIQ5」「日産リーフ」です。
「BYDドルフィン」「日産サクラ」「三菱ekクロスEV」「ヒョンデIONIQ5」「日産リーフ」のサイト併用状況
調査期間:2023年10月
デバイス:PC、スマートフォン
併用なしが最も多いですが、日産サクラが5.9%と三菱ekクロスEVが6.4%と一定数が比較していることがわかります。両者は軽自動車で、普通車のドルフィンとはサイズ感や機能性が異なります。
同じくらいのサイズ感のヒョンデIONIQ5は1%、日産リーフは2.1%とあまり比較されていないようです。ヒョンデIONIQ5は479万円から、408万円からと363万円から購入できるBYDドルフィンと比べると、価格が高いため比較しづらいのかもしれません。
BYDドルフィンは、サイズ感や機能性ではなく、どちらかというと価格で比較検討される傾向があるようです。
まとめ
今回はBYDのコンパクトEV「ドルフィン」のWebサイト訪問者から初速の反応や、どのような人が関心を持っているのか調査しました。
50代以上の年代が関心をもっているようで、先行車種であるATTO3と比べると、世帯年収が400万円未満の層からの関心も高いようです。
集客構造は外部サイト、ディスプレイ広告がメインなものの、今後知名度が上がり、自然検索が増えていく可能性もあります。
価格が同じくらいの日産サクラや三菱eKクロスEVと一定数比較されているようで、BYDドルフィンが発売されたばかりなことも考えると、今後コンパクトEVの選択肢になることが十分考えられます。
BYDは2024年春にセダン車「シール」の販売開始を予定しており、10月末に行われたジャパンモビリティショー2023ではSUVやミニバンも公開されました。これからどんな車が市場を賑わせるのか、BYDから目が離せません。
▼今回の調査にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えます。Dockpitには無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。
アメリカ留学中にWebの仕事に出会い、帰国後に起業。自社で物販を行う側、ライターとして活動。アウトドアが趣味