オンライン診療は何科が多い?検索者データから分かったニーズのある科とは

オンライン診療は何科が多い?検索者データから分かったニーズのある科とは

受診の予約から薬の受け取りまで、自宅で完結する「オンライン診療」。どのような症状で受診を検討する人が多いのでしょうか。市場規模の今と今後とは。受診の検討者データから、ニーズと市場の動向を調査しました。


「オンライン診療」とは

オンライン診療とは、ビデオ通話を使って医師が患者を診察する医療サービスです。予約から決済までオンラインで完結し、薬も自宅への配送を選択できることから、移動時間や待ち時間を短縮し、感染を避けながら自宅で安心して受診できることが特徴です。休日や夜間も診療を受け付けているサービスも見られ、急な体調不良にも対応しています。

2020年の新型コロナ拡大により、需要が急速に高まったことを受け、厚生労働省がオンライン診療に関する規制緩和を発表。対面診療が原則とされていた初診もオンラインでの診療が可能となるなど、オンライン診療を後押しする体制になったことで、広く普及が進みました。

参考:厚生労働省「オンライン診療について」

「オンライン診療」検索者数は2年間で大きな増減なし

ここからは、オンライン診療の利用を検討する人の行動データから、人物像やニーズを調査していきます。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

まずは「オンライン診療」と検索した人のデータです。

「オンライン診療」検索者数の推移

「オンライン診療」検索者数の推移
期間:2023年3月~2025年2月
デバイス:PC&スマートフォン

月の検索者数はおよそ2万~4万の間で推移しており、2年間で需要の増大は見られませんでした。なお2024年の1年間における検索者数は28.1万人でした。

「ファストドクター」「クリニックフォア」が多くの閲覧者を抱える

オンライン診療に対応するサイトの閲覧者数も見ていきます。「オンライン診療」検索後の流入サイトランキングは以下のようになっていました。

「オンライン診療」検索者の流入サイト

「オンライン診療」検索者の流入サイト
期間:2024年3月~2025年2月
デバイス:PC&スマートフォン

このうち、厚生労働省と病院なびを除いたサイトの訪問者数を集計すると、「ファストドクター」と「クリニックフォア」がより多くの閲覧者を抱えていることがわかりました。なおファストドクターの1年間の閲覧者数は1,340万人、クリニックフォアは723万人でした。

「ファストドクター」「患者目線のクリニック」「CLINICS」「クリニックフォア」の公式サイト閲覧者数推移

「ファストドクター」「患者目線のクリニック」「CLINICS」「クリニックフォア」の公式サイト閲覧者数推移
期間:2024年3月~2025年2月
デバイス:PC&スマートフォン

市場拡大の可能性あり?

2大サイト「ファストドクター」「クリニックフォア」への流入経路を見ると、「ファストドクター」は自然検索が約70%、「クリニックフォア」は自然検索とディスプレイ広告を合わせて約70%となっていました。

「ファストドクター」「クリニックフォア」の公式サイトの集客構造

「ファストドクター」「クリニックフォア」の公式サイトの集客構造
期間:2024年3月~2025年2月
デバイス:PC&スマートフォン

「オンライン診療」の年間の検索者は30万人弱でしたが、実際のサービスにはサイト名を目掛けて検索したり、広告経由で流入する人が多く、結果として2大サイトは1年間でそれぞれ1,000万人前後の訪問者を集客していることがわかりました。

「オンライン診療」検索者数の推移は直近2年間で増加の傾向は見られませんでしたが、市場の規模としては、今後個々のサービスの認知拡大や広告の投入増に伴って、少しずつ大きくなっていく可能性はあるのかもしれません。

検索者は30~40代に集中、子供なしが6割以上

次に、「オンライン診療」を検索する人の人物像を分析していきます。
検索者の属性を見ると、男性約43%、女性約57%で、女性の割合が高くなっています。

「オンライン診療」検索者の性別

「オンライン診療」検索者の性別
期間:2024年3月~2025年2月
デバイス:PC&スマートフォン

年代は30~40代が6割弱を占めており、ネット利用者全体と比べても検索者がこの世代に集中していることがわかります。仕事に家庭にと忙しくなる現役世代が、隙間時間を縫って受診するために、オンライン診療が検討されているのかもしれません。

「オンライン診療」検索者の年代

「オンライン診療」検索者の年代
期間:2024年3月~2025年2月
デバイス:PC&スマートフォン

検索者の子供の有無を見ると、約63%が「子供なし」となっており、夜間や休日の子供の体調不良に対応するためというよりは、自分自身の受診先を探している人が多いと考えられます。

「オンライン診療」検索者の子供の有無

「オンライン診療」検索者の子供の有無
期間:2024年3月~2025年2月
デバイス:PC&スマートフォン

心療内科やAGAなど、通院の心的ハードルが高いものが検討されやすい

そもそもオンライン診療が対応しているのは、どのような症状なのでしょうか。サイト訪問者数が多かった「ファストドクター」「クリニックフォア」を例に見てみます。

「ファストドクター」のオンライン診療で対応している診療科・症状など

「クリニックフォア」のオンライン診療で対応している診療科・症状など

内科や皮膚科から、AGA、低用量・アフターピルまで、幅広くオンラインで対応していることがわかります。

では、オンラインで診療を受けたいというニーズが大きいのはどの診療科なのでしょうか。「オンライン診療」との掛け合わせ検索ワードから探っていきます。

検索者数が多い順では、「皮膚科」「精神科」「心療内科」「AGA」の順となっており、10位には「ピル」の検索も見られます。

「オンライン診療」との掛け合わせ検索ワード

「オンライン診療」との掛け合わせ検索ワード
期間:2024年3月~2025年2月
デバイス:PC&スマートフォン

皮膚科はニキビ用の塗り薬など、いつも処方してもらっている薬の補充を、待ち時間の少ないオンライン診療で済ませたいという人が多いのかもしれません。低用量ピルにも同じことが言えそうです。

精神科・心療内科やAGAは、通うことへの抵抗感がオンライン心療のニーズを引き上げていることがうかがえます。また、AGA治療のために皮膚科を検索している人も一定数いると考えられます。

「オンライン診療」検索者が最も多く流入するサイト「ファストドクター」内で人気のコンテンツを集計してみてもやはり、心療内科のニーズが特に高いことがわかりました。

「ファストドクター」公式サイトの閲覧ページランキング

「ファストドクター」公式サイトの閲覧ページランキング
期間:2024年3月~2025年2月
デバイス:PC&スマートフォン

「ファストドクター」内では、オンライン診療で対応可能なこともあり、新型コロナに関するページもよく閲覧されていました。感染拡大の可能性や症状の重さを考えると、自宅で24時間受付できるオンライン診療の需要が高いことも頷けます。

まとめ

今回は「オンライン診療」の検索データやサイトの閲覧データをもとに、そのニーズの実態を調査してきました。

年間の「オンライン診療」検索者数は30万人弱で、2年間で検索者の増加傾向は見られないものの、2大サイト「ファストドクター」「クリニックフォア」は指名検索や広告流入をメインに1年間で1000万人前後の訪問者を抱えており、今後のプロモーションによっては市場拡大の可能性はあるのかもしれません。

また、現時点で「オンライン診療」の検索は30~40代に集中していますが、この世代が今後シニア世代になってもサービスを使い続けると同時に、オンライン慣れしているさらに若い世代がこの年代になっていくことで、ますます本サービスへのニーズが高まる可能性もあります。

幅広い症状に対応しているオンライン診療ですが、特に検索されやすいのは「皮膚科」「精神科」「心療内科」「AGA」などで、「待ち時間なくいつもの薬を処方してほしい」「通院のハードルを下げて受診したい」といったニーズがうかがえました。

政府による高額療養費の上限額引き上げ検討など、医療への注目が高まっている今。電子カルテなど、医療DXの推進も重要視されています。オンライン診療を含め、医療サービスの動きに目が離せません。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

dockpit 無料版の登録はこちら

この記事のライター

1997年生まれ、大阪大学卒。データアナリストを経て、Webマーケティング・リサーチを軸に、コンテンツディレクション、SNS運用、デジタル広告運用などを担当。現在はフリーで活動しています。

関連するキーワード


「医療」市場調査 Dockpit

関連する投稿


冬商戦の市場動向レポート 2025〜定着するブラックフライデー、「福袋」商戦の早期化など、最新トレンドを調査

冬商戦の市場動向レポート 2025〜定着するブラックフライデー、「福袋」商戦の早期化など、最新トレンドを調査

冬にはブラックフライデー、クリスマス、お歳暮、福袋など、複数の商戦期が存在します。特に近年ではブラックフライデーが国内でも定着し、 2025年の調査では認知率約85.8%、購入経験者約39.7%に達するなど、 年末商戦の起点として大きな存在感を示しています。増加するEC販路の現状も踏まえ、本調査では、2023年冬からの市場推移を時系列で整理し、主要商戦期におけるオンライン行動の変化を調査。また、この数年人気を集めている体験型ギフトの伸長も考察しています。冬ギフトや福袋などに関係するマーケティング担当の方などにおすすめです。※本レポートは記事末尾のフォームから無料でダウンロードいただけます。


Twitterが「X」になって早2年。若者が“Twitter呼び”を続ける理由をデータで考察

Twitterが「X」になって早2年。若者が“Twitter呼び”を続ける理由をデータで考察

SNSを代表する存在であったTwitterは、2023年7月24日に「X(エックス)」へ名称変更し、世の中を驚かせました。「X(旧Twitter)」という表記が使われるようになってから2年以上が経ちますが、日常生活やSNS上では依然として「Twitter」と呼ぶ人も多く見られます。本記事では、「Twitter」と呼ぶ人と「X」と呼ぶ人に、どのような違いがあるのかを分析しました。


「サナ活」ブームを数字で分析。HPアクセス急増、"近畿"で過熱か

「サナ活」ブームを数字で分析。HPアクセス急増、"近畿"で過熱か

現在、SNSを中心に「サナ活」という言葉が注目を集めています。高市首相の就任をきっかけに、彼女の愛用品に注目が集まり、関連商品の売り上げが急伸したという報道も見られます。本記事では、「サナ活」がもたらした経済的な影響とその支持層について、最新のデータをもとに分析しました。


せいろブームが"2年目"に入る理由。無印、フォレスト、ダイエットが鍵?

せいろブームが"2年目"に入る理由。無印、フォレスト、ダイエットが鍵?

みなさんは「せいろ」を使っていますか?簡単に食材を調理でき、健康によい食事を可能にするせいろのブームが継続中です。どのメーカーのせいろが売れているのか?せいろで何を作るのか?といったブームの実態を分析していきます。後半部分では、長期化しているせいろブームを、3つの時期に分けてブームの要因を考察します。


日清「完全メシ」ヒット!新商品も売れ行き好調、人気の味を調査

日清「完全メシ」ヒット!新商品も売れ行き好調、人気の味を調査

日清食品の「完全メシ」をご存じですか?33種類の栄養素とおいしさの完全なバランスを追求した「完全メシ」がいま人気沸騰中です。即席麺、カップライス、冷凍食品、スープなどが展開されています。今回は即席麺とカップライスに着目し、「完全メシ」購入者の特徴や人気の味を調査していきます。最後には、おいしく栄養を摂取できるそのほかの商品もご紹介します。


ページトップへ