生成AI時代に求められる「検索」マーケティングのあり方| 「VALUES Marketing Dive」レポート

生成AI時代に求められる「検索」マーケティングのあり方| 「VALUES Marketing Dive」レポート

ヴァリューズは、“データを通じて顧客のことを深く考える”、“マーケティングの面白さに熱中する”という意味を込め、マーケティングイベント「VALUES Marketing Dive」を10/25に開催しました。第3回目となる今回の全体テーマは「未来を創り出す顧客理解の力」です。生成AIの進歩に伴って検索結果画面が変革する中、マーケターはSEOをどう考え、どのように対策すればいいのでしょうか。本セッションでは、SEOの最前線にいる2人が、Googleが提唱する情報探索行動モデル「バタフライサーキット」を再考し、今後の検索のあり方についてディスカッションしました。


スピーカー紹介

図:ディップ株式会社 川勝領太氏

図:株式会社ヴァリューズ 岩間隆志朗

今後、予定されている検索結果画面の大きな変化

株式会社ヴァリューズ 岩間隆志朗(以下、岩間):まずは前提として、今後生成AIが組み込まれることによって、検索結果画面がどのように変化するのかについて、大きく2つのトピックをご紹介します。

1つ目が、Search Generative Experience(SGE)による変化です。SGEは、検索結果に生成系AIを組み込んだ検索機能です。現在は試験運用がされており、2023年から2024年にかけての実装を予定しています。SGEが実装されると、下記画像のように、従来のリスティング広告や自然検索結果の表示よりも上に、生成系AIの回答が表示されるようになる可能性もあります。

図:Search Generative Experience(SGE)による変化
*キャプチャは2023年10月時点のもの。今後変更される可能性あり。

岩間:この変化によって、リスティング広告や自然検索結果画面がファーストビューに来なくなる可能性が高いです。そのため、今後リスティング広告や自然検索結果画面はクリックされる存在になるのかが懸念されます。

2つ目の変化は、perspectivesフィルタの導入です。perspectivesフィルタとは、経験に基づいたコンテンツのみを検索結果画面に表示する機能です。こちらは既にアメリカでは実装されています。

従来は、検索に対してSEOとして強いサイトが上位表示されていましたが、perspectivesフィルタを使用すると、掲示板やYouTubeなど、ユーザーが体験したもののコンテンツのみが表示されます。

図:perspectivesフィルタによる変化

岩間:これによって、今までのアルゴリズムでは表示されなかったコンテンツが上位表示されるようになります。このように、2023年末から2024年にかけて検索結果画面は大きな変革を迎えようとしています。

「検索」や「SEO」の重要性は変わらない

岩間:こういった背景を踏まえて、今回は以下のようなテーマでお話を伺っていきます。

トークテーマ①
生成AIを中心とした検索結果画面の大きな変化により、マーケティングにおいて「検索」や「SEO」は必要でなくなるのか?

岩間:早速ですが、率直に今回のトークテーマについて、川勝さんはどのようにお考えでしょうか。

ディップ株式会社 川勝領太氏(以下、川勝):結論、『検索』や 『SEO』の必要性は無くならないと思います。検索というのは非常に難しく、現状のGoogle検索を使用するか、生成系AIを使用するかに関わらず、質問に対して思ったような答えが得られない時があります。マーケターは、検索結果画面がどうなろうと、ユーザーの検索に対して、どのように答えに辿り着いてもらうかを考えることが重要なのではないでしょうか。

岩間:つまり、検索結果として、生成AIのコンテンツが表示されたとしても、それだけでは必ずしもユーザーの検索意図に応えきれないため、自然検索結果などの重要度も変わらないだろうということですね。

一方で、そうはいっても実際に数値面として、検索結果画面からのクリック率は減少してしまうということも起きうるのではないでしょうか。

川勝:そうですね。ファーストビューに表示される自然検索結果が減少することもあり、クリック率が減少することは考えられます。
一方で、AIの回答で参照したサイトのリンクが貼られる場合もあり、SGEを経由した新しい流入が期待できるかもません。

岩間:その中で、ユーザーの視点に立った時、検索されるキーワードなど、検索方法に変化は生じてくるのでしょうか。

川勝:従来の検索方法と比較すると、検索クエリが長くなることが想定されます。具体的には、検索が単語ではなく質問調になることが予想されます。また、SGEでは回答に対して追加の質問も可能であるため、検索が複数回に渡って長いクエリとして、対話のように検索される可能性も考えられます。

図:トークテーマ①まとめ

「バタフライサーキット」で検索動機別にキーワードを分析する

岩間:後半では、マーケターとしてSEO対策を今後どう考えていけばいいのかについて議論していきます。そこで、補助線として、バタフライサーキットという考え方をご紹介します。

バタフライサーキットとは、Googleとヴァリューズが共同研究している消費者行動モデルのことです。従来はAIDMAなどを活用してユーザーの行動を整理していましたが、バタフライサーキットでは、『検索』という観点を起点にして、ユーザーの購買意思決定を分析しました。すると、8つの動機を回遊しながら、パルス(瞬間的、直感的に購買意欲が高まる状況)が発生した際に購買行動が起こるのではないかという仮説が立ちました。

図:「バタフライサーキット」とは

岩間:この8つの動機は、いわゆるSEOのKW分類をKnow、Do、Buyクエリという従来の分類から昇華させたものになります。

8つの動機はそれぞれ、『どんな情報が欲しいか』 『どのくらいの粒度の情報が欲しいか』などの性質が異なります。アメリカのSGEを我々が研究した結果をご紹介すると、8つの動機に合わせて新しい検索結果画面での表示の有無を確認すると以下のようになりました。

図:8つの動機別の検索結果の整理

岩間:SGEでより表示されるのは『解決させて』と 『答え合わせさせて』というゴールに近いものでした。一方で、『気晴らしさせて』 『学ばせて』 『みんなの教えて』 『にんまりさせて』のような、消費行動において緩いキーワードの場合はWebサイトへの誘導は弱いことが分かりました。

今までのSEO対策では、検索ボリュームが多いキーワードを重点的に対策することが一般的でした。しかし今後はこれに加えて、SGEが表示されやすいかどうか、Webサイトへ誘導されるかどうかなども考慮して対策キーワードを見極める重要性が高まってくると思われます。このように、検索結果画面の変化に応じて、マーケターの対策も変化する必要がありそうです。

ユーザーの検索動機を満たすことが、改めて重要

トークテーマ②
検索結果画面の変化に対して、マーケターはSEO対策を今後どう考えていければ良いのか


岩間:それでは先ほどの補助情報も踏まえて、最後のトピック『マーケターはSEO対策を今後どう考えていければ良いのか』についても議論していきます。川勝さんはこのテーマについて、どのようにお考えですか。

川勝:先ほどお話があったように、検索結果画面が変わったとしてもユーザーの検索は無くならない、そして重要度は上がっていくと思われます。そこで、ユーザーの検索動機を考えて、突き詰めていくことがマーケターにとって重要なのではないかと考えます。

岩間:仰る通りですね。ただ、ユーザーのニーズを考えていくことはある種今までと同じ考え方だと思います。SGEが出てきたことによって、追加で考える必要性があることは何でしょうか。

川勝検索動機ごとに自分でも実際にSGEを触ってみることが大事なのではないでしょうか。自分たちが今まで多く流入を獲得できたキーワードをSGEで入れてみて、ユーザー目線でどのような検索結果が得られるか確認してみると、その結果を踏まえてユーザーの導線を想像し、コンテンツの改善点やとるべきアクションが見えてくるはずです。

岩間:まずは自分で検証してみることが大切なんですね。では、8つの動機の例として、どういったところを見ていけばいいのでしょうか。

β版ではありますが、実際のSGEのデモ画面を見て、意識すべき点を確認しましょう。まずは、『解決させて』の動機に当てはまる『iPhone15は買った方が良いですか』というクエリで検索してみます。この結果画面に対してどのように思われますか。

図:SGEデモ画面「iPhone15は買った方が良いですか」

川勝:前提条件がSGEに伝わっていない状態で検索結果が出ているため、自分だとしたらこの答えには満足しないと思います。判断するためには、他の記事や媒体から追加で情報収集する必要があるでしょう。

岩間:回答としては不十分なため、より下の検索も広げていく必要がありますよね。では試しに、『私はiPhone14を持っていますが、iPhone15は買った方が良いですか』という前提条件を加えたクエリで検索してみました。この場合だといかがでしょうか。

図:SGEデモ画面「私はiPhone14を持っていますが、iPhone15は買った方が良いですか」

川勝:先ほどより参考になる点は増えたものの、判断するうえで満足できる情報ではないため、依然として追加の情報収集は必要になるかと思います。

岩間:SGEによる情報だけでは不十分であるため、今までのSEOによる記事でユーザーの検索意図に答えられるコンテンツを用意することが重要そうですね。実際にSGEを見ていくと、ユーザーにとっては検索結果画面に出てくるSGEと従来の自然検索結果に期待するものは異なってくる点はあるのでしょうか。

川勝『これしかない』という答えに関してはSGEで簡単に知りたいのではないでしょうか。逆に、人によって判断が分かれる質問に関してはSGEの解答だけでは不完全な可能性が高いです。やはり、ユーザーの検索意図を満たせるコンテンツを網羅的に作ることが重要でしょう。

岩間:一問一答の質問に関してはSGEが有用であるものの、深い悩みに関してはまだまだ自然検索の重要度が高いということですね。まずは実際にSGEを触ってみようというお話がありましたが、キーワードの状況が把握できたらネクストステップとして、どのような点を意識すべきでしょうか。

川勝自分のサイトに訪れたユーザーが検索意図に対して満足してくれているのかを分析することは、引き続き必要でしょう。これができているかどうかで、SEOだけでなくCVRにも響いてきます。検索結果画面が変わることによって、SGEで満たせなかった検索意図に答えなければいけなくなることを考えると、ユーザーの満足度に何か指標をおいて継続的に確認することが必要になってくるでしょう。

岩間:SGEで応えきれなかった問題に今後応えていく必要があるため、求められた答えに導けるようなコンテンツが必要なんですね。どうしてもSEO対策をしていると、Googleのアルゴリズムを攻略しようという側面から考えてしまいがちですが、ユーザーファーストの視点を忘れないようにすることが大切ですね。

まとめ

岩間:最後に今後の対策について振り返ります。まず前提として、SEOに限らず ユーザーのニーズを理解することが最も大切です。そのうえで、 Google SGEの回答がどうか、ユーザーがどう感じるかを理解するために、ChatGPTやGoogle SGEに実際に触ってみることが必要というお話でした。 これらの対策を終えた後にも、サイトに来訪したユーザーの満足度をシビアに確認することも重要なようです。
本セッションは以上になります。川勝さん、本日はありがとうございました!

図:まとめ

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この記事のライター

大学では経済学部で主に会計学を学び、2024年に新卒でヴァリューズに入社しました。現在はデータプロモーション局にて、弊社プロモーション事業のフロントを担当しています。

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