「タイミ―」牽引のスキマバイト市場にメルカリが参入! 注目の新サービスはリーダーとなれるか

「タイミ―」牽引のスキマバイト市場にメルカリが参入! 注目の新サービスはリーダーとなれるか

近年、値上げラッシュや副業推奨、労働力不足も相まってスキマバイト市場が急速に拡大しています。また、2024年3月からフリマ市場最大手「メルカリ」がスキマバイトアプリ「メルカリ ハロ」を開始するなど、スキマバイト市場は一層活発になることが予想されます。そこで、今回は現在のスキマバイト市場を先導する「タイミ―」と、新規参入者である「メルカリ ハロ」それぞれについて、アプリの特徴やユーザー層を比較。今後のスキマバイト市場の動向について分析を行っていきます。


スキマバイト市場で注目を集める新サービス「メルカリ ハロ」

「メルカリ ハロ」とは、フリマ市場最大手「メルカリ」が2024年3月6日に開始した、新たなスキマバイトアプリです。「だれでも、すぐに、かんたんに」働けることをモットーに、これまでスキマバイトを行ったことのない「スポットワーク初心者」もターゲットにすることで、スキマバイト市場のマーケットリーダーを目指しています。

メルカリの「タイミーつぶし」超短期バイト新事業の全貌、乗り越えるべき「課題」

https://www.businessinsider.jp/post-283596

メルカリはスキマバイトサービス「メルカリ ハロ」を開始した。タイミーやLINEの後発となるサービスですが、既存のフリマ事業とのシナジー効果で他社との差別化をはかります。

「メルカリ ハロ」は、スキマバイト市場の現在のリーダーである「タイミ―」と、登録の手軽さで差別化を計っています。特に「メルカリ」ユーザーは、本人確認・国籍確認・顔写真の3つを登録するだけで即座に利用でき、「だれでも、すぐに、かんたんに」スキマバイトを行うことができるのです。

順調に規模を拡大中

2024年3月6日に新規参入した「メルカリ ハロ」ですが、市場での立ち位置はどのようになっているのでしょうか。

ここでは、現在の市場のリーダーである「タイミ―」とアプリユーザー数を比較し、「メルカリ ハロ」の勢いを見ていきます。なお分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用います。

下のグラフは、両アプリの月あたりのユーザー数の推移をDockpitで調査したものです。2024年3月時点では、「メルカリ ハロ」のユーザー数は約80万人と、市場トップである「タイミ―」の6分の1ほどです。

「タイミ―」、「メルカリ ハロ」利用者数の推移
集計期間:2022年4月~2024年3月
デバイス:スマートフォン

しかし、この80万人に到達するまでに、「タイミ―」は4年2ヶ月(※)かかったと思われることや、2024年3月時点では「メルカリ ハロ」の求人が1都3県のみであったことを考慮すると、リリース1ヶ月で到達した「メルカリ ハロ」がいかに勢いがあるかが分かります。

「タイミ―」という先駆者がいることや、副業推奨の潮流からスキマバイトが身近になったこと、先ほども触れたような登録の手軽さなどが、この勢いをもたらしているのかもしれません。

※「タイミ―」:2018年8月にサービス開始、2022年10月にDockpit上で1ヶ月のアプリユーザー数が80万人を突破

タイミーとのユーザー層の違いは?

ここからは、「メルカリ ハロ」と「タイミ―」両アプリのユーザ層を分析・比較し、利用者の特徴や違いを調べていきます。

「メルカリ」から「メルカリ ハロ」という流入構造

「タイミ―」との比較を行う前に、まず、「メルカリ」から「メルカリ ハロ」への流入構造を調べるため、両アプリの併用状況を見ていきます。下のグラフは、「メルカリ ハロ」ユーザーのうち、「メルカリ」アプリを使っているユーザーの割合を示したものです。ここから、「メルカリ ハロ」アプリ利用者のうち、集計期間内で「メルカリ」アプリを利用している割合は97.3%と、非常に高いことが分かりました。

「メルカリ ハロ」から見た「メルカリ」アプリ併用状況
集計期間:2023年4月~2024年3月
デバイス:スマートフォン

「メルカリ」ユーザーは手軽にスキマバイトを始められるという、「メルカリ ハロ」ならではの特徴が機能しているといえるのではないでしょうか。

スポットワーク初心者も多い

また、「タイミ―」、「メルカリ ハロ」両アプリの併用状況も見ていきます。下のグラフは、「メルカリ ハロ」利用者から見た、「タイミ―」アプリとの併用状況を表したものです。

「メルカリ ハロ」から見た、「タイミ―」アプリ併用状況
集計期間:2023年4月~2024年3月
デバイス:スマートフォン

スキマバイト市場のリーダーである「タイミ―」を利用していない「メルカリ ハロ」ユーザーは54.1%と、半数を超えていることが分かります。これまでスキマバイトを行ったことのない、いわゆる「スポットワーク初心者」もターゲットとする「メルカリ ハロ」の戦略が上手く機能しているのかもしれません。

40代から50代の利用者が多い

次に、性年代の観点から両アプリのユーザー層を見ていきます。下のグラフは、「タイミ―」、「メルカリ ハロ」、「メルカリ」アプリ利用者の年代割合を示したものです。

「タイミ―」、「メルカリ ハロ」、「メルカリ」利用者の年代割合
集計期間:2023年4月~2024年3月
デバイス:スマートフォン

「タイミ―」ユーザーは20代から40代の割合がネット利用者全体と比べて高くなっていることが分かります。

一方で、「メルカリ ハロ」のユーザーは、「メルカリ」や「タイミー」と比べて40代から50代の割合が高くなっていました。「メルカリ ハロ」の出現は、「タイミ―」などですでにスキマバイトを経験していた人よりも、「メルカリ」ユーザーを中心とする、これまでスキマバイトの利用割合が低かった40代から50代の関心を集めたのではないでしょうか。

同様に、男女比も見ていきます。下のグラフから、「タイミ―」、「メルカリ ハロ」どちらのアプリにおいても女性の割合が高いことが分かります。

「タイミ―」、「メルカリ ハロ」、「メルカリ」利用者の男女比
集計期間:2023年4月~2024年3月
デバイス:スマートフォン

「タイミ―」については、先ほども触れた、主婦層の利用割合の高さが男女比にも反映されていると考えてよいでしょう。また、「メルカリ ハロ」は「タイミ―」よりも男性の割合が高くなっています。ここでは「メルカリ ハロ」ユーザーのほとんどが「メルカリ」ユーザーであることが影響し、「メルカリ」の男女比と近い傾向を示しているのかもしれません。

スキマバイトとフリマアプリの親和性が高い

また、「タイミ―」、「メルカリ ハロ」両アプリの関心アプリから、ユーザーの特徴についてより詳しく分析していきます。下の2つの表は、「タイミ―」、「メルカリ ハロ」両アプリのユーザーが関心を持っているアプリについて、リーチ差(※)順に並べたものです。全国のアプリユーザーが利用する割合よりも、当該アプリ利用者が利用する割合が高かったアプリを可視化することができます。

※リーチ差= リーチ率 ー 一般リーチ率
※リーチ率:指定した対象アプリを利用していたユーザーのうち、当該アプリを利用していたユーザーの割合
※一般リーチ率:全国のアプリ利用者のうち、当該アプリを利用していたユーザーの割合

まずは、「タイミ―」の関心アプリから見ていきましょう。

「タイミ―」アプリ利用者の関心アプリ(リーチ差順)
集計期間:2023年4月~2024年3月
デバイス:スマートフォン

「シェアフル」、「バイトル」、「タウンワーク」など、スキマバイト・アルバイトを探すアプリが上位にランクインしていることが分かります。また、「メルカリ」も上位にランクインしています。スキマバイトとフリマアプリは短時間でお小遣いを稼ぐという点で共通しているため、親和性が高いのかもしれませんね。

続いて、「メルカリ ハロ」の関心アプリです。

「メルカリ ハロ」アプリ利用者の関心アプリ(リーチ差順)
集計期間:2023年4月~2024年3月
デバイス:スマートフォン

先ほどとは異なり「メルカリ」、「Yahoo!フリマ(旧PayPayフリマ)」、「楽天ラクマ」などのフリマアプリが最上位にランクインしています。一方で、「タイミ―」、「シェアフル」も上位にランクインしています。こちらの点からもスキマバイトとフリマアプリの親和性の高さが伺えます。

しかしながら、「タイミ―」ではスキマバイトと・アルバイト系のアプリ、「メルカリ ハロ」ではフリマアプリというように、両アプリにおいて、最上位にランクインしているアプリは逆転しています。

「メルカリ ハロ」ユーザーのほとんどは「メルカリ」ユーザーであり、あまり「スキマバイト」に親しみがなかったと予想される40代〜50代の割合が高いようでした。このことを踏まえると、もともとはフリマアプリでお小遣い稼ぎをしていたものの、「メルカリ ハロ」がサービス開始したことで、「スキマバイト」に興味を持った人も一定数いるのかもしれません。

今後のスキマバイト市場はどうなる?

ここまで見てきた通り、「メルカリ ハロ」はリリース開始から、戦略通り順調にユーザーを獲得していました。この勢いのまま現状のリーダーである「タイミ―」を追い抜き、スキマバイト市場の新たなリーダーとなれるのでしょうか。

「メルカリ ハロ」はリリース直後ということもあってか、大きなアップデートがいくつも予定されています。直近では全国展開が実装され、ユーザーの爆発的な増加が見込まれます。また、全国展開に合わせて、一度働いたお店や次に働きたいお店に求人が出たら即座に応募できるフォロー機能も追加され、より簡単に働くことができるようになりました。さらに、「メルペイ」によるデジタル給与支払いや「メルカリ ハロ」で働いた先で使える「まかないクーポン」などの施策も、時期は未定ですが予定されています。

一方で、「タイミ―」も2月に新規サービス「タイミ―キャリアプラス」を開始しました。

「タイミーキャリアプラス」では、人材を募集したい企業が、過去のタイミーでの就業実績を基に優れた人材と思われる利用者に対して、正社員の求人募集を送ることができます。これにより、スキマバイトは単に「スキマ時間に働くこと」ではなく、ある種の職業訓練のような位置づけになっていく可能性もあります。

「メルカリ ハロ」は現在のところ利便性の向上に、「タイミ―」はスキマバイトに新たな価値を付与することに……と、別方向に差別化を行っています。今後は同じ「スキマバイトアプリ」という括りでありながらも、ユーザーや使われ方は全く異なったものになっていくかもしれません。

いずれにせよ、「メルカリ ハロ」や「タイミ―」がアップデートを行っていくことでスキマバイト市場がより活発になっていくのは間違いありません。両者の今後に注目が高まります。

まとめ

本記事ではスキマバイト市場新規参入の「メルカリ ハロ」について、市場のリーダーである「タイミ―」と比較し、アプリユーザーの違い、今後の動向を調べてきました。分析をまとめます。

・「メルカリ ハロ」はフリマ市場最大手「メルカリ」が運営する、「だれでも、すぐに、かんたんに」働くことができるスキマバイトアプリである。
・「スポットワーク初心者」もターゲットにしているからか、同じスキマバイトアプリであっても「メルカリ ハロ」のユーザー層は「タイミ―」と少し異なっている
・「メルカリ ハロ」は、リリース直後から勢いが強く、今後のアップデート次第ではさらなる成長が期待される。
・「タイミ―」も着実にアップデートしており、「メルカリ ハロ」の参入と合わせて、スキマバイト市場はより拡大していくと思われる。

「メルカリ ハロ」のような勢いを持った新規参入者が現れることや、「タイミ―」のような市場のリーダーが現状に満足せずアップデートを繰り返すことは市場全体にとって大きなメリットとなります。市場が拡大していけば、値上げラッシュや労働力不足などの近年の社会問題にも対処できるかもしれません。今後もスキマバイト市場の動向は要チェックでしょう。

▼今回の分析にはWeb行動ログ調査ツール『Dockpit』を使用しています。『Dockpit』では毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザでキーワード分析やトレンド調査を行えます。無料版もありますので、興味のある方は下記よりぜひご登録ください。

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この記事のライター

2025年4月に入社予定の大学4年生です。大学では、経済学部で計量経済学を学んでいます。

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