資産1億円越え「富裕層の日常」をデータで覗き見。SNSじゃない"本当の情報源"とは

資産1億円越え「富裕層の日常」をデータで覗き見。SNSじゃない"本当の情報源"とは

資産1億円以上、いわゆる富裕層のニーズはどういったものなのでしょうか。データで日常の行動や意識・価値観を分析すると、意外にもポイ活に励み、スポーツに勤しむ姿が。その根底にあるのは「向上心」と「社会的地位への意識」であることも明らかになっています。この記事では、富裕層マーケティング成功のヒントを解説します。


資産1億円以上の人の割合は?

株式会社野村総合研究所の定義によると、資産1億円以上の世帯を「富裕層」、なかでも資産5億円以上の世帯を「超富裕層」と呼びます。

2025年公表の株式会社野村総合研究所の推計によると、富裕層と超富裕層の合計の世帯数は2023年時点で165万3,000世帯となっています。2023年の厚生労働省による国民生活基礎調査によれば全国の世帯総数は5,445万2,000世帯です。

よって、日本の資産1億円以上の世帯の割合は約3%ということになります。

出典:野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計 | ニュースリリース | 野村総合研究所(NRI)

本記事では、資産1億円以上の人、つまり「富裕層」と「超富裕層」を対象としています。

資産1億円以上の人の日常は?

資産1億円以上の人はどのような日常を送っているのでしょうか。Web行動データとアンケートデータを用いた分析を行える、株式会社ヴァリューズの分析ツール「Perscope※」の、カスタムセグメント機能を用います。

今回の分析対象者の性別・年代は下記の通りです。

※「Perscope」はモニターより明確な許諾を得た上でデータを取得しています

資産1億円以上の人の性別(左)年代(右)

図:資産1億円以上の人の性別(左)年代(右)
期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:パソコン・スマートフォン

男性が8割程度、年齢としては60代がボリュームゾーンとなっています。

金融・ポイ活サイトをチェック

資産1億円以上の人が閲覧しているサイトのランキングを見てみましょう。上位には証券、不動産、金融といったカテゴリーのサイトが並んでいます。

資産1億円以上の人のサイトランキング

図:資産1億円以上の人のサイトランキング
期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:パソコン・スマートフォン

資産1億円以上の人の18.6%が訪れる「JPリターンズ」は、マンション投資に関するサイトでした。

次に、アプリランキングを見てみましょう。複数のポイ活アプリが見られます。

資産1億円以上の人のアプリランキング

図:資産1億円以上の人のアプリランキング
期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:パソコン・スマートフォン

1位の「Vポイント×Shufoo!」は、チラシを閲覧することでVポイントを入手できるというアプリです。

資産を殖やすという観点で、イメージしやすい投資はもちろんのこと、ポイ活も積極的に行っていることがうかがえます。金額の大小に関わらず、丁寧に貯めていく志向があるといえるでしょう。

旅行に積極的

資産1億円以上の人はどのようなことに興味関心を持っているのでしょうか。「マネー・投資」「経済」といった資産1億円以上ならではの金融系に加え、「国内旅行」の特徴値(※)も高いです。

※特徴値:抽出条件に当てはまるユーザーの回答率ーネット人口全体の回答率で算出した指標。この値が高いほど、該当ユーザーの特徴を示すジャンルに相当する。

資産1億円以上の人の興味関心

図:資産1億円以上の人の興味関心
期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:パソコン・スマートフォン

次に、資産1億円以上の人はどのようなことにお金を使っているのか見てみましょう。1人あたりの1ヶ月平均支出をネット人口全体と比較したデータです。

ネット人口全体よりも1万円以上高いのは以下の5項目です。
・国内旅行
・食費(外食を除く)
・外食
・海外旅行
・服・靴・かばん

資産1億円以上の人の1人あたりの1ヶ月平均支出

図:資産1億円以上の人の1人あたりの1ヶ月平均支出
期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:パソコン・スマートフォン

質の高い旅行や食事に加え、ブランド物(服、靴、かばんなど)の購入に多くお金をかけているのかもしれません。

平日も休日も習い事

資産1億円以上の人の過ごし方を見てみましょう。平日も休日も習い事に励んでいるようです。一体どのような習い事をしているのでしょうか。

資産1億円以上の人の平日の過ごし方(左)休日の過ごし方(右)

図:資産1億円以上の人の平日の過ごし方(左)休日の過ごし方(右)
期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:パソコン・スマートフォン

余暇の過ごし方として「スポーツ」の特徴値が高くなっています。よって、資産1億円の人の習い事はスポーツ教室などが考えられます。

資産1億円以上の人の余暇の過ごし方

図:資産1億円以上の人の余暇の過ごし方
期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:パソコン・スマートフォン

フォーブスジャパンの日本長者番付2025で1位の柳井正氏と2位の孫正義氏の共通の趣味がゴルフであることからも、資産を多く持つ人がスポーツを楽しむ傾向がうかがえます

出典:孫正義氏と柳井正氏が極めた「きれいなゴルフ」で築く超一流の人脈 | 週刊ダイヤモンド ここが見どころ | ダイヤモンド・オンライン

資産1億円以上の人の意識は?

資産1億円以上の人はどのような意識を持って生活しているのでしょうか。購買行動のもととなる心の中をPerscopeで探っていきます。

前向きな価値観

まず、資産1億円以上の人のありたい自分像を見てみましょう。

「世間の人たちよりもワンランク上の生活をしたい」といった、社会的地位を意識する項目が1位になっています。前述のように、旅行や食事、ブランド物に多くお金を使うのは「世間の人たちよりもワンランク上の生活をしたい」といった気持ちの表れかもしれません。

また、「日々新しいことに挑戦している生活をしたい」という項目も特徴値が高く、挑戦心が読み取れます。挑戦心があるからこそ資産1億円にもなる収入を得られたのかもしれません。

資産1億円以上の人のありたい自分像

図:資産1億円以上の人のありたい自分像
期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:パソコン・スマートフォン

次に、資産1億円以上の人の感じていたい気持ちを見てみましょう。

1位は「将来に強い期待と熱意を抱いている」という項目です。前向きな気持ちで将来を見据えていることがわかります。

2位は「社会的に高い地位を得たい」という項目、3位は「いわゆるブランド品を持つことにステイタスや憧れを感じる」という項目であり、再び社会的地位の意識が見受けられます。

資産1億円以上の人の感じていたい気持ち

図:資産1億円以上の人の感じていたい気持ち
期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:パソコン・スマートフォン

資産1億円以上の人の価値観として、社会的地位の意識や前向きな姿勢が特徴的であることがうかがえます。

新聞・雑誌を用いた情報収集

購買行動において、資産1億円以上の人が情報収集に用いる媒体の上位は「新聞」「雑誌」です。

資産1億円以上の人の情報収集媒体

図:資産1億円以上の人の情報収集媒体
期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:パソコン・スマートフォン

反対に、ネット人口全体と比べて「SNS」「口コミ」での情報収集はあまり行わないようです。資産1億円以上の人の年齢層が高いことが原因であると考えられます。

資産1億円以上の人を対象としたプロモーションでは、新聞や雑誌を活用すると効果的かもしれません

まとめ

今回は、資産1億円以上の人のニーズを探るべく、日常と意識を分析しました。筆者は、資産1億円以上の人の日常や購買行動の根底には、「向上心」と「社会的地位の意識」があると考えます

今回の分析で明らかになったことを、「向上心」から来るものと「社会的地位の意識」から来るものに分けて以下にまとめます。

向上心
・平日も休日も習い事に励んでいる
・ありたい自分像「日々新しいことに挑戦している生活をしたい」
・感じていたい気持ち「将来に強い期待と熱意を抱いている」

社会的地位の意識
・旅行・食事・ブランド品に、ネット人口全体よりも1ヶ月あたり平均1万円以上多くのお金をかける
・ありたい自分像「世間の人たちよりもワンランク上の生活をしたい」
・感じていたい気持ち「社会的に高い地位を得たい」
・感じていたい気持ち「いわゆるブランド品を持つことにステイタスや憧れを感じる」

富裕層マーケティングにおいては、「向上心」と「社会的地位の意識」から生まれるニーズを満たす内容で、新聞・雑誌を用いたプロモーションを行うと効果的かもしれません。

▼今回の分析には生活者理解のためのリサーチエンジン『Perscope』を使用しています。『Perscope』では国内最大規模のWeb行動×アンケートデータを活用し、誰でも いつでも 簡単に"生活者起点のマーケティング活動"を実現することができます。無料デモもありますので、興味のある方は下記よりぜひお申し込みください。

Perscope 詳細はこちら

※記事の一部修正とお詫び(2025年10月14日)
記事内の特徴値の説明に一部誤りがございましたので、以下の通り修正を行っております。

▼修正前
※特徴値:抽出条件に当てはまるユーザーの中でよく検索されており、かつ一般ユーザー全体ではあまり検索されていないキーワードが高くなるような指標。
▼修正後
※特徴値:抽出条件に当てはまるユーザーの回答率ーネット人口全体の回答率で算出した指標。この値が高いほど、該当ユーザーの特徴を示すジャンルに相当する。

この記事のライター

2026年4月に入社予定の大学4年生です。法学部法律学科で、主に環境法について学んでいます。

趣味は旅行と日本舞踊です。

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