早速、話題になったドラマの傾向を調査していきましょう。
なお、こちらの調査は全国のモニター会員(15歳以上の男女)へ、2025年1月~3月に放送されたテレビドラマ(以下前期ドラマ)と、2025年4月から放送予定のテレビドラマ(以下今期ドラマ)の、認知度と視聴意向について実施したアンケートの結果をもとに、各ランキングを作成しています。
学園ドラマの「御上先生」や消防局が舞台の「119エマージェンシーコール」が全話視聴上位に
初めに、前期ドラマの認知度と視聴実態を見てみましょう。

表1 前期ドラマの認知度と視聴実態
サンプル数は46,647
タイトル認知・1話以上視聴共に1位、全話視聴3位は、テレビ朝日系ドラマシリーズ「家政夫のミタゾノ」、タイトル認知・1話以上視聴共に2位、全話視聴5位は、テレビ朝日系刑事ドラマシリーズ「相棒 season23」でした。「家政夫のミタゾノ」「相棒 season23」共に、全話視聴の順位が1話以上視聴よりも下がっており、1話完結のドラマ構成が影響していることが想定されます。
タイトル認知度3位、全話視聴1位の、TBS系日曜劇場「御上先生」は、文科省官僚の高校教師が主役の学園ドラマで、令和の高校生たちと共に教育のあるべき真の姿を描いています。演劇界で受賞経歴のある詩森ろば氏が脚本を手掛け、人気ドラマの制作に参加してきた飯田和孝氏がプロデューサーであることも、視聴実態を高める要因の一つと言えそうです。
タイトル認知度4位、全話視聴2位は、フジテレビ系“月9”ドラマ「119エマージェンシーコール」でした。消防局の通信指令センターを舞台に指令管制員たちの現実を描く完全オリジナルストーリーで、横浜市消防局が全面的に協力している撮影セットであることから、多くのユーザーがリアリティーあふれる世界感に魅了されていることが想定されます。
全話視聴4位は、TBS系金曜ドラマ「クジャクのダンス、誰が見た?」、全話視聴6位は、TBS系火曜ドラマ「まどか26歳、研修医やってます!」でした。
全話視聴7位の日本テレビ系日曜ドラマ「ホットスポット」は、タイトル認知度12位と比較的低く、放送を重ねるごとに認知度を高めていることが想定されます。お笑いタレントのバカリズム氏が脚本を手掛けており、富士山麓の小さな田舎町(富士浅田町)を舞台に地球外生命体が登場するという、独自性あふれるヒューマンコメディーです。公式サイトでは、富士浅田町の地図を使ってロケ地とエピソードを紹介しており、ドラマを起点に地域活性化に繋げる取り組みを行っていることが分かりました。

ホットスポット公式サイト フォトスポット
参照元:https://www.ntv.co.jp/hotspot/photospot/
続いて、ドラマタイトルを認知しているユーザーの属性を調べてみます。

表2 タイトルを知っているドラマ×ユーザー属性 年代別
サンプル数は46,647
左から、タイトルを知っているユーザーの割合が高かった作品順
上の表は、各年代のうち、それぞれの作品を認知している人がどれくらいいるか、その割合を示したものです。
全体的に若年層はドラマタイトルの認知度が低い一方、50代以上はドラマに対する興味関心が高く、「家政夫のミタゾノ」「相棒 Season23」は60歳以上の注目度が高いことが分かりました。
次に、前期ドラマの満足度を調べてみましょう。
テレビ放送のリアルタイム視聴が多い「相棒 season23」「家政夫のミタゾノ」は若年層から高評価

表3 前期ドラマの中でもっとも満足した作品
サンプル数は25,654
満足度1位は「相棒 season23」、2位は「家政夫のミタゾノ」でした。2023年10月期も「相棒 season22」が満足度1位「家政夫のミタゾノ」は満足度2位だったことから、過去シリーズを知る多くのファンの期待に応えるドラマであったことがうかがえます。
満足度3位は「御上先生」、4位は「119エマージェンシーコール」、そして5位は表1で全話視聴7位の「ホットスポット」でした。
それでは、各ドラマを満足したと答えたユーザーを年代別に見てみましょう。

表4 もっとも満足したドラマ(性年代別)
左から、満足したと感じるユーザーの割合が高かった作品順
サンプル数は25,654
「相棒 season23」は、他のドラマと比べて30代と60歳以上の男性が満足したと感じる割合が高く、「家政夫のミタゾノ」は、10代の評価がもっとも高いことが分かりました。長年続いているドラマシリーズは、従来のファンに支持されているだけでなく、若年層からも高く評価されていることが分かりました。
「御上先生」は幅広い年代の男性と50代以上の女性の評価が比較的高く、「119エマージェンシーコール」は幅広い年代の女性の満足度が比較的高く、「ホットスポット」は50代の男性と40代~50代の女性に評価されていることが分かりました。
続いて、評価の高いドラマの視聴方法について調べてみます。

表5 もっとも満足したドラマ(1位~5位)の視聴方法
サンプル数は25,654
表4で若年層から評価されている「相棒 season23」「家政夫のミタゾノ」は、他のドラマと比べてテレビ放送のリアルタイム視聴が多かったことが分かりました。
「御上先生」はテレビ放送後の録画視聴が比較的多く、「ホットスポット」は、配信サービスの見逃し配信視聴(無料)が多かったことが見えてきました。40代~50代の男女は、リアルタイム視聴にこだわらず、好きな時間にドラマを視聴しており、仕事や育児などライフスタイルがドラマの視聴方法に、大きく影響していることが想定されます。
社会問題に触れるテーマや日常を感じるストーリーがドラマの満足度を高める
続いて、表3のもっとも満足したドラマの満足理由を探ってみます。

表6 もっとも満足したドラマ(1位~5位)の満足理由
サンプル数は23,275
「相棒 season23」と「家政夫のミタゾノ」は、出演者が個性的だったことに加え、家族・知人も視聴していることが評価を高める要因であることが分かりました。「家政夫のミタゾノ」について詳しく調べてみると2025年5月から舞台公演を予定しており、今後ドラマシリーズの続編にも期待です。
「119エマージェンシーコール」は、泣けるストーリーや共感し励まされるストーリーを評価するユーザーが多いことが分かりました。
「御上先生」は、今までにない共感できるストーリーに加え、出演者の演技力を評価する声が多いことが分かりました。具体的な満足理由を詳しく調べてみると、教育制度そのものに物申す内容が今までになく新鮮だったことや、今の若者の悩み、社会問題を浮き彫りにして、とても考えさせられるドラマだったことから、社会問題に触れる斬新なテーマが高評価の要因になっていることが分かりました。

表7 「御上先生」をもっとも満足したドラマと回答したユーザーの具体的な理由(一部抜粋)
サンプル数は46,647
「ホットスポット」は、今までにない笑えるストーリーであること、脚本家や演出家が好きだったことが満足度を高ており、具体的な満足理由を調べてみると、どこにでもありそうな日常の話と宇宙人という非日常的な設定が面白い点や、実際には有り得ない話だけど俳優さんの演技がリアルで、本当にありそうで面白かった点など、斬新なシチュエーションの中で日常を感じるストーリーを評価していることが明らかになりました。

表8 「ホットスポット」をもっとも満足したドラマと回答したユーザーの具体的な理由(一部抜粋)
サンプル数は46,647
これらの結果から、今までにないドラマ独自のテーマや日常を感じるストーリーは、話題を集めドラマの評価を高める重要な要素になっていると言えそうです。
人気ドラマシリーズ「続・続・最後から二番目の恋」や小説が原作の「天久鷹央の推理カルテ」の期待値高まる
2025年4月期のドラマのタイトル認知や期待値の調査結果を見てみましょう。

表9 今期ドラマの認知度と視聴意向
サンプル数は46,647
タイトル認知度・期待値共に1位は、テレビ朝日系ドラマシリーズ「特捜9 final season」でした。2023年4月期の「特捜9 season6」は満足度5位、2024年4月期の「特捜9 season7」は満足度2位と、近年多くのファンに親しまれており、今期は2018年から続くドラマシリーズの「final season」になることから、注目度の高さがうかがえます。
タイトル認知度・期待値共に2位は、TBS系日曜劇場「キャスター」でした。
タイトル認知度・期待値共に3位の、フジテレビ系“月9ドラマ”「続・続・最後から二番目の恋」は、2012年に第1期の連続ドラマ「最後から二番目の恋」放送後、同年11月にスペシャル版、2014年に第2期の連続ドラマ「続・最後から二番目の恋」と続き、今期はその11年後を描く第3期になるそう。第1期から同じ俳優陣が出演しており、各俳優の実年齢にあわせて役柄が構成されている点も特徴的です。2025年3月から関東ローカル局・TVerにて過去のドラマシリーズを再放送しており、最新話の期待値を効果的に高めていると言えそうです。
タイトル認知度・期待値共4位は、テレビ朝日系火曜ドラマ「天久鷹央の推理カルテ」でした。原作は、幅広い世代から支持を集める知念実希人氏のミステリー小説であることから、原作の話題性を感じます。
タイトル認知度5位、期待値7位は、フジテレビ系火曜ドラマ「人事の人見」でした。
最後に、もっとも認知度の高いドラマはどのようなきっかけでドラマ知ったのでしょうか。
もっとも認知度の高いドラマ(1位~5位)の認知媒体を調べてみます。

表10 もっとも認知度の高いドラマ(1位~5位)の認知媒体
サンプル数は12,555
「特捜9 final season」は他のドラマと比較して、テレビの番組表や実際の放送からドラマを知るユーザーが多いことが分かりました。
「キャスター」は、テレビCMが認知媒体としてもっとも多く、次いでテレビの別番組での告知からドラマを知るユーザーが多かったことが分かりました。詳しく調べてみると、13歳からTikTokで弾き語り投稿を開始し2023年9月にデビューしたシンガーソングライターのtuki.氏の新曲が、ドラマの主題歌になっており、楽曲に関する告知媒体もドラマの認知度に影響していると言えそうです。
「続・続・最後から二番目の恋」は、過去のドラマシリーズを配信しているTVerの告知よりも、ニュースサイトが認知媒体としてもっとも多く、過去シリーズを知る根強いファンの存在がうかがえます。
「天久鷹央の推理カルテ」は、XやYouTube・インターネット広告を見てドラマを知るユーザーが比較的多く、若年層を意識した広告施策を行っている可能性がありそうです。
「人事の人見」は、テレビの別番組での告知に次いで、InstagramやLINEからドラマを知るユーザーも比較的多いことが分かりました。詳しく調べてみると、2025年1月に放送した同局のバラエティー番組の企画内で主演俳優を発表しており、若年層が注目する主演俳優であることが想定されます。
これらの調査から、期待値の高いドラマは、ターゲットの特徴やニーズを捉え効果的な認知施策を行っていると言えそうです。
まとめ
前期ドラマは、若年層に話題の長編ドラマシリーズ「相棒 season23」「家政夫のミタゾノ」や、斬新なストーリーが高評価の「御上先生」「ホットスポット」が印象的でした。独自性あふれるテーマのドラマが、近年評価を高めていることが明らかになりました。そして、今期の期待値の高いドラマは、ターゲットニーズを捉え効果的な認知施策を行っていることが分かりました。
動画配信サービスが普及する中で、テレビドラマの視聴実態を高めるには、ドラマの独自性と共にターゲットニーズを捉えた認知施策が重要と言えそうです。
【データ集計定義】
調査対象者:株式会社ヴァリューズのモニター 全国の15歳以上の男女
調査対象ドラマ:フジテレビ・テレビ朝日・TBS・日本テレビの4局で、おおよそ21時開始枠または22時開始枠に放送された/される予定のドラマ
調査期間:2025/3/25~2025/4/1
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
回収サンプル数:46,647s ※ローデータの数値に合わせる
ウェイトバック集計:当調査では性年代別人口とネット利用率に合わせたウェイトバック集計を行っている。掲載している数値はすべてウェイトバック後の結果となっている。
制作会社でUIUXデザインやWebサイトの施策立案を経験後、ヴァリューズにジョイン。セミナーのサポートやTVドラマランキングの執筆などを担当しています。