こんにちは、マナミナ編集部です。早速、話題になったドラマの傾向を調査していきましょう。
なお、こちらの調査は全国のモニター会員(15歳以上の男女)へ、2024年4月~6月に放送されたテレビドラマ(以下前期ドラマ)と、2024年7月から放送予定のテレビドラマ(以下今期ドラマ)の、認知度と視聴意向について実施したアンケートの結果をもとに、各ランキングを作成しています。
50代が注目する「アンチヒーロー」や「アンメット ある脳外科医の日記」が全話視聴上位に
初めに、前期ドラマの認知度と視聴実態を見てみましょう。
表1 前期ドラマの認知度と視聴実態
サンプル数は48,589
タイトル認知度1位、全話視聴2位は、日本テレビ系土曜ドラマ「花咲舞が黙ってない」でした。小説家池井戸潤氏の経済小説「不祥事」「銀行総務特命」などが原作のドラマシリーズで、第1弾が2014年に放送した後テレビドラマと同名の漫画・小説が発売されていることから、多くのファンが視聴実態を高めていることが想定されます。
タイトル認知度2位のテレビ朝日系ドラマシリーズ「特捜9 season7」は、前回調査でも期待値が最も高かった一方で、全話視聴は10位と比較的低かったことが分かりました。
タイトル認知度3位、全話視聴1位は、TBS系日曜劇場「アンチヒーロー」でした。2023年7月期に話題となった「VIVANT」の脚本家4名がストーリーを手掛けており、放送直前まで内容を明らかにしていなかったそう。公式サイトを詳しく調べてみると認知施策を複数展開していたことが分かりました。具体的には、初回放送前後にドラマタイトルや主人公の特徴に沿って、食品企業のとコラボ商品を全国で発売するO2O施策を実施しており、スーパーやドラッグストアで販売する商品から、ドラマを知るきっかけを作っていることが分かりました。
ほかにも、出演者をイラスト化したLINEスタンプを期間限定で発売するなど、「VIVANT」同様メディアを横断した広告戦略が、視聴実態を高める要因になったことが想定されます。
テレビ朝日開局65周年記念木曜ドラマ「Believe -君にかける橋-」は、タイトル認知度9位と比較的低い一方で、全話視聴は3位でした。
タイトル認知度5位、全話視聴4位は、フジテレビ系月曜ドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」でした。元脳外科医の子鹿ゆずる氏が原作を手掛けており、複雑な脳神経外科の世界とそこに生きる人々の姿がリアリティをもって描かれている点も特徴的。2021年から講談社の青年漫画誌「モーニング」に連載しているため、原作に興味を持つユーザーが視聴実態に大きく影響していると言えそうです。
続いて、ドラマタイトルを認知しているユーザーの属性を調べてみます。
表2 タイトルを知っているドラマ×ユーザー属性 年代別
サンプル数は48,589
左から、タイトルを知っているユーザーの割合が高かった作品順
上の表は、各年代のうち、それぞれの作品を認知している人がどれくらいいるか、その割合を示したものです。
「花咲舞が黙ってない」「特捜9 season7」「Believe -君にかける橋-」は、50代以上の割合が高いことが分かりました。「アンチヒーロー」「アンメット ある脳外科医の日記」「ブルーモーメント」「イップス」は50代の割合の高さが目立ちます。
次に、前期ドラマの満足度を調べてみましょう。
多くの視聴者が出演者のナチュラルな演技や先の読めないストーリーを高評価
表3 前期ドラマの中で最も満足した作品
サンプル数は24,010
満足度1位は「アンチヒーロー」でした。2018年から続く刑事ドラマ「特捜9 season7」は満足度2位でした。表1で全話視聴10位と比較的低かった一方で、1話完結形式のストーリー構成であることから各話の満足度が高いことが考えられます。満足度4位は「アンメット ある脳外科医の日記」、満足度5位は「Believe -君にかける橋-」でした。
続いて、各ドラマを満足したと答えたユーザーを年代別に見てみましょう。
表4 最も満足したドラマ(性年代別)
サンプル数は24,010
左から、満足したと感じるユーザーの割合が高かった作品順
「アンチヒーロー」は、50代男性の割合がもっとも高いことが分かりました。「特捜9 season7」は、60代以上の男女に加え10代男性の割合が比較的高いことが見えてきました。
「アンメット ある脳外科医の日記」は、原作を連載している青年漫画誌のターゲット層である40代~50代男性よりも30代以上の女性の方が、ドラマの満足度が高いことが分かりました。原作を知らないユーザーも高く評価していることが想定されます。
満足度7位のTBS系火曜ドラマ「くるり~誰が私と恋をした?~」と満足度12位の日本テレビ系「ACMA:GAME アクマゲーム」は、若年層からの評価が高いことが分かりました。
ではドラマのどんな点に満足しているのでしょうか。その理由を探ってみます。
表5 最も満足したドラマ(1位~5位)の満足理由
サンプル数は21,474
満足度1位の「アンチヒーロー」は、ハラハラするストーリーや今までにないストーリーに加え、出演者の演技力の高さに魅力を感じるユーザーの割合が多いことが分かりました。具体的な満足理由を深堀調査してみると、いくつもの伏線があり先の読めないストーリーを評価するユーザーが多いことが分かりました。
表6 「アンチヒーロー」を最も満足したドラマと回答したユーザーの具体的な理由(一部抜粋)
サンプル数は48,589
表4で10代男性と60代以上の男性からの評価が高かった「特捜9 season7」は、家族や知人も視聴していることを満足理由としているユーザーが比較的多いことが見えてきました。具体的な満足理由を調べてみると、年代に関わらず満足理由は共通しており、事件の展開・解決が個性的で面白く視聴しながら犯人を推理して楽しむユーザーが多いことが分かりました。
表7 「特捜9 season7」を最も満足したドラマと回答したユーザーの具体的な理由(一部抜粋)
サンプル数は48,589
表4で30代以上の女性からの評価が高かった「アンメット ある脳外科医の日記」は、泣けるストーリーや今までにないストーリーであったこと、出演者の演技力の高さを評価していることが分かりました。どのような点に満足したのか具体的な満足理由を調べてみると、手術シーンのリアル感や出演者の自然な演技に魅了されるユーザーが多いことが分かりました。
表8 「アンメット ある脳外科医の日記」を最も満足したドラマと回答したユーザーの具体的な理由(一部抜粋)
サンプル数は48,589
最後に、今期ドラマの認知度と視聴意向を見てみましょう。
「科捜研の女 season24」や「ブラックペアン シーズン2」などドラマシリーズの関心高まる
表9 今期ドラマの認知度と視聴意向
サンプル数は48,588
タイトル認知度・期待値共に1位は、テレビ朝日系サスペンスドラマシリーズ「科捜研の女 season24」でした。25年前から断続的に放送されており、期待値の高さから根強いファンの存在を感じます。
タイトル認知度・期待値共に2位は、TBS系日曜劇場「ブラックペアン シーズン2」でした。原作は2007年に講談社から発売された長編小説で2018年4月にドラマ化しており、今期は6年後の続編の世界を描くそう。「科捜研の女 season24」と同様に、多くのファンが期待を高めていることが想定されます。
期待値3位は、フジテレビ系月曜ドラマ「海のはじまり」でした。2022年10月期に話題となったドラマ「silent」の脚本家が手掛けている点が期待値を高める要因の1つになっていることが考えられます。
まとめ
前期は、斬新なストーリーや出演者の自然な演技力が評価を高める傾向がありました。
50代男性の満足度が高かった「アンチヒーロー」は、出演者の高い演技力と人気脚本家による複雑なストーリーをもとに、メディアを横断した広告施策をドラマの進行に合わせて実施しており、2023年7月期に話題となった「VIVANT」同様、マーケティングを重視することで他のドラマとの差別化を図り視聴実態・満足度共に高めていることが分かりました。
10代と60代以上の男性が高く評価した「特捜9 season9」は、ドラマシリーズの世界観を活かした斬新なストーリーに対する評価が高く、「アンメット ある脳外科医の日記」は、出演者のリアリティあふれる医療シーンや主人公の自然体な演技力、先の読めないストーリーが、女性視聴者から評価を高める要因になっていることが見えてきました。
今期ドラマの視聴実態・満足度にはどのような傾向が見えてくるのでしょうか。引き続き調査を進め、視聴者として考察していきたいと思います。
【データ集計定義】
調査対象者:株式会社ヴァリューズのモニター 全国の15歳以上の男女
調査対象ドラマ:フジテレビ・テレビ朝日・TBS・日本テレビの4局で、おおよそ21時開始枠または22時開始枠に放送された/される予定のドラマ
調査期間:2024/6/25~2024/7/2
調査デバイス:スマートフォンおよびPC
回収サンプル数:48,589ss ※ローデータの数値に合わせる
ウェイトバック集計:当調査では性年代別人口とネット利用率に合わせたウェイトバック集計を行っている。掲載している数値はすべてウェイトバック後の結果となっている。
制作会社でUIUXデザインやWebサイトの施策立案を経験後、ヴァリューズにジョイン。セミナーのサポートやTVドラマランキングの執筆などを担当しています。