低アルコールの代表「ほろよい」。「華よい」との違いは?ブランド戦略を徹底調査

低アルコールの代表「ほろよい」。「華よい」との違いは?ブランド戦略を徹底調査

若者の「アルコール離れ」が叫ばれる中、お酒が苦手な人でも飲みやすい設計で、低アルコール市場を席巻するサントリーの「ほろよい」。2024年9月には、同じく果実系の低アルコールブランド「華よい」がキリンから登場しました。今回は華よいと比較しながら、ほろよいの集客戦略と購買状況について分析していきます。


サントリー「ほろよい」とは

ほろよいは、サントリーが2009年に発売した低アルコールのチューハイブランドです。

①低アルコール度数
アルコール度数が3%と低く、飲みやすい設計。お酒が苦手な人や初心者でも楽しめます。

②多彩なフレーバー
季節限定や定番フレーバーを含む幅広いラインナップが特徴。フルーツ系やデザート系の味が多く、ジュースのような飲み心地が人気です。

③若者や女性を意識したデザイン
フルーツや飲み物のイラストが描かれたパッケージや、パステルカラーを基調とした公式サイトから、若者や女性層をターゲットにしたデザインであることがうかがえます。

「若者に刺さるビジュアルと音楽」として、以前マナミナが取材した早稲田大学マーケティング研究会の学生たちの間で話題に挙がったのが、2022年に公開されたほろよいのテレビCMでした。

このCMに対して学生からは、「音楽や映像、色の使い方などが、若者にはたまらない」というコメントが挙がりました。

【関連記事】早稲田大学マーケティング研究会に聞く、Z世代に刺さる商品やプロモーションとは

https://manamina.valuesccg.com/articles/2521

「学生×マーケティング」を武器に、学生主催の勉強会や、企業と共催のビジネスコンテストを通して、実践的なマーケティングのインプットとアウトプットを目指す早稲田大学のアカデミックサークル、マーケティング研究会。意欲的に活動を行う「まーけん」民の熱意の裏側と、マーケターの目線をもったZ世代がいま気になる商品やプロモーションについて、幹事長の斉藤くん、渉外局長の石原くん、勉強会局長の石田さんに伺いました。

またサントリーはさらなるファン拡大のため、2022年にはほろよいの通年商品13種のパッケージと一部フレーバーの中味をリニューアル。 ​2025年4月には、自由に割って楽しめる瓶タイプの「ほろよいのもと」2種を新発売し、多様な飲み方を提案しています。

参考:「ほろよい」通年商品13種リニューアル新発売 | サントリーホールディングス株式会社のプレスリリース

ほろよいの全ラインナップは、2025年4月10日時点で14種となっていました。

一部商品の概要をまとめます。


フレーバー容量アルコール度数希望小売価格(税別)
白いサワー350ml3%159円
カシスとオレンジ350ml3%159円
もも350ml3%159円
はちみつレモン350ml3%159円
ハピクルサワー350ml3%159円


※販売店によって実際の価格は異なる場合があります。
参照:ほろよい 商品情報(カロリー・原材料) サントリー

「ほろよい」の対抗馬?キリン「華よい」とは

キリンが2024年9月に発売した「華よい」は、ほろよいと同じく果実系の低アルコールブランド。

華よいのラインナップは通常3種で、2025年4月時点では春限定の1種が追加されています。

今回は、「ほろよい」を「華よい」を比較しながら、ブランドの戦略と購買状況を分析していきます。なお分析には、ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」と「Perscope(ペルスコープ)」を用います。

【年代分析】「ほろよい」は20代、華よいは「30代」が中心

まず、「ほろよい」「華よい」とそれぞれ検索した人の年代です。なお、華よいの発売初期にいち早く反応している層を分析するため、期間を2024年10月までの1年間としています。

「ほろよい」「華よい」検索者の年代

「ほろよい」「華よい」検索者の年代
調査期間:2023年11月~2024年10月
デバイス:PC&スマートフォン

ほろよいは20代の、華よいは30代の割合が突出しており、いずれも若年層が反応しているものの、ほろよいの方がさらに若い層が検索していることがわかります。

華よいは志尊淳さん(1995年生まれ)と山下美月さん(1999年生まれ)をCMや公式サイトに起用しており、タレントは20代寄りではあるものの、ほろよいよりも落ち着いた世界観で、30代の関心を獲得しているのかもしれません。

華よいは「低カロリー」でも打ち出しているため、体型が気になり始める30代の関心を集めやすい、という面もありそうです。

なお、ほろよいの歴代起用タレントは古川琴音さん(1996年生まれ)や西野七瀬さん(1994年生まれ)などで、華よいに比べて明確に若年のタレントを起用している、という傾向は見られませんでした。

【興味・関心分析】「お酒」への関心が高いのは「華よい」検索者

続いて、「ほろよい」「華よい」検索者の興味関心です。

「お酒」トピックへの関心は、華よい検索者の方がリーチ率、特徴値ともに高くなっています。ほろよいは、「お酒初心者でもジュース感覚で飲める」というブランドイメージがすでにあり、普段そこまでお酒に関心のない層からも選ばれやすいのかもしれません。

※リーチ率:対象者のうち、アンケートで当該項目に回答した人数の比率
※特徴値:対象者のリーチ率−ネット人口全体のリーチ率

「ほろよい」「華よい」検索者の興味関心

「ほろよい」「華よい」検索者の興味関心
調査期間:2023年11月~2024年10月
デバイス:PC&スマートフォン

「アニメ」「ゲーム」好きな「ほろよい」検索者にはNetflixコラボ

ほろよい検索者は20代の割合が高いこともあってか、「アニメ」「ゲーム」「動画共有サイト」といったトピックへの関心が高くなっています。

ほろよいは、2024年11月から期間限定で「ほろよい〈ネトフリコーラサワー〉」を発売。Netflix初のアルコール飲料とのコラボ商品となりました。

ほろよい検索者は、前述の通り動画共有サイトへの関心が高く、かつほろよいの主な検索者である20代は、Netflixアプリ利用者の中でも多数を占めています。

「Netflix」アプリ利用者の年代

「Netflix」アプリ利用者の年代
調査期間:2024年4月~2025年3月
デバイス:スマートフォン

ほろよいはターゲットが近いNetflixとコラボすることで、話題性を集めながら、さらなるファンを獲得する戦略を積極的に打っていることがうかがえます。

【フレーバー分析】女性は爽やかなフレーバー、男性は甘いジュース系

最後にオフラインの購買データ※から、ほろよいのどの商品がどの層の支持を集めているのか、調査していきます。

性別で見ると、女性では「グレフルソルティ」「アイスティーサワー」などの爽やかなフレーバー、男性では「シュワビタサワー」「ハピクルサワー」「ネトフリコーラ」などの甘いジュース系のフレーバーが人気となっています。

※オフライン購買データ:大手流通50社のスーパー・ドラッグストアの店舗での購買データ

「ほろよい」ラインナップ別のオフライン購買者の性別

「ほろよい」ラインナップ別のオフライン購買者の性別
調査期間:2024年3月~2025年2月

「シュワビタサワー」はビタミン炭酸飲料味が特徴。同様の「オロナミンC」「デカビタC」の検索者を見るといずれも男性の割合が高いことから、男性が好みやすい味なのかもしれません。

「オロナミンC」「デカビタC」検索者の性別

「オロナミンC」「デカビタC」検索者の性別
調査期間:2024年4月~2025年3月
デバイス:PC&スマートフォン

「白いサワー」は若年・シニア層ともに不動の人気

オフライン購買者を20代に絞って、実際の購入金額シェアを見てみると、「白いサワー」が最も高くなっていました。

「ほろよい」ラインナップ別のオフライン購買者:20代の購入金額シェア

「ほろよい」ラインナップ別のオフライン購買者:20代の購入金額シェア
調査期間:2024年3月~2025年2月

50代以上でも「白いサワー」の購入金額シェアが最も高くなっており、ほろよいブランドの中でも、世代に関係なく選ばれやすい商品であることがうかがえます。

「ほろよい」ラインナップ別のオフライン購買者:50代以上の購入金額シェア

「ほろよい」ラインナップ別のオフライン購買者:50代以上の購入金額シェア
調査期間:2024年3月~2025年2月

まとめ

今回は、低アルコール市場を席巻するサントリー「ほろよい」のブランド戦略を、2024年9月に新発売されたキリン「華よい」を比較しながら分析してきました。

ブランド名の検索者を見ると、ほろよいは20代、華よいは30代の割合が高く、公式サイトやパッケージデザイン、テレビCMなどから、ほろよいはより若年層の取り込みを意識していることがうかがえました。一方で、華よいは低カロリーであることもアピールポイントの一つであるため、体型が気になり始める30代に関心が集まりやすいのかもしれません。

ほろよいの検索者は「お酒」トピックへの関心は低く、一方で動画共有サイトへの関心が高くなっていました。2024年に期間限定で、Netflixとコラボして発売した「ほろよい〈ネトフリコーラサワー〉」を踏まえると、ほろよいはターゲットに即したマーケティング施策を積極的に行っていることがうかがえます。

オフラインの購入状況を調査すると、女性には「グレフルソルティ」「アイスティーサワー」などの爽やかなフレーバー、男性では「シュワビタサワー」「ハピクルサワー」「ネトフリコーラ」などの甘いジュース系のフレーバーが人気となっていました。

マーケティングだけでなく、自由に割って楽しめる瓶タイプの「ほろよいのもと」の発売など、商品開発にも力を入れ、話題性を作っているほろよい。キリンが同じく低アルコール市場に参入する中、今後どのようにファンを増やしていくのか、今後の動きからも目が離せません。


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この記事のライター

1997年生まれ、大阪大学卒。データアナリストを経て、Webマーケティング・リサーチを軸に、コンテンツディレクション、SNS運用、デジタル広告運用などを担当。現在はフリーで活動しています。

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