早稲田大学マーケティング研究会とは?
―― 本日は、早稲田大学マーケティング研究会(以下、まーけん)の幹部のお三方をお迎えし、まーけんの活動内容や、学生がマーケティングに興味をもつきっかけなどについてお話を伺っていこうと思います。また、学生を代表して、Z世代が面白いと思う企業のマーケティング手法についてもお伺いできると良いかなと。よろしくお願いします!
まずは、普段のサークル活動でどんなことをされているのか、具体的に教えてください。
幹事長 斉藤仁輝くん(以下、斉藤くん):まーけんは毎週月木で活動しているのですが、あらかじめ設定しておいた1年の目標に対して、それを達成するための小目標を毎月立て、その目標に沿って勉強会を開催しています。サークル員同士仲良くなるためにイベントを企画したり、企業をお招きしてビジネスコンテスト(ビジコン)を開催することもあり、基本的にはこの3つの軸で活動を展開しています。
例えば僕らの代では「論理的に解決策を提示する力を身につける」ことを1年の目標に置いているのですが、それぞれの活動の詳細については、勉強会と渉外の各局長から説明よろしくお願いします!
勉強会局長 石田明子さん(以下、石田さん):では私から、勉強会についてお話します。勉強会はまーけんのメインの活動で、書籍やネットで学んだマーケティングに関するナレッジを、担当者がパワーポイントに落としてメンバーに共有しています。ネットでの情報収集媒体としては、日経クロストレンドや東洋経済オンライン、あとはnoteも参考にしますね。学んでいる側が腹落ち感があるように意識して、情報源を選んでいます。
勉強会のカリキュラムとしては、今期だと春夏はマーケターとして必要な素養を、秋冬はマーケティングに閉じないビジネス全般で使えるスキル、例えば論理的思考力などを身につけていく予定です。フレームワークなどの表面的な知識を実際「どう使えるか」ということを意識して、コンテンツを組んでいます。
―― 学生だけで実践的な部分まで突っ込んで学ぶのはなかなか難しいことなのではと思うのですが、勉強会には先生や社会人が入ったりするのでしょうか。
石田さん:いえ、学生で完結しています。共有タイムの後は、学んだことについて全員でグループワークやディスカッションをして、知識の定着を図っています。先生がいない自由な雰囲気で学生同士話し合うのが好き、というメンバーもいますね。
渉外局長 石原吉太郎くん(以下、石原くん):実社会に近いアウトプットを目指す、という点ではビジコンの役割が大きいかなと思います。企業からお題をいただいてビジネスプランを考えたり、楽天の購買データをご提供いただいて、その分析から入ったり。レポーティングまで行うこともあります。
―― なるほど。総じて、「実践で使えることを学ぶ」ということを意識されているのだなと感じました。企業側が学生向けにマーケティング学習系のコンテンツを考えるなら、この点に注目すると良さそうです。
写真左:幹事長 斉藤仁輝くん
写真中央:渉外局長 石原吉太郎くん
写真右:勉強会局長 石田明子さん
コンビニの陳列やカンブリア宮殿...学生がマーケティングに興味をもつきっかけ
―― 皆さんがここまで熱量高く活動を続けられる理由が気になるのですが、そもそもマーケティングに興味をもつきっかけはどういうものだったんでしょう。
斉藤くん:僕は経済系の学部ではなく、理系学部の所属なのですが、もともと心理学に興味があって。高校の調べ学習の時間で、目につくところにある心理学、という文脈から考えたときに、コンビニの商品の陳列方法が気になったんです。こういうところにもマーケティングの考え方って使われているんだ、それなら生活のあらゆる場面で使えるな、と思ったのが、マーケティングに興味をもったきっかけです。
石田さん:私は中学生の時から親と見ていた「カンブリア宮殿」というテレビ番組がきっかけです。ヒット商品の裏側を探ったり、会社を建て直した経営者のストーリーを追う、といった内容なのですが、番組を見ているうちに、良いものが売れないのはどうしてなんだろう?と気になるようになりました。
石原くん:僕も、大学入学前からマーケティングやビジネス、起業や経営に興味がありました。小さい頃から新聞の切り抜きなどをしていて。もともと読書が好きで、森岡毅さんの本が愛読書です。
次世代マーケターのZ世代が選ぶ、商品やプロモーション
―― ここからはマーケティング色を少し強めてお話を伺っていこうと思います。
皆さんが最近良いなと思う広告や商品、サービスがあれば、気になる理由もまじえて教えてください。
驚きの体験を提供。「ビアボール」「 生ジョッキ缶」
斉藤くん:商品でいうと、サントリーの「ビアボール」やアサヒビールの「生ジョッキ缶」ですね。コロナ禍のおうち需要をめがけてやっているのが面白いですし、おうち需要が下火になったとしても、「Wow」という驚きの体験を提供することで、ヒット商品になっていると思います。マーケティングが文化を作る感じで面白いです。
若者に刺さるビジュアルと音楽。「ほろよい」
―― 若者のお酒離れが進む中で、どうしたら消費者の「Wow」を引き出せるのか、商品設計にこだわりを感じますね。
石原くん:その文脈でいくと、サントリーの「ほろよい」のCMは、僕らの世代に刺さっているなぁと思います。音楽や映像、色の使い方などが、若者にはたまらない感じがします。
斉藤くん:めっちゃわかります!
「ほろよいで話そ。」というキャンペーンがあって、それは親子や友達同士でほろ酔いになって話そう、という内容なんですが、ちょうどお酒が飲めるようになった若い人たちに刺さりそうな施策だなと思いました。
―― サントリーは商品設計とコンテンツ作り、両側面で気になる存在なんですね。
このCMの音楽というと、「水星」という曲が主題歌になっています。ちょっと前の曲ですが、これもZ世代に刺さっているということでしょうか。
石原くん:TikTokでこの曲がバズっていて、大学生でこの曲を知らない人はいないんじゃないか、というくらいです。
斉藤くん:TikTokは昔の曲でもバズることがあって、そういったものはInstagramのリールやLINEなどにも流れてきます。そうやって昔の曲でも若い人が聞くようになるという点で、TikTokは強いなと思います。
―― ちなみに、ほろよいのCMはどの媒体で認知したんですか?
斉藤くん:僕はLINEで見て、動画を再生すべくYouTubeに飛びました。
石原くん:僕はYouTube広告に当たったのがきっかけです。
―― やっぱりテレビじゃないんですね!
石原くん:テレビは全く見ないですね。
斉藤くん:そうですね、一人暮らしで拍車がかかってますます見なくなりました。
全く新しい体験価値がバズる。「友達がやってるカフェ」
石原くん:「友達がやってるカフェ」も衝撃的でした。「友達のバイト先に行った気持ちになれる店」をコンセプトにしているお店で、最近のマーケティングにおいて重視されている「体験価値」を突き詰めているなと思いました。
日常の中の「やだなー」を集めた「やだなー展」などをプロデュースした元電通の方が手掛けていて、そこも個人的に気になったポイントです。
―― 2023年4月、原宿にオープンしたお店ですね。今までになかったタメ口接客で話題ですが、そういうカジュアルさが、若者の潜在的なニーズだったりするんでしょうか。
石原くん:面白そうだから行ってみよう、というよりは、SNSに「これ面白い」と発信する動画があがり、それがバズることで「行ってみたい」になる感じですね。ネットの力をうまく活用した事例かなと思います。
社会に出ていく学生の不安に寄り添う。「日経電子版」
石田さん:私が気になったのは、「大丈夫になりたい。」というコピーが打ち出された、日経電子版の23歳以下向けのキャンペーンです。社会人になるという大きなライフステージの変化に対して、「怖い」という感情があるのは当たり前。その心理を掴み、不安を解消するためには社会のことを知るのが大事で、そのために日経電子版を活用しようと呼びかける流れが良いなと思いました。
―― 電車の車内広告でもよく見かける広告ですね。「大丈夫?」ではなく、「大丈夫になりたい。」というメッセージなのが、絶妙に煽りすぎていなくてバランスが良いなと、いち消費者目線で感じました。
―― 最後に、「自分のこの行動はZ世代らしいなぁ」ということがあれば、教えてください!
斉藤くん:テレビを見ないので、普段見るものは自分の意志で内容をスキップできるコンテンツが必然的に多くなってきます。興味がないものは早送りしたり飛ばしたりして、好きなところだけつまみ食いするような楽しみ方をしていますね。
ちなみにYouTubeの動画だけでなくVODで視聴できる映画についても、初めて見る作品であっても、早送りでなく途中で飛ばしたりします。視聴中のコンテンツ上でカーソルを合わせると、どういう場面かが見えるので、登場人物の重要なセリフが終わった後の戦闘シーンや、「これさっきもあったな」というような戦闘シーンなどは飛ばしてしまいます。
―― なるほど、起承転結をサクサク見ていきたい気持ちが強いのですね。初見の映画まで飛ばしてしまうのは驚きです。
石原くん:僕は流石に映画ではやらないですが、YouTubeは飛ばして見ますね。自分が好きなYouTuberの動画は全部ちゃんと見るんですが、流行っている動画やおすすめされる動画などは、導入部分と、最も視聴されている部分を示すグラフ(下画像の赤枠部分)の山の周辺だけ見て、さっと内容を把握するようにしています。
―― 情報過多でコンテンツの選択肢が多いからこそ、こうした情報の取捨選択が起こっているのは、デジタルネイティブ世代ならではという印象を受けました。
動画の早送りやスキップ以外で、他に思いつかれることはありますか?
石田さん:私は、商品やブランドそのものではなく、考え方に共感できるかどうかを重視していて、そこはZ世代らしい部分なのかなと思います。賛同したからといってすぐに商品を購入するわけではないですが、後日そのカテゴリの商品を買う機会があった際に、そのブランドが検討に上がる、という感じです。少しでも自分の考え方にそぐわないブランドは、選びたくないですね。
―― 共感性は現代の若い世代の特徴として語られることが多いですが、実態としてやはりそういうブランド選びが起きているのですね。そして、気に入ったブランドの商品をすぐに購入するのでなく、自分の中で選択肢としてストックしておくことも興味深いです。
今回は早稲田大学マーケティング研究会の活動内容から、Z世代の価値観に至るまで、幅広くお話を伺ってきました。今後のマーケティングや採用活動において、企業としても参考になるポイントが多くあったのではないでしょうか。
斉藤くん、石原くん、石田さん、ありがとうございました!
1997年生まれ、大阪大学卒。データアナリストを経て、Webマーケティング・リサーチを軸に、コンテンツディレクション、SNS運用、デジタル広告運用などを担当。現在はフリーで活動しています。