アプリ利用者数は「まねきねこ」が最多
早速、各社のアプリ利用者数を見ていきます。
分析には、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を使用しています。
各店の1年間のアプリ利用者数は、「まねきねこ」が843万人で1位、「ジャンカラ」が341万人で2位、「ビッグエコー」が308万人で3位と、「まねきねこ」が2位の倍以上の差をつけて首位についています。

カラオケ各店(まねきねこ、ビッグエコー、BanBan、カラオケ館、ジャンカラ)のスマホアプリ利用者数
調査期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:スマートフォン
■「ジャンカラ」は少ない店舗数にも関わらずアプリ利用者数2位
各チェーンの全国の店舗数は以下のようになっており、「まねきねこ」は店舗数に伴ってアプリ利用者数も多いことがわかります。一方「ジャンカラ」は、比較的少ない店舗数にも関わらずアプリ利用者数で2位についており、店舗利用者の中で広くアプリの浸透が進んでいることがうかがえます。
まねきねこ:687店舗(2025年6月17日時点、公式サイトより筆者集計)
ビッグエコー:442店舗(2025年6月17日時点、公式サイトより筆者集計)
BanBan:390店舗(2025年4月30日時点、公式サイト情報)
カラオケ館:194店舗(2025年6月17日時点、公式サイトより筆者集計)
ジャンカラ:194店舗(2025年6月17日時点、公式サイト情報)
起動頻度を増やす「ビッグエコー」の独自施策
月平均アプリ起動日数は、各チェーンが1~3回の中に収まっているのに対し、「ビッグエコー」は8回となっており、突出していることがわかりました。

カラオケ各店(まねきねこ、ビッグエコー、BanBan、カラオケ館、ジャンカラ)のスマホアプリ月平均起動日数
調査期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:スマートフォン
これには、「ビッグエコー」アプリの独自性として、以下2点が大きく影響していると考えられます。
①毎日および毎月チャレンジできるポイント・クーポン獲得施策がある
②獲得したポイントは、dポイントと交換できる
まず①については、以下2つの機能が搭載されています。
・すごろくゲーム:1日1回挑戦でき、ポイントがもらえる
・スクラッチ:月1回挑戦でき、クーポンを当てられる

「ビッグエコー」アプリのホーム画面(筆者画面の一部、2025年6月16日時点)
ゲーム感覚で楽しめるこれらの施策により、頻度高くアプリを開いてこつこつポイントを貯めるユーザーが多いと考えられます。
また、②のポイント施策についても注目すべき点があります。他アプリのポイントは自店舗でしか使えないのに対し、「ビッグエコー」ではdポイントへの交換が可能です。この利便性の高さが、ポイントを貯めるモチベーション向上に繋がっていると考えられます。
これらの独自施策により、「ビッグエコー」は他アプリと比べアプリ起動日数が大きく伸びていると考えられます。
「カラオケ館」は関東、「ジャンカラ」は近畿に集中
アプリ利用者の居住地域を比べると、「カラオケ館」はユーザーの約68%が関東地方、「ジャンカラ」は約55%が近畿地方に集中していることがわかりました。

カラオケ各店(まねきねこ、ビッグエコー、BanBan、カラオケ館、ジャンカラ)のスマホアプリ利用者の居住地域
調査期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:スマートフォン
本社を東京に置く「カラオケ館」は、都内に84店舗と東京を中心に展開しており、関西店舗は8件のみとなっています。一方で京都本社を拠点とする「ジャンカラ」は関西を中心に出店しており、東北および関東地方には店舗がありません(いずれも2025年6月16日時点)。
この出店状況が、アプリ利用者の分布にも影響していると考えられます。
来店時間は13~15時がピーク。「ジャンカラ」は夕方の利用も
ユーザーのアプリ起動時間を調査すると、各店のピークは「まねきねこ」が13時、「ビッグエコー」が15時、「BanBan」が13時、「カラオケ館」が15時、「ジャンカラ」が18時となっています。各チェーンのアプリ内機能として、受付や会計時に提示する会員証が備わっているため、この時間に特に来店が多いと考えられます。

カラオケ各店(まねきねこ、ビッグエコー、BanBan、カラオケ館、ジャンカラ)のスマホアプリ利用者のアプリ起動時間帯
調査期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:スマートフォン
「ジャンカラ」は比較的20代ユーザーの割合が高いことから、学生が放課後やアルバイト終わりに来店するパターンが多く、夕方のアプリ利用が増えやすいのかもしれません。
また、20時にもう一度アプリ起動の山が来ている「まねきねこ」は、アプリ内でフード注文ができる機能があることから、飲み会などでの店舗利用時にアプリが起動されやすいと考えられます。

カラオケ各店(まねきねこ、ビッグエコー、BanBan、カラオケ館、ジャンカラ)のスマホアプリ利用者の年代
調査期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:スマートフォン
「まねきねこ」の単独利用が目立つ
最後に、カラオケチェーンアプリ同士の併用状況を調査しました。
最も多くのアプリ利用者を抱える「まねきねこ」は、ユーザーの約68%が他アプリを併用しておらず、当アプリのみ利用しています。「まねきねこ」は業界最多の店舗数を抱えているため、アクセスがよく、「カラオケといえば」というイメージでユーザーの囲い込みがなされている様子がうかがえます。

「まねきねこ」アプリ利用者の併用状況
調査期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:スマートフォン
「ビッグエコー」ユーザーは約48%が併用なし、「まねきねこ」との併用者が約38%となっています。

「ビッグエコー」アプリ利用者の併用状況
調査期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:スマートフォン
「BanBan」ユーザーは約47%が併用なし、約41%が「まねきねこ」との併用者です。

「BanBan」アプリ利用者の併用状況
調査期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:スマートフォン
「カラオケ館」ユーザーは併用なしが約44%、「まねきねこ」との併用が約43%で、ほぼ同率となっています。

「カラオケ館」アプリ利用者の併用状況
調査期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:スマートフォン
「ジャンカラ」ユーザーは約59%が併用なし、30%が「まねきねこ」との併用者です。

「ジャンカラ」アプリ利用者の併用状況
調査期間:2024年6月~2025年5月
デバイス:スマートフォン
「まねきねこ」は単独利用率が高く、他チェーン利用者の主な選択肢となっており、カラオケ市場内で強いブランド力を有していることがわかります。「ジャンカラ」についても、「まねきねこ」の次に併用なしの割合が高く、関西に集中した出店状況が反映されていると考えられます。
まとめ
今回は、5大カラオケチェーンのスマホアプリ起動データから、その利用実態や各社の強みを分析してきました。
業界最大の店舗数をもつ「まねきねこ」はアプリ利用者数も最多となっており、他カラオケチェーンアプリとの併用も少なく、アクセスの良さによるユーザーの囲い込みが進んでいるようです。
一方で店舗数としては少ない「ジャンカラ」が、アプリ利用者数で第2位についていました。「ジャンカラ」はアプリ併用率も「まねきねこ」の次に低く、関西に集中的に出店し、地域での確固としたブランディングがなされていることがうかがえます。
アプリの月平均起動日数としては、「ビッグエコー」が突出していました。「ビッグエコー」アプリは、毎日引いてポイントを貯められるくじ機能や、貯めたポイントを店内だけでなくdポイントに交換して利用できるという機能を有しており、こうした独自施策が高いアプリ利用頻度に寄与していると思われます。
店舗数でカバーする「まねきねこ」と、集中出店で差別化する「ジャンカラ」など、各社の特色が見えてくる結果となりました。マナミナでは他にも、業界の有力企業やサービスを比較調査する記事を多数公開しています。是非あわせてお読みください。

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1997年生まれ、大阪大学卒。データアナリストを経て、Webマーケティング・リサーチを軸に、コンテンツディレクション、SNS運用、デジタル広告運用などを担当。現在はフリーで活動しています。