ジハンピとは。お得・便利な"6つ"の特徴
「ジハンピ」とは、サントリーが提供する自販機キャッシュレスアプリです。ジハンピ対応自販機は2025年3月から全国展開されています。
AppStoreでは、「ジハンピの6つの特徴」として以下が挙げられています。
・アプリをダウンロード後、支払い方法を連携すると好きな飲み物(※1)を3本もらえる
・自販機にスマホをタッチするだけですぐに購入できる
・ダウンロード後の設定が簡潔で最短60秒で使い始めることができる
・「PayPay」をはじめとした13種類の決済方法から選択できる
・楽天ポイントなど5種のポイントと連携しており、ポイントで飲み物を購入することやポイントを貯めたりすることができる
・「ピ」のロゴマークがついているサントリー自販機で利用できる
※1:300円以下の商品が対象
※記事執筆時点(2025年7月)の情報
出典:「ジハンピ」をApp Storeで
後述しますが、ジハンピは「好きな飲み物3本無料」という特典で注目を集めて、既存の自販機キャッシュレスアプリ「Coke ON」などに追いついていくのではないでしょうか。
ジハンピ急成長の軌跡を数字で検証
ジハンピは、順調にユーザー数を伸ばしています。その実態を見ていきましょう。分析には、毎月更新されるデータを用いて、検索キーワードやWebサイトのユーザー分析ができる、株式会社ヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit」を用います。
■約5ヶ月でジハンピのユーザー数が1,000万人を突破
ジハンピ対応自販機は2025年3月から順次全国展開されていますが、2025年7月にはユーザー数が1,000万人を突破しています。
図:「ジハンピ」のユーザー数推移
期間:2025年3月~7月
デバイス:パソコン・スマートフォン
サントリーは、2025年5月の時点で、好評につき、2025年のダウンロード数目標を当初の200万から500万に引き上げています。2025年6月時点で、目標引き上げ後の500万ダウンロードを突破していることからも、ジハンピの好調さを感じられます。
出典:自販機キャッシュレスサービス「ジハンピ」200万ダウンロード突破! 好評につき25年目標を500万ダウンロードに上方修正 | ニュースリリース一覧 | サントリー食品インターナショナル
■ジハンピとCoke ONをユーザー数で比較
ジハンピのユーザー数をコカ・コーラが提供する「Coke ON」と比較します。2025年7月のユーザー数はジハンピが約1,100万人、Coke ONが約1,900万人となっており、ジハンピはCoke ONアプリの6割程度のユーザー数であることがわかります。
図:「ジハンピ」と「Coke ON」のユーザー数推移
期間:2025年2月~7月
デバイス:パソコン・スマートフォン
現状ではCoke ONの方がユーザー数のシェアとしては大きいです。ただ、リリースからわずか5か月で6割程度、リリース以降右肩上がりでユーザー数をのばしていることから、Coke ONと同等、それ以上のユーザー数になる未来も近いかもしれません。
■好調の背景は3本無料キャンペーン
ジハンピが順調にダウンロード数を伸ばす要因は、「3本無料キャンペーン」だと考えられます。
前述したように、ジハンピをダウンロードして支払い方法を連携すると、300円以下の商品を3本無料でもらえます。Xではサントリーの以下の投稿をきっかけに、「#ジハンピ3本無料だってよ」をつけた投稿が増加しています。
サントリーのこちらの投稿は約5,000万imp(※2025年8月15日時点)となっており、3本無料の特典は、ユーザーから魅力的であると感じられ、広くリーチした施策であると考えられます。
Web行動データとアンケートデータを用いた分析を行える、株式会社ヴァリューズの分析ツール「Perscope」で、実際のジハンピのユーザーの情報収集媒体を見てみましょう。ジハンピユーザーはSNSで情報収集をしているとわかります。
図:「ジハンピ」ユーザーの情報収集媒体
期間:2025年3月~7月
デバイス:パソコン・スマートフォン
サントリーが実施した3本無料キャンペーンがSNSで話題になり、SNSで情報収集中の多くの人が興味を持ったため、アプリダウンロード数が伸びたと考えられます。
まだまだ進むキャッシュレス化。これからのキャッシュレス業界は?
ジハンピの登場によりさらにキャッシュレス化が加速した自販機。自販機のように、キャッシュレス化が進行中、もしくは今後キャッシュレス化が進行していくのはどのようなものでしょうか。
■キャッシュレス化が進む理由
かつては現金払いのみだった様々なサービスのキャッシュレス化が始まっている理由として、以下の2つが考えられます。
①現金払いのみの場合は購入しない人の存在
サントリーが2025年2月に実施した調査では、「財布を持ち歩いていなかった」「小銭を増やしたくない」などの理由から、自販機のキャッシュレス決済が使えずに飲料の購入を諦めた経験のある人が約3割いることがわかっています。
キャッシュレス決済が使えないことで購入機会を逃すケースが一定数存在することが、現金払いのみだったサービスもキャッシュレス決済を取り入れるきっかけになったと考えられます。
②お得に買うためにキャッシュレス決済を選ぶ人の存在
昨今の物価高騰もあり、お得な買い物をしたいという気持ちは、多くの人に共通するものでしょう。キャッシュレス決済では、ポイントが貯まるなど、現金での支払いよりもお得なことがあります。
Dockpitで「キャッシュレス」のWeb検索者の行動を見てみましょう。「キャッシュレス」検索者は、「キャンペーン」や「ポイント」といったワードと掛け合わせて検索しているようです。
図:「キャッシュレス」との掛け合わせワード
期間:2024年8月~2025年7月
デバイス:パソコン・スマートフォン
キャッシュレス決済の方がお得なことがあるイメージが浸透しているのかもしれません。
以上のように利用者の中でキャッシュレス決済が広まっているため、現金払いのみのサービスは減っていくと考えられます。
■キャッシュレス化が進んでいるサービス3選
自販機のほかにはどのようなサービスのキャッシュレス化が進んでいるのでしょうか。例として以下3つのサービスを見てみましょう。
ロッカー
駅などで荷物を預けるために利用するロッカーも、キャッシュレス機能が搭載され始めています。電車で使うICカードを用いて、そのままスムーズに荷物を預けることができます。
ガチャガチャ
近くの両替機で100円玉を増やしてから遊んでいたガチャガチャも、キャッシュレスで買えるようになり始めています。
お賽銭
PayPay株式会社は2024年12月に、お賽銭で「PayPay」が利用可能になることを発表しました。
以上のように、数年前までは小銭を用意する必要があったサービスも、キャッシュレス化が進んでいるようです。
■今後新たにキャッシュレス化されるものとは
未だにキャッシュレス化がされづらいものもありますが、どういったタイミングでキャッシュレス化が進行するのでしょうか。
2023年3月の経済産業省 商務・サービスグループキャッシュレス推進室による消費者実態調査の分析結果から、理美容室や個人経営の飲食店が、キャッシュレス決済が使えないイメージを持たれているとわかります。
キャッシュレス決済を取り入れない理由としては導入コストがかかることが考えられます。現金を持ち歩かない人が増えていくことによって利用者が減る損失が導入コストを上回るタイミングでのキャッシュレス化が予想されます。
また、情緒的なものもキャッシュレス化があまり進んでいません。2024年7月の株式会社フォーイットによるキャッシュレス決済に関する調査結果では、香典にキャッシュレス決済をしたことのある人の割合が最も低いとわかります。
30代以上は特に、亡くなった人へのお供えにキャッシュレスに抵抗を感じているのかもしれません。一方で20代では香典にキャッシュレス決済を利用したことのある割合がほかの世代より少し高くなっています。
キャッシュレス決済に慣れている若い世代が中心となる将来であれば、情緒的なものでもキャッシュレス化が進むかもしれません。
まとめ
今回は、ジハンピのヒットから、キャッシュレス決済全体をテーマとしました。
前半部分では、自販機キャッシュレスアプリ「ジハンピ」好調の背景を分析しました。最大の理由は、SNSで情報収集する人が、SNSで話題の「#ジハンピ3本無料だってよ」に注目したことにあると考えられます。
後半部分では今後のキャッシュレス業界について述べました。現金を持ち歩かない人や、キャッシュレスで得したい利用者の存在を背景に、様々なサービスでキャッシュレス化が進行しています。
キャッシュレス化が進行中のものにはロッカー、ガチャガチャ、お賽銭などがありました。今後は、小規模なお店や、香典などの情緒的な金銭のやり取りのキャッシュレス化に注目です。







2026年4月に入社予定の大学4年生です。法学部法律学科で、主に環境法について学んでいます。
趣味は旅行と日本舞踊です。