日本の味を”世界の定番”に。エスビー食品の海外事業戦略
――まず初めに、エスビー食品様の事業内容を教えていただけますか?
エスビー食品株式会社 馬 嘉貝氏(以下、馬):1923年に創業した当社は「食卓に、自然としあわせを。」という企業理念のもと、カレールウをはじめ、わさび・からし・七味唐辛子・パスタソース・中華系調味料などを幅広く製造・販売しています。
当社の創業者は、日本ではじめて国産のカレー粉の製造に成功しました。当時、カレーライスのもとになるカレー粉は海外製品が使用されていたこともあり、カレーライスは高級な洋食で、限られた人しか食べられませんでした。
創業者は「美味しいカレーライスを多くの国民に食べてもらいたい」という思いで、さまざまなスパイスを組み合わせて国産のカレー粉を開発・製造・流通させました。
――エスビー食品様の海外事業部では、どのような取り組みをされていますか?
馬:これまでのDNAを受け継ぎ、日本ならではの味を大事にしながら、「S&Bブランドの世界定番化」を目指しています。
現在は、北米、ヨーロッパ、ASEAN、中国本土、香港、台湾など、約80か国やエリアで、カレーやわさびを中心に、日本で製造した商品を販売しています。海外向けのブランドメッセージとして「Authentic Taste of Japan(日本ならではの本格的な味)」を掲げ、2043年に海外売上高比率40%超を目指すことを長期目標としています。
エスビー食品様の海外専用商品
――馬さんは、どのような業務をされているのでしょうか?
馬:私は、海外ビジネスユニットに所属し、中国本土および香港市場における販売戦略の立案・実行を担当しています。当社の商品を代理販売する輸入商社と協力し、担当エリアのスーパーや飲食店向けに商品を拡販しています。
現地拠点を持たないエリアでは、パートナー企業との協業が不可欠です。当社のブランド価値を正しく伝え、データに基づく販売戦略や成功事例を共有し、パートナーが自信を持って提案できる関係づくりを大切にしています。
エスビー食品株式会社 海外事業部 海外ビジネスユニット 馬 嘉貝氏(Ma Jiabei)
中国出身。中国の大学を卒業後日本で就職。日系食品メーカーにて海外事業に従事。2021年よりエスビー食品に入社し、海外事業部にて中国本土・香港市場を中心とした営業活動を担当。
「費用感」と「スピード感」を重視するエスビー食品が、ValueQICを選んだ背景
――今回は、中国市場におけるレトルトカレーの新商品の販売において、ValueQICをご活用いただきました。活用前に抱えていた課題を教えていただけますか?
馬: 中国市場で売上を拡大したいと考えるなかで、いかに現地の声を拾い、その声を商品開発や販売戦略に反映させるか——これが最大の課題だと感じていました。
中国は経済成長のスピードが速く、市場環境の変化もとても早いです。どうすればもっとリアルな生の声を、スピーディーに拾えるのかという点に悩んでいました。
さらに、中国での売上規模がまだ大きくないため、調査を行うにあたってはスピードだけでなく、費用対効果も重視する必要がありました。複数のサービスを比較検討した結果、最終的にヴァリューズさんの「ValueQIC」を導入することに決めました。
――実際に、どのようにValueQICを活用したのでしょうか?
馬:調査を始める段階で、すでに中国で販売する商品は決まっていました。そのため、今回の調査は、その商品の販売成功率を高めるための方法を探る目的で実施しました。
中国で販売する新商品として、当社を代表するカレーブランドである「ゴールデンカレー」のレトルトカレーを選定しましたが、同時に課題がありました。
というのも、中国向けの商品には肉原料を入れられないという制限があったためです。さらに、輸入費がかかるぶん、中国の店頭で並んでいる既存商品よりも販売価格が高くなってしまいます。そのため、日本製で肉原料を使用せず、しかも価格が高めのレトルトカレーを、どのように売っていくかが大きな課題でした。
ターゲット層の想定はできていたので、まずはそのターゲットがどのように商品を受け入れてくれるのかを、消費者視点で丁寧に確かめたいと思っていました。そこでヴァリューズさんに、売りたい商品や目的をご説明して、調査に関するアドバイスをいただきました。その上で、属性や喫食回数、サンプル商品の試食などの細かな調査条件をしっかりと満たした上で、ValueQICでインタビューしていただきました。
中国市場を対象に、手元で簡単に調査設計から分析までできるサブスクリプション型のWeb調査ツール「ValueQIC」。
――御社ではスピード感も重視しているとおっしゃっていましたが、今回の調査は、期待していたスピード感と比べていかがでしたか?
馬:想定よりも早く調査していただけて助かりました。実は社内都合で、当初相談していたスケジュールよりも、調査を1か月程度早める必要がありました。また、今回はサンプル商品を召し上がっていただくだけでなく、試食の際の食卓写真も撮ってもらい、さらに、記憶が薄れないうちにできるだけ早くインタビューしたいという意向もありました。
ValueQICは専用のサイトがあり、アンケートの設計もヴァリューズさんと連携しながらオンライン上で完結したので、スピード感をもって調査ができました。ヴァリューズさんには、スケジュール変更にも柔軟に対応していただき、ありがたかったです。
忖度なしの「生の声」が社内外を動かす。バイヤーも納得させる調査結果の説得力
――海外進出や新商品の開発ならではの課題はありましたか?
馬:海外で販売する商品は、消費者向けの調査が難しいことが挙げられます。当社では、海外向けの商品は、各国の法律に沿った規格で製造しています。また、現地の嗜好に合わせて味を調整する場合もあります。
調整した味が好まれるのか、商品を買いたいと思ってもらえるのかという点は、販売を決定する上で重要です。しかし、商品を食べてみていただいた反応を得るのは簡単ではありません。そうしたなかで今回、中国の消費者に商品を試していただき、率直な意見をいただけたことは、大きな一歩だったと思っています。
ーー今回の調査では、食べてみた感想や食べられ方、食卓の写真なども分析対象とされていましたが、アウトプットについて率直なご意見をお聞かせください。
馬:忖度のない消費者のストレートな感想を引き出してくださり、非常に助かりました。一般的なアンケート調査ではなく、インタビューだからこその結果だったと思います。
実は以前にも、レトルトカレー全般について、オンラインでアンケート調査を実施したことがあります。しかし、ボリュームが多かったため、大まかな傾向は把握できても、リアルな声と意見の深掘りはとても難しかったのです。
今回の調査では、北部と中部、南部の3つの居住地に分けて、消費者の方に食卓の写真も撮っていただきました。調査の結果、食卓の雰囲気やカレーの食べ合わせが地域によって違うことがわかったのは、とても大きな成果でしたね。
調査前は、日本のように、ライスにカレーをかけて食べるのかと思っていました。しかし、実際に調査してみると、エリアによって食べ方も違えば、家族構成によって食卓の雰囲気や食後の感想にも違いがあったのです。
ターゲット別はもちろん、エリア別に販売戦略を細かく設定したかったので、都市別に売り方を考える必要があることを改めて確認できたのは、大きな収穫でした。
――地域の“当たり前”はアンケートでは捉えにくいですよね。インタビューや写真での回答だからこそリアルな状況を把握でき、違いが明確になった、ということでしょうか。
馬:そうですね。インタビューだから聞き出せる消費者の生の声と写真は、仮説の確認や方向修正に役立つだけでなく、社内外を説得する材料としても非常に有効でした。たとえば、中国の都市部では、当社の認知度は一定あるものの、新商品が受け入れられるかどうかは、バイヤーにとって大きな懸念点でした。そうしたなかで、今回の調査結果はバイヤーを説得する上でも、かなり効果的だったと思います。
とくに味を高く評価いただいたので、説得材料としての価値がありました。今回、子どもでも美味しく食べられる甘口と、辛さを求める大人でも満足できる中辛の2種類を発売します。好みの辛さが違っても「食卓で一緒にカレーライスを楽しんでほしい」という戦略的な意図がありました。想定通りに良い評価をいただけたのは、自信にもなりましたね。
今回の調査対象となった「ゴールデンカレー」の画像
実施してわかる調査の重要性。今後は「商品開発」にも生の声を
――調査結果は、販売戦略の立案や社内外の説得材料として活用できたとのことですが、ここまでの調査で得られた知見を、今後はどのように活用する予定ですか?
馬:消費者のリアルな声を聞けたので、発売後の商品の改善にも活用したいと考えています。販売がはじまるとさまざまな意見が出てくるはずで、商品の改善が求められることもあると思います。その際は、今回のようにリアルな声を拾って、日本らしさを保ちつつも、現地の消費者の期待に応えられるよう、バランスを整えたいと思っています。
また、今回の調査で気づいたのは、中国の方はストレートに感想を話してくださる方が多いということです。厳しいご意見もあったからこそ、中国の消費者に合う商品を作るには、早い段階でリアルな声を拾う必要があるということを、日本にいながら気付くことができました。早めに手を打つことで売れる確率も高まると思いますし、商品設計をスタートする段階でインタビューを行うことが有効かもしれない、という学びがありました。
――最後に、海外事業部としての展望を教えてください。
馬:私たちのミッションでもある「S&Bブランドの世界定番化」に向けて邁進したいと考えています。日本食をそのまま提供するのではなく、現地の食文化やライフスタイルに寄り添う意識は大切にしたいですね。さまざまな企業と協力して日本食の魅力を伝えることで、日本食がもっと世界の舞台で活躍してほしいと思っています。
取材協力:エスビー食品株式会社
エスビー食品のグローバルサイト:S&B Foods Global Site - Wasabi, Japanese Curry, Japanese Spices
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